道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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三話です。この話から、恋姫キャラが登場します。記念すべき初接触キャラは、あの三人組です。

一言:特にないよー。ネタ切れだよー。


三節 衝撃的事実

 

 

 

「あー、そうだった。そうだった。銅鏡が急に光ったかと思うと、結界が壊れて……ってことは、これは銅鏡のせい? あれ?銅鏡のせいってことは……ここ異世界かー!?」

 

 『理』『解』の文珠の効果により、現在の状況について予想を立てることが出来た横島ではあったが、状況は何も変わっていない。

 

「むぅ……助かったのは、『理』『解』の文珠の発動中に拉致られたから、状況を少しは理解出来るってとこか?」

 

 横島はそう呟くと、文珠の効果で得ることが出来た情報について確認する。発動中に集中を乱したことに加え、銅鏡に拉致られるという予想外の事態が起こったことで、『理』『解』の文珠が不完全に効果を発揮し、その結果本来『理』『解』したかった言語について以外に、銅鏡についての知識なども横島は得ていたのである。

 

「えっと、漢文の知識……っても、ここが中国かどうかも分からん状態じゃ役に立たんな。他にはやっぱり、銅鏡関連が多いか……えっと、分身ってとこはいいか。オレはオレだしな。しかぁし! あの乳に手を出すのは、例え相手がオレでも許さん! ここはこれで……いざ!」

 

 何処からともなく藁人形を取り出す横島。元の世界に居るはずの横島(本体)に呪詛をかけようとしているようである。

 

「さ、あとは打ちつける場所……ここ、荒野だった……」

 

 周囲を見渡すなり項垂れる横島。呪詛をかけようにも、打ちつける場所がないことに気づき断念したようである。

 

 因みに、横島が知らないだけで藁人形を使用した呪詛は杭を打ちつける以外にも方法はある。

 

 

「あー、ちくしょう。黙っていることしか出来んとは……。ま、いっか。続きを確認しないとな。何かこの場所のヒントがあるかも知れんからな。妖怪の国とか、魔界とか物騒なとこは勘弁してくれよー」

 

 気を取り直して情報の整理を続ける横島。その結果、いくつか銅鏡や世界についての事実が判明する(但し、中途半端に発動した影響で所々情報が不足しているようである)。

 

 それらをまとめると、以下のようになる。

 

 ・銅鏡が作られた目的は世界移動の実験。

 ・元の世界とは違い、霊力が知られていない世界であること。

 ・銅鏡世界と元の世界では文化の違いがあること。

 ・銅鏡から飛ばされた人間は、ランダムに世界に現れること。

 ・銅鏡世界に馴染むように何かが施してあること。

 ・もうひとり分身が作られたこと(おそらく被害にあった男子生徒)。

 ・その人物はまだこの世界に出現していないこと。

 ・世界移動は一方通行であること。

 ・言語は世界共通であること。但し、文字はその限りではないこと。

 

 

「文化が違うって、当たり前だろうに。はぁ、結局大した情報なかったな。どっちかって言うと謎が増えた感じが……」

 

 現在地に繋がる情報がなかったことに、落胆する横島。何かを施されたということについては、害がないならと完全スルーである。

 

 因みに、同じ境遇に立たされるであろう男子生徒については、全く気にしていない。未だこの世界に現れておらず、また、いつ現れるかも分からない人物のことを気にしても仕方がないし、男を助ける必要などないと思っているのだ。

 薄情に思えるが、横島にとって見ず知らずの男子生徒より、自身の安全の方が優先度が高いのだから仕方がない。何事も、自身の安全には変えられないのである。

 また、単純に男性の基準がおかしいというのもある。横島の周囲の男性と言えば、唐巣神父やピート、雪之丞、タイガーと言った高い(生存)能力を持っている人物ばかりである。そんな男たちを見慣れている横島にとって、男という生き物は守る必要がないと判断しているのである。それに加えて、何の特殊能力も持たない筈の父親が、武装ゲリラを鎮圧していることもその判断を下す大きな一因となっているのは間違いない。

 

 

「えっと……他は?

 

 『一筋の流星、白き光を纏いし者なり。即ち、天より遣わされた御使い。智を以て乱世を平定せんとす』

 

 『碧き剣、碧き盾を持ち天より遣わされし者。人智を越える者なり。其れ即ち、天の御技なり。其のもの、数多の軍勢を前に……』

 

 って、何じゃこりゃ?」

 

 横島は最後に、断片的に知り得た情報を口に出す。どうやら、文珠の効果時間ギリギリでの情報のようで、その文章の意味までは理解することが出来なかったようである。

 普段なら理解出来ないからと放っておくのだが、何故かこの文章が人ごととは思えない横島は、その場で考え込む。

 

「それは、近頃噂が拡がり始めたと言う予言の一節ですね」

「ですね~」

 

「へ?」

 

 突如、背後から聞こえた声に間抜けな声をあげる横島。慌てて振り返ると、そこには三人の人影が。その中で、その大胆に胸元が開いた装いの女性に飛びかかろうとした横島だったが、その人物の眼を見て思い留まる。

 

(あかん。アレは本気であかん。何かしたら殺る気の眼や。しかもよく見たら、槍持ってるやんけ! 銃刀法はどうしたんや!)

 

「ほう(私の間合いギリギリのところで踏み込まないとは)。お主、こんな所で何をしている? いくら街に程近いとはいえ、丸腰では危険だろうに」

 

「まぁまぁ、星ちゃん。ここは風に任せてください。稟ちゃんもいいですか?」

 

「ええ。見たところ、罠とも思えませんしね。それに、こういう交渉事は風の方が適任でしょう」

 

「交渉って程のことでもないと思いますがねー。それに、稟ちゃんも不得意じゃないでしょうに。では、お兄さん?」

 

(文化が違うってことだったし、失礼なこといったらブスってやっていい世界なんか!? さっきから、あっちの色っぽい姉ちゃんの眼変わらんし。もうひとりのメガネかけた姉ちゃんも、冷たい眼で見てるし――ゾクゾクする)

 

 星と呼ばれた女性の眼光にビビっていた横島は、槍の恐怖に怯えながら呼びかけてきた少女に顔を向ける。そこには、長い金髪をそのままに、ゆったりとした衣装に身を包んだ少女の姿があった。何故か、頭の上に何処か見覚えのあるフォルムをした人形を乗せている。

 

「あ、えっと、何でしょう?」

 

「んー、まずは自己紹介しときましょうか。風は、程仲徳といいます。で、こっちが稟ちゃん。そっちの槍を持ってお兄さんを刺そうとしているのが、星ちゃんです」

 

「さ、刺す!?」

 

 その言葉に、思いっきり後ずさる横島。そんな横島をニンマリした笑みで眺める風。その眼に、からかいの色を感じ取った横島は、元の場所まで戻る。但し、警戒することだけは忘れていなかったが。

 

「こら、風! 全く、たちの悪い冗談を。それに、真名で紹介しないでください。それじゃ、結局名を知らないままじゃないですか」

 

「真名? なにそれ?」

 

「お兄さん、真名を知らないんですか? それと、お名前は? 風たちだけ名乗ったら自己紹介にならないじゃないですか」

 

「えっと、オレは真名なんて聞いたことがないんだけど。で、名前だっけ? オレの名前は横島忠夫。よろしくな、て、ていちゅうとく? ちゃん?」

 

「んー、仲徳と呼んでください。で、稟ちゃん? どうします? 真名も知らないなんて、変なお兄さんですよ」

 

「ええ。真名を知らないとは……。いいですか、真名とはその人に心を許した時、初めて呼ぶことを許す名前なんです。本人の許可なく呼ぶと、何をされても文句はいえない。それ程の失礼にあたる行為なんです。つまり……この場で私の真名をアナタが呼んだら、冗談抜きで刺します」

 

「(こ、こえー)じゃあ、キミの名前は? さっきのは真名なんだよね?」

 

「私は戯志才と名乗っています。志才と呼んでください。で、アナタ何処から来たんですか? 真名を知らないとは余程この大陸から遠いとこから来たようですが」

 

「何処からって(そもそも日本って言って通じるのか? 異世界なんだし……ええい! その時はその時だ! )に、にほ」

 

 横島が悩みながらも日本から来たと口にしようとした時、黙ったままで槍を持っていた少女が口を開く。

 

「その前に、私も自己紹介しておこう。うっかり、星などと呼ばれてしまってはお主を刺し殺さねばならぬ」

 

「いや、そんな嬉しそうな顔で言わんでも……」

 

 女性の顔に浮かぶ笑みを見た横島が思わず突っ込むも、気にするなの一言で片付けられる。味方はいないかと、残りの二人に視線を送るも、どちらも笑うだけで助けてくれる様子もない。

 

「それで、美人でエロいお姉さんのお名前は?」

 

「美人はわかるが、エロいとは?」

 

「な、何でもないであります! 気にせず、お名前を!」

 

「まぁ、いいか。私は、人呼んで常山の昇龍――

 

 

 

 ――趙子龍だ!!」

 

 

「えええええ!!」

 

 




 三話です。ようやく恋姫キャラ登場です。皆様が予想されていた通りのキャラだったのではないでしょうか。

 他には、曹操&夏侯姉妹、張三姉妹、魏の三羽烏、賊三兄弟が候補でしたが、どれも没に。

 
 詳細なあとがきは活動報告に追って、投稿予定ですのでそちらを。

 予言について。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。

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