道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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二十話です。陳留まで少し。

一言:W杯始まりましたね




二十節 牢屋にぶち込まれたりしないよな

 

 

 

 

 

 軍と馬車の追走劇を遠目に、横島たちは陳留の城門が視認出来る場所までやって来ていた。

 

「お、ようやく陳留が見えて来たな……陳留であってるよね?」

 

「そうですよ。あそこに見えるのが、目的地の陳留です」

 

 陳留を初めて訪れる横島が不安そうに確認すると、黒風と並走して馬を走らせていた凪が答える。

 それを受けて横島は改めて視線を城門へと向ける。すると、城門の所に兵たちが集まっているのが見える。その事実に、横島は顔を引きつらせながら誰とはなしに呟く。

 

「あ~、オレら何かした?」

 

「先の部隊を城門で待っているのでは?」

 

「もしくは、今から応援に向かうところなのかも」

 

 横島の言葉に、雛里と朱里が推測を語るが何処か自信がなさそうである。城門前に兵がいることは珍しいことではない。城門で荷の検閲をしたり、軍事行動などで集まることがあるからである。

 

「文謙さん……陳留では兵士の方が城門前に集まっているのが普通なのですか?」

 

「いえ……。城門を抜けた所に立っていることはありますが、城門前はなかったかと」

 

「という事は、普段とは違う“何か”が起こっているのは確かですね~。まぁ、軍事演習という可能性もありますし。何も悪いことはしていないのですから、堂々と行きましょう」

 

「そうだよな。何もしてないのに、牢屋にぶち込まれたりしないよな。な?」

 

「兄さん、挙動不審すぎやって。堂々としとりゃ、な~んも問題ないって」

 

 横島が何処か及び腰ではあるが、一同はそのまま城門へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

「そこで停まれっ!」

 

 城門に近づくと、兵士が剣に手をかけながら告げる。今、横島たちは馬から降りて歩いている。城内を乗馬したまま通る訳にはいかないという理由もあるが、兵士たちを刺激しないようにと言う理由の方が大きかった。

 しかし、予想外に兵士たちは張り詰めていたようである。先の兵団が向かった方向からやって来た横島たちを警戒しているようである。

 

 大人しく指示に従う横島たち。横島も腰が引けているが、自分より小さい風たちの手前精一杯虚勢を張っている。他の面々も、兵士に対して多少の緊張を見せている。

 

 

「そう緊張しなくともいいわ。別に危害を加えようという訳ではないもの」

 

 

 そこに女の声がかかる。兵たちに隠れて確認は出来ないが、横島はその声の主が美少女だと確信していた。

 

 

「おー、何と可憐な声。それに、上に立つ者特有の自信と気品に溢れている。その姿もさぞ美しいのでしょう」

 

「お兄さん、姿も見ていない女性を口説くのは……」

 

「いい女には声をかける。それが礼儀っちゅうもんや。あ、風ちゃんたちもいい女やで?」

 

 横島の言葉に呆れる風たちであったが、“いい女”発言は嬉しかったようで頬が緩んでいる。真桜は隣りにいる凪に、“なんや、照れるわ”と話しかけていた。

 

 そんな一同の前に、兵士たちの間を縫って声の主が進み出る。

 

「ここは、ありがとうというべきかしら?」

 

 横島に声をかけながら姿を現した声の主は、艶やかな金髪を両サイドで縦ロールにするという特徴的な髪型をした美少女であった。

 

 小柄であるというのに、放つ存在感は強大。覇気溢れる人物。横島のいうところの上に立つ者特有の気品と自信を纏う人物。それが、風たち軍師勢の印象であった。

 

「お、やっぱり美人……というか、美少女? それに……この跪きたくなる感じ。まさに生まれながらの女王様ってヤツだな」

 

 うんうんと首を縦に振る横島に、面白いものを見つけたという表情を浮かべる少女。彼女は、周囲の兵士を手振りで後ろに下げると、横島に向かい口を開く。

 

「中々面白いことを言うわね。私が生まれながらの王だなんて。兵たちに任せようかとも思ったけど……二人が戻ってくるまでの暇つぶしとして、私が直々に聞いてあげるわ。アナタたち、馬車を盗んだ輩の仲間かしら?」

 

「あ~、あの馬車? いや、違うけど」

 

 少女の問に軽く答える横島。少女も違うと分かっていたのか、それ以上追求する気配はない。

 

「ふ~ん。馬車のことは知ってはいるようね。ま、ヤツらが逃走した方向から来たのだから、不思議ではないわね。大体、ヤツらの仲間ならそんな目立つ馬で来ないでしょうしね」

 

 少女はそう言うと、黒風へと視線を向ける。その後、黒風や他の馬に積まれた荷に目を向けると、再び口を開く。

 

「それで、陳留へは何しに来たのかしら? 見たところ、商売目的ではなさそうだけど」

 

「我々は職探しです。ああ、こちらの二人は道中の護衛にと途中の村で雇いました」

 

 そう言って、真桜と凪に手を向ける風。少女の視線を受けた二人は、静かに頷く。少女が視線を風に戻すと、風は横島たちと何やら小声で話しをしているところであった。

 

「いいかしら? 職探しと言っていたけど、どのような職を求めているのか聞いても?」

 

「構いません。ここで出逢ったのも宿命なのでしょうから」

 

「あら、意味深ね」

 

 その少女の言葉を機に、横島が一歩前に進み出る。横島の後ろには風、雛里、朱里の三人が並び、横島にあわせて一礼を行う。

 そのことに、少女が驚いていると横島が口を開く。

 

 

 

「我ら四人を貴殿の食客にして頂けないでしょうか。陳留太守――曹孟徳殿」

 

 

 

 突然の事に、真桜と凪は目を白黒させていた。眼前の少女が兵を動かせる立場であることは分かっていたが、まさか太守だとは考えていなかったようである。

 そんな凪たちと同様に目を瞬かせていた少女だったが、すぐに太守としての顔を作ると口を開く。

 

 

「面白いことを言うわね。私を曹孟徳と知っていると言うことは、以前に何処かで会ったのかしら?」

 

 少女――曹操孟徳――の問いかけに、一同は礼をとくと、風が代表して口を開く。

 

「いえ。一度も」

 

「そう。では、何故私が曹孟徳だと? 名乗ってはいないし、兵たちも私を呼んでいない筈よ」

 

「別に曹孟徳殿であると確信があったわけではありません。その溢れんばかりの気品と自信を持つ者は、噂に聞く曹孟徳殿に違いないと思っただけのこと」

 

「お世辞は嫌いよ。本当のところはどうなの」

 

「お世辞ではないのですが……。先も言いましたが、本当に確信があったわけではないのです。ただ、我々はあなたが曹太守本人でなくとも構わなかったのです」

 

 その風の言葉に、首を傾げる凪たち。因みに、横島は風に言われて先のセリフを言っただけであるため、内心では凪たち同様首を傾げている。

 言われた曹操は、風の真意が分かったのか頷いている。

 

「そういうこと……。そう言えば、最終的に私にたどり着けると考えた訳ね」

 

「城門に集まった兵を率いることが出来る程の地位にいる人物ならば、我々を曹太守に引き合わせることは可能でしょう。直接引き合わせることが無理でも、曹太守の耳には入る。そうなれば、人材収集家と噂される曹太守なら……」

 

「そうね。部下から食客の話を聞けば、その人物に会う可能性はゼロとは言えないわね。でも、それも確実とは言えないんじゃない?」

 

「そうですね。確実ではありません。ですが、それでいいのです。その時は、縁がなかったということですから」

 

「もし、ここで私が断ったら?」

 

「それもまた縁がなかったというだけの事。他の人の元へと向かうだけです」

 

 にこりと笑い言う風に、横島は内心慌てる。彼からすれば、曹操の傍にいるために陳留へ来たのに、このままではそれが叶わないかもしれないのだから当然である。

 そんな横島の内心を悟ったのか、雛里が横島の手を引き、小声で話しかける。

 

「大丈夫です。子考様は堂々としていてください」

 

「おう、分かった。皆に任せる」

 

 その横島の言葉が聞こえたのか、風が横島に微笑みを向ける。

 

「それで、曹太守。私たちを食客にして頂けるので?」

 

 その問いに曹操は、微笑みを浮かべ答える。

 

「いいわ。アナタたちを食客候補として話を聞きましょう。そこの二人は、噂に名高い水鏡女学院の制服を着ているようだしね。それに少なくとも、アナタは知恵が回るようだしね。私の性格からして、食客のことをすぐには拒否しないと読んでいたのでしょう?」

 

「はて、何のことでしょうか」

 

 首を傾げる風に、答える気はないと悟ったのか追求することはしない。

 

「やはり、面白いわ。その男も中々面白そうだし。但し、食客とするかはもう少し能力を見てから決めるわ。その結果によっては、給金も出してあげる。でも、役にたたないと思ったら世話しないわよ?」

 

「それで構いません」

 

 風が曹操の言葉に頷く背後では、横島が雛里と朱里に不安を漏らしていた。

 

「オレ、役に立てるとは思えないんだが……」

 

「一緒にお勉強したんですから、きっと大丈夫ですよ!」

「そうです。それに、いざとなれば子考様は私たちが養いますから!」

 

「うう……二人ともありがとう」

 

 

 

 

「では、詳しい話は城でやりましょうか。視察が潰れたから、暇していたことだし。ああ、そこの二人もついでだから来なさい。お前たちは二人が盗人を連れて戻ってきたら、一緒に引き上げてきなさい」

 

 曹操は凪たちも誘うと、兵たちに命令を下す。そんな曹操に、横島が話しかける

 

「あの~」

 

「何?」

 

「クロたちはどうすれば?」

 

「クロ? ああ、その馬ね。そうね……取り敢えず、一緒に城まで連れて行きましょ。絶影のとこなら、その馬も窮屈ではないでしょうし」

 

「絶影?」

 

「私の愛馬よ。影さえ残さないくらいの疾さから、そう名づけたわ。あのこも同じくらいの大きさだから、厩舎も大きいの」

 

「へ~。ウチのクロとどっちが速いかな」

 

 曹操の言葉にどちらが速いだろうかと疑問を持つ横島。

 

「そんなの私の絶影に決まってるじゃない。火を見るよりも明らかだわ」

 

「おお、自信満々だ。でも、クロも速さではそう簡単に負けないと思うぞ?」

 

「そこまで言うなら、後日勝負の機会を用意してあげるわ。今は、色々説明するのが先よ」

 

 そう言うと、曹操は話を切り上げ横島たちと城へと向かうのであった。

 

 

 




 曹操登場。横島たちは食客候補になりました。
 何故、曹操が城門前にいたのか。自己紹介等は次回です。

 横島が華琳様に飛びかからなかった理由は、思考の大半が真桜の乳に向かっていたことと、華琳の女王様オーラに懐かしさを感じていたからです。

 絶影関連。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。

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