「か、奏、先輩?」
「おう、さっきぶりだな樹」
さっき別れたばかりの樹が、ガラの悪い3人組に路地裏で絡まれていた。
「あ?なんだよアンタ、この子の彼氏?」
「まぁ、そんな所かな?」
と言って3人組の間をわって入り樹の手を引いて出口に向う。
「おいちょっと待てよ、俺達はその子からぶつかって来たのを、慰謝料の代わりに身体で払って貰おうって言ってやってるんだぜ?」
「いやいや、コイツの身体よく見ろよこのペちゃパイに何を払って貰おうって?」
いや、樹ちゃん自分の胸を確認しないで?言ったの俺だけどさ?
「じゃ、そう言う事だから」
「おいおい、待てよ誰が行っていいなんて言ったんだよ」
何とか流れで帰ろうとしたが流石に返してくれないらしい。樹腕を掴もうとしてくる。
「おい、何触ろうとしてんだよ」
と、ガラの悪い人を突飛ばす、突飛ばした奴は尻餅をついてしまった。
「ほら、行くぞ樹」
強く突き飛ばし過ぎた様な気がしないでもないが、コレはアッチが悪い。
そのまま樹の手を引いて出口向う。
瞬間嫌な予感がして樹をグイッと、自分の背後に引っ張りる。すると目の前にガラス瓶が迫ってきた。どうやらガラの悪いヤツが投げてきたらしい。
「ってぇな....」
流石に塞ぐ事ができずに、頭に食らってしまう。
「なぁ、コレが樹に当たったらどうすんだよ?怪我すんだろ、せっかくこっちが穏便に帰ろうとしてんのにさぁ?」
ホントは見かけた瞬間に不意打ちで殴り倒そうとするのを我慢して話し合いをしてやったってのに...
「ゴメンな樹、ちょっと待っててなあの人達とお話して来るから」
コクリと頷く樹、どうやら部活では出さない怒気を含めた声色に怯えているようだ。
あぁ....また嫌われたかな?
「で?さっきのビン投げたのアンタだよな?樹に当たったらどうすんの?」
ガラの悪い3人組に歩み寄っていき、問いかける。
「あ?知らねぇよてめぇが....」
1人が応えようとするが知ったこっちゃねぇ。
言葉の途中で顔面にハイキックを叩き込む。
「答えは聞いてないんだよなぁ」
「な、てめぇ!」
ガラの悪い人が俺に掴みかかるが、クロスカウンターの応用で顔面に拳をぶち込む。
「な、なんだよオマエ!」
「通りすがりの先輩だよ、たった今機嫌が悪くなったけどな」
と言って右ストレートを残った1人の顔面に叩き込み、ガラの悪い3人組は全員気絶した様だ。
はぁ、終わった終わった。
油断した。全員無力化出来たと思い周りの警戒を怠っていたせいで新しく来たもう1人に気付かなかった。その結果樹は後から来たもう1人に捕まっている。
「何してんだテメェ!?」
樹を捕まえているヤツが聞いてくる。
「何?アンタコイツらの仲間?」
「あぁそうだよ、何してくれてんだお前は!?」
「何って、殴り倒しただけだけど?」
「ッチ、そこ動くんじゃねぇぞ!?」
と言ってポケットからカッターを取り出し、樹の頬に突き付ける。
「痛!」
突き付けるだけかと思ったら刃先が少し刺さっているようだ。樹の頬から一筋血が流れる。
「か、奏先輩....」
「おい、当たってんぞ!」
「知るかよ!お前は大人しくしてろ、さっき仲間を呼んだからな、仲間が来るまでは動くんじゃねぇぞ!」
「ゲスが....喧嘩で女の子に怪我させてんじゃねぇぞ」
「は!知るかよこんなペちゃパイ!」
おいコラやめろよ!樹だって気にしてるかも知れないんだぞ!?ったく、しょうがない。
「樹?」
「は、はい.....」
「絶対に動くなよ?」
ひゅん!と俺の言葉が言い終わると同時に上から何か落下してくる。それはカッターをガラの悪いヤツの手から叩き落とした。それと同時に樹に向かって走っていき樹の頬ギリギリに蹴りをぶち込む。背後のガラの悪いヤツの顔面に蹴りが突き刺さる。
一応保険用意しといて正解だったな。
先程落下してきたのは、樹を助かる前に念の為上空に待機させていた八咫烏だ。八咫烏は仕事を終えると俺の頭の上に止まる。
「ナイスだ八咫烏、今度うどんを奢ってやろう」
嬉しそうにバサバサと羽を広がる八咫烏。
「ゴメンな樹、大丈夫だったか?」
「......」
「い、樹?」
「か....」
「か?」
「奏先輩~!!!」
泣きながらタックルする様に抱き着いてくる樹、不意打ちだったために鳩尾にモロに食らってしまう。
「ぐほぉあ!い、樹ちゃん?」
「あ、ご、ゴメンなさい!大丈夫ですか!?」
「あぁ、わざとじゃないのね....うん、大丈夫大丈夫」
助けたはずの女の子に唯一のダメージを食らう奏であった。
奏は喧嘩めっちゃ強いんやで?なんて言っても戦闘データ諸々頭の中にインプットされてるのだから!
樹ちゃんの回はもう少し続きます。