プロジェクト・ビクティムは以前と比べたら随分と順調に進んでいた。
手帳の論理は誰にとっても驚愕のものらしく、それに目を付けた安生の能力には一角のものがあるのだろう。
しばらくの期間をおいて彼らが結論付けた新士居ソルタの論理というのは以下のようなものだった。
新士居ソルタは江戸時代の人間ながら仮想現実技術の登場を予見していた節があるということ。
また、新士居はSAOサバイバーの証言するゲームクリアの時に起こった奇跡。
黒の剣士キリトが起こしたデータを超える意志の力による不可能を可能にする能力を肯定する立場であること。
つまりデータを超える意志の力を仮想現実化で発動すれば、仮想現実世界の中で時間遡行が可能だということ。
そして技術班がそれに対して下した判断は、その技術の開発は可能だ。
ということだった―
しかし技術問題は可能だとしても、問題としては誰がデスゲーム下のアインクラッドへダイブするか。
ということだった。ナーブギアの在庫などはレクトの本社に大量に残されているので人数的な制約はないが意志の力を必要とするため試験的な運用ができない。つまり時間遡行するとはいえ、デスゲーム下のアインクラッドにダイブすると生命の安全が保障できないのだ。
東自身の腹は、いや東だけではない。プロジェクトメンバー全員の腹は、もう決まっていた―
2025年5月。強大な権限と、大企業ならではの人海戦術で簡単ではあるが時間遡行フルダイブシステムは実現された。そして、そのシステムでデスゲーム下のアインクラッドでは命の保証が無いとは知りながらもダイブを希望したのはプロジェクト・ビクティムの―
全員だった。
茅場晶彦による悪夢のようなアインクラッドでのデスゲームが終了してから、アーガスの後任レクトの子会社。ここ、イーアスでプロジェクト・ビクティムのメンバー8人が再びアインクラッドへの悪夢へと挑もうとしていた。
失われた人の記憶を、取り戻すために―
「「リンク・スタート!!!」」
時はアインクラッドにおいて、デスゲームのチュートリアルが始まった2011.11.06―
混乱するSAOの世界の中で彼らは、東を囲みそれぞれの決意を確認する。
「ここから先に、命の保証はできない。少しでも危険を感じたら、その時は迷わず逃げてくれ。」
リーダーである東の指示に、メンバーたちの顔は覚悟の色が強くなる。
「それではこれより、SAO犠牲者の記録を収集する『プラン/サルベージ』を開始する―」