東郷と昼食を食べた後は水族館に向かった。
「綺麗ね」
「.....そうだな」
大きな水槽の前で魚を見ている、そんな東郷の横顔を見て答える奏。
「どうかした?」
「ん?東郷に見惚れてた」
「み、見惚れるって奏くん....」
言った本人である奏だけでなく、東郷も顔を赤らめる。ただ別に嘘は言ってない、実際に見惚れていた。
薄暗い所だとロマンチックになっちゃうからね、仕方ないね。
「ねぇ、奏く....」
「次行ってみようぜ」
東郷が何か言おうとしてたみたいだけどそんな事知るか!このままでいたらこっちが恥ずかしい!!!
東郷の車椅子を押しながら次のコーナーに2人で向かう。2人の間には微妙な空気が流れている。
あぁもう、どうしようかねこの空気、俺のバカ....
失言してしまった自分に心の中で悪態をつきつつ歩いていき、次のコーナーにたどり着く。
「あぁごめんちょっとトイレ」
「あ、奏くん?」
そう言って東郷を水槽の近くに押していき、トイレに向かう。
さてどうしようか....あの空気をどうにかしないとなぁ
....よっし!次に戻ったらいつも通りに接するぞ!
まぁ朝からいつも通りかって言うと微妙な感じだけどな。
東郷の元へ戻って行くと階段の上に東郷の姿が見えていた、恐らくいきなり消えた自分を探しに来たのだろう。
オイオイ、危ないぞ?その位置だったら少しバランス崩したら落ちるぞ?
「そんな所だと危ないぞ~」
階段を登りながらそんなことを言う。
「ごめんなさい、奏くんの様子が変だったから....私怒らせて....」
その時東郷がコチラに車椅子と共に落ちてくる。恐らく後から運悪く誰がぶつかってしまったのだろう。
反射的に身体を動かし、東郷を抱きかかえるように包み込む。
そのまま下の階まで奏の背中から落ちる、その腕の中には東郷。
「っ痛~」
「奏くん!?ごめんなさい!大丈夫!?」
「あぁ、うん多分、だけど...」
上から「すみませ~ん」と言いながら家族連れの女性がおりてきた。
その後は家族からの謝罪を受け取るが、コチラも怪我は無かったので事なき終えた。
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「ごめんなさい、本当に何ともないの?」
「あぁ大丈夫大丈夫特に怪我も無いよ」
「本当に?奏くんいつもこう言う時嘘を言うから少し見せて?」
「いやいや、大丈夫だってホントに何とも無いから」
「なら別にいいじゃない、見せて?」
「いや、だから....」
そこまで言って東郷を確認すると、プク~っと頬を可愛らしく膨らませてコチラを見ていた。
「.....はぁ、分かった、どうぞお好きに確認してくださいな....」
「はい、じゃぁお好きにさせてもらうね?家に行きましょ」
「仰せのままに」
そう言いながら東郷の家に向かい車椅子を押していった。
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「もう、ヤッパリ怪我あったじゃない!」
東郷の家に着くと上の服を脱がされて、背中に出来ていた擦り傷に薬を塗られている。
「女の子を守って出来た傷は名誉の傷です」
「何言ってるのよ、怪我をさせてしまった女の子の気持ちを考えて?」
「....仰る通りです」
完全に論破される奏。けれど東郷は浮かない様子。
「....ごめんなさい、元はと言えば私のせいなのに」
「いや東郷せいではないだろ?」
「私が大人しく待っていれば奏くんは怪我をしなかったのに」
あぁ....そう言う感じに考えちゃってるのね
「それを言えば元々俺がいきなり消えたのが悪いだろ?」
「それだって私が奏くんを怒らせてしまったからであって....」
怒ってた?俺が?
「俺怒って無いけど?」
「え?私が怒らせてしまったから消えたんじゃ?」
「違う違う、ちょっと変な空気になってたから切り替える為に、さ」
「よかった、あ!奏くんが怪我をしたのによかったは不謹慎よねごめんなさい」
苦笑しながら、そんな事を言う東郷をぽんぽんと撫でなる。
「奏くん?」
「そんな所まで考えなくてもいいんだよ、東郷は自分に厳し過ぎる、もう少し力抜きな?」
顔を赤くしながら俯いてしまう東郷に、奏自身も照れてしまう。
「ねぇ奏くん?私奏く....」
東郷の言葉の途中で夕暮れを知らせるチャイムが鳴り響く。
「そろそろ遅くなってきたし、俺は帰るよ」
「....そうね、そこまで送るわ」
最低だ、俺は東郷が何を言おうとしてるのか分かった上で、聞かずに帰ろうとしてる....ホント自分が嫌いになる。
一応言っておきますが、奏くんは別に東郷さんが嫌いとかそう言うのではありません!
照れているとかでもありません!ちゃんと理由があるんですよ!?