安森奏は試作型防人である   作:ゆゆゆい

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それにしても園子様強くし過ぎましたかね?個人的には圧倒的な絶望の象徴としてのキャラにしたかったのですが......ま、いっか


第83話 安森奏は〇〇である(後編)

あの後、銀は樹と協力しながら園子と戦闘を繰り広げていた、樹だけの時も善戦していただけあって銀が参加した後は大分安定して園子の攻撃を捌いている様だが.....

 

きっと園子はまだ本気出して無いな.....それに銀や樹も疲れが溜まって来たみたいだし

 

いくら攻撃を上手く捌くことが出来たとしても園子には精霊のバリアがある、銀達も疲労で少しづつ被弾する事が多くなってきた、このままではジリ貧になるのは目に見えている

 

いつまで寝転がってんだ......くっそ!動けよ!!

 

餓者髑髏の能力で動けない身体を起こそうとするが、腕1本すら動かす事が出来ない......このままではきっと園子に全員殺されてしまうだろう、自分が死んだ時の事を思い出す。凄く寒かった、怖かった、痛かった、辛かった.....あんな思いを皆がする。そう考えるだけで身体が強張る

 

ダメだ、ダメだダメだダメだ!!あんな思いを皆にはさせられない!

 

自分が死んだ時の事を思い出す、そうだ確か自分は.....そう、ムリエルに殺された......だが自分が死んだ記憶はそれだけだったか?いや違う、自分は何度もあの夢で金髪の少女に殺されている

 

あの子は何なんだ?ただの夢にしては......

 

夢で何度も自分を刺殺した金髪の少女、ただの夢.....にしては現実味があった、そして何よりあの夢は毎回何故か懐かしく感じていた。だが自分が殺されたのはムリエルだ、そう断言できる、だがあの夢をただ夢にして置けるものでは無い

 

どう言う事だ?もしかしてまだ戻ってない記憶があるのか?

 

よく見る少女に殺される夢を細部まで思い出そうとする、すると今までに無いほどのに頭痛に襲われ、あまりの痛みに一瞬で意識が飛かけ、脳内にはノイズだらけの映像が大量に流れ込んできた。その記憶はモヤが掛かったように見えないが、記憶の殆どは哀しい記憶で、その哀しみに押し潰されそうになる

 

何だ、コレ.....なんでこんな.....もう嫌だ、園子の言う通りだ、何でこんな目に合わないと行けない?なんでこんな辛い思いをしてまで戦わないと行けないんだ?

 

頭痛は収まらない、それどころかどんどん痛みを増して行き、意識が少しづつ薄れていく

 

........このまま気を失ったら楽になれるんじゃないか?そしたら全部終わってるだろう、きっと園子だって皆を苦しめて殺したりはしないだろし、それで園子の気が収まるなら.......

 

『何馬鹿なこと言ってるんだ!!!!!!』

 

突然脳内に声が鳴り響いた、2年前の記憶を合わせても聞いたことのない少女の声だった

 

『お前が諦めてどうするんだ!?ここで諦めたら勇者部の皆どころかあの子も救えないぞ!!』

 

誰だ?アンタは俺とあった事が.....

 

『そんな事はどうでもいい!お前はそれでもいいのか!?満足なのか!?』

 

だって......仕方無いじゃないか、園子にとっても皆にとってもコレが1番......

 

『それは奏さんが逃げてるだけです!!』

 

また聞いたことの無い声が脳内にきこえてきた

 

『もっとあの子を見て上げてください!!本当にそれがあの子にとって1番いい事だと、奏さんは本当にそう思ってるんですか!?』

 

.......けど、そもそも身体が動かないんじゃ.....

 

『あら、情けないわね?大切な子の為に立ち上がる事すら出来ないの?』

 

また新たな声が聞こえてくる

 

っ!!アンタに何が分かる!!知ったような口をきくな!!

 

『その言葉あの時の貴方にそのまま返すわ、あの時私にあんな事を言ってたのに、いざ自分の立場になればこの程度?貴方それでも勇者?』

 

何の事だ?そのものアンタ達はだれだ?って言うか俺は勇者じゃ.....

 

『うぅん、奏くんは勇者だよ、私達と一緒に戦い続けて世界を守った勇者』

 

またも新たな声が聞こえてくる

 

俺が勇者?なんでアンタはそう思うんだ?俺は防人の試作型なだけで....

 

『違うよ、奏くんは勇者。思い出して、奏くんはあの時どうして戦うって決めたの?』

 

どうしてってそんな、理由なんて無い、いきなり戦えてって言われたから戦ってただけで.....

 

『本当にそうですか?奏君はただ言われたから戦ってんですか?』

 

また新たに声が聞こえてくる

 

.....いや、違う。俺は皆を助けたかったから、皆を手伝いたかったから戦ったんだ

 

『なら大丈夫です.....奏君はあの時と何も変わっていません』

 

あの時?何の事だ?俺はアンタとあった事なんて......

 

『すまない、いつもお前には無理をさせてしまって.......だがお前にしかあの子は救えない、いや.....お前なら救える筈だ』

 

そんな....俺には出来ない

 

『大丈夫さ、なんて言ったって.......私が愛した男なのだからな』

 

その言葉を聞いた瞬間にモヤのかかっていた記憶が晴れていき、頭痛も引いていった

 

そっか.....うん全部思い出した。あぁくそ、全く情けないな、いつも助けて貰ってる

 

銀達の様子を見ると、今まさに園子が銀にトドメを刺そうとしている所だった

 

「園子!!!」

「え?アモりん?」

 

園子が突き刺そうとしていた槍を止めて、驚いてこちらを見ている

 

「まさかアモりんまで餓者髑髏の力を破るとは思わなかったよ、流石アモりんだね、少し待ってて?いまトドメを刺したら.....」

「なぁ園子、さっきさ、そんな大変な事をしても戦う必要があるの?って聞いたよな?」

「え?」

 

端末を取り出して、八咫烏を出現させる

 

そんな事決まってた事だった、だからここは自分の事を好きだと言ってくれたあの子の言葉を借りよう

 

「そんなの、俺が勇者だからだよ、理由なんてそれで充分だ」

 

端末を操作して、隠されていたシステムを起動させた、その瞬間に奏の身体は光に包まれ、新たな衣装と武器が装備されていく

 

まず両腕に金弓箭が装備された

 

そのボウガンは大好きな友を守る為に最後まで強大な敵に立ち向かい、命をかけて守り抜こうとした勇者の背中を最後まで守っていた勇者のもの

 

その金弓箭を守るかのように旋刃盤が装着された

 

その旋刃盤は大好きな友を身体がボロボロになっても、強大な敵に立ち向かい、力の限り戦い続け命を落とした勇者のもの

 

次に両手と両足に篭手とシューズが装備される

 

その篭手とシューズは世界を守る為に、大好きな友を守る為にたった1人で多くの敵と戦い、世界を、友を救った勇者のもの

 

シューズに寄り添うかよ様に両足のふくらはぎに大葉刈の刃が装備さらる

 

その刃は精霊に精神を蝕まれ、1度は友を殺そうとし、力を失った.....それでも妬み、憎み、憧れ、愛したその友を身を挺して守った勇者の刃

 

右手には生太刀が装備された

 

その太刀は最後の1人となっても世界の為に戦い続け、その意思は今も尚受け継がれており世界を守り続けている勇者の太刀

 

額には真紅のリボンがハチマキのように装備された

 

そのリボンは直接戦う事が出来ずとも、勇者達を支え自分の信念を曲げてまで戦い続け、1人の愛する人の最後を見届けた巫女のもの

 

そして最後に左手に打鉄が装備された

 

その太刀は、身体が戦い続けると共にボロボロになっていき、精神すらも崩れていっても世界のため愛する人達の為に戦い続け、そして300年経った現在も世界の為に愛する人達の為に勇者として戦い続けている勇者の太刀

 

そして今までは黒い羽毛に包まれていた八咫烏が鮮やかな蒼に染まっていく

 

そして全ての変身が終わった、そこに立っているのは試作型防人では無く、正真正銘の讃州中学勇者部所属勇者安森奏であった




投稿が遅くなって申し訳ございません、大事な所なのでしっかりと書きたかったんです......

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