ふと、ドアが閉じる音で目が覚めた。位置的にどうやら誰かがトイレに入った様だ
んぁ?誰かトイレか?
時計を見てみるがまだ深夜
てかコイツはまだ抱き着いてたのか....
スヤスヤと気持ち良さそうに自分の腕の中で眠る風の頭を撫でてやる
.....ちょっと待てよ?これって一緒の布団で互いに抱き着きながら寝てたのか?
自分がした事を途端に意識してしまい、まだ軽いが頭痛に襲われる
ぐぬぬ、名残惜し....ゲフンゲフン頭が痛いからな、仕方ない
「ほら、風離れろ~」
風を引き剥がし、自分の布団に戻す
さてさて、もう一眠りするか、流石に起きるには早すぎる
自分の布団に入り直し、目を瞑る
ガチャとトイレの扉が開く音がした、そしてトスンと何故か目の前に何かが落ちた音がした
ん?なんだ?
目を開ける、そこには何故だか友奈の姿があった
ゆ、友奈!?なんで!あ、寝ぼけて1番近い布団に入ったのか、HAHAHA!ザケンナ!くそう、このままではまずい、早く友奈を起こさなくては!
「おい、友奈ここ俺の布団だから」
「ぅん?奏くん?一緒に寝たいの?」
「いや誰もそんな事....」
「いいよぉ」
と、抱き締めてくる友奈。顔が東郷ほどではないにしても、それなりにある友奈の胸に埋もれる
これはまずい!落ち着け!落ち着くんだ俺!平常心平常心....
「ゆ、友奈起きてくれませんか?」
「スヤスヤ」
起きる気配無しかい!もういい!気合で無視して寝てやる!
むにゅん、とまた胸を押し付けられる
無理です!こんな状態で寝れません!
せめて何とか引き剥がすし、距離を離すが
おぉう!?浴衣が!
引き剥がす際に浴衣がズレてしまい、友奈の胸元が露になる
せ、せめて友奈に背中を向けて寝よう!
風の方に寝返りを取ろうとするが、友奈に手を握られ出来なかった
なんでさ!友奈さん起きてません!?
ザザザと脳裏に映像が流れ込んでくる、赤い髪の少女が今の友奈と同じくらいの距離で眠っている。そんなイメージだ
またか、前にもあったけど、赤い髪の女の子は初めてか?
意識を集中させ、映像を見ようとするが、そこで急激な眠気に襲われた
ちょっと待てよ、もう少しだけ.....
ーーーーーーーーーーーー
目を覚ます、時計を見ると朝方だ
まだ身体がダルいな....ていうかなんかモヤモヤする、何か忘れてるか?
窓に目を向けるともう既に明るくなっている、そして窓辺の椅子に東郷が座っていた
.....絵になるね~
だるい身体を起こし東郷に近付いていく
「おはよう東郷、流石に早いな」
「おはよう奏君、起こしちゃった?」
「いいや、普通に起きただけ、にしてもそのリボン肌身離さず持ってるな」
東郷の膝の上に乗っているリボンはいつも東郷が身に付けているものだ
「これはね、私が事故にあった時に握り締めていたものなんだって。誰のものかは解らないけどとても大切な物、そんな気がするの」
「そっか」
東郷のリボンが俺の言うところの園子みたいなものなのだろう
「.....ねぇ、奏くん」
「ん?どうした?」
「黄金十二宮はその通りとして、バーテックスって十二星座がモチーフなんだよね?」
「らしいな」
なんか皆カッコイイ名前ばっかりだよな
「本当に戦いは終わったのかしら?.....いえ、ごめんなさい、せっかく全部終わって合宿をしているのに、私ったらネガティヴな事ばかり....」
「いや、そう言うのを気にするのは大事な事だと思うぞ、前にも言っただろ、そういう風に慎重に物事を考えられる東郷がいるからいつも助かってるってさ」
「そう、かしら?」
「そうだよ、ちょっとそのリボン貸してくれるか?」
「え?言いけれどどうするの?」
「髪結ってやるよ、あんまり上手く出来ないかもだけどな」
パァっと顔を明るくする東郷
そんなに嬉しいもんかね?
「そういう事ならぜひお願いするわ!」
「はいよ、お任せあれってね」
「.....ねぇ奏くん、夏凛ちゃんが言ってたのだけど、もしかして前に倒れたって私とお買い物に出掛けた時?」
「......違うよ」
「本当は?」
「......その通りですハイ」
「....ごめんなさい、私何も知らないで奏君を......迷惑だったよねこれからは気を付けるから、これからも友達で居てくれる?」
.....なんで東郷が謝るんだよ、悪いのは俺なのに....それなのになんでそんな今にも泣きそうな顔で謝るんだよ
風と別れた時もこんな顔をされたのをよく覚えている
「何言ってんだよ、当たり前だろほら出来たぞ!」
「わぁ!凄く上手なのね、どこで習ったの?」
「はて、それが俺にも解らない」
園子の髪を結った事もあるけど、その時も普通に出来たしな、記憶を失う前はよく女の子の髪を結ってたとか?....うむ、我ながらけしからん
「そう言えば前に言われた時も思っただけど、私慎重に物事を進めて、奏君を助けた事なんてあったかしら?」
「あっただろ、例えば.....」
いざ思い返してみるとパッと出てこなかった
「パッと出ないけど、そう思うって事は日々意識しないで助けられてるって事だろ?」
「確かにそうね」
若干の違和感があるが、単に体調が悪いだけという事にした奏だった
はい、またも過去の記憶の断片です。まぁお泊まりがあって赤い髪の女の子なんてあの子しかいませんよねぇ?