夢幻震わす、一閃の電   作:Red October

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MF文庫Jと天空のクラフトフリートのコラボ第二弾まで、あと約1週間…ということで、第2話、投稿します!
この作品に「転生」のタグを付けていいのか、ちょっと悩んでます…。それでは、どうぞ!


第2話 雲間に、電気は溜まりて

 共和国本国の首都がある浮島・リリバット。

 そこから、1隻の飛行艇が飛び立った。

 全長3メートル程度、1人乗りのその小型艇は、翼を広げて青い空をかけ、リリバットの隣に浮かぶちょっとした規模の浮島…フリゲート護送社の本社の建物がある最重要拠点、セイラン島へと向かっていく。

 

 やがて、飛行艇は島の中央南岸に設けられたドックへと滑り込むように入っていった。その中には、全長50メートル程度の武装した飛行艇が5隻ほど停泊し、整備を受けている。

 飛行艇は、それらの隣のランプウェイに着陸した。

 そこから降りてきたのは、他でもないフォルである。

 

 飛行艇を整備士たちに任せ、フォルはフリゲート護送社本社の建物、その一角の社長室へとまっすぐ歩いていく。

 目的の部屋に着くと、ノックもせずにドアを引き開けた。

 

「誰だ!?…って、なんだアニキか。脅かすなよ」

 

 机の向こうから声をかけてきたのは、黒髪中肉中背の20代後半の見た目の青年。フォルの弟にしてフリゲート護送社創始者兼現社長、ダットだ。兄弟であるせいか、2人は顔立ちがよく似ている。たまに間違えられるレベルだ。

 

「すまんな。それはそうと、報告は聞いてるか?」

 

 言いながらフォルはつかつかと歩いていき、社長室傍らの応接セットの机に腰かけた。もちろん、本来なら許されるわけのない無礼である。

 

「ああ。例のカドモスとかいう突然湧いた空賊か?」

「そう。今しがた、アイリス閣下から、それを迎撃するよう言われてしまってな」

「ありゃま。まあ、うちの社なら、言われるだろうな」

「それも、俺らの担当は最終防衛ラインだとさ」

「ずいぶん信頼されたもんだ。…ん?てことは、俺ら負けたら終わりじゃねえか!」

「そう。だから、念には念を入れて、『あの手』を使おうかどうか、悩んでる」

 

「『あの手』?まさか、俺らの真の姿を!?」

 

「やむを得ないんじゃねえか?それ使えば、動員できる艦隊総数は倍以上になるんだし、相手が相手だし」

「………」

「ともあれ、今の社長はお前だ。決定権はお前にある。どうする?」

「…軽々しくは決められん。会議にかけてからでいいか?」

「会議で踊るなよ。時間がねえから」

「わかってる」

 

 フォルが言ったのは、「会議は踊る、されど進まず」なんてことにならないようにしろよ、という意味である。

 

「あらアニキ、お帰り」

「おう、フィアか。ただいま」

 

 その時、お茶を持ったフィア…フォルの妹にしてダットの姉…が社長室に入ってきた。

 この女性も、フォル、ダットと共に「フリゲート護送社」の創始者の1人である。そして雰囲気がどことなく2人に似ている。同じ腹から生まれた者の運命か。

 

「カドモスって奴らへの対処、どうするの?色々な噂を聞いたんだけど」

「アイリス閣下から最終防衛ラインを任されちまった。こうなった以上、万全を期すために『あの手』を使うしきゃねえかと思ってんだが…」

「『あの手』かぁ。できれば使いたくないけどねぇ」

 

 

 3人のいう「あの手」とは何か。

 それは、こういうことである。

 

 

 

 この世界にいる「空賊」なるものの存在については、既にお伝えしたと思う。

 その空賊には、ほとんど名を知られないような弱いものもあれば、帝国にまでその名を轟かすほど強力なものもいた。

 その中でも、ひときわ有名で、強力で、そして正体が謎な空賊がいた。

 

 その名は、空賊団「震電」。

 

 「最果ての空賊団」や「海歌」、「グランディリア」などの名だたる空賊団に並ぶ、もしくはそれらすら超えるほどの実力と艦隊を持ち合わせると噂され、しかしその一方で存在目的やアジトの所在地などが一切わかっていない、謎の空賊団。

 

 幾多の冒険者や空賊が、その正体を探ろうと奮闘するも、有力な手がかりの見つからない謎多き空賊団。

 

 

 

 実はその正体こそ、この「フリゲート護送社」なのである。

 フォルのいう「あの手」とは、フリゲート護送社=震電 であることを明かすことであった。

 

 

「これは流石に、社員たちの総意がないと厳しくない?」

「それはそうだ。だがら、会議で踊るなよって言ってるんだ」

「踊りゃしないよ。ったく、すぐ歴史ネタを突っ込むんだから…」

 

 フォルは歴史好きで、何かあるとすぐに歴史ネタを突っ込みたがるのである。ちなみに、このネタの元は、フランスの政治家「タレーラン」あたりを調べていただければ、直ちにおわかりいただけるだろう。

 

「ここでぐずぐず言ってても仕方ない、会議やるぞ。今ここにいる幹部全員を緊急召集しろ。あと、アレもつなげろ。ここに来るまでの時間がない」

 

 ダットが立ち上がった。

 

「ああ、魔法を使ったモニター通信か。オーケー」

 

 フォルとフィアも後に続く。彼らは、今の地球でいうところのSky○eのようなものを、準備しようとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そして、長いようで短く、短いようで長い30分の会議の末に……結論が出た。

 

 

 

 

 

「それでは…出席者全員の総意を以て、我がフリゲート護送社の正体を明かすことをここに決定する!」

 

 

 これにより、合わせて迎撃の方針も固まってきた。

 

 

 

 今のところ、フリゲート護送社が「公務(護衛任務のことをこう呼称している)」で使用している飛行艇には3種類ある。

 

 

1、大型飛行艇

全長100~120メートル程で、軍艦に匹敵する巨体と攻撃力、そして防御力を持つ飛行艇。搭載主砲の口径は8インチ(20.3㎝)。ただし代償として速度は遅め、そして燃費はかなり悪い。当然ながら護衛コストはかなり高く、民間飛行艇の護衛で使われることはまずない。搭乗人数は約100~150名くらい。保有数はわずか2隻。逆に言うと、軍艦レベルの船を自前で2隻保有できるほど、フリゲート護送社の財力は凄まじい。

 

2、中型飛行艇

全長50~100メートル程。大型飛行艇のスペックダウン型といったところ。速度・燃費は向上した。搭載主砲は5~6インチ(概ね15.5㎝以下)、速射性は大型飛行艇の主砲よりこっちのほうが良い。威力は低い分、それを単位時間あたりの発射弾数で補う感じ。護衛コストはそこそこ、これなら民間企業などでも手が届く。搭乗人数は約20~80名。保有数は20隻、そのうち今すぐ飛ばせるのは12隻。

 

3、小型飛行艇

全長10~50メートル程。このレベルになると、護衛にあたるどころか、もはや乗員付きで貸し出しているような状態。主砲は最大でも4インチ(10㎝)、ひどいものだと8㎜機銃くらいしか武装がないことも。装甲も固いとは言えない。ただし機動力と速力は総じて高い。上手く使えばレシプロ戦闘機…たとえばF4Fやスピットファイア、ゼロ戦など…のような機動戦闘も行える。1人乗りのものもあり、そのほかの艇では搭乗人数は2~10名くらい。護衛コストは安いが、その分護衛能力は低め。保有数は、1人乗りが130機、2人乗り以上のものが合計で100隻。

 

 

 今回は、これらの飛行艇すべてを投入することになる。

 また、それに加えて「空賊団 震電」としてでのみ運用している艦が大小合わせて約200隻、実験中の新鋭護衛艦…という名称だが、実体は1人乗りの飛行艇を運用するための空飛ぶ空母である…が3隻(追加で2隻建造予定、うち1隻は着工済み。しかし2隻とも完成には程遠いため、役立たずである)、「切り札」が1隻。

 

 合計すると、数はざっと400以上。かなりの戦力である。小国1個を武力でねじ伏せるくらいはできるだろう。

 

「それと、エスメラルダの改修工事はどれくらいまで進んだ?」

「ああ、8割方済んだよ。あとは、艦底部分と舷側のシュルツェンの改修。そして、アニキが言ってたアレの設置だ」

「OKだ、できるだけ早く仕上げろよ。あまり時間はなさそうだからな」

「分かってるぜ」

 

 ダットに依頼した後、フォルは社長室の窓から外を眺めた。

 今日も空はどこまでも青く澄みわたり、それが白い雲、浮島の緑と見事なコントラストを形成している。風景画家がここにいれば、喜び勇んで筆を取り、スケッチブックないしキャンバスに向かうことだろう。

 

(だが、あの空のはるか向こうでは、今もなお、共和国の艦隊や空賊、命知らずの冒険者たちがカドモスに挑んでいるのだな。どれだけの命が散らされるやら…)

 

 フォルは小さくため息をつく。

 

(しかし、この世界に我々が突然転移してからはや数年、この国にはずいぶんと世話になったもんだ。その愛すべき第二の祖国を蹂躙されるわけにはいかねぇ。いざ来いカドモス、出てくりゃ空の底へ逆落としだ)

 

 

 ここで書くのもなんだが、実はフォル、ダット、フィアの3人は、本来ならばこの世界にはいないはずの人間である。では、死んで転生してきたのかというと、そうでもない。

 何があったのかを端的に説明すると、「いつものように天空のクラフトフリートをスマホで立ち上げ、艦隊戦に参加しようとしたら、いきなりスマホの中に引きずりこまれるような感覚に襲われ、そして気付いたらここにいた」というわけなのである。

 その後彼らは、この世界に来る前に持っていた、天クラというゲームに関する知識を生かし、民間の飛行艇の護衛会社を設立して生活を営みながら、一方で「空賊」という、この世界の空を比較的自由に飛び回れる形態を使って、元の世界、すなわち地球の日本に戻るための情報収集を行っていたのである。そして今に至るというわけだったのだ。

 

(それに、もしかしたら、この戦いの中で、元の世界に戻るために必要なものや方法を、見つけられるかもしれんしな。可能性があるなら、それを広げる努力は怠っちゃならねえと思うんだ)

 

 共和国にこれまで世話になった恩を返すため、そして元の世界に帰る方法を探すため、打倒カドモスの決意を新たにするフォルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日後。

 フリゲート護送社に舞い込んでくるのは、討伐に出撃した艦隊の苦闘と損害のニュースばかり。そしてそれらに混じって、1つの報告が入ってきた。

 それは、フリゲート護送社の全従業員を悲しませるに足りるものであり、またカドモスのフリゲート社に対する宣戦布告とも解釈できるものだった。

 

 

「護衛艦No066、バーナードがカドモスに撃沈された…だと…」

 

 報告電文の書かれた紙を握りしめるダットの手が震えている。

 

「護衛中だった民間の旅客飛行艇を守るため、共に護衛にあたっていたNo065、アルタイルを旅客艇ともども離脱させ、たった1隻で5隻の敵飛行艇相手に大立回りを演じた…それが最後に見られたバーナードの姿、だって」

 

 報告するフィアの声も、消沈している。

 

「それで、その後、付近の空域を飛行中だったある飛行艇の乗員が、浮島に不時着、大破していたバーナードを発見、苦労した末にログ(航海日誌)と戦闘詳報と、搭乗員8名全員の戦死体を回収したんだって。船体側面のロゴマークからウチの舟だってわかったそうだよ。で、その戦闘詳報の最後の内容だけど…」

 

 

以下、戦闘詳報の最後の記録

 

〈敵艦隊のうち1隻撃沈確実、1隻不確実。その他全ての敵飛行艇に損害認む。同胞と旅客艇の脱出を確認。なれど、本艇の魔法石は破壊されて機能をほぼ停止し、武装も残りたるはわずかに機銃2丁のみ。全手段をもって敵に降伏の意を示せど、敵はこれを拒絶せり。誠に遺憾なれど、本艇乗員一同は一致団結し、全力を投じて最期の猛攻をかけ、味方の脱出を援護せんとす。フリゲート社と共和国に栄光あれ。〉

 

 

「…だってさ。生存者なし、だと…」

「バーナードを見っけてくれたヤツと、乗員の遺族には手厚く報いなきゃなんねえな、こりゃ」

 

 フォルが呟く。

 

「うちの社の舟がやられたんじゃ、うちも無関係ではいられなくなったな。よくやったもんだ、わずか3インチの主砲しか持ってなかったのに…」

 

 ダットがデスクから立ち上がる。その手には電文が握られたままだ。紙はもはやクシャクシャになっている。

 

「カドモスめ見てろ、ここまできた日には地獄を見せてやるからな。震電の名にかけて、この都には指1本触れさせやしないぜ。バーナード乗員たちの墓にもな」

「奇遇だね、私も全く同じことを考えたよ」

 

 かくして、この小さな飛行艇の弔い合戦のために、震電の三首脳は本気になったのだった。

 

 

 

「…で」

 

 所変わって、フリゲート社の応接室。

 バーナードを発見した飛行艇乗員に、謝礼を届けにきたフォルは、応接室のソファーに身を投げ出していた相手を見て、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「小型飛行艇発見だけで20万G(ゴールド)なんて額請求してくるから、がめついヤツだと思ってたが…お前だったのかよっ!」

 

 その相手は、フォルの知っている顔だったのである。主に空賊界隈のほうで。

 

「いやー、船体のロゴマークでここだと分かってね?乗員の遺体も全員分回収してきたんだし、これくらいは妥当でしょ?」

 

 今フォルの目の前で、ソファーに身を投げ出して出された飲み物を飲んでいるのは、シュタール。空賊をやっている女性である。黒の帽子と黒い衣装を身にまとっているため、明るい緑色の髪と白い肌が目立つ。

 彼女は自身の空賊団を持たず、かといってどこかの空賊団に所属しているわけでもない。「助っ人」として一時的に空賊団に入ることこそあるものの、基本的には1人気ままに旅をしている流れ者である。が、空賊団からは所属の依頼が絶えない。

 それは、彼女の実力が圧倒的すぎるからである。その実力のほどは「浮島1つを支配していた大空賊団をたった1人で壊滅に追い込んだ」といえばお分かりいただけるだろう。

 

「お金ないわけないでしょ?年収5億ゴールドの大会社なのにさ」

「確かにそうだけど!飛行艇のメンテだの人件費だのでわりかしトントンなんだぞ!?だってのに、その財布から20万も引っこ抜くのかよ…」

「破産するわけじゃなし、いいじゃないー」

 

 全く、とフォルは胸中で毒づいた。コイツの天真爛漫さは相変わらずだ。そしてそれに振り回されるのももはやお決まりである。

 一旦は両手に下げたアタッシェケースを引っ込めようかとも考えたが、バーナード乗員の遺体を持ち帰ってきたのはこいつであること、もしこいつのご機嫌を損ねた場合、決戦の前に要らぬ損害を受けることになるのは必定と考えられたため、フォルは引っ込めるのはやめにした。

 

「まあ、乗員の遺体を連れ戻してくれたのに免じて、今回は出してやるよ。ところで…情報は聞いてるか?」

「カドモスって奴らでしょー?聞いてるけど…まあ、私にはあんまり関係ないかなー、なんて」

「共和国が滅ぼされてもか?俺らとしては是非とも防衛を手伝ってほしいんだが」

「旅の楽しさに影響が出るなら別だけどねー。まあ、考えるだけは考えるよ」

 

 この始末である。シュタールは本当に気ままなのだ。

 

 結局、「気分次第」という返答のみを残して、シュタールは大金を手に去って行った。果たして彼女は戻って来るのだろうか?

 

 

 

《余談1》

バーナードは、全長わずか25メートル、幅10メートルの小型飛行艇で、武装は3インチ(75㎜)砲2門と25㎜機銃数丁。乗員は8名。

 

《余談2》

この世界には魔法というものがあって、戦闘や日常生活などあらゆる方面に実用化されてもいる。また飛行艇は、その中心部に魔法石という石を埋め込んでおり、その力を使って飛行している。イメージは、ラ○ュタの中心にあった飛行石をもっと小さくしたやつが、飛行艇のエンジン内部に収まっている感じ。




戦闘描写は、まだ少し先になる予定です。うp主は文才が乏しいので、描写には苦労することになると思います…頑張ります。
現時点では、次回は4月16日、つまりコラボ第二弾の開始の日に投稿する予定です。全国の天クラーの皆様が、読んでくださることを祈るばかりです…
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