安森奏は試作型防人である   作:ゆゆゆい

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ウチの話では大赦全員が悪い人って言うわけでは無いのです
それで"あの人"がいい人かどうかは分かりませんがね


第49話 三好春信は兄である

帰路を辿っていると、奏のすぐ横に黒塗りの大赦印の車が止まった

 

「奏様今お帰りですか、良ければお送り致しますが?」

「あ、ちょうどいい所に俺も少し話したかったんですよね」

 

車に乗っていたのはいつも見かける男の人の方の大赦の人だった

 

車に乗り込む

 

「奏様、三好夏凜の事はありがとうございました」

「あれ?もう知ってるんで?」

「ですが、他の方法があったのでは?いくら敵を全て倒したと言っても油断は良くないのでは?」

「あぁ....それはすみません.....正直反省してます」

「そもそも、彼女も勇者である前に女性です、これで痣など残った場合には将来に問題があるのでは?」

 

いやぁ、それを言われると辛いものがあるんですがねぇ.....

 

「返す言葉も御座いません.....それでですね」

「確かに彼女は不器用な所もありますし、口下手ですが今回は話し合うだけで良かったのでは?それに」

「あの~春信さん?ちょっといいですか?」

「なんですか、今は私が」

「あ、やっぱり春信さんで合ってるんですね?」

「......」

 

車内に沈黙が流れる

 

「.....人違いでは無いでしょうか?」

「いやいや隠すの下手すぎで無いですか?」

「.....もはや隠すのも無理ですね」

 

と仮面を外す春信

 

へぇ、仮面外したの初めて見たけど、やっぱり兄妹なんだな結構にてる

 

「少々寄り道しても?」

「えぇ、いいですよ」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「この辺ならいいでしょう」

 

車のドアを開けて外に出ていく春信

 

周りを確認してみると都心部から離れた所にある公園のようだ

 

「よく私が夏凛の兄だと分かりましたね?」

「え?逆にちゃんと隠せてる気があったんですか?」

「え?」

「いやいや、前もですけど夏凛の事になるといきなり長舌になるし、さっきの夏凛が怪我したっていう事話の時のヒートアップ具合凄かったですよ?あとそもそも若い大赦の人なんて春信さん位しか見た事ありませんし」

「.....そう、ですか、隠し通す自信があったんですが」

 

あ、やっぱり兄妹だな、全体的に甘いし多分チョロい

 

「ですがそれとこれとは話が違いますよ、正体がバレてしまった以上正直に言いますが、兄として男として女性を殴るのはいただけませんね」

「言葉もございません....」

「まぁ、結果的に上手く行ったのでこれ以上は言いませんが....確かに夏凛は不器用な所があるのであの位でもしないと難しかったかも知れませんし」

「あ、そこは兄目線でもそう思うんですね」

「不器用は子ですから.....」

 

今ので不器用って何回言われた?相当不器用だと思われてんな夏凛のヤツ、その通りだけどもね

 

「何はともあれ勇者部に戻る事が出来たのは本当によかった」

「随分夏凛の事を思ってるんですね」

「.....私はその、学生だったころはなんと言うか、周りから浮いていまして.....クラスメイトだけでなく、教師や両親からも壊れ物を扱うように接して来られてまして、ですが夏凛だけは普通に家族として私と接してくれたんです、それが私の心の支えでしたので大切にも思います」

「神童も大変ですね」

「おや?知っていましたか」

 

お恥ずかしい、と苦笑いをする春信

 

「にしても大赦の人ってもっと機械的な人達ばかりだと思ってましたよ」

「私の様な下っ端は仮面を取れば皆普通の人間ですよ、上層部は違いますがね、あの人達はそもそも仮面を取った所すら見た事ありませんし」

 

肩を竦めながらそんな事をいう事春信は一般人のそれと何ら変わりはなかった

 

「え、何それ怖い」

「私もそう思います、彼らは目的の為なら何でもするでしょうそれこそ勇者を斬り捨てることになろうとも、ね」

「斬り捨てられる前に敵を倒せて良かったですよ.....」

「......そうとも言えません」

「え?」

 

先程よりも声量を下げて近くによって話す春信、どうやら余程周りには聞かれたくない内容らしい

 

「実は未だに上層部は何かをしようとしています」

「でも全部敵は倒しましたよね?」

「はい、ソレは確認しています、ですが何かをしようとしているのも事実お気をつけください、いざ何か起これば私ではどうしようもありません、その時はどうか、夏凛を守ってやって下さい」

「言われ無くても、全身全霊で守りますよ」

「それは頼もしい、どうです?ウチの夏凛を嫁にいりませんか?」

「ははは、ナイスジョーク」

 

春信さんったら夏凛とはちがって冗談が上手いんだから

 

「冗談ではないですよ?奏様ほどの男性であれば安心できますし、何より夏凛の扱いもよく分かっているようですし?夏凛も満更でも無いようですしね」

「あ、あのですね、いやホントもう少し考えてから....」

「ふふふ、冗談ですよ」

「は、はははですよね、まっくびっくり.....」

「ですが夏凛に痣など残った場合には責任をとって頂きますのであしからず」

「も、勿論です!それはちゃんと!!」

「これも冗談です、皆さんは今でも神樹様の加護があるようなので、その位の怪我でしたらあと4日もしない内に完治しますよ、勿論夏凛に痣などが残ることもなくね」

 

くくく、と愉快そうに笑う春信

 

前言撤回、この人本当に夏凛のお兄さんか?全然チョロそうじゃないんだけど!?

 

「では、そろそろ帰りましょうあまり遅くなり過ぎると園子様が心配なさりますし、その怪我の言い訳の時間も必要でしょう?」

「......お気遣い感謝です」

「にしても奏様とは1度兄として話して見たかったので今回はいい機会でした、それで私の事はこれから義兄さんとでも」

「丁重にお断りします」

「そうですか?それは残念」

 

ホントに食えない人だな.....もしかしてこれも全部計算してわざと分かるように演技したとかないよな?

 

「私からは立場上話すことがなかなか出来ないので、夏凛には悪いですがきっかけが出来てよかったです」

 

.....まさかねぇ?




春信さんは完璧に奏くん側の人間ですのでご安心を!
因みに、私の所の春信さんはメインキャラだったら園子様ばりに頼れるキャラになれるほど凄いお人なんですよ

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