夢幻震わす、一閃の電   作:Red October

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なん…だと…!?
Lobiの雑談掲示板に情報を流したとたんに、UAがついに、3桁を超えた上、これまでにない勢いで伸びている…!?
お読みくださっている皆様、ありがとうございます!

しかし、5話掲載してやっと3桁超えとは…やっぱり、天クラはマイナーなゲームだということでしょうか。


ま、それは置いておいて、「夢幻震わす、一閃の電」第6話、投稿です!
戦いが始まっているわけですが、今は時間帯としては日没後という設定です。この人ら半日戦い続けてるな、今さらだけど…。


警告します。

今回の話には、以下のものが含まれます。

・グロ表現
・グロ表現
・グロ表現

具体的には、死亡シーンがたっぷりです。
大事なことですら2回しか言わないのに、3回言った…その意味はわかりますよね?
ダメな方はブラウザバック推奨です。

それでも良いならば…































ゆっくり読んでいってね!


第6話 電は、雨を裂いて

「さて…誰から死にたい?」

 

 

 

 バルフォアのその言葉はもはや、カドモス団員たちに対する最後通牒そのものだった。

 カドモス団員たちが剣を振り上げ、バルフォアを討たんとして走り出す。それにバルフォアは、真っ正面から応えた。

 

 一瞬でバルフォアは距離を詰めるや、先頭の1人めがけて、大上段に振りかぶった剣を振り下ろした。それに対して、カドモス団員…結構なガタイの男だった…は、自分の顔の前に剣を突き出し、七星連刃(揺光)を受け止めようとする。

 …が、残念ながらそれは悪手だった。

 

 電のごとき素早さで振り下ろされた切れ味鋭い刃は、カドモス団員の剣を、金属的な響きと共に叩き切ったのだ。続いて、その毒刃がカドモス団員の左鎖骨の辺りに突き刺さる。

 ベキベキベキッという嫌な音が連続して響いた。それと一緒にバルフォアの持つ剣が、何か棒状の固い物に次々と当たり、そしてそれらを砕いていくような手応えを伝えてくる。と、5つめの固い物を切ったあたりで、剣の先端が違う感触を伝えた。何か、弾力性のあるようなものを切った感じ。しかしそれは一瞬であり、次の瞬間にはまた固い物の感触になっていた。

 バルフォアの剣は相手の左鎖骨から入って、へそのあたりまで一息に斬り下げた。そのとたん、赤い液体がどっと吹き出してくる。バルフォアは素早く飛びすさって、横殴りの赤いシャワーをかわした。悲鳴も上げず、相手はどっと床に倒れる。

 

(…手応えあり)

 

 バルフォアは、妙に冴えた頭でそう考える。

 出血具合と手応えからして、どうやら相手の左の肋骨を10本ばかり叩き切り、ついでに剣尖は心臓を捕らえたようだ。

 これだけの重症に出血多量、加えて毒。放っておいても結果は見えているし、動くこともままならぬだろう。

 

 1人目を放置し、バルフォアは次の相手に向かって突進した。相手は剣を正面に構える。

 バルフォアは相手との距離3メートルほどのところまで走ってから、急に機動を変えた。突進の軸線を少しずらし、壁に向かって突っ込む。

 その機動に相手は慌て、剣を振ったもののバルフォアには届かなかった。その隙に、バルフォアは壁に向かって跳躍。そして壁を蹴り、その勢いで相手に突きかかった。

 驚いて口を開けていたのが仇となり、2人目は口から剣を通され、毒刃は後頭部を貫通して、うなじからその切っ先を飛び出させた。毒に頼らずとも、脳幹切断で死が見えている。

 

 続いてバルフォアは右に体を旋回させつつ、2人目の口から剣を引き抜き、回転の勢いで3人目の下腹をしたたかに斬りつけた。

 「ぐわっ!」という悲鳴を上げ、相手は腰を落として後ろ向きに倒れる。同時に朱色と赤黒色の液体が吹き出て、その一部がバルフォアに降りかかった。

 

(主要な大血管は2つとも切断、恐らく腸と腎臓あたりもイカレただろう。こいつも動けまいし、長くはなかろう)

 

 そう考えつつ、バルフォアは4人目にその刃を向けた。

 

 

 

 端から見ると、バルフォアがまるで剣豪ででもあるかのように見える。しかし、剣術をやっている者が見ればすぐわかるが、バルフォアは剣士としての腕は決して高くない。

 同業者であるリューナスに剣術を習ってはいるが、それでも素人がちょっとかじった程度。模擬戦で、共和国や帝国の剣撃部隊員を相手にしたなら、すぐに負かされるだろう。

 

 では何故、バルフォアは今戦えているのか?

 

 それには、バルフォアの出自が関係している。

 

 

 

 

 

 バルフォアとその兄弟は本来、この世界の住人ではなく、現代日本からこの世界に引きずりこまれた人だというのは、以前にお話した通りである。そして、この世界に長くいたため、バルフォアの見た目は30代くらいになっているが、元々この世界に来た時は、彼はまだ学生だった。それも、医学生だったのである。

 

 医学生は、将来的には医者や看護師その他諸々の職に就くものだが、そんな彼らが共通して学ばなければならない学問がある。それは、解剖学。文字通り、人間の体内がどうなっているか学ぶのだ。

 この際、場合によっては、人体のどこにどんな臓器があって、骨はどんな感じで…ということだけでなく、神経や血管はどこを走っていて、筋肉はどこに付いていてどんな運動に関わって…ということまで勉強するものである。

 

 

 …バルフォアは、その解剖学の知識を活用しただけなのだ。

 

 

 ヒトでないような生物や、ドラゴンまでもが住むこの世界だが、不幸中の幸い、ヒト型生物に限れば、解剖学というものは十分通用していたのである。だから、バルフォアは剣術の素人であっても、このように戦えているのだ。

 この戦いの場合、剣術は必ずしも必要ではない。如何にして相手に致命傷を与え、戦闘不能に追い込むかを、考えれば良いのだ。

 

 

 

 4人目も、これまでのに負けず劣らずの大柄だ。腰を落として足を開き、剣を正面に構えている。てこでも動きそうにない。

 だが、バルフォアは即座にどうすべきか考え付いた。

 

(あれだけのスペース…いけるな)

 

 バルフォアはなんと、4人目に正面から突撃していった。剣士としては小柄な部類に入るバルフォアが、ガタイのいい相手に真正面から突っ込むなど、普通なら無謀もいいところである。相手もそう判断したのか、剣を上に振り上げた。

 それに対し、バルフォアは姿勢を低くしながら突撃していき…相手のリーチに入った瞬間、腰を落として足を前に投げ出した。同時に剣を突き出し、降ってきた相手の剣を受け流す。

 バルフォアはそのまま、ベースを狙う野球選手のようなスライディングで、相手の股の下を潜り抜けた。ついでに、相手の斬撃を受け止めたことで痺れる腕を無理やり振って、剣を少しだけ動かし、相手の股の下に一撃入れるのを忘れなかった。

 

「ぎゃああああぁぁっ!!!」

 

 男の一物をザックリやられた相手の悲鳴をよそに、股を潜ってきたバルフォアは、スライディングの勢いで5人目の懐に飛び込んだ。5人目の相手は、バルフォアの突飛すぎる行動に意表を衝かれ、対応が追い付いていない。その無防備な腹を、バルフォアは下から上へ剣を跳ね上げ、深く斬り裂いた。悲鳴が上がり、5人目が後ろにのけ反る。

 5人目が倒れる音が響きわたる前に、バルフォアは剣を構え直し、4人目の背中に剣を刺し通そうとする。が、その前に、バルフォアの後に続くリューナスが、魔法石の力によって切れ味の鋭さを増した剣を、4人目の男に突き立てた。

 4人目が5人目の男と同時に倒れ伏す。遠からずあの世逝きで間違いない。

 

 続いてバルフォアに挑みかかったのは、2人連れの女団員だった。だが、女だろうが何だろうが、バルフォアは一切容赦しない。

 2人隣り合って剣撃の体勢をとる女団員に、バルフォアは正面から突っ込み、2本の剣を七星連刃で弾く。そして弾いた勢いで、右にいる女の首筋に刃を突き立てた。

 女が剣を落とし、首筋を手で押さえる。だが、そこからは抑えきれない量の血が溢れてきていた。

 

(頸動脈をやったな)

 

 バルフォアの脳裏によぎるのはその1点のみ。

 

 罪悪感?躊躇い?知らんな。そんな甘っちょろいことを言っていたのでは、この世界、特に空賊業界隈ではやっていけない。

 

 女の首に剣を刺しただけかと思いきや、バルフォアはその少し先にあった柱を使って、運動の向きを半ば強引に変えて戻ってきた。る×うに○心で、緋村が敵の船の上で見せたような動きである。

 女たちはリューナスと剣を交えている。が、そのために背後から接近する殺意に気付くのが遅れ、彼女たちの運命は決してしまった。2人が気づく前に、かけ戻ってきたバルフォアは、後方から剣撃一閃。そのまま女2人の首をまとめてはねた。

 

 なに?手加減とか情けとかはないのかって?そんなものはない(断言)。ないったらない。大事なことなので2回言いました。

 

 通路の敵を全員倒し、バルフォアはクロスデルタの甲板に躍り出た。

 甲板では、あっちこっちで血みどろの斬り合いが発生している。バルフォアはその中へ無言で飛び込み、剣を唸らせて斬撃の嵐を巻き起こし始めた。リューナスも遅れてはいない。

 

 

 

 

 

 同じころ、「流星隊」旗艦「クロスラムダ」と衝突したカドモスの大型飛行艇の上でも、剣の音が死の輪舞曲(ロンド)を奏でていた。

 いや、ある意味ではクロスデルタの光景のほうがマシだったかもしれない。

 なにせ、クロスラムダはぶつかられるどころか、自分から突っ込んでいったのだから。そこだけ見ても、かなり血の気の多い奴が乗っているらしいことがみてとれる。

 

 そして案の定、甲板の上はえらいことになっていた。

 

 

 

(イメージBGM:東方projectシリーズより「U.N.オーエンは彼女なのか?」)

 

「はははははははは!」

 

 血と剣光と悲鳴と怒号の中、高笑いをしているのはフィーリア(フィア)。彼女の左手には、燃えるような真っ赤な魔法石が握られ、右手には血液したたる大剣を持っている。本来ならこの大剣「破岩大剣ディオホコリ」は、男性が両手で持っても扱いに難儀するもの…のはずだが、なぜか彼女は片手で易々と振り回している。

 フィーリアは現在、敵飛行艇の甲板にいて、敵に半包囲されているのだが、彼女の周り10メートルは、死んだ人間の遺体がそこかしこに散らばり、甲板は血にまみれて物凄いことになっている。死体の数はざっと30くらい、そのうち真っ黒焦げになったものが約半分。全てフィーリアの手にかかった者たちの末路である。

 

「ははははは!はハ、あはハはハハハ!」

 

 フィーリアは狂ったような笑い声を上げていた。その目はカドモスの団員たちのほうを向いているが、何も見てはいないようだ。ハイライトの消えた、

半ば虚ろな目で、何もない虚空を見上げ、彼女は笑い続けている。

 

「アハハハハハハ!」

 

 巨大な剣を持ち、さんざん返り血を浴びて、流れるような黒髪も女性らしい身体も真っ赤になり、それでもなお狂笑しながら剣を振るうフィーリアの様は、殺人鬼以外の何者でもなかった。その狂気に気圧され、包囲網の一部が乱れる。それを見逃すフィーリアではなかった。

 

「アハハハハハハハ!」

 

 笑いながら、大剣を半ば引きずるようにして突撃。踏み込みだけで甲板にヒビが入り、板がへこむ。

 敵が怯んだ隙を逃さず、フィーリアは片手で大剣をぶん回し、水平になぎはらった。瞬く間に2人が血飛沫をあげてのけ反る。その死体を踏み越え、フィーリアは包囲から脱出した。

 残りの敵を後続の味方に任せ、フィーリアは艦橋の制圧に向かう。と、その前にカドモス団員が1人、立ちふさがった。双刀を手にしている…が、フィーリアには関係ない。

 

「アハハハハ!」

 

 笑いながら、左手の魔法石を目の前に突き出す。と、ポ○モンの げんきのか○ら に似た形のその石から、赤いレーザーが発射された。避ける間もなく、カドモス団員はレーザーに被弾してしまう。

 

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 身の毛もよだつ凄まじい悲鳴が上がった。

 カドモス団員は、その全身に炎がまわり、文字通りの火だるまと化して甲板を転げ回っている。有機物の、それも生きたままの生物の焼けるきつい臭いがあたりに立ち込める。血や鉄の臭いも入り混じり、もはや嗅覚は正常には働きえないと思われる、尋常ならざる臭いが辺りに充満している。

 

「あはははははハハハ!」

 

 生きたまま火あぶりにされた、不幸なるカドモス団員の悲鳴をかき消すかのように、フィーリアの狂笑が響く。そしてフィーリアは、左手に持ったリンゴ大の魔法石をふりかざし、飛行艇内部に通じるドアめがけて熱線を放った。

 発射された赤いレーザーは、鉄製のドアをボール紙か何かのように貫き、ついでに通路で待機していた何人かのカドモス団員を焼き尽くして、通路の壁に穴を開けた。撃ち抜かれたドアが、熱したアメのように、溶けて崩れ落ちる。その溶解音に混じって、生きたまま焼かれる人間の絶叫が複数聞こえた。灼熱地獄もかくやという状態である。

 

 ようやくのことで包囲網を切り抜けてきた副官に、フィーリアはディオホコリを預けた。代わりに、副官の手から太刀を一振り受け取り、それを右手にして船内に侵入していく。十数人の斬り込み隊員たちがそれに続いた。

 

「アハハハハハハハハ!!!」

 

 人間の形をした災厄とは、まさにこのことをいうのだろう。

 先頭をきって船内に飛び込んだ彼女は、通路の焼けた死体を蹴散らして突進。角を曲がるや、斬りかかってきたカドモス団員を一刀の下に斬り捨てた。続いて襲ってきた相手に対し、2、3合太刀で打ち合った後、ふいに太刀の角度を変え、相手の腹をしたたか斬りつける。そしてそいつを蹴飛ばして倒し、そいつには構うことなく次の相手に熱線を照射。もう何個目かの黒焦げ死体を作ることとなった。

 

 普段のフィーリア…フリゲート護送社の中でフォルやダットと一緒に仕事をしている時のフィアを知る者が、今の彼女の様子を見たら、同一人物とはとても気付かないだろう。

 だが実は、フィアにはこういう一面がある。すなわち、血みどろの白兵戦になると、普段のおしとやかさとは打って変わって、戦闘狂としての一面が姿を現す。その様子を、兄弟は「殺意の波動に目覚めたフィーリア」と表現する。

 

「アハハハハ!!」

 

 火が燃え盛り、生物の気配があまり感じられなくなった船内通路に、フィーリアの高笑いと足音だけが響く…

 

 

 

 

 一方で、天山隊と対峙したカドモス飛行艇部隊は、別の意味で地獄を見ていた。

 

「な、何だ、これは!?」

 

 中型飛行艇の舵輪を握るカドモス団員が、悲鳴を上げる。

 

「撃て!撃ち落とせ!」

「ダメだ!数が多すぎる!」

 

 怒鳴る戦術士官、砲手の諦めを伴った報告。

 

 彼らの視線の先にあるのは…1隻の「震電」艦隊の大型飛行艇。そして、そこから放たれる、1ミリの隙間もないように見える、大量のエネルギー砲弾の嵐だった。

 

 

 

「翼をもがれて空の底へ落ちるか、こっぱみじんになって空の底へ落ちるか、好きなほうを選ぶがいい…!」

 

 天山隊旗艦「クロスオメガ」艦上、甲板を少し離れた空中に浮かんでいるのは、ダストエルスキー(ダット)。

 その周囲には、それぞれ異なる色をした8個もの魔法石…そのすべてがスイカくらいのサイズの大きなものである…が浮かび、背中には巨大な水色の魔法陣が形成されている。そして、その陣と魔法石から、おびただしい数のエネルギー弾が、弾幕となって放たれていた。

 やはりというべきか、1発1発の威力は飛行艇の大砲に比べると小さい。しかし、それを補ってあまりあるだけの数を、速射性にものを言わせて広範囲にぶつけているため、被弾した飛行艇はダメージコントロールも間に合わず、墜落していくのである。回復スキルも飛んでくるが、回復のペースよりダメージ量が多くて、ほとんど意味をなしていない。

 すでに大小合わせて20以上の飛行艇が、この弾幕の嵐に沈んでいる状態だった。そして今、その濃密な火線に引っかかった1隻の小型飛行艇が、燃えながらも仲間のもとに戻ろうと必死に飛行している。しかし、そこに大型のエネルギー弾が飛来してきた。

 小型飛行艇はなんとかそれをかわして…その後ろから来た中型の弾幕に当たってしまった。人間もろとも粉微塵になった飛行艇が、一文の価値もない鉄屑となって落下していく。

 

 バルフォアから「敵は日没とともに白兵戦を挑んでくる可能性あり、強行接舷に注意されたし」と言われ、ダストエルスキーが考えたのが弾幕戦法だった。

 この戦法には、自分の視界に入る部分にしか撃てないし、無闇に使うとフレンドリーファイアを容易に誘発するという欠点がある。だが、今までこの弾幕をかいくぐって白兵を挑んできたのは、「あの」バケモノ空賊・シュタールただ1人。よって、よほどでない限り突破されることはない。

 

 なお、この弾幕だが…元ネタはお察しの通り、この世界に来る前、現代日本においてダストエルスキーがハマっていたゲーム・○方projectである。

 

「さあ、どうした?さっさとここまで来いよ!」

 

 仁王の像のように目をカッと見開き、ダストエルスキーは弾幕の光に照らし出された敵艦隊を睨み付けた。

 同時に、弾幕の嵐が激しさを増す。結構な威力を持つ9色のエネルギー弾が乱れ飛ぶその様は、どこまでも無慈悲で、残酷で、しかしどこか幻想的な美しさがあった。

 

 

 

「…ちっ」

 

 カドモス艦隊旗艦「デ・マヴァント」艦橋。バルバーナは怒りを隠すことなく舌打ちをした。

 戦況はどう見ても、カドモス側が苦戦している。

 

 3方から白兵戦をしかけていった艦隊は、相手側と激突した。それはいいが、1方は激突したまま動けなくなった。どうやらこちらが積極攻勢に出ているようだが、相手の守りが非常に固いようだ。ただ一言「苦戦中」とだけ書かれた報告電文が先ほど届いている。

 1方は逆に押し返されている。そっちに向かった飛行艇は、次から次へと炎上していた。しかも、それでいて報告がほとんど届かない。乗組員全員が死体と化したかのようだ。

 1方はそもそも接近すらできていない。そっちの方角に見えるのは、夜目にも色鮮やかな無数の弾幕。そして、それに絡めとられた飛行艇が、赤い炎を引いて墜落する様子である。回復スキルの投入も間に合っていないようだ。

 

「おい、こいつらさえ破れば、目的地は目の前だぞ!?なんとかして、突破できないのか!?」

 

 バルバーナの声には、苛立ちや怒り、焦りといった感情が渦巻いている。

 

「そう言われましても!今戦闘中の部隊では、あの守りを突破できないようです!おそらく力不足かと」

 

 バルバーナの心情を感じ取った副官が、逆鱗を刺激しないかひやひやしながら、言い返す。

 

「…仕方ない、精鋭部隊を投入する!ここで時間を使いたくはない」

「は!」

 

(…この状況では、やむを得ないな。くそっ、いまいましい…!)

 

 思い通りに行かぬ戦況に、歯噛みをするバルバーナであった。

 

 

 

「ようし、だいぶ捌いたな…」

 

 再び、共和国防衛艦隊・烈風隊旗艦「クロスデルタ」艦上。生臭さを伴った鉄の臭いがぷんぷんしている甲板の上で、七星連刃(揺光)を抜き身で右手に持ったまま、バルフォアが呟いた。

 彼の周囲には、敵味方問わず、数え切れないほどの人間が、物言わぬ骸と化して横たわっている。それに混じって、かすかに半月の光を反射した金属質の光が瞬いた。甲板上にうち捨てられた、剣の反射光である。持ち主がどうなったかなど、想像もできない。

 

 と、バルフォアの右手のほうで、何かが動いた。人影が1つ、こちらに向かってくる。

 とっさに剣を構えたバルフォアだったが、次の瞬間、相手が誰だかわかって、剣を下ろした。その人影は、右手に持った皿のような何かを、顔の下のほうに持って行ったのだ。そちらからは、明らかにアルコールの臭いが流れてくる。それも、戦闘前にバルフォアがちらりと嗅いだ臭いが。

 

「半月でも、美しいですね。酒の肴にはもってこいです」

「この状況で酒を楽しめるお前には、いっそ感心するわ、リューナス」

 

 そう、人影の正体はリューナスだった。杯を右手に持ち、中の酒を呷っている。

 ちなみに、杯の中身は、臭いから判断する限り、どうみても八塩折の酒である。バルフォアが隠しておいたはずなのに、どうやって見つけたのやら。バルフォアはもはや、ツッコむだけの気分すら喪失していた。

 半月を肴に酒を飲む、というのはなかなか風流な行為ではあるだろう。問題は、それが血で血を洗う激戦があった直後の飛行艇の上で行われており、酒を楽しむ彼女の足元には大量の屍体が転がっている、ということだが。

 

「少々、酔ってしまいました…」

「ったく、飲み過ぎだテメェは」

 

 半ば呆れながら、リューナスにそう言った、その瞬間。

 バルフォアの本能が、鋭い警告を放った。

 

「ッ!?避けろ!」

 

 リューナスに叫びながら、自身も飛び退く。その瞬間、さっきまでバルフォアが立っていた位置を、青色の光が走り抜けた。

 その光が掠めたあたりが、パキパキと音を立てて、青白い筋を1本、描き出す。バルフォアがそれに触れてみると、冷たさが感じられた。どう見ても、凍っている。

 

(…出たな)

 

 バルフォアは、心の中で新たな敵の正体に気付く。たぶん、アイリス閣下の飛行艇を凍らせたのも、コイツだろう。

 

 バルフォアが見上げた先には、クロスデルタに接近する1隻の飛行艇。そして、その先端に立つ、1人の人影。

 クロスデルタに飛行艇が接舷するや、その人影はクロスデルタの甲板に飛び降りてきた。

 

 月光に照らし出されたのは、1人の男の姿。

 全身を、白を基調とする衣装で包み、白い帽子を被って、これまた白いマントを羽織っている。袖口や肩当ての防具は金色であり、それが月明かりに目立つ。

 男は水色に輝く細身の剣を一振り所持しており、その周囲には、氷と思わしき水色のクリスタル型の物体が浮かんでいた。

 

 逆光のため、表情は伺えない。だが、バルフォアは、長年の経験と勘から、直感していた。

 

 コイツは、かなり強い。

 

「まったく、どうして僕たちの邪魔をするんだい?」

 

 ひどく静かな声で、その男はバルフォアに話しかけてきた。声の調子からして、まだ若いと見える。

 しかし、その声には、隠しようもない殺意が溢れている。

 

「ボスが空を征服しようとしてるのに…」

「黙れ」

 

 バルフォアは、いつも以上に冷たい声で返答した。

 

「どーせ、お前らが空を統一したところで、圧政しか敷かんだろうがよ」

「心外だなぁ。そんなことはないよ」

「そう言うヤツらほど、本性は分からんもんだ。それに、」

 

 その瞬間、バルフォアの鋭い眼光が、男を射抜いた。

 

「これまでさんざん破壊と殺戮をやらかしてきたヤツらのセリフは、信用できんな!」

 

 言い放ったバルフォアに、男は、頭をガシガシとかきむしった後、一声叫んだ。

 

「…イライラするなぁ…!そんなに僕たちの邪魔をするなら…」

 

 そこまで言って、男は剣を構える。

 

「死んでもらうよ!」

「そりゃこっちのセリフだ。過去の時代に死んだヤツに、この世界は荒らさせない。おとなしくあの世にすっこんでな」

 

 バルフォアも、七星連刃(揺光)を構え直した。

 

「リューナス。コイツは危険だ、下がっときな。若造、死ぬ前に、名前を聞いておいてやろう」

「そのセリフはお返しするよ。空賊団『カドモス』サブリーダー、アルベルト…行くよ!」

「なら、こっちも名乗っておくか。空賊団『震電』隊長、バルフォア、いざ参る!」

 

 甲板がへこみそうなほど、足を力強く踏み込み、2人は互いに突進する。

 2振りの剣は、激しい金属音を立て、激突した。

 

 

 

 同時刻、フィーリアとダストエルスキーにも、試練が降りかかっていた。

 

 

「ちっ、2方向同時とは卑怯な…!」

 

 クロスオメガのレーダー手から寄せられた報告を受け、ダストエルスキーはいまいましげに闇を見た。

 先ほどから、突撃しては弾幕に沈められてばかりのカドモス艦隊は、今度は2手に分かれて攻めてきたのだ。いかに弾幕といえど、1方向にしか飛ばないものだ、2方向同時の相手は厳しい。

 しかも、どうやら相手は艦隊運用の手練れと見えて、これまでとは明らかに敵艦隊の動きが異なる。

 

「ちぃ…だが、なんとかしてみせる!全砲門、左側の敵艦隊に向けて斉射!右は俺がやる!」

 

 通信に叫び、ダストエルスキーは魔法石にさらなる力を送り込んだ。弾幕が、その美しさと凶悪さを増し、大嵐となって吹き荒れる。

 

 

「はははははっ!」

 

 敵艦制圧から帰還したフィーリアは、新たな敵の飛行艇が突っ込んでくるのを見て、1つ笑った。しかも、その敵艦からは、これまでにない強敵の気配がする。

 

「いいね、いいねっ!挑んできな!」

 

 フィーリアは、昂然と咆哮した。

 

 

「この艦ですね」

 

 カドモスのサブリーダーにして、バルバーナの腹心の部下・アメリアは、眼前に迫る飛行艇を見て、呟いた。

 アメリアは、左側の敵部隊を叩くようバルバーナから命じられ、敵の左翼…つまりフィーリア率いる流星隊に攻撃をかけようとしているのである。

 

 だが、その敵艦からは、異様なまでに濃厚な、血の臭いと死の気配がする。アメリアは、ここまで死を感じさせるものには、出くわしたことがない。

 この敵艦に乗り込んだ先に待っているのは、一瞬でも気を抜けば斬り倒される、死と隣り合わせの激戦区だろう。

 

「でも…ボスの命令なら、聞かないわけにいきません。行きます…!」

 

 アメリアは覚悟を決めると、右手にはめた武器をそっとなでた。それは、派手な形状をした弓…というよりはボウガンの1種。武器にも防具にもなる、変わり物だ。

 

 

 

 かくして、太陽も南中する頃から始まった戦いは、夜戦という第2局面に突入し…そして今、佳境を迎えようとしている。

 この戦いの流れは果たしてどうなっていくのか?それを知る者は、まだ誰もいない。

 

 

 

〈余談〉

 

戦闘開始時の飛行艇総数…共和国連合艦隊 550隻 カドモス 560隻

 

現時点で残存する戦闘可能な飛行艇総数…共和国連合艦隊 520隻 カドモス 497隻

 

 

 カドモスがやや劣勢。まぁ、ダット(ダストエルスキー)なんか、1人で20隻以上沈めてるしなぁ…




グロいシーンばかりで本当にすみません……リアリティを追求しようとしたら、こんなことになってしまいました…。

白兵戦に関してですが、バルフォアの部分はうp主の知り合いの医学生に、解剖の話を聞いて判断、推測して書きました。推測ばかりで申し訳ない、体験できればもう少しリアリティを追求でき…って、私は一体何を!?

ダストエルスキーの戦法は、完全に某弾幕ゲームのリスペクトです。いったい何方なんだ…

フィーリアの戦闘時のモデルは、…BGMからお察しいただけるかと思います。人間のそういう一面、描いてみたかったんですよ。

そして、前までは「銀英伝」や「ヤマト」の要素が多かったですが、今回は「ヤマト」に代わって「るろ剣」の要素多めでした。まあ、近接戦闘ばっかりだったし、仕方ないね。

それでは、次回もまた、よろしくお願いします!
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