「昔昔ある所に勇者がいました、勇者は人々に嫌がらせをする魔王を説得する為に旅をしています。そしてやっと魔王の城にたどり着いたのです!」
なんて言う何処にでもありそうな物語を保育園児達に指人形の劇として発表しているのは讃州中学勇者部の面々、とても出来のいい劇とは言えないが中学生にしては十分すぎるとは思う。
(寝みぃ....)
俺こと安森奏は眠気を我慢しながらお粗末な劇を保育園児達にまざって鑑賞していた。のだが...
「君を1人になんかしない!」
バァン!
と、いきなり指人形の台座が音を立てて倒れ込んできた、おおかた友奈辺りが劇に熱が入りすぎて台座でも殴ってしまったのだろう、放送事故もいい所だ。
「あ、っと、えっとぉ...」
「あ、当たんなくて良かったぁ、でもどうしようこれ?」
いやホントにその通りだ、当たったら洒落にもならない。
台座の後ろで人形を動かしていた結城友奈と犬吠埼風がいかにも慌てている、園児達や先生たちもどうすればいいか分からないでいるようだ。そりゃそうだろう俺だってどうすればいいか分からない。
「ゆ、勇者キーック!」
『えぇ!?』
その場にいた勇者役の友奈以外の人達の声が揃った。
さっきまで話し合おう!とか君の事を1人になんかしない!なんてカッコいいこと言ってたのにいきなり武力行使に出たよ!?あの勇者!しかも明らかにキックじゃない攻撃してたし。しかも風も開き直って邪王炎殺黒龍波!なんて言いながら反撃している。それ三ツ目の魔人の技では無くて?
「樹!ミュージック!」
「えぇ!?えっと、これ!」
そして流れてきたのは俺がネットのフリー音源サイトからダウンロードしてきた魔王のテーマ、なんでさ...
とは言えそれではっはっは!ここが貴様の墓場だ!なんて言ったりする辺り流石は勇者部部長と言ったところか、実際ただの馬鹿なだけだろうけど。
「みんな!一緒に勇者に応援を送ろう!せーの頑張れ!頑張れ!」
おお、いいぞ東郷いかにもヒーロー物のミュージカルにありそうなノリで園児達に呼び掛けている。
「ぐぉぉぉ、皆の声援が私を弱らせるぅ...」
「今だ!勇者ぁパーンチ!」
「痛ってぇぇぇ!」
武道を習っている友奈だからこそのナイスなフォームから繰り出される勇者パンチが風の一応人形をはめているとは言えほぼ素手に襲いかかる、そんな全力パンチを食らえば痛ってぇぇぇ!ってなるのも仕方ないだろう。
しかも、これで魔王も分かってくれたよね?もう友達だよ?だと?なんて横暴な...
それでも保育園児達がテンション上がってワイワイ言っている辺り純粋な心は素晴らしいな...
とは言えこんなシナリオを園児達に見せてもいいものか?あ…保育園の先生達の目線が痛い!そりゃそうですよね、教育に良くないですもんね。
「東郷しめろ、しめろ!」
園児達達には聞こえない位の距離にまで近ずいて東郷に指示をだす。
「そうね。と、言うわけで皆のおかげで魔王は改心し祖国は守られました、めでたしめでたし」
てな感じに園児達への人形劇は友奈いわく大成功らしかったのでまぁ良いのだろう結果的に園児達も喜んでたし、後は我が家に帰る前にスーパーで今晩のおかずを買ってから帰宅する。
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「ただいま〜」
「お帰りなさいませ奏様」
と、俺を様付けで出迎えて来てくれる仮面を付けた女性、名前を聞いても教えてくれないけどよく俺の世話とかをしてくれるのはこの人だ、因みに専属メイドとかそういうのではない。
「帰るの遅くなってすいません、劇の片付けとかしてたら思ったよりも遅くなって」
「いえ、ですが言って下さればお迎えに上がりますのでこれからは...」
「いやさ、1回それやったら変に目立っちゃったからさ」
まぁ目立つのは仕方ないだろうな、なんて言ったってあの
「それじゃあんまり待たせると、機嫌悪くなるから俺行きますね」
「はい、ではあとの事はよろしくお願いします」
「はいはい、任されました」
そう言って物凄く装飾された扉を開けてそこで待っている人物にはなしかける。
「悪ぃ遅くなった今から飯作るから」
部屋にはベッドがひとつポツンとあり、そこには身体中を包帯でくるんだ1人の少女が横たわっている。
必要ないとはいえここまで何も無いと俺だったら頭がおかしくなる自信がある。
「わぁおかえりアモりん!私お腹ペコペコだよ〜」
「悪かったって、今日はお前の好きな物作るからさ、何が食べたい
まさかの我が家が大赦本部で帰りを待っている少女は園子様、因みに出てきたか大赦仮面のひとは多分ピーマンとか嫌いなんじゃないかな?