挑戦状叩きつけられたからイッシュに行く   作:月蛇神社

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イッシュ地方

『間もなく、当機はフキヨセシティに到着致します。着陸時の衝撃に備えて、シートベルトを締め、席をお立ちにならないようお願い申し上げます』

 

 機内アナウンスの音声で、意識を覚醒させる。膝の上にはイッシュ地方の情報雑誌がライモンシティのページで開かれている。暇つぶしに眺めていたら眠ってしまっていたようだ。

 

 寝ぼけた頭でシートベルトが締まっているかを確認し、シートに深く身体を預ける。ふと窓の外を見ると、首が長く白い羽毛を持つ鳥ポケモン、スワンナとその進化前の水色の羽毛で覆われた小柄な鳥ポケモン、コアルヒーの群れが夕焼け空を飛んでいる姿を確認でき、改めてイッシュ地方に来たんだと感じる。

 

 イッシュ地方

 

 固有の種類のポケモンが多く生息し、海底遺跡や古代の城の存在、マリンチューブで海の野生ポケモンを見れることで有名な地方だ。ポケモンの中でも珍しいのは四季毎に体毛や、頭部の角が変化するシキジカやメブキジカだろうか。

 4本の橋が地方を一周できるように架かっていることも特徴の一つだろう。スカイアローブリッジという大きな橋もヒウンシティとイッシュ地方南東部をつないでいる。橋巡りをするために訪れる橋マニアも多いらしい。

 

「だけどやっぱ、二匹のドラゴンポケモンにまつわる神話が一番有名かなぁ⋯⋯」

 

 真実を求めた兄に味方した白竜『レシラム』

 理想を求めた弟に味方した黒竜『ゼクロム』

 

 大昔、元々は一匹のポケモンだったが、共に国を治めていた双子の兄弟がどちらが正しいのかという理由で始めた大戦で一匹に分離し、それぞれに味方したポケモンだと伝えられている。

 

 この話は、兄弟は無事に和解したのだが今度は子孫が争い始め、それにキレた二匹がイッシュ地方全土を焼き払い、姿を消したという結末で終わっている。

 

 こんなところかと、眠気覚ましにイッシュ地方の情報を思い出していると身体に衝撃が走る。どうやら無事に着陸したようだ。頭を振り、眠気を飛ばしてから俺は機内を出る準備をした。

 

 

 空港で荷物と共に預けていたポケモンを受け取り、外に出て深呼吸をして改めてイッシュに来たことを感じる。現在時刻は18:30、野生のポケモンを見に行く分にはいいが、一日中飛行機に揺られて旅疲れの身だ。何よりジム戦をしに行くにはかなり遅い。となると行き先はポケモンセンター一択である。思考がまとまったところでボールが揺れていることに気づく。

 

「そうだよな、お前らも早く出たいよな」

 

 そう言いながらボールを一つ取り出しポケモンを一体出す。そして光と共に現れたのは、すらりとした薄緑色の身体で頭部から伸びる角に赤色で縁取られた一対のひし形の翼に緑色系の縞模様の長い尾、そして赤いカバーで覆われた眼が特徴的なドラゴンタイプのポケモン。

 

「フリャアァ!」

 俺の一番の相棒、フライゴンだ。やはり初めての地で最初に出すのはこいつにしたい。

 本当は全員出してあげたいところだが、街中であることと大型のポケモンもいないわけではないのでポケセンに着くまでは我慢である。手持ち達もわかっているが抗議したいのかボールの揺れが若干強くなる。

 

「とりあえずポケセンに着くまではみんな我慢してくれ⋯⋯おいまてゴンちゃん無理やり出ようとすんなお前が出ると道が塞がっちまうんだよ!」

「フリャアアアアァァァァ⋯⋯」

「お前はお前でしな垂れ掛かんな脱力するなぁ!さっきまで元気良かったよな!?」

 

 そんなアホなスキンシップをしながらポケモンセンターを目指して街中を歩く。このコミュニケーションが疲れの癒しだなぁと思いながらいつもの光景にほっとする。ホウエンやジョウトを旅していたときに出会ったトレーナーの中にはイッシュ出身のトレーナーもいたのでポケモンなどの情報は知っていたが、やはり初めての地に不安は多少あったのだ。

 

 やがて、赤い屋根が特徴的な建物が見えて来る。ポケモントレーナーにはなくてはならない施設、ポケモンセンターだ。ポケモンの回復やパソコンでポケモンの転送、宿泊施設等々、無かったらまともに旅もできないだろう重要な施設である。ジム戦の予約もここで行える。

 

 センターの中では6人程のトレーナーとポケモンが何匹かゆったりとしていた。ここが安らぎの場なのはどこの地方でもやはり変わらない。

 俺はチェックイン等を済ませるために入口正面の受付でジョーイさんに話しかける。この地方には初めて訪れるので先ずはトレーナー登録を済ませなければならない。登録されてからジムなどの施設を利用できるのでこれは忘れてはならないことだ。

 

「こんばんは、フキヨセシティポケモンセンターです。今回は何の用でしょうか」

「宿泊したいのですが、予約していたアカバです。あとトレーナー登録をお願いしてもよろしいでしょうか」

「アカバさんですね⋯⋯はい、確認しました。そしてトレーナー登録ですね。でしたらこちらの用紙に必要事項を記入してから受付までお願いします」

 

 そう言われ、1枚の紙とペンを渡される。これに名前や年齢、今までの実績を記入し提出したら登録完了だ。早速書き終え持っていくとジョーイさんが部屋の鍵を用意して待っていた。

 

「確かに受け取りました。しかし、カントー、ジョウト、ホウエンのバッジをそれぞれ8個集めるなんてすごい実績ですね⋯⋯あら?集めてもポケモンリーグに出場はなさってないのですか?」

「いやぁ、バッジ集めを目的として旅をしていましたからね、リーグにはあまり興味が無かったんです。だけど今回は訳あって出場予定ですよ」

「なるほど、そういうことでしたか。では、出場に向けてぜひ頑張ってください。こちらが部屋の鍵になります」

 

 そう言ってジョーイさんは部屋の鍵を渡した。これで荷物を置ける。

 受付でのチェックインも終わり、部屋に向かう。そろそろみんなを出したいので少々大部屋だ。部屋に入って荷物を置いてからポケセンの裏にある自由解放スペースに手持ちのボール9個を投げる。え?6個じゃないのかって?正直6匹だとまともに旅できないと駆け出しの頃のホウエンの旅で実感した。野生ポケモンは奇襲仕掛けてくるし悪人は数でごり押ししてくる。第一、6匹だけでは育成が間に合わないというのもある。

 

「さーて、お前らお待ちかねの解放タイムだ!」

 

 そうして出てきたのは、

 

 旅に出た頃からの付き合いであるフライゴンとサーナイトにジュカイン、通常よりも一回りは大きいサイズのペリッパーにバンギラス、受け役兼ベッド代わりのカビゴン、場をかき回すのが得意分野のゾロアーク、小さいが意外と姉御肌なピカチュウ、そしてうちのマスコットでみんなからの愛され担当なブースターだ。

 

「そんじゃ、騒ぎ過ぎず自由にしてろよーいつも言ってるからわかってるだろうけど特に暴動は起こすなよー。そんじゃ姉御、あとは任せた」

「ピッカ!」

 

 ピカチュウにボールポーチを任せ、敬礼と任されたという返答を聞いてから自由スペースを後にし、建物内のパソコンへ向かう。とりあえず20:00頃には戻って来るだろうし、その間にフキヨセジム戦の受付をする。予定日は明後日だ。

 いつもはフライゴンとサーナイトとジュカインを連れて、あとは現地で仲間にするのだが今回は違う。今回は全力でポケモンリーグに挑むのだ。イッシュに来る前も調整はしてきたが、流石に飛行機で丸1日もかかれば最終調整は必要だろう。

 

 パソコンで受付の必要事項を打ち込みながら、とうとう来ちまったなぁと思う。ジョウトのジム巡りを終えてホウエンの実家に帰り次の日挑戦状を叩きつけられたのが1週間前。そこからすぐに調整に5日、荷物を準備してイッシュに着いたのが今日だ。今回はジム巡りにリーグ戦もある、いつも以上にハードな旅だが、あいつからの直々の指名とくれば受けるしかない。

 

 必要事項も打ち終わったので、あとは自由記入欄を残すだけだ。これは、トレーナーが自分の苦手な部分を克服するために戦い方を希望したり、ジムトレーナーと戦ったあとにジムリーダー戦をしたいときに記入する欄だ。自由なので必ず記入というわけではない。自由記入と言ってもジムリーダーのポケモンを指定したり、あえて弱体化させたりは出来ないし、関係ないことは当然記入してはならない。ジムによってはジム戦を受諾しないというところもある。ジムは自分の実力を試す所だ、そんな奴が来ても意味はないだろう。

 

 それはさておき、俺がジムリーダーに求めることは1つだけだ。

 

 本気で潰しにかかってくれと。

 

 あいつの挑戦を受けるには試験用の勝負では全然足りない。全力のジムリーダーの相手を出来なければあいつは満足しないだろうし、俺も不完全燃焼で敗北するだろう。

 

 受付も終わり、夕食を終えて部屋に戻るとピカチュウとブースターがベッドで丸くなって寝ていた。相当はしゃいで疲れたのだろう、いい寝顔だ。ほかのみんなはポーチのボールの中だろう。二匹を起こさないようにずらしてから俺もベッドに横になる。そして今回の旅の目的を再確認するように思い出す。

 

 

 この地方での目的はただ一つ

 

 

 あのくそ生意気ドラゴン娘(チャンピオン)をぶっ飛ばすためだ




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