安森奏は試作型防人である   作:ゆゆゆい

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取り敢えず夏凛に弁当じゃなくて、手作りのご飯を食べて貰いたかった話し
後悔も反省もしていない


第8話 安森奏は手料理を食わせたい

晩ご飯の材料を買うためにスーパーに来たはいいけど、何作るかね。夏凛はサプリとか見に行ったし、好きな料理とかも無さそうだしなぁ...

 

悩んでいると丁度夏凛が買い物を終えて戻ってきた。その買い物かごにはサプリと煮干。

 

「そう言えば夏凛は食べたいものとかあるか?」

「別に、何でもいいわよ」

「んじゃ苦手なものは?」

「苦手なもの?特に無いわね」

 

じゃあうどんにするか...いや、ここはハンバーグだな。

 

材料を買って夏凛の住むアパートへ行く。

 

「へぇ、外見から見て何となく思ってたけど結構いい所だな、そして思ったよりも乱れたりしてない」

「思ったよりって何よ!」

「いや〜脱ぎっぱなしの服とかをそのままにしてるんじゃないかと思ってたもんで」

 

いや、これは部屋が片付いてるって言うよりも何も無いって言った方が正しいのか?

 

自分と同じ年代の女の子の部屋など園子以外には知らないが、園子の部屋に何も無いのは理解出来る。けど流石にここまで部屋に何も無いのは異常なのでは無いだろうか。ある物と言えばテレビとランニングマシン、あとはテーブル位だ。

 

「殺風景な部屋ですこと、お前普段家で何してんの?」

「殺風景で悪かったわね、家なんてご飯食って寝て、トレーニングさえ出来れば正直どこでといいわ」

「贅沢だね〜っと、調理器具とかはちゃんと揃ってんな、しかも結構良い奴揃ってんじゃん」

 

キッチンにはまったく使われてないであろう調理器具や食器が収納されていた。

 

「じゃ、私はランニングしてるから終わったら呼んで」

 

 

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side 夏凛

 

変わったヤツ、いきなり話し掛けて来たと思ったら模擬戦してくれとか、料理作ってやるとか言い出して、普通に不審者じゃん。

 

ランニングをしながら今日会ったばっかりのジョンマックレーン(安森奏)のことを分析していた。

 

と言っても邪な考えがある様にも感じないし、冗談は言ってる見たいだけど嘘を付いている様にも見えないしね、ていうか今日だけでジョンマックレーンって言う男が大分分かったような気がするわ...

 

現在進行形でジョンマックレーンと言う嘘をつかれている事に気付かない哀れな少女三好夏凜。

 

今も鼻歌歌いながら呑気に料理作ってるし、ご飯なんて適当に食べてサプリで栄養の調整すれば何だって同じなのに...

 

奏の気迫に押し込まれて料理を作って貰うことになったが、夏凛は正直あまり期待してはいなかった。

 

そう言えば、部活でやるって言ってだけどアイツ何部なのかしら?普通に考えれば剣道部だろうけどあれだけの実力があればレギュラーになるのも簡単だろうし、口ぶりからすると剣道を始めるみたいな感じだし。

私も刀1本とは言え私といい勝負が出来るのなんて楠芽吹ぐらいだと思ってたけど、普通の一般人にもいるのもね。

 

流石に芽吹には勝てないだろうが、奏の技量には素直に感心させられる。

 

でも、剣道で使うような技って言うよりも、私の技に近いものがあるわよね。まるでただ相手を倒す為だけの剣術(バーテックスを倒すための剣術)みたいだった...

 

「かりんりん飯できたぞ〜」

「誰がかりんりんよ!」

 

奏の呼び掛けで我に帰り、奏の茶化しにツッコミを入れる。

 

まぁ特に気にすることでも無いわよね...

 

夏凛 sideout

 

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「お、来たなどうよ?」

「へぇ、思ったよりもちゃんとしてんのね、アンタの事だから料理って言ってもギャグ路線で来るんじゃないかと少し警戒していてたわ」

「最初はそれも良いかなって思ったけど、今回は普通にハンバーグにしてみました〜」

 

o(`・ω´・+o) ドヤァ…!っと効果音までつきそうな、見事なドヤ顔を披露する奏。

 

「そのドヤ顔をブン殴ってやりたいわね...因みにギャグ路線で作ってたら何を作る予定だったの?」

「ぼた餅スープとぼた餅ライス、後はぼた餅サラダetc」

「まともな料理で心底ホッとしてるわ...ぼた餅ライスって何よ、それもう形が変わったぼた餅じゃないの」

 

その心底ホッとする料理を奏は食べて、後に夏凛も食べる事になるのはまた別のお話。

 

「ま、いいからいいから食べろ食べろ!俺が数少ない胸を張って言える特技が料理だからな、不満にはさせないぜ?」

「見た目は普通のハンバーグって感じがするけどね」

 

席に座りまず1口食べてみる。

 

「....ま、まあまあね」

 

コイツめわかり易く誤魔化しやがって。

 

「あ、もしかして口に合わなかったか?悪いな」

 

わざといかにもしょぼんとしている雰囲気をだす。夏凛ならこれでも引っかかってくれるだろう。

 

「ま、まぁ普通に食べる分なら美味しいじゃないかしら」

「ごめんな、気を使わせちゃって...」

「ちょ、そんなに落ち込む!?まってまって、美味しいわよ!店で出ても不思議じゃ無いくらい!」

「あ、ヤッパリ?いやぁ〜今回のは自信あったんだよね〜そっか美味しいか〜」

 

ニヤニヤと、してやったぜ!みたいな顔で夏凛を見下ろす。

 

「...アンタさっきのも演技だったんでしょ?」

「ナンノコトダカワカリマセン」

「はぁ、まぁ実際美味しかったわよ、気を使うとかじゃなくね」

「そりゃ良かった、まぁ料理だけは自信ありますから!」

 

チラリと壁に掛かっていた時計で時間を確認する。

 

思ったよりも時間かかったな、そろそろ帰らないとな、あんまり園子を待たせる訳にも行かないし。

 

「じゃ俺そろそろ帰るわ」

「ん?アンタは食べていかないの?」

「なんだよ一緒に食べたかったらそう言えよ」

「はぁ!?べ、別に一緒に食べたかったとか、そう言うんじゃなくてマナーとしてね...」

「はいはい、ツンデレ夏凛さんご馳走様です」

「誰がツンデレよ!」

 

そんなことを言いながら玄関に向かう。

 

「じゃまた今度な、見掛けたらまた声掛けるから指導宜しく!」

「ふん!次やる時は今回以上にボコボコにしてやるからね!」

「お手柔にな〜」

 

そう言って夏凛の家を出た。

 

園子は怪我してから味覚が弱くなった影響か、夏凛ほどのリアクションはしてくれないからな、また作ってやろう。




夏凛少し素直過ぎましたかね?ま、ツンツンするのは勇者部に入ってからでも遅くないよね

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