「奏君?貴方どうしてこっちに刀なんて......」
「餓者髑髏、ヤツらを縛れ」
園子から抜き取り、封印した餓者髑髏の力を自分自身が行使する。餓者髑髏の力は上手く発動出来たようで樹以外の皆は全員地面に倒れ込んでいる
「やっぱ樹には効かない、か......ま、それでも問題は無いかな」
「な、あた、しにも?」
「餓者髑髏の力を使う前にちょっとばかしいじくって使ったんだ、園子用に作った防衛システムだから上手く行くとは思ってさ、結果は予想通り」
「なん、で......こんな......」
「さっきも言ったろ?楽にしてやるってさ......」
銀に向かって生太刀を構える、その瞬間に銀の顔が驚愕に染まった
「くくく、悪い悪い。ちょっとお巫山戯が過ぎたな」
「な、に?」
「別にこれ以上の事はしねぇよ、ちょっとだけそこで横になっててくれれば俺が全部倒して来てやるって言ってんのさ」
「な!?」
「今の俺ってさ、結構強いんだぜ?あの位の敵ならちょちょいのちょいって感じで一捻りさ」
なんて、流石に全部相手にするのはキツいけどな、今は勝てるとしてもヤツらは進化し続けるそうなればいつかは俺も勝てなくなる......ま、そうなれば大赦に新型の勇者システムを作って貰えばいいし、俺だけで敵を殲滅出来るって事になれば皆はあくまで予備として扱われる。そんな風に言えばいい、今の俺にはそれだけの権力が有る
そんな事を考えていると後から、クイクイと袖を引っ張られた。振り返ると樹が端末をこちらに突き出している。画面には
「また、そうやって1人で無理をするんですか?私も一緒に行きますからね!」と書いてあった
「駄目だ、樹はここに残ってろ」
ブンブンと首を横に振る樹
「樹が俺と一緒に戦ってたら誰が無防備な皆を守るんだ?確かに皆には精霊のバリアがある、でもいくら何でも反撃も出来ない、逃げる事も出来ない状態で嬲られ続けてもずっと守ってくれると思うか?」
はっ、とした表情になり一緒には俯いてしまう。賢い子だ、風辺りでアレばそれでも引き下がらずにグダグダ言って居ただろう。そんな樹に罪悪感を覚える、がさっき言ったことはほんとだし、ここで樹を戦わせれば大赦は樹も戦わせ続けるかもしれない
そんな事させられるかよ、身体を犠牲にして戦い続けるのは俺だけで十分だ、どうせ死んだ身。ならこの身体は皆を守る為に使い続けよう
未だに俯いている樹の頭に手を置き、そのままグリングリンと撫で回す。もしも樹に声があれば、あうあうあーと言っていそうなものだ
「ごめんな意地悪な事言って、でもコレは譲れないんだ。戦うのは俺だけでいい、皆はいつも通りの日常に戻れるんだ」
次の瞬間に樹に脛を踵で蹴られた、精霊バリアが発動しない位の威力、なおかつ普通に痛い強さで
「痛ってぇ!?何すんだよ樹!?」
樹は痛がっている奏をぐい、と両手で引きせた、奏はバランスを崩し、樹に倒れ込んでしまったが樹はしっかりと奏を抱き抱えた、と思えばワイヤーで奏の身体をグルグル巻にして、自由を奪う
「い、樹?」
しばし端末を操作したかと思うと端末の画面をこちらに向けて見せてくる画面には
「奏先輩がいなかったら普通の日常にならないじゃ無いですか!!そんなの私は許しませんから!!絶対許しませんから!!」
と書いてあった。樹の表情は今にも泣き出しそうな顔をしている
「ごめん.......そうだな悪い、全部俺1人で決めてた、そうだよな1回みんなで話し合わないとな」
パァ、と笑顔をこちらに向ける、そしてワイヤーを緩めてくれた、そのまま樹を抱き締めると樹は慌てている、可愛い奴め。だが
「ごめん」
ワイヤーが全て解けた所で謝りつつ樹の腹に拳を撃ち込む、精霊のバリアは無効化して数分は動けない位の強さで
痛みで倒れ込み、咳き込んでいる樹を見ながら罪悪感に押し潰されそうになるのを必死に堪える
「痛よなごめん.......でもやっぱり戦うのは俺だけでいい、苦しむのは俺だけでいい、だから皆はそこにいてくれ。大丈夫、絶対帰ってくるから、そしたらちゃんと話そう、いっぱい説明したい事もあるし、な」
そう言って敵に向かって走っていく
.....俺は嘘を付いてばっかりだな.......もう皆に会うことなんて無い、コレからはずっと大赦でお役目を全うし続け、園子に詫び続けるんだ.....そうなるとさっきのが勇者部の皆とは最後の会話になったのか......ははは、最後の最後まで嘘つき、か
思えば自分は300年前から嘘をつき続けてきた、きっとコレも天罰なのだろう
本編よりも樹ちゃんが強いのは、主に奏くんの影響だったり、そして奏君はあくまでも1人で戦い続ける事を選びました、それは200年前からそのつもりだったり?