道化と紡ぐ世界   作:雪夏

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五話です。サブタイトル思い浮かばない……。

一言:感想あったら喜びます。あと、誤字報告。



五節 到着

 

 

 

 

 

 荊州にある水鏡女学院を目指し、旅を進める横島たち一行。道中、幾つかの村に立ち寄りながら、横島が合流してから数日。目指す水鏡女学院がある街にたどり着いた。

 

「ここが、女学院があるって街? 今までの村に比べて活気があるなー」

 

 大通りを行き交う人々を眺めながら呟く横島。その装いは、立ち寄った村で譲ってもらった古着へと変わっている。稟は服屋で新品を購入するつもりだったのだが、横島が遠慮したこと、いつまでも血染めの服を着たままには出来ないことから、譲ってもらうことになったのである。

 最も、流石にバンダナに変わるものは村にはなかったので、それだけは服屋で購入することになっている。

 

「この規模の街としては、中々発展している方でしょう」

「荊州は比較的治安が良いですからねー。これくらいは当然かと。とは言っても、完全に安全という訳ではないので、お兄さんも気をつけてくださいねー。流石に人攫いや強盗はいないでしょうが、スリはいると思いますよー」

 

 横島の呟きに、同じく大通りを眺めていた稟と風が反応する。各地を回っている彼女たちが言うのだから、そうなのだろうと横島は納得すると同時に、私物が入った袋を抱きしめると、キョロキョロと周囲を見回し始める横島。急に周囲の人間全てがスリに見えてきたようである。

 

 私物と言っても、中身は血染めの服とバンダナなので盗まれても構わないのだが、唯一の私物を奪われるのは出来れば避けたいのである。それに、横島はこの世界の異常に発達した縫製技術に、ジージャンの再現を期待しているのである。その際、現物の有無が重要になることは分かりきっていることなので、尚更である。

 

 

「あれ? そういえば、子龍さんは?」

 

 しばらくそうやって周囲を警戒していた横島だったが、同行していた筈の星の姿がないことに気がつく。風に確認すると、メンマを補充しに飯屋へ向かったらしい。

 

「あの人は本当にメンマ好きだよなー」

 

「そですねー。星ちゃんはメンマの為なら、千の軍勢相手でも破ってみせると言ってますから相当ですねー」

 

「戦場がメンマで左右されるとか、私たちからすれば悪夢ですね……」

 

 頭が痛いとばかりに、頭を押さえながら呟く稟。彼女も星がそれほどメンマを愛していると例えで言ったことだとは分かっている。しかし、星のメンマ愛を考えると何処か否定しきれないらしい。

 

 

 

 

 

 それから数十分後。無事バンダナを購入し終え、宿の一階にある食堂で食事を取る横島たちの姿があった。

 

「思ったより安くすみましたね」

 

 安く購入できたことに満足した様子で呟く稟。これからも旅を続ける身としては、安く買い物が出来ることは嬉しいものなのである。しかも、横島への弁済の品という値下げ交渉をするのが憚れる品を、店主が投げ売り同然の価格で売ってくれたのだから、尚更のことである。

 

 そこに、風が安く購入出来たからくりを告げる。

 

「それがですねー。店主に聞いたところ、最近の流行りは黄色らしくて他の色は売れなかったそうで。風たちが来なければ、黄色に染色するつもりだったそうです。そう言った訳で、あのような安値で購入出来たと言うことです。いやー、運が良かったですねー、お兄さん」

 

「そうだな。赤以外の色をつけるってのは、想像出来ないからなー。手に入って本当によかったよ」

 

 最も、告げる相手は稟と言うよりは、横島に向けてであったが。ここまでの道中でもそうであったが、風は横島とよく話をしている。横島に興味を抱いていることも理由の一つであるが、横島が大げさに反応するのが楽しいようで、よく横島をからかったりして遊んでいた。

 

 横島の方も、事あるごとに槍をちらつかせる星や、普段の会話から書物の内容を引用してくる稟を相手するより、風の方が楽と言うこともあり、必然的に三人の中では風と話すことが多くなっている。

 最も、稟はともかく星の場合は、事あるごとに飛びかかろうとする横島が悪い部分もあるだろう。

 

 

「それにしても、その生地は見せなくてよかったのですか? 似たような生地があるか、または再現できるか聞く予定だったのでは?」

 

 風との会話が途切れたのを見計らって稟が問いかける。てっきり、先ほどの店で尋ねるのだと思っていたようである。

 それに対して、何故か横島ではなく風が答える。

 

「それはですねー。ここはあくまでも、少しの間滞在する地だと言うことですよ。お兄さんは、この地に留まるより風たちと行くことを選んだのですよ」

 

「そうですか。なら、ここで生地を見せても意味がないですね。店内に似た生地はなかったようですから」

 

 風の言葉に納得する稟。横島の方はというと、風と稟の言葉に驚いている。何せ、横島は、女学院に行ったあとも一緒に行くことに決めたことを誰にも言っておらず、デニム生地の再現についても同様だったのだから。

 

「な、何でわかったの? 一緒に行くって決めたこと。それに、生地のことも」

 

「お兄さんは、わかりやすいですから。何となく、この街には留まらないだろうとは思ってました。生地については、後生大事に服を持ち歩いていたら想像はつくのです」

 

「それなのに、生地について店主に何も言わなかった。その理由が、この街に長く留まるつもりはないと決めていたからだとしたら、全て納得出来ます。生地が再現出来たとき、この街にいなかったら意味ないですからね」

 

「そ、そうですか……オレって、そんなに分かりやすい?」

 

 風と稟の鋭さに今更ながら驚かされた横島だったが、ついでにと質問する。今までも散々分かりやすいと言われ続けてきた横島だったが、出逢って間もない二人にまで分かるのだろうかと気になったようである。

 

「そうですねー。星ちゃんの胸元を見てるときとか、何を考えているか一目瞭然ですね。あと、稟ちゃんの脚やお尻を見てる時も」

 

 表情を変えることなく言う風に、横島はバレていたのかと頭を抱える。指摘してきたのが、稟や星のような美女相手なら、笑って誤魔化すなりしたであろう。恥ずかしそうに告げられたら、その姿に興奮して飛びかかったかもしれない。

 しかし、今回指摘したのはとても可愛いらしい美少女――風である。いくら煩悩の権化たる横島でも、少女の前で煩悩を晒していたことには思うところがあるようである。最も、反省する気はあっても、止める気はさらさらないのだが。

 

 頭を抱えていた横島だったが、稟の反応を伺うために稟の方を向く。これまで、いやらしい視線(横島にそのつもりはない)が発覚した場合、顔を真っ赤にして怒る女性にボコボコにされるというパターンを繰り返して来たことによる悲しい習性である。

 

 そこには予想通りに顔を真っ赤に染め、プルプルと震える稟の姿があった。その姿は怒りに震えているように見えたが、横島の脳裏にはつい数日前に己に降りかかった惨状が浮かびあがる。次の瞬間、横島は風をその腕に抱え稟に背を向け走り出す。

 

 十分に距離を取った横島が振り返ると、そこには赤く染まった机に倒れふす稟の姿があった。

 

 

 

 

 

 血で汚れないように注意しながら稟を抱え上げ、部屋に突撃した横島たちは血を流しすぎた稟の為に、貧血に効くと言う薬を買いに薬屋へ向かっていた。

 

「いやー、志才さんの鼻血は凄いなー。一体、何を想像すればあんなに出るんだ? もしかして、オレとの……だったりして! これって脈有り?」

 

 ニヤけ顔で呟く横島。稟と絡み合う自分の姿を思い浮かべているのだろう、次第にだらしなさを増してゆく。元の世界だったら通報物の顔を晒しながら、妄想にふける横島。そんな男の隣りでも普段通りに歩きながら、風が横島の妄想を否定する言葉を告げる。

 

「脈は全くないと思いますよー。血の量は食後だったせいですねー。それに、稟ちゃんうわ言で星って言ってましたし」

 

「……くっ、期待くらいしてもええやんか! どうせ、相手にされないってことくらい分かっとるわ! 顔か? 顔がいかんのか!?」

 

 風の言葉に取り乱す横島。その口から聞こえてくるのは、世の男性たちを呪う言葉ばかり。そんな横島の姿を見ながら風は、目的地である薬屋が路地裏にある為人目がないことを感謝していた。

 

(こんな姿を女学院の関係者に見られたら、女学院を訪ねても追い返されてしまいますからねー。風は見てて面白いですけど、万人受けするとは思えないですし)

 

 

 そのまましばらく観察を続けていると、急に横島が顔を一点に固定する。その視線の先を追うと、今いる路地より更に奥へと進む道を見ている。

 横島の態度を不審に思った風は、横島に問いかける。

 

「どうかしましたか?」

 

「ん? いや、悲鳴聞こえなかった? 女の子の」

 

「風には聞こえませんでしたが……。この先は、教えて貰った薬屋がある方向ですねー」

 

 横島の問いに答えながら、考えを巡らす風。薬屋の店主は年老いた男だと聞いているので、悲鳴の主は店の客かもしれない。無論、横島の聞き間違いの可能性が一番高い。

 

「お店のお客さんですかねー。それで、どうします? 悲鳴ということは、何かあったのかもしれません。転んだだけとかならいいですが、喧嘩とかだったら風たちではどうしようもありませんよ?」

 

「そ、そうだな。痛いのはイヤやし、オレの勘違いかもしれ……待っててください、お嬢さん! 不肖、横島今アナタの元に!」

 

 ヘタレたことを言う横島であったが、今度ははっきり聞こえたらしく悲鳴の元へと駆けていく。

 その後ろ姿を見失わないように追いかける風。本当に揉め事だった場合、自身が足でまといになることを理解している為、ゆっくりした足取りで追いかける。

 

 

 

 

 

「おや、その袋は?」

 

 風が横島に追いついたとき、既に全部終わっていた。横島は屈んで大きな麻袋を開けようとしているところで、その足元には気を失っているのか男が転がっている。

 

「あ、仲徳ちゃん。中に人が入ってるみたいなんだけど、袋の口が固く縛ってあって……よし、解けた!」

 

 横島が縄を解き、袋の口に手をかける。中にいると思われる女性は、気を失っているのか暴れることはなかった。

 

「御開帳ーってか?」

 

 中を風と一緒に覗き込むと、予想外に中にいた人物と目が合う。中にいたのは、膝を抱えながら身を震わせる幼い少女。その口元は、抱きしめている帽子で隠れているがキツく結ばれていることは想像に難くない。その瞳が潤んでいるのだから尚更である。

 

「えーと……大丈夫?」

 

 予想外に幼い容姿の少女に、戸惑いながら声をかける横島。彼の中では、袋の中には美女がいて、お礼は体でというストーリーがあったのかもしれない。

 横島と一緒に覗き込んでいた風は、少女に安心させるために話しかける。

 

「もう大丈夫ですよー。お兄さんが助けてくれましたから。それで、お名前は?」

 

 話しかけられた少女は、ゆっくりと口を開く。

 

「ほ、鳳士元でしゅ」

 

 

 

 

 ――噛んじゃったと涙目で言う雛里はとても可愛らしかったと、後に横島は語る。

 

 

 




 五話です。今回はあの娘――雛里の登場回。水鏡女学院編は次回で終了予定。
 
 横島の戦闘シーンは全カット。戦闘とは言っても、不意打ちで足払いしたら頭を打って気を失っただけだったりします。

 次回、念願の水鏡女学院に。雛里は決定として、他にも誰か引き抜くのもいいなぁ。女学院にいそうなのは、徐庶?

 水鏡女学院の場所。稟が貧血に効く薬を飲んでいる。
 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。
 活動報告の関連記事は【恋姫】とタイトルに記載があります。

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