道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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十九話です。色々忙しいです。

一言:近所の飲食店が軒並み閉店していくんですが・・・



十九節 さっさと陳留へ行くか

 

 

 

 

「そういえば……皆さんはどのような関係なのですか? 子考殿と仲徳殿は兄妹だと思うのですが」

 

 瑠里と別れてすぐに村を出立した横島たちが、陳留まで残り半日ほどの距離まで近づいた頃。一行の道案内兼護衛として雇われた楽進――凪――が、昼食休憩を取っていた風に質問する。

 

「そういえば、そうやな。洛陽に行った徐なんちゃらっちゅう嬢ちゃんは、兄さんのこと様付けで呼んどったけど……」

 

 同じく雇われた李典――真桜――も気になったらしく、口を挟む。

 

「お兄さんと兄妹ではないですよ。徐元直ちゃんも含めて、風たち四人は、お兄さん――子考様を主と仰ぐ者たち。つまり、主従の関係ですね。まぁ、旗揚げした訳ではないので、何れ主従の契りを交わす関係と言った方が正しいでしょうか」

 

「主従……そうですか。それで、陳留へは何の為に?」

 

「陳留は色々と都合が良いですからね~。暫くは陳留を拠点に活動する予定です」

 

「活動……ですか?」

 

 風の活動と言う言葉に首を傾げる凪。隣りで聞く真桜も同様である。そんな二人に、風はただ微笑むだけ。その微笑みに、部外者である自分たちにこれ以上話すつもりがないのだと二人は悟るのであった。

 

 

 

 そんな三人に、離れた場所で馬の世話をしていた横島たちがやって来て話しかける。

 

「お~い、クロたちの世話終わったぞー……って、取り込み中だった?」

 

「いえいえ。ちょっとお話していただけですから、あと少し休んだら出発しましょうか」

 

 そう言うと風は、自分の隣りに横島を招く。招かれるまま、横島が隣りに腰を下ろすのを確認すると、風は朱里たちにも座るようにと促す。

 

 全員が腰を下ろすと、自然と横島が中心となり会話が始まる。

 

「いや~、クロが走りたそうだったから少し走らせたんだけどさ。本当クロって速いよな。速いと言うか、疾いって感じ?」

 

 横島が言う“クロ”とは、ここまで横島を乗せてきた黒馬のことである。元は、瑠里の母親が商人から購入し、横島に譲られた西方由来と思われる馬である。

 その漆黒の体毛と、駆ける速さから”黒い風”のようだと凪に言われたことから、名を黒風(クロカゼ)……愛称、”クロ”と名づけたのである。

 

「黒風は今まで見たどの馬よりも疾いですよ。まるで、噂に聞く赤兎馬のようです」

 

「あの一日で千里走るゆう馬? 確かに黒風は疾いけど、流石に千里は無理とちゃう? 兄さんもそう思わん?」

 

「どうやろ。クロの疾さは分かっとるけど、スタミナ……持久力がどんなもんかは分かっとらんからな。案外、行けるんとちゃうか?」

 

「ま、ホンマに一日に千里走るんやったら、ウチらの村から陳留くらいやったらあっちゅうまに行き来できることになるわな」

 

「ちゅうことは、クロに乗ってけば文謙ちゃんと曼成ちゃんにすぐ会いに行けるってことか。むぅ……ここは一つ、クロに頑張ってもらうか? いや、しかし……」

 

 真桜の言葉に、真桜と凪の二人に会うためならと考える横島。実際、黒風ならば可能ではないかと横島は思っている。今も他の馬が休んでいるのを横目に、走っていたのだから体力はあるだろうし、休みながら行けば問題はないような気がしている。

 また、普通の人間ならば耐えられずに振り落とされるであろうスピードや揺れも、横島は向こうの世界でシロの散歩に付き合ったりしていた時に耐性でも出来たのか、全く問題としていない。

 残る問題は、実際に黒風のスタミナがどれだけあるのかということと、本当に陳留と村の間を往復する気が横島にあるのかと言う点だけであった。

 

(散歩のときは、散々飛んだり跳ねたりしてたからな~。シロとの散歩(あれ)に比べると、スピードは少し遅いし、揺れは断然こっちの方が小さい……かと言って一日走るってのは……いや、散歩で慣れてるけど)

 

 恐ろしいのは、超スピードの長距離散歩に慣れた横島なのか、人狼の速度と変わらない速度で走ることが出来る黒風か。どちらにしろ、黒風が横島という己の全速に耐えることが出来る唯一の主人を得たのは間違いない事実であった。

 

 

 

 

 

「何やら考え込んでいるお兄さんは放っておくとして……。お二人は陳留に着いたらどうするので?」

 

 横島が考え込んでいると、風が凪たちに問いかける。先程までとは逆に問いかけられる立場となった凪たちは、ゆっくりとお互いの顔を見る。しかし、隠すことでもないのですぐに回答するのであった。

 

「折角陳留へ出たので、暫く滞在しようと思っています。村では手に入りにくい品もありますし」

 

「流石に値が張るから、何でもかんでもは買えんけどな。ウチの螺旋槍なんて、必要な部品を揃えて、出来上がるまで三年もかかってしもうたわ」

 

「三年ですか……。それは大変でしたでしょう?」

 

「大変っちゅうよりは、楽しかったっちゅう方が大きいわ。自分が一から設計したもんが、完成したときの達成感も好きやし、少しずつ出来上がっていくのもワクワクするわ。せやから、大変っちゅうことはない。因みに、次は全自動かご編み機を作ろうかと考えとるんや。これはな? かごを編むのを……」

 

 全自動かご編み機が如何に便利なものかについて力説し始めた真桜と、真桜に捕まった朱里と雛里を放って、風は凪へと話しかける。

 

「陳留に暫く滞在されるのでしたら、街の案内をお願いしてもいいですか? 何分、陳留は初めてですので」

 

「構いませんが、生憎と私たちが案内できる店は薬屋や金物屋とかですよ? 文則ならばお洒落な服屋とかも知っているのですが」

 

「ふむ……ま、服屋は自分たちで探すとしましょう。腕の良い職人がいると良いのですが……。あ、そうです。文謙さんたちおすすめの宿や、飯屋も教えてくれませんか?」

 

「宿なら、私たちと同じところが良いでしょう。あそこの厩は大きいですから、黒風も大丈夫でしょう。何より、私一押しの料理がありますからね」

 

「ほ~。一押し料理ですか。それは楽しみですね」

 

 

 

 

 

 その後、休憩を終えた一行は陳留へ向けて出発する。

 

「残り半日なら、今日中には着くな」

 

「ま、何事もなければですがね~」

 

「怖いこと言うな~風ちゃん。ま、こんだけ見晴らしがいいんだ。何かあればすぐ分かるだろうし」

 

「子考さんの言う通りです」

 

 呑気に言う横島に、同意の言葉を返す雛里。彼らが進んでいるのは、平原であり視界を遮る木は存在していない。目指す陳留の方角には、所々木々が生えているのが見えるが、大人数を隠せる程密集している訳でもない。

 

「そんな心配せんでも、ここまで来たら賊はおらんて。何せ、陳留太守曹操様のお膝元や。近場の賊なんて、当の昔に討伐されとる」

 

 横島たちのやり取りを聞いた真桜が、馬を寄せて横島たちを安心させようと声をかける。その言葉に、風たちは流石は曹操と感心していたが、横島だけは真桜の胸の谷間に目が行っており、聞いていない。

 そんな横島の視線に気づいた真桜が、両腕を使い更に胸の谷間を強調してからかう。それにますますだらしない顔をして、胸を覗き込もうとしていた横島であったが、何かに気づいたかのように急に顔をあげる。

 

 その横島の行動に、一番驚いたのは今の今まで胸を覗き込まれていた真桜である。他の者たちも、横島の突然の行動に戸惑う。

 それを打ち破ったのは、やはり横島であった。

 

 

 

「何かヤバそうだぞ。凄い勢いで何かがこっちに向かってきてる。大勢に追われてるみたいだ。追われてるのは……馬車か」

 

 

 

 全員が横島が指差す先を確認すると、確かに土埃が舞っている。但し、未だ距離が遠い為、彼女たちには馬車が追われているのかまでは分からなかった。

 しかし、何かが迫ってきていることは確かなので、凪と真桜の二人は横島たちの前にでる。逆に、雛里と朱里は後ろへ下がる。

 

 

「お兄さん、もう少し詳しい状況はわかりますか? 旗などは見えませんか?」

 

「旗……? ああ、ある、追っているヤツらは“曹”の旗を掲げている。それに鎧も着てるな。っていうことは、追っているのは曹操軍か? ……あ、囲まれた」

 

「曹操軍ということは、陳留の部隊でしょうか。ま、ここは君子危うきに近寄らず……です。何故、馬車が追われていたのかは分かりませんが、追っているのが曹操軍なら放っておいていいでしょうし」

 

「だな。わざわざ巻き込まれに行く必要はないか。距離もあるし、気づかなかったことにして、さっさと陳留へ行くか」

 

 横島が結論を出すと、一行は陳留へと足を向けるのであった。

 

 

 

「兄さん、真面目な顔しとったらかっこええのに。ま、普段の面白い兄さんもええけどな」

 

「あの距離が見えるとは……流石は仲徳殿たちの主となる方。ただのスケベではなかったか」

 

 

 

 

 

 

 ――おまけ:捕物劇――

 

 横島たちが去った後。馬車を取り囲んだ軍勢の中から、二人の女性が馬車に向かい進み出る。

 

「さて。盗人風情が随分と面倒をかけてくれたな」

 

「そうだ! 折角の華琳様との視察の時間だったというのに……貴様のせいで台無しではないか!」

 

 一人は、青い髪に青い服を纏った女性。手には弓を持っており、その視線は鋭く馬車の中にいるであろう人物を睨みつけている。

 

 もう一人は、長い黒髪に紅い服を纏った女性。片手で大刀を振り回しながら、わめきたてているがその視線は油断なく馬車へと向けられている。

 

 

「ふむ。出てこぬ気か……ならば、あぶり出すとするか」

 

 弓を持った女性が、弓に矢を番え馬車へと射る。その矢を放つと、次の矢を準備し次々と射る女性。

 すると馬車の中から、三人の男が悲鳴をあげながら飛び出してくる。彼らは、荒い息を整えながら手に持った剣を構えた……筈であった。

 

 

 彼らが構えた筈の剣は、黒髪の女のひと振りによって彼らの手から弾き飛ばされていた。

 そのことを彼らが認識する前に、女が大刀を振りかぶりながら告げる。

 

「やっと出てきたか! 華琳様からは生かして引っ捕えよと言われたからな。死ぬんじゃないぞ?」

 

 紅い影。それが男たちが意識を失くす直前に見たものであった。

 

 




 関西弁についてはおかしなところはスルーでお願いします。恋姫世界では、名馬たちはどうなっているのでしょうか。赤兎馬は犬になっていますが。
 あと、犬と馬の最高時速は軽く調べた感じだと、どちらも時速70kmくらいみたいです。

 次回はあの人と遭遇!?

 おまけは、読まなくとも問題なし。実はニアミスしかけてましたよってだけです。

 螺旋槍の製作期間。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。割と更新してます。

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