東方繋操録 〜紅魔館執事長比企谷八幡〜   作:黒初白終

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 他人の関係に手を出して

 時には壊し

 時には停滞させ

 時には違った形にまとめあげた


 そうして生まれたのがお前の【繋がりを操る程度の能力】なのだと、目の前の見た目幼い少女が言う


―――その力を使えば友人も恋人もお前の思うがままだな

 誰がそんなことに使うか

―――望むままに手に入るのに?

 俺が欲しいものは能力なんかじゃ手に入らない

―――ほう・・・? では何を望む?

 ・・・強制しない、強制されない、お互いが望み合うことで一緒に居る、そんな関係

―――つまりは?

 家族と呼べる身内

―――それはお前の力で手に入るだろう

 そうやって手に入れたものは、きっと俺が欲しいと思ったものじゃない

―――何故だ?

 そんなもの、偽物でしかない

 俺が欲しいのは、高価な偽物じゃない

 俺は、たとえ質素なモノでも、確かな本物が欲しい


―――クックック、そうか、そうか!

―――それなら私達がお前の本物になろう。

―――ようこそ紅魔館へ。


―――今日からここがお前の帰る家だ!




第四話:宴会

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 もう嫌だ

 

 ――シャキン

 

 やめてくれ

 

 ――プスリ、ツツーッ

 

 これ以上、私の身体を

 

 ――シャキン、シャキン

 

 

玩具(オモチャ)にしないでくれ・・・!

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 紅魔館の一室には目を背けたくなる惨状が拡がっていた。

 床に落ちた腕と足。

 ダルマ状態になった霧雨魔理沙が。

 しかし、魔理沙は死んでいない。

 魔理沙からも、床に落ちている手足の切断面からも、一滴の血さえ流れることは無い。

 

 一瞬の出来事だった。

 時間操作で背後に回った比企谷に、裁ち鋏で四肢を切られた。

 ただそれだけの事である。

 裁ち鋏は何の抵抗もなく魔理沙の四肢を豆腐のように断ち切った。

 

 それを理解した瞬間、魔理沙は絶叫した。

 喉を痛めるぞ、と比企谷に口を塞がれるまで叫び続けた。

 冷静になってくると痛みも感じないし、血も出ないことに気付いた。

 状況全てを飲み込むことはできないが、命に関わるようなことではないと分かり、息を吐いた。

 

 やがて、落ち着いた魔理沙を見て、比企谷が口を開く。

 

「この継接『恐怖のツギハギ世界』は耐久型行動阻害スペルだ。

 この裁ち鋏で切られると、その部分の概念上の繋がりだけが切り取られる。

 つまり、霧雨と手足は離れているだけで、血も神経も繋がっている。

 また、体の一部を切り取られるとその対象者は一定時間動けなくなると同時にあらゆる攻撃を受けなくなるから、まあ一方的にボコボコにされる心配はない」

 

 比企谷の言うことは小難しくて、魔理沙には理解しづらい。

 ただ、何となく思ったのはそのスペルカードがちゃんと成り立っているのか。

 耐久型なのに相手を無敵にしてどうするのだ。

 

 そんな疑問が顔に出ていたのか、それとも予想していたのか。 比企谷は饒舌に語り出す。

 

「最後に登場するのがこの縫い針。切り取った部位を全部持ち主に縫い付けると、無敵状態が解除され、動けるようになる。

 ――ただ、縫い付けるのは元の通り出なくていいんだが」

 

 霊夢じゃないけど、魔理沙の感が警鐘を鳴らす。

 よく分からないけど、これは危険なスペルだ。

 それもきっと『離別』のスペル以上に。

 

「さて、このスペルの耐久時間は宣言から五分。

 あと三分程だがどんな愉快な人形にしてやろうか」

 

 あぁ、なるほど。

 こいつ、きっと人間じゃない。

 悪魔の類だ。

 

 

「とりあえず、左右取り替えっこしようか」

 

 比企谷はとてもいい笑顔で宣言した。

 

 

「霊夢ぅ!助けてくれぇえ!!」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 魔理沙の絶叫がこちらにまで響き渡る。

 

「あら、向こうは楽しそうね」

 

 霊夢と咲夜の弾幕の撃ち合いは、両方全く当たる気配がない。

 霊夢には直感が。

 咲夜には時間操作がある。

 

「あー、めんどくさい。【浮いて】やろうかしら」

 

 霊夢は焦れったくなり、奥の手を使ってしまおうかと投げやりになる。

 以前の時には動きを止めることて倒して見せたけど、そのことを警戒してか咲夜はなかなか御札の罠にかかってくれない。

 やはりめんどくさい事になった。

 あのスキマ妖怪は帰ったら絶対に退治してやる。

 

「ふふ、魔理沙の援護に行かなくていいのかしら」

「あんたが邪魔してるんでしょうが・・・!」

 

 本当にいい性格になったと思う。

 きっと比企谷の影響だ。

 そうに違いない。

 

「あぁ、でももう手遅れみたいね」

 

 咲夜は「可愛らしいお人形さんね」と微笑む。

 

 その視線の先を辿ると魔理沙がいた。

 一見、何も変わっていないように見えるけど、関節の位置や指の向きがところどころ不自然で―――

 

「―――っ魔理沙!」

 

「どうよ。関節ごとに左右交互にしてある。

 体を動かすのが大変そうだ」

 

 まるで他人事のように言う比企谷。

 

 

「――ひぐっ、ぅ、も・・・やだ・・・」

 

 魔理沙はまともに歩くこともできないのか、少し進んでは倒れ、不格好に立ち上がり、また倒れを繰り返す。

 泣き腫らした魔理沙の顔を見て、霊夢が激昂する。

 

「あんた・・・魔理沙に何したのよ!」

 

「何って、スペルカードだよ。耐久型行動阻害スペル」

「時間が経てばちゃんと戻るから安心しなさい霊夢」

 

 魔理沙の様子を見ると、血は出ていない。痛がっている様子もなければ、指の先まで動くには動いている。

 

 ――ああ。

 霊夢は色々と理解した。

 おそらく、比企谷の【繋がりを操る程度の能力】は、二つ以上の物があれば物理的にも概念的にも、切り離したり、くっつけたり出来る。

 それが人と人との繋がりという目に見えないものであっても、その繋がりを断ち切り、繋ぎ、全く違うものに作り変えることも出来る。

 これは直感だが、きっと比企谷がその力を発揮するのはスペルカードルール無視の戦いだろう。

 スペルカードルールでは制限があるから精神的にくる戦術やスペルが多い。

 そして、問題の他人の能力を行使する力。それは―――

 

 

「―――あんた、能力との繋がりを操ってたのね?」

 

「・・・怖いよサクえもん。巫女ペディアがいじめてくるんだ」

「思ったよりバレるの早かったわね」

 

 

 比企谷は、咲夜の能力を自分に繋げたのである。

 あの時、比企谷と咲夜の言っていた『許可』とは、能力を共有することに対してのもの。

 ただ能力を借りるだけなら、比企谷と咲夜は時間操作を使った時、バラバラに速度が変わったはず。

 おそらく、二人の動きが気持ち悪いくらいに一緒だったのは、能力を共有した際の感覚に慣れるため。

 

 だが、霊夢にとって能力との繋がりを操れるということはあまり大した問題ではない。

 比企谷の言う【繋がり】は、不定形で曖昧なものほど形を変えやすい。

 人と人との関係などいい的である。

 揺らぎ安いものほど、不安定なものほど、繋がりの綻びがわかりやすく見て取れる。

 まだ、どういう原理でそんなことが出来ているのかは分からないが、出し惜しみをしていると何も出来ないうちにやられると悟った。

 もし、霊夢と比企谷の繋がりを操られたら終わりである。

 

 あまり使いたくはなかったが、仕方がない。

 

「・・・来るわよ」

「なるほど。これが噂の反則技か」

 

 

 静かに告げる。

 

 

「『夢想天生』」

 

 

 【浮く】。

 ふわふわと。

 何にもとらわれない。

 能力からも、力からも、ありとあらゆるものから宙に【浮く】。

 世界から博麗霊夢という存在が浮かび上がり、心なしか透けて見える。

 

 魔理沙は知らないかもしれない。

 弾幕ごっこにおいて最強だと謂われる霊夢だが、本当は遊びにおいてでしか、霊夢に勝つ方法はないのである。

 【境界を操る程度の能力】を持つ八雲紫ですら、『夢想天生』で宙に浮いた霊夢に手を出すことはできない。

 

 故に、スペル無制限のこのルールの中では、比企谷の能力がどれほど強力であろうと、霊夢に勝つのは―――

 

 

 

 

「―――ブレイク。本質『【繋がりを操る程度の能力】』」

 

 

 

 ―――不可能な、筈なのに。

 

 落ちていく。

 堕ちていく。

 

 干渉されるどころか、空を飛ぶことさえできずに。

 自分の中から何かが消えて、別のモノを埋め込まれたような感覚の中、床に叩き付けられ。

 

 

「甘い。甘いな。マックスコーヒーより甘い。練乳かよお前」

 

 ああ、もう。

 だから嫌だったのよ。

 面倒臭い。

 

「宙に浮けば干渉されないと思ったか?・・・甘いんだよ」

 

 最初から分かっていた。

 この男が嫌な予感の元凶で、相性最悪な相手だってことくらい。

 

「繋がりを持つモノの定義は分かるか?

 それは形を変えるものだ。

 お前は、常に同じ形で、常に夢想天生を使っているのか?」

 

 比企谷の能力の範囲内に存在することと、夢想天生に干渉することとは別の問題であるなど、口にはしない。

 こういった時、巫女の感はとても便利で、全貌が透けて見える。

 

 

「分かってるわよ・・・全部、全部分かってるわよ。

 あんたの能力は、私にも能力にも干渉出来て、宙に浮いているのはあくまで私であって、能力自体が浮いてるわけじゃない。

 ・・・・・・そういうことでしょ」

 

 霊夢を浮かせるの【主に空を飛ぶ程度の能力】だが、能力自体が浮いているわけではない。

 また、霊夢が【主に空を飛ぶ程度の能力】からも浮くことが出来るわけでもない。

 だから霊夢と能力との繋がりを断ち切ることは出来るということ。

 

 

「・・・なんだよ。気づいてなかったんなら、その服装からとって『いちごミルクかよ』ってバカにしたんだが」

 

 

 本当に好き勝手言ってくれる。

 思わず乾いた笑いがこぼれた。

 

 

「さて、種明かしするとさっき使ったスペルは指定した複数人の能力を入れ替える行動阻害スペルの一種だ。

 俺が指定したのは霧雨とお前。

 つまり、お前には霧雨の魔法を使う力があるわけだが、まだやるか?」

 

 

 本当に、どこまでも嫌味ったらしく、性格の悪い男である。

 初めて感じる完敗の悔しさは、なぜかスッキリとしたものだった。

 赤いカーペットの上に仰向けに倒れる。

 

「あー、ハイハイ。負けよ、負け。負けましたー」

 

「なんだこいつ。負けてからの方がウザイんだが」

「基本面倒臭がりなのよ。そういうものだと思った方が早いわ」

 

 そんな比企谷の顔を見て、さらにスッキリした。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 博麗神社。

 

 黒い霧は晴れたがその頃には夜になってしまい、この日は陽の光が幻想郷に射し込むことはなかった。

 今日も今日とて参拝客ゼロの博麗神社だが、大賑わいを見せていた。

 異変解決後のお約束、大宴会である。

 

「なんなのよ・・・結局どっちに転ぼうが宴会はするんじゃない」

「気にすんな霊夢。妖怪どもは宴会がしたいだけだからな」

 

 ただ酒飲めるから儲けもんだがな、とご機嫌そうに酒を煽る魔理沙を霊夢が睨む。

 宴会をするのはいいが、その後の片付けを誰がすると思っているのかだろうか。

 毎度、大量に出る汚れた皿や盃、ゴミなどを片付けるのは霊夢の役目である。

 咲夜が手伝ってくれた時などは結婚してもいいと思った。

 そんなこと知るかと、魔理沙は酒の肴を求めて妖怪達に絡みに行った。

 

 霊夢もなんだかんだ言いながら酒を飲んでいると、また新しい一団が階段を上ってやってきた。

 今回の異変の主犯、紅魔館の連中である。

 

「ご機嫌いかがかな霊夢」

「最悪だわ。八つ当たりであんたを退治したいくらい」

「クックック、まあこれも運命だったと諦めろ」

 

 霊夢の方にやってきたのはレミリアだけで、他の連中は挨拶回りに行っている。

 改めてするほどのことだろうか。

 

 訝しむ霊夢の様子を察して、レミリアが笑う。

 

「なあに、あの博麗の巫女を倒したのだ。紅魔館の主として自慢したくもなるさ」

「あー腹立つわ。ここは私の家なんだから追い出してやろうか」

「巫女の器の小ささが、そのまま参拝客の人数に繋がっているのだろうな」

「うるっさいわね。元はと言えばあんたら妖怪が集まるせいで人が寄り付かなくなってんのに」

 

 

「―――ごきげんよう霊夢」

 

「出たな元凶め・・・」

 

 そろそろ来るだろうと思っていたら本当に現れた。

「元凶だなんて酷いですわ」

「胡散臭いのよあんた」

 

 この妖怪を相手にするのは本当に疲れる。

 何を考えているか分からないし、裏で何をしているか分からない。

 袖で口元を隠し、クスクスと笑う。

 

「負けて修行する気にはなったかしら?」

「しないわ。面倒くさいし、したところであいつをどうにか出来るとは思えないわ」

「ククク、ああ。この先一度もハチマンには勝てないだろうな」

 

 ・・・比企谷八幡は確かに強かった。

 博麗霊夢が勝てないほどに。

 博麗霊夢が勝てないなら、誰が勝てるのだろうか。

 

 

「・・・ねぇ紫、レミリア。もし、あいつが幻想郷を脅かす存在になったらどうするの?」

「バカねぇ霊夢。あの子がそんなことすると思うのかしら」

「あれを見てもそんなことを思うか?」

 

 

 レミリアが指を指す方向にいたのは件の人物。

 その周りには氷精や大妖精、常闇の妖怪、瞳を閉じた覚妖怪、フランなどが集まっている。

 子どもに好かれやすいのだろうか。

 彼女らのこどもっぽい会話に付き合う比企谷の顔は酷く優しそうで―――

 

 

「―――ごめん。やっぱ聞かなかったことにして」

 

「ふふふ」

「ククク」

 

 きっとしばらく、幻想郷は平和である。

 

 ◇◆◇

 

 

「お兄様ー!」

 

 何度食らっても慣れないフランのタックルを何とか受け止めること数回。

 

「ヒキガヤはあんまり美味しくないのかー」

 

 ルーミアという人食い妖怪に手を齧られること数回。

 

「おいそこの変な目のやつ!あんたアタイにジュース入れてきなさい!」

「チ、チルノちゃ〜ん!」

 

 チルノにパシられ、それを宥める大妖精が可愛いこと数回。

 

「おにーさーん、私のこと見えてるんでしょー?無視は良くないなーって思うの」

 

 妹の方の覚妖怪に背中にまとわりつかれて数十分。

 

 

「・・・・・・流石に疲れた」

 

 子どもって元気だなーと見守っていたらいつの間にか彼女らの話を聞かされることになり、何を話してるかほとんど理解出来なかったが途中から俺を敵役として妖怪退治ごっこなるものをすることになったのだ。

 俺が敵役なのは一番妖怪っぽいからとかそんな理由じゃないよね?

 

 彼女らは遊び回って疲れたのか、はたまた酒を飲んで酔ったのか、転がって寝ている。

 唯一大妖精だけは起きていて、寝てしまった三人に布団を掛けてあげている。天使かよ。

 

 

「おーいヒキガヤ」

 

 天使を眺めているとお呼びがかかったので、まとわりついたまま寝てしまった覚妖怪を引っさげてそちらに向かう。

 声をかけたのは意外にも霧雨だった。

 

「どうした。言っておくが号泣してたのなんて見てないから。子どもかよとか思ってないから」

「いちいち達者な口だなオイ・・・!私は一生根に持ってやるからな!本当にトラウマなんだぞあのスペル!」

 

 ふむ・・・死ななければいいと思っていたが、刺激が強すぎたか。

 と言うより、やはり男に弾幕ごっこは合わないと俺は思う。

 綺麗な弾幕なんて全く思い浮かばないし、弾幕の綺麗さもあれだけどそれを撃つ人の可憐さも重要だと思うんだよ。

 油ギットギトのデブ、ヒゲ、臭そうの四拍子揃ったおっさんが華やかな弾幕の中心にいても「お前じゃない」となるに決まっている。

 

「次の異変解決には絶対に借り出してやるからな!人間なんだから嫌だとは言わせないぜ」

「嫌だ」

「言わせないって言ってんだろ!」

 

 何とからかいがいのあるやつだろうか。

 霧雨を見ているとあいつを思い出す。

 現世で―――――誰だっけ?

 ・・・あぁ、忘れたのか。

 ―――何を?何が?

 

「・・・・・・?」

「ん? おーいどうかしたのか?」

「・・・もう歳かな」

「何歳だよお前」

「十七」

「ああ、そりゃもう歳だな」

「そうか。隠居でもするかな」

「ああそうかい。・・・くく」

「・・・何を笑ってるんだか」

「いや何、大したことじゃないさ。

 異変の時にあれほど憎くて絶対に三回はぶっ殺してやるって思ってたからな」

「そこまでかよ」

「ああそこまでさ。あれほど惨めな気分になったのは初めてだったからな」

 

 霧雨は夜空の景色を酒に映しこませるように傾け、飲み干した。

 しかし、その中に月はなかったように思える。

 

「満月なのに月見酒をしないのか」

「ああ。月も嫌いじゃないが、私は星が好きなんだ」

 

 なるほど。星の魔法使いね。

 

「俺は太陽じゃなければ何でも」

「吸血鬼の従者だからか?」

「いや、暑いの苦手なんだよ」

「くく、そうかい。お前も飲むか?」

「俺未成年なんだが」

「幻想郷にそんなの関係ないぜ。私の方が年下だ」

「今すぐその酒を離せ」

 

 でも、まあ。郷に入っては郷に従えか。

 霧雨から酒を強奪し、口につけようとして―――

 

「―――いや」

 

 少しの間をおいて酒を返す。

 

「なんだ?結局飲まないのか?」

「まだ成長止まってないからな。お前も慎ましすぎる体になりたくないなら控えることだな」

「オイお前どこ見て言ってんだこら!」

 

 立ち上がり、叫ぶ霧雨を無視して歩き出す。

 

 目的の人物を見つけると背中の覚妖怪を床に下ろし、代わりにフランを抱えあげる。

 そして、ある集団の元へ。

 

 しばらく歩き、紅魔館の住人たちが集まる場所に腰を下ろす。

 

「あら、妹様は眠ってしまわれましたか」

「む・・・んー、起きてるよ」

 

 咲夜の声に反応してフランが目覚める。

 

「ハチマン、酒は飲んでいるか?」

「いや、飲んでない」

「もったいないですよハチマンさん。せっかくの宴会の席なのに」

「そうね。少しくらいハメを外してもいいと思うわ」

「パチュリー様も少しは飲まれていますし」

 

 みんなの酒の勧めに対する答え。

 宴会の熱に浮かされてか、それはスっと口から出た。

 

 

「初めての酒だから。紅魔館の皆と飲みたかった」

 

 すると、目の前の彼女らは信じられないものを見ような顔をした後、表情を緩める。

 レミリアからワインの入ったグラスを差し出され、それを受け取る。

 フランも目が覚めたのか自分の分のワインをグラスに注ぐとこちらに向けて差し出し、微笑む。

 彼女らと目を合わせると同じように微笑まれ、グラスを差し出される。

 

「では、巫女を打ち倒したかわいい従者たちに・・・か?」

 

 レミリアの試すような問に首を横に振る。

 そして、咲夜と一度目が合い、クスクス、くつくつと。

 

 

「「紅魔館のみんなに」」

 

 

 チン、と大宴会には相応しくない静かな音が鳴った。

 素敵な家族に囲まれて初めて飲む酒は、美味しくはなかった。

 だがまあ、悪くはなかった。

 

 




 ◇後書き◇

 一応、これで本編は終了となります。
 自分の書きたい話だったり、リクエストがあればそれを書いていきたいと思います。


 ◆読者の皆様のおかげでルーキー日刊ランキングの9位に乗りました。
 また、お気に入りが100件超えました。
 これからも応援よろしくお願いします。
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