「I shall return.」
無限の蒼穹に浮かぶ巨大な石と鉄の城を去る時に僕ー桐ケ谷和人はそう言い放った。
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2022年、人類は完全なる仮想空間の実現させた。
VRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)「ソードアート・オンライン」。
今日、そのベータテストが終わる。
ナーヴギアは完全なる仮想世界を作り、自分自身を仮想世界に
実際に、ゲームの中に入ることができるのだから、その注目度はものすごく高く、予約は開始と同時に締め切られ、転売屋によって、値段が10倍に跳ね上げられたりして、社会問題にまで発展した。
しかし、ナーヴギアはその斬新さゆえ、初期は対応したリリースソフトはパズルゲームのようなものばかりだった。
それに、俺たちのようなゲーム中毒者は不満を募らせていた。
そんな時に満を持して発表されたのがこの「ソード・アート・オンライン」。
これこそが俺たちが待ちに待っていた実際にゲームの中に入って、手足を動かして、モンスターと戦い、成長して、仲間と協力して、生きる。
それができるMMORPGだった。
俺はそれが発表されてから興奮して寝れない日々が続いた。
その情報は徐々に公開されるたびにゲーマーたちの熱は高まっていった。
そのベータテストには千人の枠に十万人というナーヴギア購入者の半数が応募があった。
千人の枠に入れたのは幸運だったとしか言いようがなかっただろう。
ベータテスト中の二か月間は、夢のような時間だった。
毎日、毎日夜な夜なプレイをし、学校でも授業になんて集中できず、常にスキルや装備について考え、帰ってきてからはダイブしぱなっしの一日が続いた。
今日はその最終日。
現在の時刻は、23時58分。
あと、二分でベータテストのサーバーは完全に閉じられ、俺たちーベータテスターの二か月間の努力は消える。
モンスターと戦っているもの。広場に集まっているもの。それぞれが自分の居場所で最期を迎えようとしている。
そんな時、俺達ーテスター達を青いホログラムの光が包んだ。
もう最後の時か、でも、これで最後の時じゃない。
もう少ししたら、限られた時間ではなく、それこそ永遠にこの世界を堪能できる時が来る。
それまでの辛抱だ。
僕はそう思い、名残り惜しいこの世界とのしばしの別れでぐちゃぐちゃになっていた、心を整える。
しかし、ホログラムの青い炎が消え、俺が目を開けると、そこは見慣れた
そこは不思議な場所だった。
足元には分厚いクリスタルの板だ。
その下には、雲が絶え間なく流れ、その下は見えないようになっている。
その、クリスタルの板は俺たちが二か月間過ごした鉄と石の城ーアインクラッドを囲むように円盤上に配置されていて、そこに、俺たちーテスター千人が並ぶようにいる。
西の方から、夕日が差し込み、俺からは城の右半分が赤く染まっているように見えて、それはとても幻想的な風景だった。
『テスターの諸君、二か月間のベータテストお疲れ様』
アインクラッドの頂上のさらに上の部分、100メートルほどの高さの場所の空を真紅の市松模様が染めていく。
よく見るとそれは、二つの英単語が交互につづられたものだった。
一つは【Warning】、もう一つは【System Announcement】。
その、市松模様がある一定の面積を覆ったとき、その中央が黒色に染まり、そこの空間だけ無くなったように見えた。
実際、そこからは白衣に身を包んだ、この世界の製作者である茅場晶彦が現れた。
そして、彼はおもむろに俺たちにむかって話しかけてくる。
『諸君らのこの二か月間の働きでようやく長年の夢だったこのゲームが完成を迎えようとしている。ここで、感謝を述べたいと思う。ありがとう。些細なものだが、君たちには私からの感謝の証として、製品版パッケージの優先購入権をプレゼントしたいと思う。ぜひ、受け取ってほしい。それでは、次は完成された鉄と石の城ーアインクラッドで会おう。私は君たちの再来を楽しみに待っている』
彼はそうとだけ述べて、ホログラムの青い光に包まれた。
時を同じくして、俺たちの同じ光に包まれたのだった。
そんなとき、俺はふっと頭をよぎった言葉があった。
かのダグラス・マッカーサーが当時日本に侵略を受けていたフィリピンから、逃げる時に”私は必ずここに戻ってくるんだ”という意思を込めて放った言葉。
「I shall return.」
その言葉を放ったと同時にこの仮想世界と俺の思考は完全に切り離された。
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明日は待ちに待った製品版ソード・アート・オンラインの発売日。
明日は朝一で店に行き、二時間前から並ぶ。
もちろん、優先権があるため、入手できることはほぼ確実であるが、それでも、このゲームを手に入れるために並ぶ人がいるため、不安になるのだ。
ベータテストが終わってから、製品版が発売させるまでの時間、俺は自覚はなかったのだが、妙にソワソワしていたらしく、妹に「お兄ちゃん、キモイよ」と言われてしまった。
それを言われた時はこの世の終わりが来たのかと思い、三十分くらい何も出来なかった。
明日に備えて、早めに寝ようと、俺は午後八時半に布団に入った。
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俺は、ゲームを入手し、ソフトをナーヴギアにインストールし終わっており、あとはもう頭に被り、”リンクスタート”と唱えれば、あの夢の世界に転移できる。
あの世界の感覚を片時も忘れたことはない。
ログインしてからの行動予定はもう決まっている。
「お兄ちゃん、部活行ってくるからね」
今年で中一になる妹が学校に向かっていく。
妹が完全に見えなくなったことを自室の窓から確認した俺はナーヴギアが備え付けられているベットに横たわり、ナーヴギアを頭に装着するとあの世界への扉を開く呪文を唱える。
「リンクスタート!」
誤字・脱字等々報告していただければ幸いです。
次回は一層攻略です。