道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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十三話です。あまり間があくのもあれだったので、きりの良さそうなところで投稿。

一言: 年末年始の帰省どうするべきか。


十三節 人気者ですねー

 

 

 

 

 

 

 星たちを見送った横島と風は、水鏡女学院の一室へと来ていた。これからのことを横島に話す為である。

 

「さて、お兄さんには色々と説明しないといけません。しっかり、聞いて理解してください。まず……」

 

「その前に聞きたいんだけど、いいかな?」

 

 風が説明に入ろうとするのを、横島が遮り他の三人――朱里、雛里、瑠里――に視線を向ける。視線を向けられた三人は揃って首を傾げている。代表して瑠里が口を開く。

 

「何でしょうか、子考様」

 

「それ! なんで、様付け!?」

 

 その言葉に、何を言っているのだろうかと不思議そうな顔をする三人。

 

「いや、何言ってんのコイツみたいな顔しないで……。大体、士元ちゃんは一回納得したよね!? 様つけしないって!」

 

「あ、あの時は、その御使い様だと分かっていた訳じゃないですし……」

 

「いいの。天の御使いだとしても、オレは様付けされるような上等な人物じゃないからさ」

 

「……分かりました。恐れ多いことですが、そこまで言われるのでしたら」

 

 渋々了解する雛里。横島としては、そこまで畏まる意味が分からず不思議そうな顔をしている。その様子を見てとった風が、横島に天の御使いという存在について説明し始める。

 

「お兄さんの疑問を解消する為に、先に天の御使いという存在がどういったものなのかを説明しましょうか。そうですねー、お兄さんは天の御使いとはどのような存在だと思っていますか?」

 

「そうだなー。取り敢えず、占いの話を聞いた感じだと、ヒーロー……英雄みたいなもんか? 困っている人を助けて、悪者を倒すって感じ」

 

 風の問いかけに、自身のイメージを伝える横島。口にする度に気持ち悪そうな顔をしているのは、あまりにも自身とかけ離れた人物像だからだろうか。

 

「英雄という言葉は間違ってはないでしょう。困っている人を助けるというのも。では、お兄さんが言うところの悪者とは?」

 

「そりゃ……盗賊とか悪代官とか、あとは……悪霊?」

 

 首を傾げながら呟く横島。盗賊や悪代官は時代劇からのイメージだが、横島は瑠里の母親の不調の原因が低級霊に憑かれたことであったことから、悪霊という可能性も考えたようである。

 

「悪霊……ですか。お兄さんが碧の剣で空を斬ったのは、その悪霊を斬っていたということなのでしょうか……? まぁ、今はそれは重要ではないです。風たち……いえ、大陸の人たちが思う天の御使いが戦うべき者。それは、現王朝。つまり、皇帝陛下なのです」

 

 風の言葉に絶句する横島。勿論、賊や悪政を働く者も敵ですがという風の言葉は聞こえていないようである。根が小心者な横島からすれば、最高権力者と敵対することを意味する風の言葉は、簡単に受け入れられるものではないということだろう。

 そんな横島のことなどお構いなしに、風は言葉を続ける。

 

「皇帝陛下は、天子……つまり、天帝の子――天帝に代わり、地上を統べることを天命とする御方だと信じられてきたのです。今までは、その尊き血縁の元に大陸は治められてきました。ですが、代を重ねていくにつれ血は薄くなるもの。また、天命を蔑ろにするものも出てきます。そのような時が訪れた時、天帝は今代の天子を廃し新しい天子に天命を託すと言われています」

 

「新しい天子……? 天命? それって……もしかして」

 

「そう、新しい天子こそが天の御使いなのですよ。最も、漢王朝にしてみれば地獄の使いでしょうが。もしくは、取り込むことで未だ漢は天帝の意思を受け継いでいるとでも宣伝するか。あとは、天下を狙う諸侯あたりが利用しようと企む可能性も高いですねー。お兄さん、人気者ですねー」

 

「そんな人気なんていらんわ……」

 

 意気消沈といった様子で呟く横島。その背中から哀愁が漂っているように見えるのは気のせいではないだろう。

 

 風の語る懸念は間違いではないが、一部を大袈裟に語っているものである。確かに、そのような考えを持っている者もいるだろうが、現状では予言を信じている者は皆無に近い。困窮に瀕している民でさえ、心からは信じていない。施政者に至っては、利用する価値があるかも怪しいと判断しているというのが風たち軍師の偽りなき見解である。

 既に乱世が始まっているのならば、御使いの噂が真実味を増し漢王朝や各諸侯は、昨日会議した内容――御使いの排除あるいは利用――に近い行動を起こすだろうが、現状は乱世の兆しが微かに見えるといったレベル。先が見える者なら、乱世に備えているだろうが流石に天の御使いを考慮に入れている者はいないだろう。

 

 それにも関わらず、風が脅すかのように横島に語ったのは、横島に自重を促す為である。また、横島に彼が背負った天命を教えることで、今後について考えてもらうという意図もある。

 

「ま、そういう訳でして。お兄さんは次期皇帝陛下候補と言う訳です」

 

「嬉しくねー。オレは美人の嫁さんもらって平穏に暮らしたいだけだっつーのに」

 

「まぁ、もう一人御使いはいるようなのでその人に頑張ってもらえばいいじゃないですか」

 

 嘆く横島を安心させるように声をかける風。その言葉に安心する横島であったが、その際、風が雛里たちとアイコンタクトを交わしていたことには気づかなかった。

 

(これで、当面の行動方針は決定ですねー。力を蓄え、”白”の様子を伺うということで)

(了解です)

 

 

 

 

 

「では、天の御使いについてお兄さんが理解出来た所で風たちから提案が」

 

「あ、その前にいい? 洛陽に行くって話のことなんだけどさ。オレとしては、陳留に行きたいんだよね。風ちゃんと士元ちゃんもそれでいいかな?」

 

 横島からの提案に顔を見合わせる風たち。彼女たちからすれば渡りに船なのだが、今から横島を言い含め(説得し)ようとしていただけに、この提案には驚いたようである。

 

「風たちは構いませんが……」

 

「そっか、良かった……。ああ、あと孔明ちゃんたちも一緒に来てくれると嬉しいんだけど……」

 

 風の言葉を聞いた横島は、その後視線を朱里と瑠里に向け勧誘の言葉を投げかける。劉備陣営に行くことを諦めた横島は、有名な諸葛孔明と徐元直を引き抜くことにしたようである。それにしては、軽い誘いではあったが。

 

 特に、瑠里――徐庶元直――に関しては是非とも勧誘したいと横島は思っている。彼の持つ知識では、曹操は劉備の元から徐庶を引き抜く際、母からの手紙と偽った。その結果、徐庶の母は自ら命を断つ。元から曹操の元に入れば、そんな未来が訪れる可能性は低くなるのではないかと考えたのである。

 

 因みに、曹操に徐庶の母からの手紙だと偽り引き抜くという策を提案したのは、程昱仲徳――つまり、この世界では風――になるのだが、横島はそのことは覚えていない。

 

 

 一方、勧誘をかけられた朱里たちの方はといえば、横島に勧誘されるとは思っていなかったためか、ふわわ、はわわと右往左往している。

 そんな彼女たちに対し、風と雛里は少々羨ましそうな視線を向けている。彼女たちは、自分の意思で横島についていくと決めた。そのことに後悔はないが、どうせなら横島の方から求められたかったという思いが少なからずあるのだろう。それだけ彼女たちにとって、横島に誘われると言うことは意味があるのである。

 しかし、横島はそんな彼女たちの内心に気づく筈もなく、極めて軽い感じで誘っていた。三国志を知る者としては、ダメで元々という意識があるのであろう。横島は宇宙意思を知っているのだから、当然といえば当然ではある。

 

 実はこの時、横島の頭の中からはスッコーンと抜けていたのだが、この銅鏡世界はあくまでも()()()()()()()()であり、横島の知る三国志の世界ではない。もっと言えば、銅鏡世界は横島が居た世界とは完全に切り離された別の世界であり、別の法則が支配している世界なのである。

 つまり、横島が知る歴史と大きく違う結果になったとしても、宇宙意思による修正が働くとは限らないのである。

 

 

 

 

 

「それで……どうかな?」

 

 横島が再度問うことで、四人はそれぞれの考えを中断し意識を横島へと向ける。たった一言で、正気を取り戻すあたりは流石軍師といったところであろうか。

 問われた瑠里と朱里は、お互いに目配せし頷くと声を揃えて答えるのであった。

 

 

「「この命、貴方と共に」」

 

 

 

 




 十三話です。あまり間があくのもあれだったので、きりの良さそうなところで投稿。
 幼女更にゲットだぜ! の回でした。真名交換のタイミング逃した感が半端ないです。

 色々本編では書きましたが、要は好き勝手やっても宇宙意思による修正とかないよっていう話です。朱里とか引き抜いたんで、その辺のフォロー的な話。

 GS世界とは別の法則ってのはその内本編に出る筈です。

 恋姫世界は、GS世界とは別の法則が支配している。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。割と更新してます。

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