夢幻震わす、一閃の電   作:Red October

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はじめましての方ははじめまして。そうでない方は…お久しぶりです、とでもご挨拶させていただきます。

天クラ…「天空のクラフトフリート」が、かのMF文庫Jとコラボしたのを機に、ひとつこのゲームで二次創作を書いてみようという気になって、執筆に及びました。

本作は「天空のクラフトフリート」のコンテンツの1つ、「夢幻討伐戦」をモデルとしております。予定としては15話前後くらいでの連載を考えており、あまり大きな作品とはならない…と思います。

本作を機に、少しでも多くの方がこの「天空のクラフトフリート」というゲームを知ってくだされば幸いです。まして本作を読んで、冒険者として天クラを始めてくださった、というのであれば、これ以上ない光栄であります。


他2作品の投稿や、リアル事情の忙しさ等の理由から、不定期更新になる可能性大でありますが、エタることのないよう努めますので、どうか拙作をよろしくお願いいたします。


第1話 青空に、黒雲流れ来て

 地球を遠く離れた、はるか彼方のとある星。

 そこには、変わった光景が広がっていた。

 

 

 青い空に浮かぶ、白い雲。これだけなら、地球と大して変わらない。

 しかし、空に浮いているのは、雲だけではなかった。

 

 島が浮いているのだ。理由は不明だが、とにかく島が空に浮かんでいる。

 なぜ岩ではなく、島と言い切れるか?

 

 それは、まず第一に大きさである。岩というにはあまりにも大きい。

 第二に、その様子である。何もない荒れ地ばかりならまだしも、雪を頂く山がそびえていたり、緑の植物…驚くべきことに、地球と大して変わらないような植生が広がる…が森のように広がっていたり、水を湛えた巨大な湖があったりするあたり、どうしても岩とは言えない。

 

 以上の理由から、どうしても岩とは言えず、島と言いきるほかはないのである。

 

 

 さらに、雲や浮島のはるか下は、どこまでも青く澄みわたっている。青いのだが、その下に海があるわけではない。というより、この世界の常識として、「海などというものは、かつてはこの世界にあったものの、今では消滅し、絵本の中のみの存在となっている」というものがあるほどだ。

 なぜ青いのかは、わからない。そして、そのはるか下に何があるのかもわかっていない。

 

 

 そして、その浮島には、生命体が住んでいた。

 地球にいるような人間(ヒューマン)は勿論、言葉を発するネコや、命を吹き込んだ生命体のように動く人形…

 そうした常識離れしたものも、住んでいたのである。

 

 

 それらの住人たちは、この世界を、「La Mondo(ラモンド)」と呼称していた。

 

 

 ただ、こうした生命体が生存している空間は、ラモンドの星全体で見ると、ほんの1割程度しかない部分である。それ以外は、全くわからないのだ。

 島が浮いているわけでもなし、ただただ青い空がどこまでも続くのみ。であれば、その先に行ってみたくなるのが人の性。

 しかし、これまでにも浮島のはるか下の空間や、地平…いや、この世界は空が大半なのだから、地平ではなく空平というべきか…の先を探検せんと、幾多の冒険者が旅立った。

 だが、そうした勇敢なる冒険者たちは、その全員が帰らぬ者となっていた。原理はわからないが、ある程度高度を下げていったり、空平に向かって進んでいったりすると、遅かれ早かれ、最終的には必ず通信が途絶して、消息を絶ってしまうのである。

 このため、世界の空平の端のほうは「エンド」と呼ばれるようになり、また空のある程度の高度より下には行けないことから、その高度一帯は「空の底」と呼ばれるようになった。

 

 こうしたことから、ラモンドの住人たちは、箱庭とでもいうような狭い世界の中で、ささやかな、しかし確かな営みをもって生きていた。

 

 

 これは、そのラモンドの一角で起きた、宇宙全体の歴史で見るとささやかな、しかしラモンドの星とその住人たちにとっては、その運命を決するかもしれない、重大な戦いの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラモンド世界の西側にある、ラモンド世界で2番目に大きい浮島「リリバット」。

 そこに建てられた、とある建物の一室に、何かを叩いたような音と一緒に少女の声が響き渡った。

 

「どういうことじゃ!ラルフォード!」

 

 バン!という大きな音とともに、執務机を叩いたのは、ラモンドの世界に存在する二大国家の片割れ…「共和国」とのみ呼称される国…の国家元首、アイリス。

 

 国家元首と聞くと、何やら高貴な出の、どこかの貴族の令嬢のような「お嬢様」然とした成人女性を連想するかもしれない…が、彼女の見た目をまとめると「ロリ」の一言に尽きる。

 金色の長い髪をツインテールに分け、明るい茶色の瞳を持ち、赤いマントをはおって執務するその姿だけみれば、なるほど国家元首も納得の貫禄がある。しかし!

 

 背の低さと童顔(と、ついでにある部分も大きいとは言えない。どことは言わないが)のせいで、貫禄がすべて台無しになっているのである。

 

「は、先ほど入った報告によりますと…」

 

 先ほど彼女にラルフォードと呼ばれた男が説明を行おうとする。

 彼は、アイリスとは対照的に、黒服に黒マントをはおった銀髪の中年のオッサン、という格好である。左目につけた眼帯がなんともシブい。

 そしてその見た目に違わず、アイリスはもとより、彼女の父親が元首であった時からこの共和国の政治を支えている、ベテランである。そして今、彼はアイリスのお目付け役だった。

 

「報告はさっきから聞いておる!空賊が我が共和国内に侵入したのじゃろ!」

 

 アイリスは焦っていた。それもそのはず、共和国は現在、空賊による侵攻を受けていたのである。

 

 空賊とは、読んで字の如く、この世界の空を飛び回っている武装集団である。各々テリトリーを持っていて…一部例外もいるが…、それを犯したり、手を出したりすると迎撃に出てくる。逆にいうと、テリトリーさえ犯さなければ、基本的には何もしてこない。一部の連中を除いては、基本的にはそういうもののはずだが…

 だが、共和国にだって軍隊と武装飛行艇くらいある。本来であれば、規模や実力にもよるが空賊など蹴散らせるはず。

 

 が、しかし。

 

 その空賊が出鱈目に強く、警備隊はおろか増援に差し向けた艦隊もあっさり返り討ちにされていたのである。

 

「はい、ですがそれに関して新たな情報が手に入りました。先程から交戦中の空賊は、かの空賊団『カドモス』に違いないかと…」

「そんな名は我も知っておる!だがそんな空賊、我は文献でしか見たことがないぞ!」

「私も、かつて噂に聞いた程度ですね…。最強の防御力を誇り、決して落ちることなく、当時間違いなく最強を名乗るに相応しい空賊の一角であったかと…」

「噂に聞くだけでもデタラメすぎる空賊じゃ!何十年も前に消えた空賊ではないのか!!」

「私もにわかには信じがたいですが…。しかし、送られてきた映像に映る、あの独特の旗艦は…」

 

 空賊団カドモス、かつてこの世界にいた空賊団である。その強さは、ラルフォードの言葉の通り。

 だが、アイリスの言うとおり、そいつらは数十年前に、当時のリーダーが仲間の裏切りに遭って撃墜され、それを機に消滅したはずだった。

 

 それが何故、今になって突然現れた?

 その目的は?

 

 …答えは、わからない。

 

 だが、たった1つ、確実に言えることがあった。

 

 

 

 

 

 その空賊は、順調に共和国本国に向けて、進行してきているらしい。

 しかも、軍の配備が薄い所を的確に突いている。

 

 このままでは、本国が攻撃を受ける。

 

 

 

 

 

「平和ボケをしているつもりはなかったのだがな…!…全土に通達しろ…!」

「はっ。カドモスを賞金首とし、軍はもとより、空賊、冒険者を問わず、彼らを壊滅させた者には褒賞を与えることにしましょう」

「っ…!」

 

 ギリッ、とアイリスの奥歯が歯ぎしりの音を立てる。

 こんな宣告はすなわち、国家の防衛力の無さを宣言するようなものだ。

 

 …だが、背に腹は代えられない。

 

 国家元首として、恥を捨てた決断であった。

 

 

 宣告を出すよう命じると、アイリスは机からスッと立ち上がり、壁際にかけられた鎧兜のほうへ向かった。意図を察し、ラルフォードは素早く、アイリスが鎧兜を着る手伝いをする。

 銀色に輝く防具を装備し、剣を手にすると、アイリスは赤いマントを翻し、歩き出した。後に続くラルフォード。

 

「騎士団を集めよ!我も出るぞ!」

「はっ!」

 

 執務室を後にするアイリスとラルフォード。

 が、執務室を出た途端、人影と出くわした。

 それは、スーツに似た紺色の服装の、30代らしい見た目の男。

 

「お主は…」

「アイリス閣下、話はすべてわかってますよ。我が社の部下たちからも報告があったので」

 

 この事態だというのに、緊張感のまるで感じられない、飄々とした男の声。

 だが、その男こそ、軍を抜きにすれば共和国でも最も実戦経験があり、かつ最も優れた装備を持つ護衛会社の創始者だった。

 その男には、アイリスも全幅の信頼を置いている(軍を除く)。

 

「ならば、お主らも手伝え!」

「そうくると思ってましたよ。配置はいずこに?」

「お主らには、最終防衛ラインを任せる!」

「やれやれ…そりゃまた責任重大ですな」

 

 その男の名は、フォル。

 共和国に籍を置く、民間の飛行船団護衛会社「フリゲート護送社」の創始者となった3人兄妹の長男。

 

「軍には任せないのですか?最終防衛ラインは、突破されるとあとがないという点で、非常に重要だと思うのですが」

「それはそうじゃ。じゃが、軍には共和国首都の手前で相手を撃滅してもらう。お主らには、万が一軍がやられた場合の後備えを頼みたい」

「ハァ…わかりました。わが社の保有するすべての人員と、すべての飛行艇を動員して、共和国防衛にあたりましょう」

「…頼んだぞ」

 

 言い残して去っていくアイリス。去り際に素早く一礼し、アイリスの後を追うラルフォード。

 2人の背に一礼すると、フォルは踵を返し、歩き出した。

 が、その足は2歩ほど歩いたところで、早くも止まる。

 

「…さて、ああ言った以上、動かねばな。だが…」

 

 口に手をあて、フォルは呟く。

 彼が懸念していたのは、動かせる艦の数だった。

 決して少ないわけではない。むしろ、ある手を使えば、使える艦は倍以上に増えるし、装備も強力になる。

 

 …だが、その手を使えば、これまでひた隠しに隠してきた顔が…フリゲート護送社の裏の顔が…間違いなく、明るみに出てしまう………

 

「いや、今悩んでも仕方ねえな。とりあえず、帰って兄弟に相談だ。今の護送社は、アイツに任せてるし」

 

 首を横に振って呟くと、彼は足早に歩き出した。

 赤い絨毯が敷かれた廊下、それは共和国の政治中枢なだけあって、かなり複雑なのだが、そこを迷うこともなく、慣れた足取りで歩いていく。

 5分も歩いた頃には、彼は門をくぐり抜け、共和国の元首府を後にしていた。

 

 元首府の城下町だけに、街の喧騒は絶え間ない。

 木と石をメインに作られた家並みは整然と立ち並び、赤や黄色に塗られた壁は、無機質ながらもどこか暖かみを帯びているように思える。

 空には飛行艇が飛び交い、品物を売る商人の客引きの声が耳朶に響く。

 商店の店先には色とりどりの果物や野菜、あるいは花束が並び、その鮮やかな色が目に映える。

 そんな中を、フォルは飛行艇の発着所を目指して、足早に歩き続けていた。




まだ海のものとも山のものともつきませんが、重ね重ね拙作をよろしくお願いいたします。
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