東方繋操録 〜紅魔館執事長比企谷八幡〜   作:黒初白終

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 ここが紅魔館か。でかいな


 ―――止まりなさい、そこの妖怪


 誰が妖怪だ。人間だよ


 ―――あれ?確かに気の流れは人間のような


 この館の住人か?


 ―――そうですよ。私はここの門番です


 門番・・・・・・どうしたら通してくれるんだ


 ―――それは弾幕ごっこしかないでしょう


 弾幕ごっこ・・・?


 ―――・・・・・・あなたもしかして外来人ですか?


 外から来たって意味ならそうだ


 ―――困ったなぁ、この対応は聞かされてないのに

 ―――とりあえず、名前をお聞きしても?


 比企谷八幡だ


 ―――ヒキガヤさんですね?わかりました

 ―――それにしてもどうすれば・・・・・・


 ―――美鈴。その方はお嬢様のお客様よ

 ―――ここからは私が引き受けるわ

 ―――では、お客様。参りましょうか


 どこに?


 ―――紅魔館の主の元へお連れいたします

 ―――自己紹介が遅れました

 ―――私は紅魔館にてメイドをしております

 ―――十六夜咲夜と申します


 ―――以後お見知りおきを



第六話:白き穢れ

 ◇◆◇

 

 

「本ッ当に、ごめんなさいぃいい〜〜〜!!」

 

 

 先程までの「指一本でも動かしたら殺す」と言わんばかりの殺気とオーラはどこへ行ったのか。土下座をしてへにょりとうさ耳を地面に垂らす少女がそこに居た。

 

 名前と紅魔館に住んでいることを言ったあたりから「え、もしかして師匠のお客様?」「博麗の巫女を倒した妖怪?」などと呟きながら顔を青白くさせていき、藤原妹紅に連れられて来たことを告げたと同時にこの状態になった。妖怪じゃねえよ。

 そういえば藤原妹紅も目の前の少女も宴会の席には居なかったかと納得。

 しかし、こうして謝罪されているのだがさして彼女に対する恨みなどもなければ、ちゃんと会話する意志もあり間違ったことの謝罪もする辺りむしろ好印象である。上白沢慧音先生とは違って。先生とは違って。どこかの頭突き教師とは違って。

 脅迫紛いの身分調査も家族を思ってのことと考えると親近感さえ湧くほど。

 

 

「まあ、何だ。こっちも挙動不審だったと思うし、そんなにされちゃ罪悪感が湧くからとりあえず顔を上げてくれないか?」

 

「・・・・・・え?」

 

 

 土下座してうさ耳と服が土で汚れてしまったので胸ポケットに入れているハンカチを差し出したのだが、目の前の少女は顔を上げると何が起こったと首を傾げる。

 そして、こちらの顔とハンカチを数度視線で往復させると一瞬動きが止まり、状況を理解し飲み込み、目元が潤み―――決壊。

 

 ―――え?

 

 

「ちょ、」

 

「うぁぁあああん!!!!!!」

 

 

 号泣である。

 

 何、何なの?ハンカチ臭かったの?俺が嫌だったの?俺みたいなやつから慰められたことがショックだったの?

 いきなり号泣しだした少女にあたふたする。何か慰めの言葉をかけようとして思い浮かばず、それなら身振りで伝えようとしたのだが、結果口と手をわちゃわちゃさせるだけになった。

 どんだけ挙動不審だよ俺。

 そしてそんな間にも少女は泣き止むどころか声量が大きくなっていく。

 

「待って泣かないで本当にお願いだから。この絵面完全に俺犯罪者だから」

 

「うぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

「ちょ、社会的に殺しにきてるだろオイ」

 

 

 ダメだ、このままでは本当に犯罪者にされてしまう。

 

 その時、かさりと草が揺れる音がした。

 

 

「―――いいものを見たウサ♪」

 

 

 それは子どもの姿をした胡散臭い妖怪兎。

 その妖怪はウンウン頷くとぴょんぴょん跳ねるように永遠亭の中に入って―――

 

 

「―――させるか」

 

「ウサっ!?」

 

 

 能力で妖怪の両足を地面に縫い付ける。

 概念的に繋がってしまっているから、もしこの妖怪がとんでもない怪力だったとしてもどうしようもない。

 

 

「良かったな。大地がお前と離れたくないってよ」

 

「何て人間ウサ!これまで人間に幸せを届けてきた因幡の素兎になんてことをするウサ!!」

 

「へぇ、因幡の素兎とは大きく出るな。じゃあこの辺りの落とし穴は何だ?」

 

「し、知らないウサよ」

 

「そうか。一生の伴侶は大地がいいのか」

 

「・・・・・・ああ、はいはい。参りましたよ。だから早くこれ解いてほしいんだけど」

 

 

 ついに猫をかぶることすらやめた妖怪兎はヤレヤレと首を振る。

 

 

「あ~あ、せっかく鈴仙をからかうネタが手に入ったと思ったのになぁ」

 

「ハッ、因幡の素兎が聞いてあきれるな」

 

「あ、もしかして信じてない?」

 

 

 これには無言でうなずいて肯定する。

 

 因幡の素兎には、因幡に行くためにワニを騙し利用しようとして最後で詰めを誤りその身の皮を剥がれたという日本神話の有名な話がある。また、その追い討ちに、ヤガミヒメという女神に求婚するためのレースに参加していた八十柱の神に「皮を剥がれた傷が痛むなら身体に海水を塗りこんで風に当たっていれば良くなる」と出鱈目を吹き込まれ、傷を悪化させてしまう。そこに現れたオオナムチという神が他の神とは違う適切な治療法を教え、傷が治り、感謝した素兎が「ヤガミヒメはオオナムチ様を夫に選ぶでしょう」と予言をし、見事その通りとなる。オオナムチは後にオオクニヌシへと名前を変え、日本神話において様々なエピソードを残すことになった。

 この逸話から因幡の素兎は縁結びの神として祭り上げられることになる。

 

 目の前の妖怪兎が因幡の素兎本人であるなら、自分より明らかに高位な存在なわけだが。それに、幸せを届けてきたと言っても全く真逆のことをしているため全く信じることができない。

 

 

「なら、足元を見てみなよ」

 

「足元・・・?」

 

 

 言われて目を向けた足下は緑の絨毯。自分の足下だけではなく辺り一帯に大量のクローバーが敷き詰められていて―――

 

 

「・・・・・・おいおい、勘弁してくれよ」

 

 

 ―――自分の足下のそれらだけが全て四つの葉を持っていた。

 

 

「私は因幡てゐ。能力は【人間を幸運にする程度の能力】。四つ葉のクローバーなんて、十万分の一の確率もあるんだからレアでも何でもないけどね。

 それで、どう? 信じてくれた?」

 

「・・・ああ、それはもう信じたさ」

 

 

 ここまでされて信じない訳にはいかないだろう。まったく、簡単に言ってくれる。十万分の一というのがどれだけの数字かわかっているのだろうか。数学についてはよくわからんが、おそらくサイコロを六つ振って全部同じ目がでる確率より低いだろう。

 

 しかし、幻想郷は忘れら去られたものたちの集う場所だと聞いていたが、なかなかどうして有名な妖怪や神なども結構いるものだ。

 因幡の素兎なんかは特にそうだが、聞いた話では酒呑童子や茨木童子、諏訪大戦の二柱までいるのだとか。レミリアもヴラド公が祖先らしいし、つまりはフランもそういうわけで。

 

 ・・・・・・忘れ去られたのって俺だけじゃないのかと思い始めてきた。

 

 

「あ、あのぉ」

 

 

 陰鬱な思考に沈んでしまいそうになったところ、ようやく泣き止んだ―――鈴仙と言ったか。が、遠慮がちにおずおずと手をあげる。

 

 

「すいません、先程はご迷惑をお掛けしました。あれほど優しく接してくれたのは最近の記憶にはなくて・・・・・・」

 

 

 ・・・・・・何かとても悲しいことを聞いた気がするがきっと気の所為。

 

 

「てゐは悪戯ばっかりしてくるし姫様は無茶振りばっかりするし師匠は色々変なセンスしてるし実験台にしてくるし」

 

 

 ああ、これはあれだ。

 

 

「・・・・・・まあ、その、何だ。なんかすまん」

 

「いえいえ、あなたに悪いところなんてどこにもないじゃないですかぁ。悪いのは全部てゐと姫さまと師匠、そして無能な私なんですからぁウフフフフ」

 

「ちょ、鈴仙!痛い痛い痛いってば!」

 

 

 何か地雷のようなまずい何かを踏み抜いてしまったか。溜まりに溜まった感情をぶつけるように因幡の耳をギリギリと引っ張る。何やら悲鳴を上げているが俺には関係の無いことだ。

 しかし、このままではいつまで経っても話が進まない。誰かこの事態を収めてはくれないだろうか。

 そう思っていた時、

 

 カララ・・・

 

 乾いた戸が開く音がした。

 

 

「あなたが噂の外来人さんかしら?」

 

 

 透き通った、声を聴いた。

 魔法でもかかっているのだろうか。

 甘ったるく耳にまとわりつくような感覚。

 一度聴いてしまったらもう一度、と望まずにはいられない。麻薬のような甘い声。

 そして引き寄せられるようにその声の主の方に視線を向ける。

 

 

「――――――」

 

 

 声が、出なかった。

 息を呑む。

 究極の美を体現したような存在がそこにいて、思わず感嘆のため息が出てしまいそうになった。

 一目見た瞬間その存在全てが欲しいと、下卑た思考が欲望のままソレを掴み取ろうと手を伸ばし―――悪寒。

 

 

「失礼します」

 

 

 そのまま振り下ろし、繋がりを断ち切った。

 

 実際に手を伸ばしていた訳では無いが、いきなり謝礼を述べたこちらのことを訝しむ者がいた。鈴仙とてゐがそうで、理解出来たのはたった今永遠亭から出てきた三人。

 

 

「あら、不思議ね。あなたは男のはずだけど」

 

「ハン、お前に魅力がないってことだろ」

 

「やっぱり面白い能力を持っているようね」

 

 

 一人は真っ白な藤原妹紅。あとの二人は長い黒髪の美人と、赤と青の奇抜な服を着ていて咲夜のような銀髪の人。

 三人とも全く違う姿をしているけど、俺の目には共通の何かが見えていた。

 

 

「あなた男よね?男だったら私を見てまともにいられる筈はないんだけど」

 

「ええ、私は人間で、男ですよ。ただ、あなたのソレは呪いのように感じましたので、繋がりを断ち切らせて頂きました」

 

「ふぅん。あなた、『目がいい』のね」

 

 

 向こうが察してきたところで、こちらも確認するように疑問を口にする。

 

 

「失礼ですが、貴方達三人に、死はありますか?」

 

「―――」

 

 

 核心に触れたと思う。三人が息を飲んだまま何も答えないのが何よりの証拠。

 思えば最初からおかしかった。藤原妹紅の肉体に概念的な繋がりがなかったこと、レミリアが四肢を断ち切っても無駄だと言ったこと。

 

 

「それが頼みたいこと、ですね?」

 

「・・・・・・ええ、そうよ」

 

 

 藤原妹紅が真っ白に見えたように、意識して繋がりを見てみればこの人も多少は違えど同じように真っ白に見える。

 

 

「私は蓬莱山輝夜。こっちが、」

 

「八意永琳よ。薬師をしているわ。ちなみにその娘はうどんげ。鈴仙・優曇華院・イナバよ」

 

 

 レミリアが運命と言ったことはそういうことで、つまりは俺にしかどうしようもなく、だからこそ俺の思うがままに行動しろと言ったのだ。

 たが―――ああ、やはりダメだ。

 

 

「私たちは、共通してあることに悩んでいるの」

 

「一度は諦めもしたけど、どうにかなるなら話は別だ」

 

 

 藤原妹紅と蓬莱山輝夜。

 二人ともこんなにも美しいというのに。

 

 

「どうか、私たちのお願いを聞いてくれないかしら」

 

 

 どうしてこんなにも穢れて見えてしまうのだろうか。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「あの、ど、どうぞ。・・・それでは失礼します」

 

 

 永遠亭のとある一室。鈴仙が怯えながらも運んできたのは四人分のお茶。それを置くと直ぐに部屋から出ていった。

 こちらの向かい側には藤原妹紅、蓬莱山輝夜、八意永琳が座っていてこの場には謎の緊張感が漂っている。

 普段からそうだろうに、今も心労をかけてしまっているようで鈴仙には本当に申し訳なく思う。

 

 

「さて、本題に入りましょうか」

 

 

 時間も無限にあるというわけではない。レミリアからは藤原妹紅の頼みを聞くよう言われてはいるが、俺の最優先事項は紅魔館のみんなである。無駄にできる時間などない。

 

 

「改めて聞きます。貴方達の私へのお願い・・・頼み事は何ですか?」

 

 

 はぐらかすことは許さないと、自身の口から出させることで事実を受け止めろと責め立てるように問いかける。

 藤原妹紅は口に出すのは躊躇われるようで、苦い顔をしながら口を噤んだ。

 しかし、他二人はそうでもなかったようで直ぐに答えた。

 

 

「あなたへのお願いは、あなたのその能力で私たちの不老不死の体質とのつながりを断ち切ってほしいということ」

 

「【繋がりを操る程度の能力】だと聞いたわ。できるのでしょう?」

 

「ええ、結論から言えばできますよ」

 

「っ、本当か!?」

 

「ただし、です。それをどうするか決めるために、私からあなたがたにいくつか聞きたいことがあります」

 

 

 【繋がりを操る程度の能力】は、使うときに意識的に制限をかけてはいるが、その実、許可を取る必要もない。また、能力に干渉することもできるが、人の体質や感情、狂気、その人自身の本質でさえ操ることができてしまう。

 

 

「まずは八意永琳様」

 

「かたいわね。永琳でいいわ」

 

「では八意様。貴方は本当に不老不死をどうにかしてほしいと思っているのですか?」

 

「―――」

 

 

 八意永琳が警戒心をあらわにする。だが、それは肯定しているようなもの。

 

 

「失礼ながらあなたの繋がりを調べさせていただきました。あなただけ他のお二人とは違い、繋がりが複雑で理解できないものも多かった。ただ、一つ思ったことがあります。

 

 ―――貴方は、古くからいる神では?」

 

「・・・・・・どうしてそう思うのかしら」

 

「八意。そんな名前の神がいたことを思い出しました」

 

「そう。博識なのね」

 

「いえ、昔の苦い記憶ですよ」

 

 

 本当に思うようにはいかないもので、現世での人との繋がりやそこからなる思い出は消えたというのに、知識はなくならなかった。厨二病という単語も覚えていて、神々のことについて調べた経緯も覚えている。恥ずかしい限りだ。

 彼女は否定も肯定もせず目を伏せ、警戒心を解いてふっと微笑む。

 

 

「私はただ、輝夜とともにいる。それだけよ」

 

「そうですか。貴方のことについてはわかりました」

 

 同じ従者として、理解出来た。主とともに。そこに善悪など関係ない。

 そう、この人は問題ではない。この人はほかの二人とは違って真っ白には見えなかったし、穢く見えることもなかった。

 しかし、彼女らは違う。

 

 

「次は蓬莱山輝夜様、藤原妹紅様。お二人はなよ竹のかぐや姫とその関係者と考えてよろしいですか?」

 

「ええ、私はそのかぐや姫よ。それで、もこたんは求婚者の内の一人の娘」

 

「おい、もこたんって呼ぶな」

 

 

 事実は小説より奇なりとは言うが、ここまで来ては驚くこともなくなってしまった。

 まさか自分がかぐや姫と対面することになるとは思いもしなかったが、今まで出会った神や妖怪が強烈だったので、そうなのか程度のことにしか思えない。

 藤原妹紅についても、親がかぐや姫に求婚したうちの一人なら、おそらく藤原不比等の娘。藤原性で限定するならそれくらいしか思い浮かばない。

 

 かぐや姫関連、蓬莱山の名前から察するに、この三人が不老不死なのは蓬莱の薬によるもの。八意永琳が不老不死になる必要があったかどうかは疑問だが、彼女からは自分と同じ従者の雰囲気を感じる。自分の命はどこまでも主と共に、という考えはよく理解できる。

 気になるのは、なぜ藤原妹紅が蓬莱の薬を飲んでいるのか。自分の知識の中には彼女は存在していなかったし、そもそも蓬莱の薬は焼かれてなくなったはず。

 どうも自分の知っている話と違う部分が多すぎる。そもそもかぐや姫は月に帰ったはずなのだが。

 

 ・・・・・・。

 

 

「・・・聞きたいことが山ほどあるのですが、早く帰りたいのでソレはまた次の機会にでもお願いします」

 

「ふふ、あなた正直者なのね」

 

「ええ、私はいつでも自分の欲望に忠実ですよ」

 

「永遠亭に住む気はないかしら。うどんげの反応には飽きてきちゃって」

 

「・・・・・・あの、優しくしてあげてくださいね。あと、絶対に行きませんから」

 

 

 絶対に頷いたらダメなやつだ。鈴仙の二の舞になる。

 悪い、鈴仙。俺は妹の世話をしなければならないんだ。今しばらく実験台になっていてくれ。

 

 っと、話が逸れてしまった。

 

 

「まず、先に説明しておきますと、私の【繋がりを操る程度の能力】は二者間以上の繋がりを物理的にも概念的にも、理解した範囲内なら断ち切ったり、くっつけたり、形を変えることもできます。

 ですが、私は前提として不変である存在そのものに干渉することはできません。そのため、不老不死というものを別の形に変えることや、元の蓬莱の薬の成分に戻すこともできません」

 

 

 繋がりがあるものとは形を変えるもの。

 不老不死という変わらないことに重きを置いたもの自体に干渉することはできない。

 不死には様々な形がある。ただ死なないだけのものや、死んでも復活するもの。害となるものすべてを受け付けないもの。

 その中で不老不死は、老いという概念がない。老いないということは成長しない、時の流れに逆らう、または操る。理の外にいる、不変であることなどを示す。

 

 不老不死は元は能力などではなく、その人の本質と言っていい。

 しかし、幻想郷において、人の本質と能力が同一であることはよくあること。

 かくいう自分もそうだが、博麗霊夢なども当てはまる。彼女の場合は本質が先か能力が先かは不明だが。

 

 

「私は貴方達の不老不死そのものには干渉できませんが、その二者間の繋がりには干渉できます。今回の場合はこの繋がりを断ち切るわけですが・・・」

 

「・・・何か、問題があるのか」

 

 

 大ありだ。今回の一番の問題点はそこだ。

 

 

「私に依頼してきたということは、自分の意志とは無関係に老いることも死ぬこともできないということですね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「自分の意志と関係なしに効果を発動してしまうもの。それは基本的に呪いです。呪いは、人間なら人間。妖怪なら妖怪。神なら神。同じ種族間でしか付け替えることができません。

 つまり、元々人間であるお二人は、誰か他の人間に呪いを押し付けなければなりません」

 

 

 それでもやるのか、と。

 そう問いかけて二人を試す。

 

 そして、二人は答えた。

 

 

「ええ、それでいいからお願いするわ」

 

「・・・・・・私も、それで頼む」

 

 

 一人は迷いながら、一人は悪びれる様子もなく、確かにそう口にした。

 

 ―――なるほど。なら、これは最終警告だ。

 

 

「では、一体誰を?」

 

「さあ?人里から適当に選べばいいんじゃないかしら」

「・・・・・・妖怪の賢者に、外から連れてきて貰えば・・・」

 

 

 違和感の正体が今わかった。

 真っ白で綺麗なはずなのに、穢れて見えていた理由。

 

 レミリアからは俺の思うがままにと言われている。

 ならば、俺の好きにさせてもらおう。

 

 

「お二人の考えはわかりました。ええ、よくわかりましたとも。理解はしがたいですがね。

 その上で言わせてもらいます。

 

 

 ―――俺は絶対にアンタらのために力を使わない」

 

 

 自分が執事の身であることなど関係ない。

 今は、ただただ目の前の二人が気に食わなかった。

 

 

 

 




 ◇後書き◇


次で不死の呪い編は終わりとなります。

お気に入りが400件を突破したのと、UAが1万回突破したこと、また一瞬ではありますが日間ランキングの方にものったこと、皆様に感謝します。

評価や感想をくださった方、相談にのってくださった方、本当に有難うございます。

最初は本編だけで終わらせるつもりでしたが、なんだかんだ長く続きそうです。

また、評価や感想をくださると嬉しいです。

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