道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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二十二話です。お待たせしました。
今更ですが、サブタイに意味はありません、


二十二節 正直に言うしかないかなって

 

 

 

 華琳との会談を無事に終えた横島一行は、城内に用意された一室にて今後について話をしていた。

 

「いや~、良かった良かった。いきなりオレと話をしたいと言われた時はどうなるかと思ったが……」

 

「ええ、流石の風も焦りましたよ。当初の予定では、太守殿との対面は十分に情報を集めた後でしたから。それでも、風聞と対面してからの言動で彼女の性格を分析し、何とか食客になる算段をつけられたと思ったら、お兄さんのあの発言。本当にあの時は終わったかと……」

 

 飴を咥えながら、ジト目を向けてくる風に横島はバツの悪そうな顔で言い訳する。

 

「いや~、面目ない。でも、オレが目指す世って急に言われてもさ。平穏に暮らすっていう普通のことしか思い浮かばなかったし、正直に言うしかないかなって」

 

「まぁ、美人のお嫁さんが貰えるかどうかはお兄さん次第ですが、普通の世というのは目指すに値する世だと風は思いますよ? それを曹太守が切り捨てなかったのは、少々意外でしたが。彼女の性格からすれば、お兄さんの考えは平凡でつまらない、取るに足らない主張と判断するだろうと思ったのですが……」

 

 そこで一度横島に視線を向ける風。その視線を受けて横島は狼狽えるが、風はそれに構わず話を続ける。

 

「ま、結果的に客将にはなれました。しかも、風たちの為にわざわざ屋敷を用意してくれるそうですから、かなりの好待遇と言って良いでしょう。現時点ではこれ以上ない結果……これもお兄さんの天運のおかげでしょうね」

 

 最後の方は呟くように言うと、風は先の会談で華琳が提示した条件について考えていた。

 

(屋敷を本宅とは別の場所……それも、城外に用意すると言うのは、風たちに機密を探られないように遠ざけたという事でしょうね。専属の従者については、風たちの監視も兼ねていると見るべきですかねー。まぁ、仕方ありませんね。思いっきり訳ありだと言いましたし。ま、疑われていると分かっているなら、幾らでも対処できます。寧ろ、その方が御しやすいと言うものです)

 

 ニヤリと笑う風の姿に、横島は無意識に一歩後ろに下がる。そんな横島に構うことなく、風は今後について考えを巡らすのであった。

 

 

 

 そんないつも通り? の二人とは対象的に、雛里と朱里の二人はぐったりとしていた。

 会談の場では問答を風に任せ、平然と横島の傍に控えていた彼女たちであったが、内心は緊張していたようで他の人の目がなくなったことで一気に気が緩んだようである。

 しかし、彼女たちも風と同じく横島に仕える者。すぐに先の事に考えを巡らせる。

 

(食客にはなれたけど、曹太守についての情報収集は継続すべきだよね。後は、天の御使いの噂も集めないと。従者の人は監視だろうから、迂闊なことは言えないし、何処か私たちだけになれる場所を確保しないと……)

 

(子考様と一緒の屋敷かぁ……。お部屋幾つあるのかな? 寝室が足りなければ、私と朱里ちゃんが一緒に寝ればいいかな……)

 

 そんな二人の考えを遮ったのは、横島の言葉であった。

 

「さて、取り敢えずの目標は遂げた訳だけど……。そっちの二人はこれからどうすんの? 何か予定ってある?」

 

 横島が問いかけたのは、本来なら陳留に到着した時点で別れる予定の筈が、成り行きでここまで同行することになった凪と真桜の二人であった。

 彼女たちは横島の仲間ではない為、いつまでも城内にとどまる訳にはいかない。そんな彼女たちに今後の予定を聞いたのは、横島なりに彼女たちに頼みたいことがあるからであった。

 

「特に用事はないで? いつもなら村の人たちに買い物頼まれるけど、今回は商隊が来たばかりやから、完全に自由っちゅう訳や」

 

「そっか。じゃ、一緒に食事でも……」

 

 そこで言葉を切る横島。いつものナンパのノリで言っていたが、今の横島は自由に出来るお金がないことに気づいた為である。

 

(あ、アカン。今のオレは見た目幼女な風ちゃんたちのヒモみたいなもんやった。時間があれば風ちゃんたちの授業でバイトする暇なかったしな……)

 

 心なしか落ち込んでいる横島を他所に、風が凪たちに話しかける。

 

「そですねー。これも何かの縁。私たちが見事食客になれたことを一緒に祝ってくれませんか? お代はこちらが持ちますから」

 

「ま、まぁ、他に用事もありませんし構いませんが……よろしいのですか? 自分たちの分くらい出しますよ?」

 

「そこはお気になさらず、奢らせてください。どうしても抵抗があるというのなら……そうですね、少々頼みを聞いて頂けないでしょうか。その手間賃と思って頂ければ」

 

「それなら……お前はどうするんだ?」

 

 風の言葉を聞き、真桜に視線を向ける凪。視線を向けられた真桜は一度肩をすくめると、何でもないことのように言い放つ。

 

「ウチもええよ、頼み聞いても。別にすぐに村に帰らないかん訳でもないし」

 

「ありがとうございます。ああ、頼みごとについては中身を聞いた後で、断ってもらっても構いませんので。では、早速お店を探しましょうか。ほら、お兄さんも行きますよ。いつまでも、士元ちゃんと孔明ちゃんに慰められていないで。大丈夫、お小遣いは風たちがあとであげますから」

 

 横島にトドメをさした風を先頭に、一行は部屋の外――飯屋――へと向かうのであった。

 

 

 

 

――その頃の瑠里(洛陽編)――

 

 横島たちと別れ洛陽へと向かった瑠里は洛陽に到着後、早速情報収集に励んでいた。

 

「あ、あの……。う~、情報を集めようにも自分から話しかけるのは怖いし……でも、子考様のお役に立つ為にも情報は集めないと……。うん、頑張れ私!」

 

 ……情報収集に励んでいた。

 

 

「どうかされましたか?」

 

 

 

「有名な水鏡女学院の生徒さんでしたか。洛陽には何用で?」

 

「いえ、見聞を広める旅の途中に立ち寄っただけで……」

 

「そうですか。アナタから見て洛陽はどうですか?」

 

「来たばかりですが、いい街だと思います。流石はこの国の中心ですね」

 

 瑠里の答えに、尋ねた女性は微笑みながら会話を続ける。

 

「ふふ、そうですね。治安はいいとは思います。ですが、それは他と比較しての話です。元直さんもご存知でしょう? 中央に不満を持つ輩が増えてきていることを。それを中央が放置しているということを」

 

 女性の問いに瑠里は答えない。

 漢の役人である女性がどのような意図で、この質問をしてきたのかを測りかねていることもあるが、何より迂闊に同意すれば中央を批判したとして拘束される可能性がある為である。

 そんな瑠里の警戒を感じ取ったのか、女性はにこりと笑いながら安心させるように瑠里に話しかける。

 

「そんなに警戒しなくとも、貴女から失言を引き出して拘束しようなどとは考えていませんよ。と言っても、そう簡単に信用は出来ないでしょうね。……そうですね、我が家の名誉に誓いましょう。何を聞いても、貴女を拘束したり貴女に不利益になることをしないと。それでも、不足と言うのなら真名に誓うしかありませんね」

 

 女性の言葉に驚く瑠里。家の名誉に誓うだけでなく、真名にも誓うと言うのだから無理はないことである

 

「何故、そこまで……?」

 

「そうですね、私の“妹”と同じく私を超える才を感じるからでしょうか? 私結構人を見る目があるんですよ。母にも褒められましたし。ああ、それで理由でしたね。私は常々、今の都について妹と意見を交わしたいと思っていたのです。ですが、残念なことに妹は母の元で引き篭って暮らしていまして。何でも、仕官するに値する人を待っているとかで。全く、あの娘は類稀なる才があるというのに……夢見がちというか……」

 

「あの……」

 

「ああ、すみません。話がズレてしまいましたね。そんな訳で、私は妹の代わりに貴女という才気を感じさせる人と意見を交わしたいと考えた訳です。あ、貴女が妹と同じくらいの背格好だったことも目に留まった理由です。いえ、寧ろ最初はそちらの理由の方が大きかったですね。何て、可愛らしい娘だろうと見ていましたから。貴女も優れた才をお持ちのようですが、貴女の才でも妹の才には及ばぬかもしれませんね。何せ、我が優秀な妹たちの中でもあの娘は特別ですから……と、すみません。また、ズレてしまいましたね。つまり、私は純粋に智者と意見交換をしたいだけなのです。その為には、余計な疑いは排除しなければなりません。それが先の言葉の理由です」

 

 一息で言い切った女性に、瑠里は少し引いてしまうのであった。

 

 

 

「では、気を取り直して……お話をしましょうか、徐元直殿」

 

「ええ。司馬伯達殿」

 

 




 長かった一章もあと終わり。結局、夏候姉妹の登場は持ち越し。
 しかし、モチベーションがあがらない、あがらない。

 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。

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