東方繋操録 〜紅魔館執事長比企谷八幡〜   作:黒初白終

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 疲れてしまった。

 重荷を背負いすぎてしまった。

 少し前の自分なら簡単に切り捨てられたのに。

 居心地の良さに甘えて一つの場所に留まり続けてしまった。

 大切なものが増えすぎた。

 何がぼっちだ。

 何もかも捨てきれずに全部を拾おうとした結果がこれだ。


 逃げ出したい。

 捨て去りたい。

 誰も俺を知らない場所へ。

 俺が誰も知らない場所へ。




 みんな、どうか俺のことを忘れてほしい。





 チョキン・・・



 何がが切れる、音がした。





紅魔館の執事
第一話:紅魔館のもう一人の従者


 

 ◇◆◇

 

 

 幻想郷。

 それは、妖怪や妖精、神に至るまで数多くの種が存在する、忘れられた者達の最後の楽園。

 人ならざる者たちの集うこの楽園は、博麗大結界という特殊な結界によって成り立っている。

そしてその結界を張るのが境界を操る大妖怪と博麗の巫女である。

 楽園の素敵な巫女と自称する彼女は、博麗神社にて今日も今日とて緑茶を啜っていた。

 

 ズズッ・・・

 

「あー、落ち着くわ」

 

「落ち着いてんじゃねぇ!」

 

 ドカンと机を叩いて怒鳴った少女の名前は霧雨魔理沙。白黒のエプロンドレスを身に纏った普通の魔法使い。人間である。

 対して、魔理沙に怒鳴られてなお呑気に茶を啜っている巫女の名前は博麗霊夢。紅白色の脇の空いた巫女服。こと弾幕ごっこにおいて負け知らずな最強の巫女である。

 

「何か用かしら魔理沙」

「お前っ、分かってんだろ!異変だよ、異変!!」

「・・・うるさいわね」

 

 魔理沙が指を指すのは黒い空。

 と言っても、今が夜なわけではなく、黒く深い霧が空を覆っているのである。遠くの空まで真っ黒に染まっており、太陽の光を完全に遮っていて、今は月の光だけが幻想郷を照らしている。どうやらこの黒い霧はただの霧ではないらしい。

 霊夢は外の霧に目を向けることもなく不機嫌そうに湯呑みを置く。

 

「異変ねぇ・・・分かってるわよそんなこと」

 

 霊夢には予知と言っても過言ではないほどの直感がある。

 勘とは言っても馬鹿にできないもので、これが外れた試しがない。

その上、以前この異変に似た紅い霧の異変があったため、すぐにこれが異変だと気づいていた。

 気づいてはいたのだが・・・

 

「じゃあ、何で動こうとしないんだよ」

「・・・この異変に関わると面倒臭いことになるって私の勘が言ってる」

「はぁ、お前はまた勘かよ」

 

 魔理沙も霊夢の勘については知っていたし、面倒臭がりについても知っていたため、ため息を吐いた。

 霊夢は面倒臭いから異変解決に行くのを渋ることがあるが、異変解決に行くと面倒臭いことになるとぼやくのは初めてであった。

 それはともかく、魔理沙には一つ解せないことがあった。

 

「しっかし、この異変はなんなんだろうな。ひょっとしたら紅い霧のときと同じように紅魔館の奴らの仕業かもな」

 

 そう、以前にあった紅い霧の異変と似すぎているのだ。違いは紅いか黒いかだけ。魔理沙はこの異変が安直に黒霧異変と名付けられる未来を幻視した。

 そんななか、霊夢はしれっと口にする。

 

「ああ、これ吸血鬼の連中の仕業よ」

「何!?」

「妖怪共は無駄にプライド高いし、異変が被るような真似はしないわ」

 

 

「――――えぇ、今回は紅魔館のリベンジだそうよ」

 

「げっ!」

「・・・はぁ、やっぱりあんたが一枚かんでるのね」

 

 気がつけばそこには割れた空間に腰掛けた神出鬼没なスキマ妖怪、八雲紫がいた。

 中華系の紫色の服を身に纏いナイトキャップのようなものをかぶり、室内で変わった形の傘をクルクルと回している。

 紫は鉄扇で口元を隠しながら不気味にくつくつと笑っている。相変わらずの胡散臭さである。

 

「というより、私があちらに異変を起こすように依頼したんですのよ」

 

 またまた、何の気なしにぶっ込んでくれたものである。

 今までも裏から異変を操作していた節はあったが、まさか始まる前からこんなことを暴露してくるとは。

 

 それにしても、と霊夢がまた茶を啜る。

 

「またなんでリベンジなんてしようとするのよ。あれだけボッコボコにしてあげたのに」

「確かに勝算もなしにリベンジなんておかしな話だな」

 

「―――つまり、あちらには勝算があるってことよ」

 

「へぇ―――」

「ほぅ?」

 

 思わず霊夢も目を細めてしまうが、改めて考えるとやはり自分の負ける姿が想像出来ない。

 あらゆる面で天才的な才能を発揮する上に、直感で攻撃は当たらず、【浮いて】しまえば、自分に干渉することなど誰にも出来なくなる。

 反則的なまでの才能と能力、直感。これが霊夢が最強たる理由なのである。

 

「私に勝つつもりなんて、馬鹿なのかしら」

「あら、直感で感じないかしら。だとしたら鈍ったものね」

「ぐっ、それは」

 

 図星をつかれて言い淀む霊夢

 そう、霊夢が外の様子の変化に気づいた時から嫌な予感はしていたのだ。それも、これまでにないほどの悪い予感が。

 

 霊夢が唸っているのを見て、紫はフフと笑をこぼす。

 

「まあ、実を言うと最近霊夢が調子に乗ってる気がするからあちらに『異変起こして霊夢の天狗鼻へし折って』ってお願いしたのだけどね」

「あんた、そろそろ本気で退治してやろうかしら・・・!」

「確かに、最近霊夢が修行してるとこなんて全く見ないぜ」

「何よ、別に負けないんだからいいじゃない」

 

 慢心もいいところだと言いたいセリフではあるが、霊夢は実際に負けない。鬼であろうが神であろうが異変を起こせば、異変の最中に出逢えば問答無用でなぎ倒していく。

 そんな霊夢と同じステージに立てないことを魔理沙が悔しく思った数は数え切れない。

 

 だからこそ、と紫は鉄扇を突きつける。

 

「霊夢。今回の異変、全力で解決に向かいなさい。逃げることは許さない。言い訳も許さない。

 無様に負けて、その慢心を木っ端微塵に打ち砕かれるといいわ!」

「おいおい、流石にそこまで言うかよ」

 

「嫌よ。断固拒否するわ。私の感が今日は厄日と言ってるわ」

 

「「・・・はぁ」」

 

 なおも食い下がる霊夢に、紫と魔理沙は同時にため息を吐いた。霊夢は一度動かないと言ったら基本動かない。

 

 紫は仕方ない、と言って鉄扇を縦に振った。そこに現れたのは一つのスキマ。向こう側には紅魔館の門が見える。

 

「これを潜ってさっさと向かいなさい。魔理沙も連れて行っていいわ。もし行かなければあなたへの食料供給を絶つわ」

「なっ、脅しじゃないのそれ!!」

「お賽銭少ないものね。仙人みたいに霞でも食べる?」

「〜〜っ、あんた、覚えてなさいよ!帰ったら退治してやるんだから!!」

 

 そう言って霊夢は乱暴に立ち上がり、引き出しから大量の妖怪退治道具を取り出し、スキマに入って行った。

 

「おーおー、えらい本気だなアイツ。半刻もしないうちに異変終わっちまうんじゃないか?」

「えぇ、霊夢の負けで解決失敗。それがこの異変の結末よ」

「・・・なんでそこまで言いきれるか理由が知りたいぜ」

 

 魔理沙は霊夢が潜って行ったスキマを見つめる。

 魔理沙の中で最強は霊夢だ。弾幕ごっこでないなら話は変わってくるかもしてないが、霊夢の負ける姿は想像出来ない。

 その霊夢が負けると、妖怪の賢者が言うのだ。

 

「あら、あなたは行かなくていいのかしら」

 

 歯がゆい気持ちになる。霊夢には一度痛い目を見てほしいという思いもあるが、簡単には負けて欲しくはないという思いもある。

 そう考えるとだんだんムシャクシャしてきた。

 

「あーくそっ!帰ったらいい酒飲ませろよ!!」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 ほうきを引っ掴んでスキマを潜って行った魔理沙を見て、紫はクスりとまた笑みをこぼした。

 

「あの子もあの子で可愛いわね。・・・さてと」

 

 鉄扇を振ってスキマを閉じると、隣の空間が裂けて二人の妖怪がやってくる。

 一人は金毛九尾の狐。玉藻の前と呼ばれた傾国の美女であり、紫の式である八雲藍。もう一人は尻尾が二つに裂けたの化け猫。八雲藍の式である橙。

 

 紫がまた鉄扇を振ると、今度は霊夢と魔理沙の姿を映すスキマが現れる。三人はそれを囲むように腰を下ろした。

 

「さて二人とも。今回の異変は見ものよ」

「はい紫様。橙、しっかり観ておくのだぞ」

「はい藍しゃま!」

 

 スキマに映るのは四人の人間。

 紫はまだ戦闘が始まる前だというのに興奮が止まらない。

 

 

「あぁ、あなたは何を見せてくれるのかしら。()()()()()()()()外来人」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 紅魔館門前。

 魔理沙がスキマを潜ると、そこにはいつもいるはずの門番がおらず、霊夢だけが腕を組んで立っていた。

 魔理沙は来るのが遅かったかと頭をかいた。

 

「なんだよもう一人片付けまったのか?」

「違うわよ。門番は元々居なかったわ」

「ん?珍しいな。いつもなら居眠りしてるはずなんだが」

 

 門番である紅美鈴が門前にいないとすると、他に考えられる場所は庭の花壇くらいだが、その様子もない。

 よく周りを観察すると人や妖怪の気配はなく、チルノや大妖精等の姿も見えない。

 

「勝手に入っていいのか?」

「これが置いてあったわ」

 

 霊夢が差し出したのは一枚の手紙。おそらくはこの館の主が書いたものだろう。コウモリを模したマークがある。

 それを受け取った魔理沙は、あまり黙読が得意ではないため声に出して読み上げる。

 

「『今回はリベンジ、と言っても私は戦わない。お前達と戦うのは私の可愛い従者たちだ。人間同士、とても良い巡り合わせであることを期待している』・・・・・・言いたいことだらけだぜ」

 

 魔理沙の言葉に霊夢も首を縦に振る。

 まず、レミリア自信が参加しないのが腑に落ちない。次に従者()()と書いたこと。紅魔館の従者は十六夜咲夜だけではなかったのか。

 そして、人間であること。ここから導き出せる答えは・・・

 

「・・・新たな外来人?」

 

 

「―――流石ですわね、博麗の巫女」

「―――聞いてた通りのキレ者だな」

 

「「っ!?」」

 

 突如聞こえてきた二つの声に、霊夢と魔理沙はその場を飛び退き、それぞれミニ八卦炉と退魔針を構える。

 

 そこに現れたのは一組の男女。うち一人は紅魔館の完全で瀟洒なメイド、十六夜咲夜。もう一人は目が特徴的な男。二人は微かな振動も音もなく、気が付けばそこにいた。

 咄嗟の反応をとった二人に対し、メイドはクスりと微笑み、男は皮肉気に笑う。

 

「あら、その反応は過剰ではないかしら?」

「おいおい、キモいから近づきたくないってか?」

 

 突如現れたタネは分かる。二人のうちの一人。咲夜の【時間を操る程度の能力】による時間操作。人間には過ぎた強力な力。

 しかし、もう一人が分からない。

 腐った魚のような目が特徴的で、身長は高くも低くもない。細身で執事服を纏い、モノクルをかけたアホ毛の男。

 この男も、咲夜が現れるのと完全に同じタイミングで現れた。咲夜の能力は時間停止中に他人を巻き込めなかったはずである。

 

「あら執事長。お客様の前で言葉がなってませんわよ」

「おっとこれは失礼しましたメイド長。何せこの矮小な身は完全で瀟洒なメイド長とは違い、不完全で素朴なもので」

 

「・・・何か分からないやつだぜ」

 

 先程までの馴れ馴れしい態度とは違い、それらしい言葉遣いと態度になった執事。若干発言から皮肉のようなものを感じられるが、その雰囲気は完全で瀟洒なメイドと変わらない凛としたもの。

 魔理沙は態度を変化させる男に動揺している。

 

「ご挨拶が遅れました。私、当館で執事長を務めさせていただいております、比企谷八幡と申します。以後お見知りおきを」

 

「そうか。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」

「・・・博麗霊夢よ。巫女と呼ぶのは許さないわ」

 

 綺麗な礼をする執事、比企谷に魔理沙はすぐに警戒を解いたが、霊夢は未だ退魔針を構えたままだった。比企谷から不気味な力を感じ取ったのである。

 しかし、警戒心を向けられた当の本人は気にする様子もなく、咲夜と並んで鏡のように綺麗な統一された動作をする。

 

「お嬢様と妹様、パチュリー様に小悪魔、美鈴も中でお待ちしております」

「異変についての詳しいお話は中でいたします」

 

 では付いてきてください、そう言って二人は歩き始め、霊夢と魔理沙もそれについて行く。

 二人の歩くスピード、歩幅は気持ち悪いくらいに一緒だった。流石紅魔館の従者と言うべきか。

 霊夢は比企谷を注視して見るが、隙だらけ。異変を起こした側の言うことなど聞く義理はないし、今なら簡単にぶっ飛ばせる。そこまで一瞬で思考し、退魔針と幣を構え、振りかぶる。

 

 が、しかし―――

 

「―――おいおい、殺気漏れまくってるぞ。俺は悪意に敏感なんでな。・・・・・・おっと、また言葉遣いが。執事を始めて一週間ほどですが、やはり慣れませんね」

 

 比企谷は振り返ることもなく、動揺する様子も見せず言った。

 

 ―――気づかれた。

 その事実が、霊夢に少なくない動揺を与えた。

 すべての存在に平等である博麗の巫女。今更敵に攻撃する程度のことで殺気はわかないし敵意も感じないはずなのに。やはりこの男は普通じゃない。

 

 奇襲や騙し討ちなどはあまり効果がないと悟り、大人しく付いていくことにするとすぐに目的の場所にたどり着いた。

 

 

「「失礼します。お客様をお連れしました」」

 

 ギィと重い音を立ててゆっくり開かれる巨大な扉。

 真っ先に目に入ったのは紅魔館の主、レミリア・スカーレット。無駄に豪華な椅子に腰掛けこちらを見下ろしている。

 そのサイドに紫色の魔女、パチュリー・ノーレッジと門番、紅美鈴。美鈴の肩にはレミリアの妹のフランドール・スカーレットが座っており、小悪魔はパチュリーの側に控えていた。

 

「うわぁ、一人一人ならあれだが全員揃うと勝てる気がしないぜ」

「一対一でも多対一でもやることは変わらないわよ」

 

 霊夢はいつも通り冷めた言い方で、魔理沙も弱気な言葉を口にするが顔はニヤついていた。

 二人の会話を耳にしたレミリアはその口元に弧を描く。

 

 「霊夢に霧雨魔理沙よ、よく来てくれた。手紙に記した通り、私たちはあくまでも観客なので安心するといい」

 

 この発言を聞いて霊夢はやはりおかしいと感じた。リベンジなのに何故自ら参加することもなく、更にはその他の紅魔館の住人までも参加しないのか。勝てる確率を上げるためならば、全員が参加した方がいいに決まっている。

 そんな霊夢の内心を知ってか知らずか、レミリアは口を開く。

 

「これは紅魔館のリベンジだが、異変は目立たなければならない。もう一度紅い霧を出して、これまで通り妖怪が異変を仕掛けても意味が無い。

 ―――これは、人間が起こす異変さ。霧に関しても戦闘に関しても私たちは一切手を出さないと決めている」

 

 なるほど、と霊夢は思う。妖怪や神が人間に勝つのは当たり前。それを退治できる博麗の巫女の存在が人里の住人を安心させている。今更妖怪が異変を仕掛けても人里の住人たちが虞を感じることなどほとんどない。

 しかし、異変を仕掛け巫女を打倒したのが人間で、その主が妖怪ならば人はまた虞を抱くだろう。

 だが、異変を起こすのが妖怪であれ人間であれ、重要なことが抜けている。

 

「どうしようとそっちの勝手だけど・・・・・・私に勝てないと意味が無いのよ?」

 

 そう。どれだけ新しい試みをしようとも博麗の巫女を倒さなければ同じことである。

 しかし、それでも目の前の者たちは笑みを浮かべている。

 

「むぅ〜!お兄様はすっごく強いんだから!」

「咲夜さんもハチマンさんも頑張ってくださいね」

「その二人にボコボコにされてしまいなさい」

「そうです!今まで盗まれた本返して貰うんですから!」

 

 フランはお兄様・・・おそらく比企谷をバカにするなと抗議の声をあげ、美鈴は咲夜と比企谷の応援。

 パチュリーと小悪魔は今まで魔理沙に盗られた―――本人曰く拝借(死ぬまで)―――ことに対しての恨みをぶつけている。

「と、まあ運命は決まっているわけだ。精々面白い勝負を見せて欲しいものだな」

 

 レミリアの挑発に霊夢の血管がピキピキと音を立てる。ここまで自分がバカにされるのは初めての経験だ。

 魔理沙も同様に紅魔館側の不遜な態度が気に食わないらしい。ほうきをギリリと握りしめている。

 

「さっさと勝負を始めちまおうぜ。ルールはどうするんだ」

「面倒臭いからそっちが決めていいわ」

 

 二人ともほうきやミニ八卦炉、幣に退魔針、御札をそれぞれ構える。

 ルールを投げてきたことにレミリアは笑う。

 

「それではありがたくこちらが決めさせてもらう。

 ルールは二対二のタッグ式。スペルカードの枚数は無制限。被弾回数も無制限。戦闘続行不可能と見なされるまで続く」

 

「・・・それ、本気で言ってるのか?」

 

 魔理沙が訝しむのも無理はない。相棒となる霊夢には反則技のスペルカードが存在し、その唯一の弱点が時間制限、回数制限なのである。その制限がなくなれば結果は火を見るより明らか。

 しかし、レミリアはそんなことは知っているとばかりに鼻をフンと鳴らす。

 

「何ならスペルカードルールを無視してくれてもいい。お前達がどんな好条件で戦おうが完膚無きまでに叩きのめしてくれるだろう。

 ―――あまり私の従者たちを舐めてくれるなよ」

 

 従者たちへの絶対の信頼と、本人の発するプレッシャーがレミリアのカリスマを際立たせる。

 霊夢と魔理沙もここまでカリスマを発揮するレミリアを見るのは初めてで―――

 

「・・・レミリアお嬢様。私は一応、フラン様の従者なのですが」

 

 まさかの身内からの裏切り。

 

「お兄様、お姉様カッコつけてたんだから邪魔しちゃダメだよ」

「あのなフラン、今お客様の前だからお兄様はやめような?」

 

「う、う〜☆しゃくやぁ〜!」

「はいはい、お嬢様」

 

 カリスマブレイクである。珍しくカリスマを保ったままだと思っていた矢先にこれである。しかもブレイクの原因が身内にあるとは何ともいたたまれない。

 それでも何とか威厳を保とうと、咲夜に抱きつき、鼻をすすりながら霊夢と魔理沙に指を突きつける。全く格好がつかない。

 

「と、とりあえず分かったわね!あんたたちなんてハチマンと咲夜がギッタンギッタンにしてやるんだから!咲夜!」

「はい。失礼しますお嬢様」

 

 パチンッ・・・

 

 咲夜はレミリアをおろすと指をひとつ鳴らした。

 瞬間、部屋の空間が数倍に広がる。咲夜の【時間を操る程度の能力】のもうひとつの力、空間操作である。

 霊夢と魔理沙、比企谷と咲夜は改めて向かい合うように対峙する。

 

「さて、ルールはどうしますか?」

「無制限か、それともルール完全無視か」

 

「っ、そんなもん!」

「待ちなさい魔理沙」

 

 比企谷と咲夜は余裕綽々な態度でこちらにルールを投げ返す。

 本当に舐められたものだと魔理沙が突っぱねようとするのを霊夢が冷静に宥める。

 

「無制限よ。物理攻撃あり、ただし致命傷になるような攻撃はなし」

「ちっ、いいさ。星の魔法を嫌という程見せてやるからな!

 おっと、お腹いっぱいになっても返品は受け付けないぜ・・・!」

 

 せめてものお返しと挑発的な態度をとるが、声に怒気がこもって必死に見えてしまう。

 

「では、開始の合図は私に任せていただこうか。これを弾いて床に落ちたらスタートだ。双方それで構わんな?」

 

 カリスマを取り戻したレミリアが掲げるのは一枚のコイン。

 心なしか目の下と鼻が赤い気がするがきっと気の所為。

 

 四人が首肯するのを確認し、レミリアが親指でコインを弾く。

 キィンと高い音。

 吸血鬼の力で弾かれたそれは肉眼では見づらいほど高く飛んでいく。

 比企谷はそのコインに目を向けることなく、咲夜に手を差し出す。

 

「んじゃ、『許可』を貰えるか?」

 

 いったい何のことだと魔理沙が目を向ける中、咲夜は自身の手を差し出し、繋ぎ、指を絡める。

 それを見た魔理沙が何をイチャついているんだと白い目を向けたところで、咲夜は声高らかに宣言する。

 

「えぇ、『許可』するわ!」

 

 宣言が終わると同時にコインが床に落ち、開戦の合図を鳴らした。

 

 

 




 ◇後書き◇

戦闘シーンは次回です。
すぐに投稿できると思います。

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