「俺が人間じゃ......無い?」
「そうだよ、今のアモりんはアモりんの記憶を元に神樹様が作った神造人間なんだよ」
神樹様に作られた?俺が?
「あぁ、アモりんは可哀想だね......死ぬ時凄く痛かったでしょ?苦しかったでしょ?寂しかったでしょ?辛かったでしょ?アモりんはこれから何度も死んでも造られて、死んでも造られて、そうやって神樹様の駒として戦い続けるんだよ?何度もあの苦しみを味わうんだよ?」
園子の言葉を聞いた瞬間に全身に悪寒が走った、またアレを味わう?冗談じゃない!嫌だ、もうあんな思いはしたくない!!!!
「どうしてアモりんだけがこんな目に合うんだろうね?理不尽だよね?そんな事を強いられるこの世界を守る価値はあると思う?うぅん無いよね、だから......アモりんはもう楽になればいいよ」
園子がコチラに向かって手を翳した、その瞬間に膝から崩れ落ち、地面に倒れ込んだ。力を入れようとしても動かない、精々首を動かし周りを確認するぐらいしか出来ない
「これ、は.......」
「おぉ!凄いしどろもどろとは言え喋れるんだ!流石アモりんだね、それとも神樹様に造られたその身体のお陰かな?とは言えこれで私の精霊の力が分かったよね?私の精霊の餓者髑髏は人の心の弱い所や、黒い所を増幅させて精神に干渉して相手の自由を奪うんだよ、まぁバーテックスや黄金十二宮には通じないけどね」
説明しながら今だに地面に倒れ込んでいるコチラに数本の槍を使いながら、コチラに歩み寄ってくる園子
「大丈夫だよ、痛く殺したりしないから。アモりんを1度殺してもう一度神樹様にアモりんを造って貰うんだ!そうしたら記憶も無くなってるから、また私のそばにずっと居てくれるよね?」
さも嬉しそうに語る園子、その顔には一切の悪意は無く、ただ純粋に本気でそう思っているのだという事が分かった
「じゃ、ばいばいアモりん」
そう言って空に浮いていた槍の1本をコチラに向けて放った。がその槍は奏に届く事は無かった、夏凜が間に入り槍を二本の刀で受け止めていた、そうして風は足を止めていた園子の頭上から大剣を振りかぶり強襲を仕掛ける
「こんのぉ!奏から離れろ!!」
「もう邪魔しないでよね~」
たが渾身の風の一撃は簡単に槍に阻まれてしまった
「友奈ァ!」
「はい!!」
だが夏凜の背後から友奈が拳を振りかぶり園子に殴り掛かる、園子はそれをバックステップで距離を取った、その隙に樹がこちらに近寄って来て心配そうにこちらを覗き込む
「大丈夫奏!?」
「あ、あぁ身体は何とも、無い」
「はぁ......仕方無い、アモりんは少し待っててね先に他の勇者部の人達を殺してから殺して上げるから!」
「ふん、やれるもんならやって見なさいよ!対勇者殲滅様だかなんだか知らないけど完成型勇者の私の敵じゃ.......」
「ふふ、あはははは!」
夏凜の言葉を遮り、大きく笑っている園子
「何が可笑しいのよ!!」
「はは!だって完成型勇者?貴方が?はは!!前線に投入されるのも遅い癖に、大きな戦果は挙げられず、皆が満開をして命懸けで世界を守ってるのに1人だけ対価無しにのうのうと生活してるのが完成型勇者なの!?あはは!」
「な!?」
「とんだ役たたずな勇者が完成型だなんて笑わせるね!?もうそこで倒れてなよ!」
園子は餓者髑髏の力を発動させた、夏凜も膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んでしまう
「夏凜ちゃん!?もうやめてよ!こんなことをしても奏くんは喜ばないよ!?ちゃんと話合おうよ!そうしたら......!」
「話し合い?他の人に隠し事をし続けて来た貴方がよく言えるね?」「え?」
「満開の後遺症の時も皆に黙っていて、皆を騙してる。でもそれだけじゃ無いよね?貴方はずっと勇者部に隠し事をしてる、そんな人が話し合おうよ!分かり合えるよ!そんな事を言われて信じられると思う?」
「そんな!私は.....!」
「違うって言うの?何ならこの場で皆に言って上げようか?結城友奈はずっと.......」
「やめて!!!!」
「........そう、結局話せないんだね。なら貴方はそこで見てなよ、ちゃんと全員殺して上げるから」
今度は標的を友奈にして餓者髑髏の力を発動させた、結果友奈も膝から崩れ落ち、倒れ込んだ
「次はね~犬吠埼風、貴方にしようかな?ねぇ貴方はどうして今こんな状況になっているか知ってる?」
「は?そんなの大赦が.......」
「そうだね大元は大赦のせいだよ、でもねこうなったのは貴方のせいなんだよ?貴方が冷静になって自分のすべき事、現状の整理をして暴走しなければこんな事にはならなかったよ?大赦からの連絡だって冷静に考えれば、何か可笑しいって分かった筈。なのに貴方が感情的に動いたせいで大赦の思惑通り......可哀想だね、貴方のせいで勇者部の皆は死んじゃうんだよ?貴方が部長なのにしっかりしていないからね、でも安心して、責任を持って貴方には1番先に死んでも貰うから」
そう言ってまた餓者髑髏の力を風に向かって発動した、風もその場に倒れ込んだ
「残ってるのは貴方だけ犬吠埼樹、ここまで色々言ってきたけれど、貴方が1番の役たたずだよ、戦闘でも足を引っ張る事が多くて、いつも姉の背中に隠れて過ごしている。貴方には勇者は向いていないよ、だから私が終わらせて上げる」
園子は樹に手を翳し、餓者髑髏の力を発動させる。最後に残った樹も膝から崩れ落ち、倒れ込んだ
「!!!」
たが、倒れきる前に腕を突き出し、そのまま立ち上がる
「アレ?失敗しちゃった?じゃもう1回」
もう一度餓者髑髏の力を発動させる園子、だが樹は今度は後に数歩後ずさっただけで、今度は倒れ込む事さえなかった。毅然と園子を見据えている
「......へぇ、まさか一瞬で餓者髑髏の力を破るとは思わなかったよ、いいね貴方面白いよ。うん、貴方は見逃してあげるよ、どこにでも逃げれば?追い掛けたりはしないし、大赦にも放っておくように言って上げる」
だが樹は園子の言葉には耳を傾けずに、依然として園子の前に立ちはだかる、倒れている皆を守るように
「......そっかそんなに死にたいなら貴方は1番先に殺して上げるよ、私は歴代最強の勇者でしかも満開を沢山してるし、貴方には精霊のバリアが無くて私にはある.......戦力は差歴然だね~」
その言葉と同時に腕を払うと、それと同調して大型の槍が空を薙ぎ払う、それを樹はギリギリでさけワイヤーで反撃をするが、樹の攻撃は精霊のバリアによって園子に届く事は無い
「無駄、無駄だよ、さてどこまで耐えられるかな?」
今度は小型の槍を複数樹に向かって放つ、樹はソレをすべてワイヤーで叩き落として見せた、その後もかすり傷などを受け少しづつ怪我が増えていく樹だが、何度も園子の攻撃を捌いていく、園子の言う通り戦力は差は歴然、その上あまり戦闘の得意では無い筈の樹だが防戦一方とは言え園子と戦えている
「へぇ、思ったよりもやるね、でもコレも捌ききれるかな?」
園子は再度槍を放つ、だが標的は樹では無く奏だ、樹はギリギリで奏と槍の間に入り攻撃を捌く、だが攻撃は続く樹は回避出来ない、回避をすれば後にいる奏に攻撃が当たってしまう。少しづつ攻撃を捌く速度が遅くなって来た
「そろそろ限界かな?ならこれでおしまいだね」
園子は大型の槍を横に薙ぎ払った、樹その攻撃をワイヤーで掴み軌道を逸らすが、大きな隙が出来てしまう、その子にもう1本大型の槍が樹に遅い掛かる、今の樹にその攻撃を防ぐ術は無かった......
ガキン!視界の端から飛び出してきた何かが園子の槍が弾き飛ばし、樹へ直撃する筈だった攻撃が逸れた
安森奏は視界の端から飛び出してきたものを確認して驚愕した、それは赤い衣装に身を包み、隻腕で片手には大きな戦斧を携えた少女が立っていた、奏は、いや奏と園子と東郷はその少女の事を知っている、だがその少女が今この場にいる筈が無いのだ
「そん、な、ミノ.....さん?」
「おう、三ノ輪さん家の銀さんだぜ?2年ぶりだな!」
その少女の名は三ノ輪銀、2年前奏達と共に戦い命を落とした筈の少女が樹を守った
はい、実は生きてた銀さんでした!一応言って置くと正真正銘の三ノ輪銀です