道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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説明回です。ですが、今回の話はあまり重要ではありません。
そういえば程度の、仕込みが少しだけって感じです。


十二節 なんて厄介な……

 

 

 

 

 

「さて、桂花ちゃん。問題となったということについて、教えてください。それは論功勲章に影響を与えるものであり、更には今後黄巾党と名乗る賊を討つのに障害となることなのでしょう?」

 

 華琳が桂花に真名を許した後、春蘭、秋蘭と続いたが横島側は誰一人として真名を告げなかった。ほぼ初対面の者に真名を教えることは、通常ありえないことであることを名家の出である桂花はよく知っている為、桂花もそれを不満に思うことはない。

 寧ろ桂花は、春蘭たちと横島側の立ち位置の違いを確信できたので、有益であったと捉えている。何せ、華琳の筆頭軍師となる為の障害が減ったのだから。

 その為、風の問いに桂花は先程までの試すような物言いをやめ、単刀直入に問題について語ることが出来た。

 

「そうね。華琳様が奴らを蹴散らすという点においては障害にはならないわ。私がいるのだし。ただ、当初の予想より討伐に時間が掛かる可能性が高いことが判明したの。いえ、想像以上に厄介と言った方が正確かしら」

 

「ふむ。桂花がいるから……という部分は同意出来んが、確かに時間が掛かりそうだな。何せ、此度の討伐で蹴散らした奴らには()()()()()()()()()()のだからな」

 

 その春蘭の言葉に、風たちは真剣な表情になる。その言葉は、確かに異常事態であることを証明していた。

 

 

 

 

「姉者が告げた通り、首領が存在しなかった。ある程度の集団になれば、自然と皆を纏める存在が生まれる筈なのにな。軍を指揮している者からすれば、異常な状態だ。当然、捕虜とした者たちに尋ねたさ。首領は誰だと。無論、庇い立ては許さんと告げた上でな」

 

「それでも、首領が判明しなかったんだね?」

 

 朱里の問いかけに、雛里が頷く。通りで雛里の表情が優れないわけだと納得するとともに、頭の中で状況を整理していく。

 

「桂花様。私たちは当初、彼らを黄巾党に加わったばかりの農民か、本隊に合流しようとしている集団。あるいは、名を借りた別の集団と予想していました。まずは彼らが何の集団なのか、はっきりさせましょう。彼らは黄巾党ですか?」

 

「黄巾党と名乗ったわ。それも捕らえた全員が。そして、全員が口を揃えて言ったわ。”オレたちは、黄巾党首領である張角様の指令に従った”のだと。そしてこれが、その指令書」

 

 そう告げると、懐から竹簡を取り出すと全員に見えるように囲っていた机の中央に広げる。

 

「そんなものがあったのか……えっと、”歌って踊る旅芸人……”って、何だこりゃ? あ、こっちは地図だ。アイツらがいた城周辺っぽい」

 

 道中、許緒の相手をしていたので竹簡の存在を知らされていなかった横島が最初に覗き込むが、内容が理解出来ず疑問の声をあげる。指令書と聞いていたのに、書かれていることが旅芸人の宣伝なのだから当然である。

 首を傾げる横島の様子を見た秋蘭が話しかける。

 

「どう読んでも宣伝だが、奴らに言わせればそれは指令書らしい」

 

「へ? これが? あ、暗号なのか。ルール……規則を知らなきゃ、本当の意味が分からないってやつ」

 

「それだったら、楽だったんだけどね。捕虜を尋問すればいいんだから。まぁ、その場合暗号を知っている奴を見つける手間が掛かるんだけど」

 

 そう言ってため息を吐く桂花。そんな桂花の様子に風が尋ねる。

 

「暗号ではないのですか? そもそも、指令書を受け取った人物を捕虜に出来ているのなら、その人が賊のまとめ役なのでは?」

 

「指令書を持っていたのは十名。そいつらの話を聞く限り、他に十は同じようなものがあったそうよ。それらを持っていた奴らは全員こう答えたわ。……”字は読めないが、内容は知っている”……と。そして、”それを黄巾党に賛同する者に見せて、内容を伝えろ”と村にやってきた伝令に言われたと」

 

「それは……して、内容は何と?」

 

「”地図にある城で迎えを待て。到着後に攻めてくる官軍に対しては、勇敢に戦え。到着前に見つかった場合は、これを正直に見せろ。根回しは完了している”。細かな言葉は違うけど、大体そんな感じね。指令書はあの城の近隣の村に二つずつ配られたそうよ。そうして、指令書を配られた村から現状に不満を持つ人間が集まり、黄巾党本隊からの指示があるまで篭っていたのが、あの城。そして、呼応しなかった村から、食料を奪って生活していたみたい」

 

 再びため息を吐く桂花。これ以上説明するのも嫌なようである。そんな様子を見て取った秋蘭が、説明を引き継ぐ。

 

「そうして、首領の存在しない賊が誕生した訳だ。暫定の首領を置こうとしたようだが、黄巾党本隊の迎えが来るまで待機するだけなので、不要との意見が多く取りやめたらしい。まぁ、周辺の村の人間の寄せ集めだからな。他の村の人間の下につくのを嫌がったのだろう。だから、首領は誰だと聞いたら、張角の名を挙げる。黄巾党首領である張角の下に、複数の賊集団が集まっているという形にすることで、それぞれの村は同格であるとしていたのだろう。村への襲撃や炊事を持ち回り制にすることで、公平にしていたつもりらしい。その後は先に説明した通り、城に迫る官軍に対する唯一の指示……”勇敢に戦え”を守り、黄巾党首領の名の下に全員で突撃をしてきた訳だ」

 

 秋蘭の説明に呆れた表情をする風たち。出身に拘り、連携を蔑ろにしていのだから、正しく寄せ集めの集団だったのだと。

 同時に、城門を開いた後の全員突撃という展開にも納得していた。

 

 

 

「指令書? を見て集まった人たちのお粗末さは置いておくとして。黄巾党が人を集めているのは確定ですねー。しかし、積極的に勧誘を始めるとは……今までとは集団の性質が変化してきたということですかねー。いよいよ、乱世に突入ですか」

 

 風の言葉に頷く面々。横島と春蘭は分かっていないようだが、空気を読んで同意している。そんな二人の様子を分かっている風たちは、彼女たちに説明していく。

 

「今までの黄巾党は、大人数で集まり漢王朝に否を唱える集会を開くことが主な活動とされてましてー。集会のあと、興奮した信者が暴動を起こすことが度々あり、それに便乗した賊も増えました。まぁ、傍迷惑な集団だった訳ですねー」

 

「ですが、表立って誰も言わない不満を代弁してくれていると民衆の支持を拡大していきました。同時に、集会を止めようとする官軍との衝突も増加。その為、近く討伐令が下るのではと予想されていました。そして、子考様もご承知の通り、今回討伐令が下りました」

 

 風と朱里がこれまでの黄巾党について説明し、雛里と澪が続きを語る。

 

「えっと、自ら勧誘するということは、黄巾党が官軍との衝突を避けるつもりがないと考えられます。寧ろ、今後は積極的に襲撃してくる可能性が高くなりました。伝令の言葉からもそれは感じられます。勇敢に戦え。これは命じた者に、明確に敵対する意図がないと出てこない言葉ですから」

 

「士元様の言われたように、黄巾党はこれからはより明確な目的を持って動くでしょう。今までは主張だけでしたが、今後は力を振るう事を厭わずにそれを行っていくのです。必然、それを鎮圧しようとする官軍との衝突が起きます。今やこの大陸中に信者がいるといわれている黄巾党の武装蜂起。それこそが乱世の幕開けとなりましょう」

 

 更に、桂花、秋蘭と続く。

 

「まぁ、正直ここまでは遅かれ早かれ起きたでしょうね。事前に止めるには、信者が広がりすぎているし、首謀者である張角たちは常に移動していて居場所が分からず、どのような人物かさえも分かっていない。唯一分かっているのは、信者と同様に黄色の布を身につけていることだけ」

 

「無論、我らのように備えていた者たちはいるだろう。しかし、全ての太守たちが備えているかと問われれば、否と答えるだろうな。理由は太守によって様々だろうが、その太守が治める地は荒れるだろう。何より、この指令書が問題だ。農民のほとんどは文盲。読めなければ、伝言と記述された内容の違いに気づく筈がない。仲間を集め終わり、村から移動する際にも役に立つ。官軍に止められたら、指示通り竹簡を見せればいい。文字の読める者にはただの宣伝だからな。黙ってさえいれば、咎められることはない。逆に、彼らに道中気をつけろというだろうな。それを聞いた者がどう思うか」

 

「そうか……官軍に根回ししていると思うのか」

 

「そういうことだ。官軍に根回しが出来る程の勢力になった。または、官軍も今の世を不満に思い黄巾党に賛同していると取るだろうな。そして、城へとたどり着けば、その竹簡が同士の証となる。仲間集めに役立ち、隠れ蓑でもあり、黄巾党への支持を高めるものでもある。同時に、村を廻り竹簡を配っている者にも役立つ。大量の竹簡を所持していることも、村々に配り歩くこともそれを見せて一言告げれば問題ないからな。……旅芸人の宣伝だと」

 

「よく考えてるな。ってことは、黄巾党は旅芸人に変装しているってことか?」

 

「可能性があるとしか言えないわ。確かに旅芸人を隠れ蓑にすれば、集会は簡単に開けるでしょうし、各地を廻ることもそう難しいことではないわ。武装についても自衛の為と言えば、このご時勢だし街へ持ち込みさえしなければ問題にならないでしょう。それに宣伝目的で竹簡を用意するのは手間。そう考えると配られた竹簡の数はそう多くはないと予測できる。わざわざ集めて再利用するとは考えにくいから、最初から偽装目的で用意したと考えた方が自然……なんだけど」

 

 横島の問いに華琳が推理を述べていくが、少々歯切れが悪い。そのことを疑問に思った横島に、雛里が説明する。

 

「気合いというか熱意でしょうか? それが入り過ぎているんです。最初から偽装が目的なら、ここまで文字数を書く必要はありません。ある程度意味が通る文章にすれば十分ですから。その方が、書き写すのも楽ですし……」

 

「そっか、一人で書いたにしても何人かで書き写すにしても、文字数が少ない方が楽だし早いのか」

 

 雛里の説明に納得する横島。コピー機がないということは、量産するには手書きしか選択肢がないのかと。実際には、判子のように文章を彫って押すという方法を取ればこの時代でも文章を量産することは可能である。尤も、それを実行していたとしても雛里が告げたように文字数の疑問はついて回る。

 

「かなり熱意のある宣伝だと仮定すれば、ある程度納得出来るんです。子考様も経験があるかと思いますが、伝言をする際は簡単な言葉を選ぶのが一番です。ただでさえ口頭での情報は変化しやすいのに、言葉を多くすれば予期せぬ誤解が生じる可能性が高くなりますから。偽装するにしても宣伝するにしても、対象となる農民のほとんどは文盲です。読めないと予想がついていながらも、それを考慮しないで書くということは、抑えきれない熱意の証……。そう受け取れば……」

 

「ああ、空回りしているのか……」

 

「それに、他にも気になることがあります。許緒ちゃん曰く、彼女の村ではただの宣伝として配ろうとした人が来たそうです。許緒ちゃんの村の人々は、襲撃してくる賊のせいでそれ所ではないと配られる前に追い返した為、同じ物だったかは分かりません。ただ、歌い踊る旅芸人というのは珍しいですから、同一である可能性は高いですね」

 

「そうなると、本当に宣伝として使っているものがあるってことか?」

 

 訳が分からないと頭を悩ませる横島。そんな横島に、華琳が現時点の情報で考えられるケースを教える。

 

「現段階ではっきりしているのは、そういう手段で黄巾党が仲間を増やしているってことだけよ。首領や黄巾党という組織については、旅芸人の中に首領がいて全員が黄巾党、旅芸人の一部が黄巾党、竹簡を利用されただけで黄巾党と旅芸人が無関係。この三つが候補ね」

 

 そこで一度分かるかと横島に視線を向け、横島が頷くのを確認してから説明を続ける。そんな華琳を見た桂花は、この場で理解出来ていないのが横島(と春蘭)なので、反応を確認しているだけで、特別気にかけているのではないと自身に言い聞かせている。

 

「今回討伐した城には、竹簡を見て合流しようと集まった輩しかいなかったわ。つまり、今回の賊は黄巾党の本隊でも、本隊の指示を受けた分隊でもないということ。黄巾党の思想に賛同して集まっただけ。黄巾党予備軍ってとこかしら。これがどういう意味か分かる?」

 

「え~と」

 

「何だ、そんなことも分からんのか? 簡単なことだ。黄巾党の本隊には全く損害を与えていないということだ。指揮官に相当する人物がいないということは、黄巾党本隊が人を派遣していないということだからな」

 

 代わりに答えた春蘭に意外という視線を向ける横島であったが、春蘭は最高位の軍人である。普段、華琳命で考えるより先に手が出る性格からは想像できないが、軍事の基本は当然抑えている。だからこそ、桂花の時間が掛かるという言葉にも同意したのである。

 

「そういうことね。合流前に私たちが叩いたのか、初めから合流するつもりがなかったのか。前者ならいいけど、後者だと更に問題。官軍に直ちに影響が出る訳ではないけど、あの竹簡と同様の方法を取れば、各地で黄巾党支持の民を集めることが出来るでしょうね。その集まった民に指示を出さない。それだけで、集まった民は官軍への陽動として働くわ。勇敢に戦えなんて指示があれば、尚更ね。これで、首領である張角に辿りつくのに時間がかかることは確実となったわ」

 

「なんて厄介な……。まず、その旅芸人を探すのが一番か? 黄巾党本隊という可能性もあるし、違うとしても宣伝書の入手経路から迫れるんじゃないか? ほら、許緒ちゃんの村は勧誘しないで宣伝だけする奴が来たんだろ? そいつを捕まえられれば……素直に案内すれば白。逆に案内しないようなら、黒ってことだろ?」

 

「そんなのとっくに指示したわよ。大体、許緒が何でいないと思ってんの? 村で人相書きを書かせ、追跡させる為に決まってるじゃない。これだから、男は……」

 

 キツイ口調で告げる桂花だが、ある意味慣れている横島はそれを無視して、話を続ける。

 

「ってことは、許緒ちゃんがソイツを追うのか?」

 

「いえ、彼女は村への繋ぎ。出来上がった人相書きと共にここに戻ってもらうわ。探索を行うのは、許緒に同行している兵たち。それも、数日の探索で切り上げさせるわ。ある程度足取りを掴んだら、その後の情報収集は……」

 

「私……ですね?」

 

「そうよ。無論、既に暴れている黄巾党の情報の整理はこちらで行うわ。ただ、旅芸人たちに関する情報収集と分析は澪に任せたいの。こちらからも人を出すし、澪を借りても構わないかしら? 忠夫?」

 

「ああ、オレは構わんが……」

 

 何故自分に聞くのだろうと首を傾げる横島であったが、別に文句がある訳ではないので同意する。その後、華琳が澪に確認し、澪が同意したことで澪が旅芸人関連の情報を一括して収集、分析することが決まる。

 同時に、桂花は華琳がわざわざ横島の確認を取ったことや、澪が受諾した時に自分に向けられた視線の意味を考えていた。

 

(わざわざ、あの男に確認を取るということは……司馬仲達たちがあの男直属の部下だから確認を取った? でも、それだと華琳様は何故私に視線を送った? 私にあの男と仲達たちの関係性を教える為? それなら、先程の仲達の殺意で十分に分かって……そうか! 華琳様は仲達たちを動かす方法を私に教えてくださったんだわ! そう考えると、あの変態男も役に立つわね……)

 

 そう納得した桂花は、華琳に対して軽く頷くのであった。

 

 

 

 澪に任せることを決めると、次に華琳は明日のことについて説明しだす。

 

「論功行賞は大々的に行わないけど、明日太守の間で忠夫に大々的な褒賞を行うわ」

 

「え?」

 

 思いもよらないことに言葉に詰まる横島。説明してくれと告げる横島とは違い、風たちは予想していたらしく驚いている様子もない。華琳の言葉を待っているという点では一緒なのに、対照的な反応をする彼らを面白そうに見た華琳は、横島に理由を説明する。

 

「今回の討伐は実質的なまとめ役さえ不明瞭な賊だったわ。だから、戦の功で褒賞を決めにくいの。通常なら、討ち取った相手の階級、戦への貢献度なんかを総合的に判断して決めるけど、今回の相手は全員同じ階級。貢献度に関しても、別働隊の指揮を執った春蘭と秋蘭と、策を練り指揮を執った桂花では大差といえる差はないわ。何より、あの程度の賊の討伐で大々的に褒賞を行えば、今後増えるであろう賊退治の度に財政を圧迫することになるもの」

 

 その言葉に納得する横島。先程まで、黄巾党が同様の方法で人手を集めるだろうと話をしていたのだから、当然今回と同じような討伐が起こることは予想できる。

 

「だから、兵たちには金を一律。桂花への褒章は軍師として取り上げること。春蘭、秋蘭は兵より少し多い程度の金ね。明日それを通知して終わりよ。でも、忠夫は違う」

 

「まぁ、三人に比べたら大したことはしてないからな」

 

「私の命は大したことないと?」

 

「や、そんなことは言わんが……あれは華琳の方に飛んだってだけであって、オレが斬らんでも大丈夫だったような気もするし」

 

「誇りなさい。忠夫はこの私を……大陸の未来を救ったのだと」

 

 己こそが大陸の未来だと語る華琳に、凄い女性だと関心する横島。そんな人物を救ったのだと考えると、横島も少し気分が良くなってくる。その様子を見て取った華琳は、話を続ける。

 

「だから、忠夫は大々的に褒賞を与えるの。まぁ、半分は士気の高揚が目的だから、忠夫は大袈裟に考えず、黙って受け取ればいいのよ」

 

「一発芸とかは?」

 

「ダメに決まっているでしょ。ただ、褒賞を与えるという行為は大々的に執り行うけど、褒賞自体は大したものではないわ」

 

「あ、そうなんだ」

 

「ええ。屋敷の贈与と侍女の補充。それと金を幾ばくかってとこね。まぁ、屋敷は今住んでいるところを贈るって形になるし、侍女についても実質的には澪の部下ね。さっき、情報収集で使う人間を出すって約束したでしょ? 金は春蘭たちと同じくらいを考えているけど、何か不満ある?」

 

「えっと、オレはない……けど」

 

 横島がそう言うと、華琳は横島を意外と謙虚な男だと受け取っている為、横島の臣である風たちにも確認する。彼女たちからも異論があがらないことを確認すると、華琳は後は各自休むように告げて今日のところは解散するのであった。

 

 

 

 

 

 ――その頃、○○――

 

 冀州のある平野に設置された天幕の中で、数人の人物が会話をしていた。

 

「頭。いくつかの空き城に、人を集めることに成功したと連絡が」

 

「そうか……。これで当分の時間稼ぎは可能か。後は見所のある奴を選抜しないとな。それと、ここでは親衛隊長だ」

 

「すいません、親衛隊長。それで、選抜は何処から? 遠いとこは、選抜前に潰されてるんじゃ?」

 

 親衛隊長と呼ばれた男は、顎に手をやり考える素振りを見せる。それを見て尋ねた男とは別の男が、親衛隊長に提案する。

 

「簡単に潰されなかったとこから、選抜すればいい。どの道、当分の間は合流することは出来ない。ならば、その間自力で持ちこたえることが出来たところを迎えいれればいい」

 

「そうだな。後の問題は、誰を使いに出すかだが……」

 

「あ、頭! そろそろ、時間ですぜ!」

 

「だから、親衛隊長と呼べと言っているだろがっ! では、本日はここまでだ。皆、全力で応援するぞ!」

 

「「「おーーー!!」」」

 

 天幕を突き破らんばかりの声を上げる男たち。彼らは一様に黄色の布を身につけ、それぞれ人名の書かれた竹簡を手に、外に設置されている舞台の最前列へと駆け出すのであった。

 

 

 

 

 




あとがき
 遅れてしまい申し訳ありません。次回はなる早でお届けできたらと思います(二回目)。
 今回の話は前書きでも書きましたが、あまり重要ではありません。恋姫の黄巾党の成り立ちを太平要楽の書と関係なく説明したりしていますが、拙作ではこんな感じなんだと思って頂ければ。

 竹簡、成り立ち等黄巾党関連。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。

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