夢幻震わす、一閃の電   作:Red October

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天空のクラフトフリート二次創作、第3話いきます!

現時点でまだUAは2桁、お気に入り登録も感想もなし…やはり、あまり知られていないということか…。ですが、退くことはしませんよ!
まだ唯一の天クラ二次創作…天クラーの皆様にお読みいただければ幸いです。


第3話 黒雲は、空に垂れ籠めて

「あ、アイリス閣下!?」

 

 セイラン島、フリゲート護送社のドックに響くのは、フォルの驚きの声。

 地球時間で20分ほど前に、大型艦のドックへの緊急入渠要請を受信し、何事かといぶかりつつもダットは急いでドックを準備して受け入れの用意をすることを命じた。

 そして受け入れ準備が整ったところへ、素人が見ても大破だとわかるレベルの損傷を負って飛び込んできたのがアイリスの座乗艇だったのである。

 ドックの整備員から驚きの混じった声で報告を受け、慌ててドックへかけ込んだフォルが見たのは、負傷してラルフォードに肩を支えられたアイリスの姿だった。

 

 アイリスの着用している鎧はあちこち焼け焦げ、傷ついている。それと、飛行艇の損傷模様を一目見て、フォルは敵に魔法使いがいるらしいと気付いた。飛行艇は、単に砲弾を撃ち込まれただけとは思えないような壊れかたをしていたのである。

 

(あの凍りついたような傷…凍結系魔法の使い手がいたのか?砲弾や斬撃であんな傷はつかないし)

「アイリス閣下、傷のほどは大丈夫ですか?」

「心配はいりません、敵の剣が少しかすっただけです」

 

 アイリスの代わりにラルフォードが答える。そのラルフォード自身も、傷は見えないが焦っているようだ。

 

「すぐに医務室へ」

「承知しました、こちらへどうぞ」

 

 すぐさまフォルはアイリスを医務室へ案内する。医務室へ連れられる道すがら、アイリスはフォルに声をかけた。

 

「騎士団は…かなりの数がやられたが…3割ほどは無傷で脱出した…。その者らには…最終防衛ラインへの…合流を命じてある…。補給を済ませたら…こちらに来るはずじゃ」

 

 その声は弱々しく、痛々しい。しかし、まだ折れてはならぬという意地がこもっていた。フォルはそれを敏感に感じとる。

 

「承知しました。兵力を寄越していただき、感謝の極みです。それと、帝国への応援要請はしたのでしょうか?」

「したのじゃが…3日はかかる距離じゃ。それまでに奴らはこっちへ向かってこよう。騎士団も歯が立ちにくい相手じゃから、もうそんなに時間はないはずじゃ。我らの後にいるのは空賊団『スケアコフィン』と冒険者が少し、というところじゃから。頼んだぞ…!」

「かしこまりました。我ら、共和国防衛のため最後まで奮戦致しましょう。フリゲート護送社として、また、空賊団『震電』として」

 

 残念ながらアイリスは途中で気を失ったため、フォルの最後の台詞は半分も聞いていたか怪しかった。が、ラルフォードはしっかり聞いていた。

 医務室にアイリスを預け、医務室を出て引き返そうとした途端に、ラルフォードが尋ねてくる。

 

「失礼ながらフォル殿、今の発言は…」

「それ以上でも以下でもありません。我々は、表の顔はフリゲート護送社。しかし裏の顔は、空賊団『震電』なのですよ、ラルフォード殿。このことは今まで誰にも明かしていません」

 

 あまりの衝撃に、ラルフォードは口もきけない様子だ。

 音に聞こえた大空賊団、震電。その正体がフリゲート社だったなど、誰が予想しえるというのか?

 

「まあ驚くのも当然でしょう。我々自身、震電として動く時は入念に偽装工作をしていますので。では、迎撃の準備にあたらねばなりませんので、私はこれで」

 

 ラルフォードの返事を待たずにフォルは歩き出す。

 頭の中では、「切り札」をどうすべきか、エスメラルダの改修工事が終わったかどうかを気にしていた。

 

 

 

「おう、アニキ!たった今、エスメラルダの改修工事、全て終わったって報告が来たぜ」

「やれやれ、間に合ったか!」

 

 フリゲート護送社社長室。

 フォルは戻って来るやいなや、ダットからエスメラルダ改修完了の報告を受けた。

 

「そんで?アレのテストはするのか?」

「ああ、やはり1発くらい撃ったほうがいいな…よろしい、今日午後3時、場所はいつもの試験場で」

「了解。俺が立ち合うぜ」

「ありがたい、本来なら俺が行かなきゃならねぇんだが、震電のボスとしての仕事があるからな」

「フィアはどうすんだ?」

「俺と共に先行して出撃するよ」

「わかった。防衛ラインはほとんど敷設を完了、艦隊編成と大まかな作戦も出来上がってる。あとは…一部の気まぐれ要素と時の運、そしてスケアコフィンの連中がどれだけ時間を稼いでくれるかによるぜ」

 

 スケアコフィンのお頭はなかなかの実力者だし、そこのNo.1の砲手は、やや無駄弾をばらまきがちなものの腕は確かだ。

 だが…聞くところによれば、カドモスは艦隊総数およそ750というところであり、これまでの戦闘で多少減ってはいるだろうが、中規模空賊団であるスケアコフィンには、荷が重い。

 

「ここまでの長行軍&戦闘でカドモスも少しは疲弊してるだろうが…何とかしてシュタールの手助けが欲しいな」

「あんま期待しないほうがいい、アイツは気まぐれだし」

「まあな…。あとは、戦力が少し増強されたぜ」

「具体的には?」

「共和国騎士団の生き残りが加勢してきたんだ。あと、震電の名前で要請した結果、銀狼も加わってくれるってさ。まだ到着してないけど」

「どーせガルドールのヤツを金で釣っただけだろうが」

「身も蓋もない言い方すんなよ…事実だけどさ」

 

 空賊団「銀狼」の首領・ガルドールは、金には目がない。よって、金を持ちかければほぼ100%釣れるのだ。銀狼自体も、そこそこの力を持つ空賊団である。

 

「海歌には?」

「あー、そっちはまだだ。連絡取ろうとしたところへ、エスメラルダ完成の報が来てさ。タイミングが悪かったよ…アニキのほうから連絡してくれねえか?」

「わかった。あそこの首領とは俺のほうが親しいしな」

 

 空賊団「海歌」、小規模ながらかなりの実力を持つ空賊団である。

 

「んじゃ、やってくる」

「頼むぜ、アニキ」

 

 ダットに言われ、フォルは通信室へ向かった。

 

 

 

 フォルは通信機に手をかけ、海歌を呼び出そうとする。

 しかし、彼の手が触れるか触れないうちに、通信機が入電のコールを鳴らした。

 

(誰からだ?こんな時に…まさか、シーシェのやつがかけてきたか?)

 

 そう思いながら、受話器を取る。

 

「はい、こちら『震電』。どちら様でしょうか?」

『その声はバルフォアだな。久しぶりだな、俺だよ』

 

 受話器の向こうから聞こえたのは…どう見ても男性のものである、低いドスの効いた声。

 だが、その声だけで、フォル…空賊団「震電」リーダー、バルフォアは、誰が通信してきたか分かった。

 

(ったく…こいつからか。まあアイリス閣下も要請出してたし、無理ないか)

 

「これはこれは、久しぶりですな。あの時はお世話になりましたな、帝国皇帝、エドワード陛下」

 

 現「帝国」皇帝にして、元「最果ての空賊団」の首領、エドワードである。

 「最果て」は、つい最近まで存在していた、世界最強クラスの実力を誇った空賊団だ。エドワードの皇帝就任に伴って、その名前は名乗らなくなったものの、団員たちは帝国軍に転職して、今なおエドワードの元にいる。

 

『陛下、か…。未だにその呼ばれ方には慣れないな。背中がむず痒くなる』

「皇帝になられてからもう相当経ってるでしょうに。ところで、皇帝直々に何用ですかな。本名で呼んだ時点でだいたい察してますが」

『アイリスからの救援要請の件だ。確かに承った、直ちに援軍を送る』

「ほう、一体誰を寄越して下さるのですか?」

『帝国八大軍団の1番と2番…「遥かなる空賊団」と「グランディリア」だ』

 

 これだけで、フォル(バルフォア)は察した。

 「遥かなる空賊団」と「グランディリア」は、双方ともに帝国軍の部隊の中でも1、2を争う実力のある部隊。その2つを両方寄越すとは、本気だ。

 

「…本気ですね?」

『そっちがやられれば、次はこちらだろうしな。厄介事は早めに対処するに限る』

「ありがとうございます。また今度一杯やりましょう。ちょうど、いい酒を1つ仕入れたんですよ」

『そいつは楽しみだな。まあ、うちの奴らにも存分に暴れさせてやってくれ』

「承知しました。いつ頃着くでしょうか?」

『足の速いほうでも2日ほど後だ』

「やれやれ…それじゃ、獲物を残しながら、それまでもたせねばなりませんな」

 

 言いながら、フォルは決意を新たにする。少なくとも、今日を入れて2日は持ちこたえなければ。

 

『アイリス陛下にもよろしく伝えてくれ』

「承知しました。それでは」

 

 通信を切り、フォルはため息をつく。

 

「それじゃ、やっぱり助けは必要だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、共和国本国からやや離れたとある浮島にて。

 

「…ということです」

「共和国には、結構な被害が出てるみたいね」

 

 空賊団「海歌」の旗艦船内において、「海歌」の女首領、シーシェが部下からの報告を聞いていた。

 シーシェは、男がその姿を見れば、十中八九「エロい」と言いたくなる見た目をしている。

 まあ、アーマーを着て、青いマントらしきものを羽織ってこそいるものの、身体前面の鎧と布を合わせた面積が申し訳程度にしかなってないうえに、ヘソ出しルック+胸元全開、腋・絶対領域・太もも完備、さらに胸もかなり豊満ときては無理もない。

 ロングの金髪を肩のあたりまで伸ばし、羽飾りのついた帽子を被っている。帽子には、何かの漢字のように見える妙な青い模様が入っていた。

 

「き、共和国の人たち、大丈夫でしょうか…?」

 

 シーシェの妹、ミーシェが若干おどおどした声で問う。

 姉妹なだけあって、体つきや髪色は似ていた。ただ、少なくとも服装はミーシェのほうが圧倒的に露出が少ない。

 それに、瞳の色が、シーシェは晴れた日の夏の海を思わせる濃い青色なのに対し、ミーシェのそれは地平線近くの空のような、白のかった水色だった。

 

 ちなみに2人の職業だが、シーシェは生粋の空賊、ミーシェはディーバ(歌姫)である。ミーシェはその歌声の美しさから、絶大な人気を得ていた。

 

「人的被害も相当のものだと思うよ。あのカドモスって奴ら、かなり荒らし回ってるみたいだし」

 

 と、この時、シーシェの後ろで通信機が音を立てた。通信が入っているのだ。

 

「ごめんミーシェ、お願い」

「あ、はい!」

 

 ミーシェは姉に代わって通信に出る。

 

「はい、こちら『海歌』で………っ!?ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 やけに慌てた様子で、ミーシェは受話器を持ったまま姉に叫ぶ。

 

「お、お姉ちゃん!」

「何、どうしたの?」

「フリゲート護送社のフォルさんからなんだけど…大事なことを伝えたいから、通信をパネルに切り換えてくれって…」

「オーケー、換えていいわよ。あの男、何を言いたいのかしら」

 

 いぶかしむシーシェを前に、通信パネルが発光した。一瞬後、通信回線が切り換わり、フォルの姿が画面に写される。

 

『久しぶりですな、シーシェ殿、そしてミーシェ殿。お二人とも、相変わらずお美しい』

「社交辞令なんざ聞きたくないから、早く用件を言いなさいよ」

 

 シーシェは、エロい見た目とは裏腹に、わりとずけずけ物を言う性格なのである。

 

『今回は、1つお願いがあって連絡させていただいた。現在、共和国は空賊団カドモスの侵攻に遭っている。このままでは、共和国の国家そのものが滅ぼされかねん。そこで海歌に、共和国最終防衛ラインへの参加を要請する。フリゲート護送社創始者兼書記長、フォルとして。そして』

 

 ここまで言って、フォルは不意にパネルから目を逸らした。そして、左手に赤色の鬼の仮面を取り、それで顔の左半分を隠しながら続ける。なおこの仮面は、フォルが「震電」のリーダー、バルフォアとして動く時に、変装に使うものだ。

 

『空賊団『震電』リーダー、バルフォアとして』

「!!?」

 

 

 シーシェたちは驚いてしまった。まさか、フリゲート社の社員が震電だなどとは思っていなかった。

 

『どうした、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして。…まあ、無理ないか。俺たちフリゲート社が震電だなんて、アイリス閣下ですら知らないほど、秘密にしてたんだから。エドワードのヤツには見抜かれたけどな』

 

 衝撃を受けているシーシェらをよそに、フォルは話を続ける。

 

『て訳で、カドモスの奴らに対抗し、共和国を防衛するため、海歌にも力をお貸し願いたいのさ。これはフリゲート社としての、また震電としての全会一致の総意だ。返答は如何に?』

「………」

 

 やっとこさ衝撃から立ち直ったシーシェは、頭を回転させて事態の飲み込みを図る。

 事情はわかった。あとは…

 

「手伝ったら、何をくれるのさ?」

 

 謝礼次第である。

 

『現金で1人あたり1万ゴールドの謝礼と、そっちの縄張りの尊重。あと飛行艇3隻プレゼントだ。どうだ?』

 

 縄張りの尊重は今更感が強いが、お金と飛行艇のプレゼントはありがたい。

 シーシェは決断を下した。

 

「わかったよ。今から動員できる奴全員でそっちに向かう」

『助かるぜ。防衛ラインは共和国本国のリリバット島と、セイラン島を中心に展開してる。そんじゃ、お待ちしてるぜ』

 

 あっという間に、通信は切れた。

 画面が暗くなった直後、「海歌」団員の1人がシーシェの肩を叩く。

 

「よかったじゃないか、お頭。気になるあの人からの共同戦線の要請だなんて」

「しかも、その相手はまさかのご近所さん。いつでも面を拝みに行けるじゃねえか」

「う、うるさい!」

 

 顔を赤らめながらシーシェは反駁する。

 シーシェは、エドワードとバルフォアの2人を非常に気にしていたのだ。今の部下たちの発言は、それをネタにしているのである。

 

「野郎ども、さっさと行くよ!あの震電のリーダーからの頼みなんだからね!」

「「「了解!」」」

 

 こうして、空賊団「海歌」も共和国防衛に参加すべく、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、そこからそう遠くない空の一角にて。

 燃え盛る「スケアコフィン」の旗艦が、炎上しながら離脱していく。激しい戦いの中で損傷しつつも生き残った何隻かの飛行艇がそれに続いていく。

 

 

「やっと退いていったか、あいつら…」

「思いのほか時間がかかりましたね、ボス」

 

 空賊団「カドモス」旗艦、「デ・マヴァント」艦橋において、カドモスの首領バルバーナは、僚艦に座乗する副官・アメリアから通信を受けていた。

 戦闘開始から既に2時間は経過していた。冒険者の連合隊は早めに蹴散らしたものの、最後に残った空賊団「スケアコフィン」はしぶとく抵抗し、カドモスにかなりの消耗を強いていた。失った飛行艇は20以上、それ以外に、損傷がひどくてとても戦闘には出せない飛行艇が、30を数えている。

 これまでの戦闘の分を合わせると、既に100隻以上が失われ、残存する戦闘可能な飛行艇は550程度が限界、というところだ。

 

「全くだ。だが…これであと一息だ。一気にやってしまうぞ!」

「はいっ…!」

 

 アメリアの返事。

 

「ああ…!」

 

 これはもう1人の副官、アルベルトの発言。

 

「さあ、空をいただこうか!」

 

 そしてカドモスの旗艦、デ・マヴァントは多数の飛行艇を従え、水平線(?)の先にある(はずの)共和国本国へ向け、進行していった。




さて、決戦の時は近づいてまいりました。予定では次回は艦隊の集合、そしてその次から決戦に入ります。お楽しみにお待ちくださいませ。

なお、うp主のリアルが忙しくなってきているので、大変申し訳ありませんが、次の投稿はまだ未定です。

余談ですが、カドモスの旗艦「デ・マヴァント」の艦名は、うp主が勝手に付けたものであります。だって、運営さんは艦名とか付けてそうになかったし…
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