「ま、まぁ取り敢えず帰ろうか?」
樹にタックルされた腹を擦りながら促す。
さっきのヤツらの仲間が集まるとめんどくさいしな。
「え、えっとそれが.....」
「ん?どうした?」
「足をさっきので捻っちゃったみたいで.....」
アイツ.....顔に傷を付けるだけじゃなく足まで怪我させやがって、もう2、3発殴っとこうか?
「でもさっきのヤツらの仲間が来るかもしれないし.....そうだ、ちょいと失礼」
「え?きゃぁ!」
樹の事を背負う、背中から軽く悲鳴が聞こえるが気にしないでその場を離れた。
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樹を背負い走っていると公園がみえた。
「ちょっとあそこで休憩するか」
「は、はい~お願いします....」
目を回している樹をベンチに座らせる。
少し激しすぎたか?ま、大丈夫だろ仮にも風の妹なんだし。
酷い話である。
「ちょっと怪我見せて貰っていいか?」
「はい、大丈夫です」
樹の了承を貰ってから靴などを脱がし、足首を確認する。
「う~ん、少し腫れてるな筋とかはいっては無さそうだな」
続いて頬の傷も確認するが、もんの少し刃先が刺さっただけの様だ。
「こっちも大丈....どうした?」
「あ、いえ、その」
顔を赤くして俯いている樹。
....よく考えるとめっちゃ近いな!
一瞬恋愛的な感情を考えてしまうが、何とか思考を逸らす。
「と、取り敢えずそこのコンビニで色々買ってくるから!」
危ない危ない、2日連続でアレはキツい!
「あ」
とコンビニに走って行こうとするが、樹服の裾を引っ張られる。
振り返ると上目遣いでこちらを不安げに見つめる樹。
大丈夫、大丈夫、てのかかる妹だと思え安森奏。
「だ、大丈夫だからすぐそこのコンビニに行ってくるだけ」
「でも.....」
「また変なヤツが来ても絶対に助けるからさ」
何とか説得し、樹に手を離してもらう。
「じゃちょっと行ってくるから」
仕切り直しコンビニに掛けていく。
止めて欲しいねぇ!無自覚何だろうけどさぁ!
心の中で叫びつつコンビニへ全力疾走する奏であった。
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コンビニで医療品を買ってきて、樹の足を治療し、樹をおぶりながら犬吠埼家への帰路を辿っているとふと樹が口を開いた。
「奏先輩」
「ん?何?」
「私実は奏先輩の事が苦手でした」
「うん、知ってる」
「え?分かってたんですか?」
えぇ?逆にあの態度でわからない思ってたの?
「まぁ、流石に、ね?」
「そう、だったんですかごめんなさい....」
「謝んなくてもいいよ、俺がなんか嫌われるような事したんだろ?」
「いえ!違います!ただ.....」
「ただ?」
「私、その男の人が苦手で.....」
あぁ、そう言う事ね。
「じゃぁアレか、元々男嫌いなのにズカズカ近寄ってくる俺はめんどくさい奴だったって事か?」
「まぁ、そうなりますね.....」
そりゃ嫌われますわ、嫌いな人種が馴れ馴れしくしてくるんだもんな。
「因みに何で嫌いになったとか気いても?」
「....実は一年前にお姉ちゃんが彼氏さんと分かれたんです、その時のお姉ちゃんすごい落ち込んでて....」
「......成程ねぇ~」
結局自分のせいじゃないか、一年前に風と付き合ってたのは他の誰でも無い。
俺自身だ。
「でも!今は違います!!」
「え?」
「私、男の人って今日の人達見たいな人とか、女性に酷い人だと思ってました、でも奏先輩は....」
「俺だって似たようなもんだよ」
樹の言葉を遮る、俺はそんなに優しい人間じゃない。
「違います!」
「違わないよ」
「だって!」
「だってもこうもない、俺がそう思ってるんだ、そうに違いないだろ」
俺なんかがいい人?笑わせる。自分のせいで嫌われてんのに頑張って仲良くなろうとしてたとか、笑い話にもならねぇ。
「.....なんで、自分の事をそんなに酷く評価するんですか?」
「.....それは」
「待ってください!」
「あ?」
「先輩が自分の事をなんでそんなに酷く言うのかは分かりませんけど、その以上に私が」
「先輩を、好きになります!」
.....いきなり告白ですか?
「.....え、なに?告白?」
「あ、ち、違います!」
慌てふためく樹。
コラバタバタするな、落ちるぞ。
「と、ともかくそんなに自分の事を悪く言わないでください!」
「なんだそれ?理屈通して物言えよ」
「あうぅぅ、だって....」
恐らくは感情的になって後先考えないで言ってしまったんだろう。
「ふふふ」
「な、ちょっと!なんで笑うんですか!?」
「悪ぃ悪ぃ、樹ってもっと冷静に物事考えるもんだと思ってた」
「冷静に物事考えなくて悪かったですね!」
ぷんぷんと顔を膨らませて怒る樹。
「悪かったって、怒んなよほら着いたぞここだろ?」
「む~」
未だに不機嫌な樹を宥めつつ、犬吠埼の名札の付いた扉をノックする。
「は~い」
と中から風の声が聞こえてくる。
「お待たせしました~って奏!.....なんで樹おぶってんの?」
ドアを開けた風はエプロンを付けていた、恐らく夕飯の準備をしていたのだろう。
「奏さんがどうしてもって言うから」
「な!?お前何言って....」
「ちょっと奏?話し合いしましょうか?」
その後風と話し合いをして、何とか誤解を解いて命拾いした奏だった。
「で?怪我をした樹をわざわざ家までお持ち帰りしてきた、と?」
「言い方ぁ!?」
未だにちょっと怒ってませんかねぇ!?
「冗談よ、全く樹も変な嘘つかないの」
「だって先輩が~」
「ハイハイ、で怪我の方は?」
未だにブーブー言っている樹を軽くいなす風、流石は姉だな。
「大丈夫だと思うけど、一応今度病院行っといた方がいいと思う」
「そっか、じゃ明日の放課後辺りにでも行きましょうか、一応見せて?」
「じゃ、俺は飯作っとくから」
「あ、じゃぁお願い。あたしアンタの手作り食べて見たかったのよね~」
そっか、結局食わせた事無かったな....
「任せな、めっちゃ上手いもん食わせてやるよ」
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「よっし出来た」
「お、意外とやるわね、まぁあたし程じゃないけど」
「言ってろ、食ったら驚くぞ?じゃ俺はこの辺で」
「え?食べて行かないんですか?」
「家で待ってる人がいるからさ、悪いな」
何かちょっと前に同じこと言った事あるような気がする.....
「しょうが無いわね、また今度ご飯付き合いなさいよ?」
「.....了解、約束する」
玄関まで歩いて行くと樹もケンケンでコチラに向かってくる。
「奏先輩!」
「ん?何?」
「さっき言ったこと本気ですからね!」
「.....期待しないで待ってるよ」
「え?何よ、何の話してるの?」
言葉の意味が分からず混乱している風。
「秘密!」
「らしいです」
「えぇ!?いいじゃん教えてよ~」
「だーめ!」
「あの帰ってもいいですか?」
いつまでもここにいたらコントを見ているハメになりそうだ。
「あ、ごめんごめん、じゃまた明日ね~」
手を振る風、一年前にはよく見た光景に心が痛む。
「....風」
「ん?どしたの?」
自分と別れた後自分やみんなの前ではいつもの変わらなかった風だが、樹の話を聞く限り無理をしていたのだろう。
「.....ゴメンな」
「....なんで謝んのよ」
反射的な謝罪であったが風は自分の謝罪が何に対してか分かった様だ。
「?」
自分と風の会話の意図がわからず困惑している樹。
「じゃまたな」
「えぇまた」
服の裾を引っ張られて上目遣いで樹ちゃんに見られたら平常心を保てますか?
私は無理です