戦車大戦-大洗華撃団、出撃せよ!-   作:遠野木悠

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頭の中で「檄!帝国華撃団」か「御旗のもとに」のイントロを思い浮かべながら読むのをお勧めします。実際に曲をかけながら読んでも構いません。
それっぽくなっていれば幸いです。
ちなみに、次回予告に関しては、その前の話で語り手をしたヒロインが読み上げている設定にします。今回はみぽりんが担当ですね。

後半部分は、文字数制限の関係で急遽作った短編となります。


次回予告&別の世界線(聖グロリアーナ編)

次 回 予 告

 

 

無事、大洗女子学園の先生になることができた大神さん

 

初めての授業に備えて戦車道について調べるうち、大神さんは西住の娘でありながら戦車を降りた少女が抱える心の傷を知った

 

たとえ戦車道の経験者が他にいなくても、あの子だけには無理強いをさせてはならない

 

そんな考えとは裏腹に、彼の(あずか)り知らないところで暗躍する影があって──

 

次回、戦車大戦

 

第二幕『結成、大洗華撃団です!』

 

学園艦の明日を目指して、パンツァー・フォー!

 

「あの、大神さん。……わたしと勝負してくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

おまけ「もしも大神さんが聖グロに赴任したら」

 

 

 

「一郎さんはこんな言葉を知っていて? 成功は最終目的ではなく、失敗したら終わりでもない。大事なのは続けることなんですのよ」

 

正面の椅子に座る金髪碧眼の少女、ダージリンくんはそう言ってティーカップを口元へ運んだ。目を閉じ、静かに紅茶を飲む姿は本物の英国淑女のように優美で、つい我を忘れて見惚れてしまう。

 

「イギリスの元首相、ウィンストン・チャーチルですね」

 

ダージリンくんの言葉を補足するように声を出したのは、向かって左側にいる小柄な少女、オレンジペコだ。OG会の発言力が強く、年功序列の意識が濃く残るこの学校で、入学して間もなくダージリンくんの信頼を勝ち取った期待の1年生である。

 

「いきなりどうしたのです、ダージリン」

 

今度は右側の席に腰を下ろす、色素の薄い髪をおでこが見えるようにまとめた少女、アッサムが口を開いた。淑やかで礼儀正しく、面倒見も良いことから多くの生徒に慕われる模範生である。

 

ここ、聖グロリアーナ女学院は、英国の格式や作法を身に着けることで気品ある乙女の育成を目指すお嬢様学校だ。

 

名門校ということで、生徒たちには学業のみならず芸術や運動、ボランティアへの取り組みが推奨される他、「社交性を重視する」という校風の下、全員参加が義務付けられるお茶会が定期的に開催されるなど、あらゆる活動を通して女性としての資質を磨くことを教育方針として挙げている。

 

配属先の大帝国劇場へ向かう機関車の中で眠りに就き、目を覚ますと俺は100年先の未来へ迷い込んでいた。途方に暮れていた俺に手を差し伸べてくれたのは、そのことを教えてくれたダージリンくんである。彼女の働きによって住む場所を得た俺は、紆余曲折を経て、聖グロリアーナの教師として戦車道という武道の選択授業を受け持つことになった。

 

新たな就職先まで斡旋してくれたダージリンくんには本当に感謝している。今の俺があるのは彼女のお陰だと言っても過言ではない。

 

しかし、経歴はおろか身分も不確かな相手をここまで支援するのは、いくらなんでも学校の方針を逸脱しているのではなかろうか。彼女の厚意を疑うわけではないけれど、どうして見ず知らずの俺にそこまでしてくれるのだろう。

 

前にその理由を尋ねてみたことがある。すると、ダージリンくんは相変わらずの不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

 

持てる者の義務(ノブレス・オブリージュ)ですわ」

 

今思えば答えになっていない気もするが、彼女が言うと納得できてしまうから不思議である。事実、過去の俺は何の疑問も抱かなかった。

 

聖グロリアーナにおいて、戦車道は生徒たちが最も関心を集める事柄のひとつだ。

 

受講者のうち、戦車にまつわる技術はもちろん、学業成績、気品や優雅さ、礼儀作法から人望に至るまで高い資質を持つ生徒は幹部生として認められ、紅茶にちなんだ渾名が送られる風習がある。彼女たちだけが利用できるクラブハウス『紅茶の園』は全生徒の憧れで、そこへ入る資格を得るために日々切磋琢磨しているそうだ。

 

もうお気付きだろうが、俺と相席する3人はともに紅茶の渾名を持つ幹部生だ。中でもダージリンくんは戦車道チームの隊長、ペコやアッサムはその副官、参謀役を任されているため、『紅茶の園』の利用を許された生徒からも注目されている。

 

さらに言うと、紅茶の渾名を賜ったわけでもなく、ましてや男の俺がいることで周りの関心が助長されている気がしないでもない。ここへ来るたび様々な感情を乗せた視線を注がれて正直落ち着かないのだけど、他ならぬダージリンくんが是非にと言うので毎日のように足を運んでいる。

 

さて、話を戻そう。先のダージリンくんの言葉に対して、アッサムは疑問を呈した。しかしそれも当然といえば当然で、現状で彼女の真意を理解し得るのは恐らく俺だけである。……というか、明日の朝一番に話そうと思っていたのに、どうしてダージリンくんがそれを知っているのだろうか。

 

きっと尋ねたところで飄々と躱されるのは目に見えているし、下手な抵抗はしないでおこう。俺は溜息をつくことで肯定を示した。

 

「……昨日の会議でついにOG会が首を縦に振ってくれてね。近く導入が予定されていたクロムウェル巡航戦車に加え、新たにセンチュリオンが今年の全国大会から使用できるようになった」

 

特定車輌以外の運用を禁ずるこの学校の流儀、そしてその発信源たるOG会に対して真摯に、粘り強く交渉を続けた末にようやく成果を勝ち取ることができた。ただ伝統に縛られるだけでなく、より良いものにするため、時に新たな文化を取り入れる──これを皮切りに、ダージリンくんが夢見る温故知新が実現することを願うばかりである。

 

「本当ですか!?」

 

「なるほど、それで朝からダージリンの機嫌が良かったのですね」

 

俺の言葉にペコが目を輝かせ、アッサムが納得したように頷く。

 

聖グロリアーナを全国優勝へ導くため、教師として当たり前のことをしただけなのだけど、それでみなが喜んでくれるのなら俺も頑張った甲斐があるというものだ。

 

「あなたにかかれば、あの頑固なお姉様方も骨抜きですわね」

 

2人だけでなく、そう話すダージリンくんも嬉しそうだ。

 

「先ほどの言葉の通り、何事も継続することが大切なのよ。だから一郎さんには引き続き交渉に励んでいただいて、ゆくゆくはコメット巡航戦車も運用できるようにしてくださいな」

 

元々運用が決まっていたクロムウェルでさえ難色を示していたOG会が、さらに別の戦車を導入することに否定的なことは自明の理だ。そんな前提がある中、ようやくセンチュリオンの運用にこぎつけたというのに、ダージリンくんも無茶を言う。しかしまあ、教え子の頼みを無碍(むげ)にはできないし、やれるだけのことはやってみることにしようか。

 

これはまた骨が折れそうだと考えていると、横から不満げに息を呑む音が聞こえた。見ると、アッサムが眉間に皺を寄せており、

 

「言葉が過ぎますわよ、ダージリン。わたくしたちのことを想ってご尽力なさっているのに、あなたの言い方では、一郎様を便利な道具としか思っていないように聞こえます」

 

データ主義とダージリンくんが評するように、過去の統計などに精通する彼女は、知識を蓄える過程でかつてこの世界で生きていた別の俺のことを知ったらしく、こうして味方をしてくれることが多い。彼女が知る大神一郎の記憶がない以上、なんだか好意を利用しているようで罪悪感を憶えることもあるが、その反面「こんなに可憐な子に尊敬の眼差しを向けられるのも悪い気はしないな」とも思う。

 

しかしながら、先の発言に悪意がないことは経験則でわかっている。それにダージリンくんのことだ、きっとアッサムの小言に心を揺らすこともなく、持ち前の巧みな話術で煙に巻くに違いない。

 

「あら。それは誤解よ、アッサム。一郎さんに期待し、全幅の信頼を寄せているからこそ、わたくしはあえてあのような言葉を使ったのですわ」

 

予想通り、ダージリンくんはもっともらしいことを言ってこの場をやり過ごすつもりである。

 

いつもなら追求するだけ無駄と諦めるところだが、しかし今日のアッサムはひと味違った。席を立ち、ダージリンくんの耳元へ顔を寄せた彼女は、

 

「……一郎様に嫌われても知りませんわよ?」

 

離れていたので密談の内容はわからないけれど、それを機にダージリンくんはぴたりと動きを止めた。ティーカップを胸の辺りまで持ち上げた状態で、淑女の手本のような微笑をたたえたまま──いや、よく見ると口の端が引き攣っている。金切り音が聞こえると思ったら、彼女が持つカップとソーサーが手元の震えに共鳴していた。

 

「そ、そそそ、そんなことにはならないわよね? ね? 一郎さんはお優しい方だから、わたくしがちょっと意地悪を言っても決して嫌いになったりしないはず……よね?」

 

ひと味違うのはダージリンくんも同じで、どういうわけか平時では考えられないくらい取り乱していた。

 

果たして何を言えばここまで彼女を動揺させられるのだろう。後学のために知っておきたいところだ。

 

「ねえ、お願いだから返事をして頂戴。無視されているみたいでとっても寂しいの。一郎さんにそんな仕打ちをされたら立ち直れなくなってしまいますわ。……あの。早く何かおっしゃらないと、わたくし泣いてしまいますわよ? 良いんですの?」

 

先ほどよりも弱々しい声が聞こえ、思考の海に沈んでいた意識が持ち上がる。視線の先にいるダージリンくんは、言葉通りその瑠璃色の瞳をこれでもかというくらい潤ませていた。

 

「ああ、すまない。少し考え事をしていてね、別に無視をしていたわけじゃないんだ。それに、多少きつい言葉を使われたとしても、それでダージリンくんを嫌いになることはないから安心して良いよ」

 

聞こえていた範囲で答えを返す。嘘偽りのない本音だ。

 

俺の声からそれを察したのか、ダージリンくんはその顔に大輪の花を咲かせる。今までに見たことがない、歳相応の幼さが残るかわいらしい笑顔だった。

 

そののち、彼女は腕組みをしてアッサムへ向き直る。

 

「ほら見なさい、アッサム。一郎さんはね、あなたが思うよりずっと心の広い方なのよ」

 

「……まったく、すぐ調子に乗るんですから」

 

ダージリンくんの百面相ですっかり毒気を抜かれてしまったのだろう。呆れ顔で嘆息しつつも、アッサムに先ほどまでの怒りは見られなかった。

 

カップに残る紅茶を飲み干して、ダージリンくんは席を立つ。

 

「さて、そろそろお昼休みも終わるわ。午後からはお待ちかねの戦車道よ。アッサムもペコも早くなさい、授業に遅れてしまいます」

 

その場で右手を突き出し、高らかに彼女は宣言する。

 

「──英国華撃団、出撃ですわ!」

 

 

 




ダー様はデレるとめんどくさかわいくなりそうなイメージ。

あと、聖グロについて調べて知ったのですが、アッサムさんの背は150センチしかないそうです。見た目の雰囲気から、なんとなく160以上あるような気がしていました。大神さんと二人羽織をしたらすっぽりと身体が収まりそう。
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