安森奏は試作型防人である   作:ゆゆゆい

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風先輩ほど敵キャラとして書きやすいゆゆゆキャラも他にいないんじゃないですかね?


第78話 乃木園子は〇〇である(終編)

生太刀を抜刀し目の前にいる風に斬り掛かる、だが横から先程まで黙っていた夏凜に割り込まれ防がれてしまう

 

「はん、さっきまで黙ってたから何もしないと思ってたよ」

「お生憎様、私達の邪魔をするなら容赦しないから」

 

夏凜の刃を弾いて距離を取る、その瞬間に先程までいた場所を風の大剣が大地を抉った

 

「2体1で卑怯なんて言わないでね」

「ちょうどいいハンデだよ、寧ろもう少し人数増やした方がいいんじゃないか?」

 

痩せ我慢の挑発では無い、勝つ自信がある

 

「奏君、やっぱり私達も....!」

「要らないよ、東郷達はそこで見ててな、こう言う事は俺がやる」

「でも!」

「じゃぁ2人は夏凜や風を攻撃出来るのか?」

「それは......」

「アッチは普通に攻撃してくるぞ、一切の躊躇なくな」

「.......」

 

黙ってしまう東郷と友奈、そうだそれでいい2人に友達と命掛けで戦わせる事なんて出来ない

 

「もういいかしら?こっちも早くアンタ倒して大赦ぶっ潰さないと行けないんだけど?」

「あぁ悪いな、もう終わったよ。さて再開しようか」

 

生太刀を構える、先程から脳内には殺せ殺せと、鳴り響いている。暴走寸前の理性を必死で引き留める、だが精霊からの精神干渉も捨てたものでは無い、何も考えずに風達を倒す事が出来る。......何も考えなさ過ぎると呑み込まれてしまうのだが

 

ま、取り敢えずは1人を落として1体1に持ち込む

 

生太刀で斬り掛かる、狙いは夏凜

 

「2対1で私に勝てると思ってるの?」

「さぁ?どうだろうな」

 

脇目で風を確認しつつ、夏凜を攻め立てる

 

「お前さ、なんで今風と一緒に戦ってんだ?なんで大赦をぶっ潰すとか言ってんだよ」

「は?そんなの大赦が私達に黙ってたから」

「違うな、お前は責任を感じてるだけだ、自分だけ満開出来なかった、自分だけ満開の後遺症が無い、それでも誰も責めてくれない、だから風を手伝う事で罪滅ぼしをしようとしてるだけだろ?」

「ちが、私は!」

「嘘つけ、だったらなんだこの鈍みたいな剣筋は?」

「っ!?」

 

図星か、まぁ最初に切り結んだ時にはもう分かってたけどな。

 

「おまえも友奈達と同じだよ、覚悟ができてないなら仲間の前に立つな!!!」

 

夏凜の刀を弾き、首筋に生太刀に押し付けた

 

「一旦そこで頭冷やしてもっかい考え直せ」

 

崩れ落ちた夏凜を横目に見て風に向き直る

 

さっきのセリフで少しぐらいブレてくれれば良かったんだが......こりゃ変わんなそうだな

 

正直に言うと自分も偉そうな事を言っておいて風を攻撃する覚悟が出来てはいない、いくら精霊がバリアを張ってくれると言っても、友人に刃を向けるのはしたくない、恐らく本気で戦えば風に勝つ事は容易だろう、だが恐らく本気で戦えば精神干渉に飲み込まれてしまうだろう

 

て言っても長く戦ってたら多分飲み込まれてだろうしなぁ.....やるとしたら防戦一方になりながらの説得か....最悪融合もひとつの手ではあるけど、精神干渉に飲み込まれて風を傷付けたら元も子もないし、それに次に出る障害が日常生活に支障のある事が起きれば風を止めたところで、その後風への負担が大きくなるし

 

「で、夏凜は考えてくれるみたいだけど?」

「別に関係無いわよ、私1人でも大赦はぶっ潰す」

 

ほらコレだ、ヤル気満々ですよ.......ったく干渉抑えるのも疲れるんだけどな~っと

 

少しテンションが上がっている、こんな状況なのにも関わらずなのに....恐らく少しずつだけが干渉が始まって来ている、あまり時間は無い様だ

 

「で、ホントにお前はそんな事をして樹が喜ぶと思ってんのか?」

「.......樹は関係無い」

「いやいや、さっきまで樹樹って言ってたのに樹は関係無いとか流石に無理だろ?で?こんな事をして樹は喜ぶと思ってんのかって聞いてんだよ」

「........うるさい」

「自分の為に友達を傷付けて、世界を滅ぼして、そんな事をされて本気で樹が喜ぶと思ってるのか?」

「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!!」

 

駄々をこねるように大剣を地面に叩きつける風

 

「.......はぁ、そうやって思考を止めれば楽だろうけどさ、それじゃぁ前には進めないぞ?」

「っ!!なんでアンタはいつもいつも!私と別れる時だって簡単に割り切って!私はいつも通りに過ごすのが凄く大変だったのに、アンタはいつもと変わらないように生活して!しかも私は別れたのに、他の子達と仲良くして!!」

「な、今はそんな事関係無いだろ!?」

「そんな事!?アンタにとってはそんな事なの!?」

 

詰め寄る風に後ずさってしまう

 

「アンタにとっては昔のことで、そんな事なのかもしれないけど私は今でも......!」

「違う!俺は.....!」

「違わないよ!私にはアンタしか居なかったのに、アンタにとってはその程度の事だったんでしょ!!!」

 

泣きじゃくる風、まさかここまで思ってる事だとは思わなかった.......俺は風に甘えていたのだろう、風なら大丈夫と平気だと、その結果がコレだもしも俺が風のそばに居られればこんな事にはならなかったのかもしれない.....

 

「.......」

「何とか言いなさいよ!」

「........ごめん」

「っ!!!なんで謝るのよ......ここで謝られたら私は!.....あぁぁぁぁぁ!!!」

 

大剣を構えつつこちらに突撃してくる風、ソレは大振り過ぎて避けるのは簡単だろう、だが避けるわけにはいかない、防ぐ訳にもいけない、ソレは受けなければならない、生太刀を投げ捨て、向かってくる風を抱き締める

 

「な!離して!離してよ!」

 

きっとここで風を離せば前と変わらない、風に甘えるだけだ、いつまでもそうしている訳にはいかない

 

「ごめん、風がそんなに思い込んでるなんて思って無かった.....俺だってあの時俺には風しか居なかったよ、けど風が勇者部を作ってくれたお陰で皆と会えた、みんなに支えて貰えた......俺はそんな勇者部が大好きだ、だからもうこんな事やめよう」

「でも.....もう私は......」

「今なら間に合う、まだ何もしてないんだ引き返せる」

「でも、私皆に.....」

「だったら謝ろう?皆に、勇者部の皆はそれで許してくれない様な奴らじゃ無いよ、後はまぁ後任に任せようか」

「後任?」

 

風の後ろを指さす、そこには樹の姿があった一体いつからいたのだろうか?彼女やら付き合ってたらやらの話辺りからだったら恥ずかしいものだが.....と言うか友奈達は確実に聞いていただろうからなんだかなぁ

 

抱き締めていた風を離して、樹に向かわせる。どうやら上手く言っている様だ、恐らく自分では出来ない家族ならではの信頼と言うヤツだろうか?風はもう大丈夫だろう、自分は未だに座り込んでいる夏凜に向う

 

「よう、頭は冷えたか?」

「.....お陰様で、しかもあんなもん見せられたらヤル気もなるなるわ」

「そりゃ良かった」

「......悪かったわね、アンタの言う通りしっかり考えれば風を止めるべきだったのにね」

「いんや、仮にお前が風と敵対してもあんまり役に立たなかったんじゃ無いかな?結局覚悟決まってるかどうかは大きい所だと思うぞ?」

「言ってくれるわね......ま、確かにそうね、あの風に気圧されてたかもね」

 

ここまで考えられれば大丈夫だろう、取り敢えずは1件落着かな?そう言えば結局夏凜達が消させるって何の事だったんだ?そもそもなんで大赦はあんな風に煽る様なメッセージを送って来たんだ?反乱が起きるとは思わなかったのか?送るにしても勇者システムを取り上げてからとかやりようはあった筈なのに.....

 

考える、が出てくるのは疑問ばかり

 

春信さんは嵌められたと言っていた、恐らく春信さん達と対立している大赦の人間だろう、そこまでは分かる、だが何をそいつらは何を狙っていた?風達を元々消す為にあんなメールを送ったのか?なら何の為に?消す理由なんてあるのか?

 

だが関係無い、今回は何も起こらなかった。いや、何か起こる前に何とかなった。ヤツらの野望は止められた、まぁホントに何も無く今回の事件が終わって良かった。

 

.......いや、待てよ、そもそもコレが、この場所に問題を起こして勇者部が集まって居ることに意味があるのだとしたら?

 

「奏?どうしたの?顔色悪いわよ?」

 

ぞく、と背後から嫌な予感がしたその場にいた夏凜を突き飛ばす、瞬間に先程まで夏凜がいた場所に1本の槍が突き刺さった

 

「これ、は?」

「いや~、流石アモりんだね今のを避けるとは思わなかったよ~」

 

驚愕する、その人はここに居る筈がない、だが自分がよく知っている声、そして自分をアモりんと呼ぶ人は1人しか思い付かない

 

「その、こ?」

 

ソレは自分達の勇者の服装に似た、しかし禍々しい姿の乃木園子の姿があった




今回が大分長くなってしまった.....まぁやっとタイトル回収出来たので頑張ったかいがありました

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