道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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十六話です。いやー、体調もそこそこ良くなってきました。
あと、サブタイトルに意味はありません。

一言: 今年初更新。大分遅れましたが。ごめんなさい。


十六節 ここがええんか?

 

 

 

「ではでは、お兄さんはここで士元ちゃんとお馬さんたちのお世話をお願いします。風たちは必要なものを仕入れてきますので」

 

「了解、こいつらには世話になってるからな。ばっちり世話してやるさ」

 

 賊に出くわすこともなく村に辿りついた横島一行。今は、村唯一の酒屋兼宿屋に併設された厩舎に馬たちを繋いだところである。これから、風と朱里、瑠里の三人は横島と雛里と別れ、物資の補給と情報収集へと向かうところである。

 

「気合たっぷりですねー。では、行ってきます。終わったら宿で待っていてください。ああ、士元ちゃんの言うことを良く聞くのですよ? ふらふらと出歩いて迷子になったりしてはダメですからね?」

 

「ワイは子供か……」

 

「似たようなものです。ある程度は教えましたが、それでもお兄さんがこの辺りに不慣れということには変わりありませんから」

 

 そう言うと、風は朱里と瑠里と共に出店の方へと向かう。現在、村には商隊が逗留しており、そこで情報や物資を得るつもりなのである。

 残された横島は、隣りに立つ雛里へと声をかけると馬たちの世話をはじめるのであった。

 

 

 

「いやー、それにしても大きいよなー。士元ちゃんたちの馬より二回り以上大きいんじゃないか?」

 

 先程まで自分と風を乗せていた黒馬の体を綺麗にしながら、呟く横島。それに対して、他の馬の体を洗っていて雛里が答える。

 

「そうですね。私もこんなに大きなお馬さんを見るのは初めてです。聞いた話によると、大陸の遥か西にある国には、大陸の馬より大きな馬がいるそうです。もしかしたら、そのお馬さんがそうなのかもしれません」

 

「へー。遥か西っていうと……イタリアか? ま、どこの馬でも関係ないか。お、ここがええんか?」

 

 そう声をかけながら、楽しそうに世話を続ける横島。そんな横島を微笑ましく見ていた雛里であったが、世話を途中で放置され不機嫌そうな馬の嘶きに我に返ると慌てて世話に戻るのであった。

 

 

 

 横島と雛里の二人が馬の世話を終えて道具を片付けていると、そんな彼らの背後に近づく一つの影が。その影は、横島たちの背後に立つなり、黒馬を見上げ一言声を発するのであった。

 

 

「でかっ! いやいや、デカすぎやって。これ兄さんたちの馬? いや、ホンマにデカいわ……実は馬とちゃうって言われても不思議やないっちゅうか、そっちの方が信じれるちゅうか」

 

 

 その声に振り返った横島は、瞬時に声の持ち主へと視線を走らせる。

 

(顔……よし! 服装は虎柄……って、露出多すぎやろ!? 極めつけにあの特大サイズの胸!? これはもう誘ってるに違いない!? では、久しぶりに……)

 

「生まれる前から愛してましたーーー!!」

 

 そう叫びながら、横島がその身を宙に投げ出すまでにかかった時間は、僅か0.01秒。

 

 ――何げに人間の伝達速度の限界を超えていた。

 

 

 そんな人間を超越した反応を見せた横島はといえば、空中にその身を置きながらも思考を続けていた。

 

(あの超乳もいいが、全体的にむっちりとした感じがなんともエロい……いや、太ってるわけじゃないぞ? ……って、アレは!?)

 

 観察を続ければ続けるほど、横島の顔はだらしなくなっていく。だが、その影が持つあるもの(・・)を見た瞬間、横島はあらゆる物理法則を無視し、真下に落下するとザザっと音を立て距離を取ると雛里の背後へ隠れる。

 

 その一連の動作を呆然と見ていた女性――李典曼成――は、雛里の影に隠れ情けなく震える横島を視界に捉えると、横島……というか、雛里に問いかける。

 

「な、何やようわからんが……それで隠れたつもりなんか? その兄さん」

 

「さ、さぁ……どうでしょう?」

 

 最も、聞かれた雛里も横島の様子にどうすればいいのかと困惑している。如何に優秀な軍師(候補)といえども、いきなり女性に向かって愛を叫んだあとに、人間離れした動きで自分の背に隠れる人物への対処法は分からないようである。

 

 そんな何とも言えない空気を破ったのは、その空間を作り出した横島本人の叫びであった。

 

 

「ど、ドリルは嫌やー! 尻だけは! 尻だけは堪忍してーー!? ちゃうんや! その使い方は男のロマンとちゃうんやー! えぐれる! えぐれてまうー!?」

 

 

 どうやら、李典の持つ武器――螺旋槍――が横島の中で眠っていた悪夢(なにか)を思い出させてしまったようである。

 

 

 

 

 

「つまり、ウチの螺旋槍と似た奴をケツにぶっ刺されそうになったことがあって……。で、それを思い出して取り乱した……と」

 

「……怖かった、本当に怖かったんだよー」

 

「よしよし」

 

 アレから泣きわめく横島を雛里が落ち着かせ、どうにか事情を聞き出すことに成功。今は、話を整理する李典と雛里に泣きつく横島、その横島の頭を撫で慰める雛里という混沌とした状況が出来上がっていた。

 

 

「知らんかったとはいえ、何や悪かったな~。ま、お兄さんも元気だしーな。いつまでも、妹に泣きついとったらカッコつかんで?」

 

「あ、私たち兄妹では……」

 

「そうなん? ま、そんなことよりこの馬デカイなー。って、そんな逃げんでも……」

 

 謝罪を終えた李典が、黒馬を良く見ようと立ち上がると、横島が李典から距離を取る。その際、余程警戒しているのか、お尻を庇うようにして移動していた。

 

「せやかて、ワイが飛びかかったらソレでグサッとやるんやろ?」

 

「そりゃ、襲われたら反撃するやろ……。大丈夫やって。そっちが変なことせんどけば、ウチから仕掛けたりせんって」

 

「乳揉んだら?」

 

「ん? 揉みたいんか?」

 

「是非とも!」

 

「あはは、正直な兄さんやなー。でも、ダ~メ。やろうとしたら、グサッとやるで?」

 その言葉に恐怖の声をあげ、必死に尻をガードする横島。それを見て笑う李典。

 

 そんな二人に挟まれた雛里はと言えば、李典の胸を見たあとに自身の胸元に視線をやると深くため息を吐き、空を見上げるのであった。

 

(空が青いなー。あ、鳥だ)

 

 

 




 十六話です。取り敢えずあげます。色々滞っており申し訳ない。
 取り敢えず、強い人たちのうち一人が判明。他の人たちは次回以降判明します。

 最後に……過去に横島に何があったのかは聞いてはいけません。

 馬関連。やたら強い人が守る村。横島の反応速度。ドリルと横島。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。割と更新してます。

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