ゴッサムカルデアマスターの一日   作:ジンネマン

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ホワイトチョコレート

「やっほーマスターお邪魔するね」

 

 その声がした途端、側においてあった手拭いを腰に巻いた。

 溌剌とした高めの声と共に少女と見まごう少年、アストルフォが浴室に現れた。

 浴室に現れたアストルフォはいつも三つ編みされたピンクの髪をほどいき、手拭いとなにかの液体が入った風呂桶を片手に鼻唄混じりに俺に近づいてくる。

 そして、俺のすぐそばに来ると、

 

「いやーマスター今日はみんなからプレゼントをあげたり貰ったりで大変だったね。

 因みに僕はねホワイトデーのプレゼントを女性局員のみんなにあげたよ。て言うか、みんなバレンタイン当日に『ホワイトデーとかいいから、今すぐハグして!』とか『キスして!』とか言うから先月にもうお返しは終わっちゃんだけどね。でもハグとかほっぺにキスとかだけでよかったのかな?

 あ、そう言えば何人の男性局員さんにもチョコレート貰ったからみんなと同じようにハグしようとしたら女性局員さんみんなで僕を止めたのはなんでだろう? 変わりに今日チョコレートあげたら鼻血吹いて倒れたのは本当に不思議」

 

 よし。その男性局員さんには後で説教をするとして、俺はアストルフォに一つ問わねばならないことがある。

 

「なあ、アストルフォ。なんで今の時間に浴室に来たんだ?」

 

「ねえマスター。それよりももう頭って洗い終わった?」

 

「ん? 今終わったとこだけど………なんでそんなことを聞くんだ?」

 

 それを聞いたアストルフォは『待ってました』と言わんばかりに、イタズラの成功を喜ぶ童子のような、とても意地悪な笑顔でまた一歩二歩と近づいてきた。

 最終的には俺の背後まで来て、

 

「えへへへ。それはね」

 

 風呂桶に入っていた少しひんやりとした液体を俺に浴びせてきた。

 

 それは白濁とした液体。

 それは粘度のある液体。

 それは独特の薫りの液体。

 

 ――!!

 

 次にドンと、誰かが背中にのし掛かってきた。無論、この場には俺とあと一人しかいないから誰かは明白だ。

 そう。アストルフォが背後から抱きついてきた。

 そして、謎の液体を俺に刷り込むように体全体を使ってこりす合わせてきた。

 

 ――おおおおぉぉ。

 

 二重の衝撃。冷たかった液体もそうだが、抱きつかれたアストルフォにも衝撃を受けた。

 サーヴァントとしての身体能力はもとより黄金の馬上槍『触れれば転倒!』(トラップ・オブ・アルガリア)をなんなく振り回し、C-ランクながら怪力スキルを持っている紛れもない前衛系サーヴァント。

 

 ――それなのに、

 

「どうマスター。気持ちいい?」

 

 俺に密着してくるこのサーヴァント(男の娘)ときたら………確かに男性特有の筋肉と骨格の堅さはあるものの、それ以上に意味不明な柔かさと掛けられ洗剤の意味不明な香りが五感を刺激する。

 タオル越しではなく素肌で、スリスリと背中に自身の体を擦り泡立てようとしている。その感触はツルツルとした女の子ような柔肌と男の子特有の堅さに二点の突起が背中を擦る度にゾクゾクとしてこそばゆい(・・・・・)ものが走る。

 

「いな、ん、な、あ、え」

 

「え? 気持ちよくない? よし、意地でも気持ちいいって言わせるよ。

 それ!」

 

 俺の言葉にならない言葉をどう解釈したのか、アストルフォは肩に置いていた両手を離すと俺が痛みを感じない程度で力一杯抱きついてきた。

 

「ついでに前も洗ってあげるね」

 

「ちょっ!」

 

 背中だけではなく前面、胸や肋骨に脇腹と固定していた手で撫で回される。微妙絶妙に立てられた爪がくすぐったくも気持ちよく肌を掻いていく。

 

「ん……あぁ…はん………」

 

 声がもれる。英雄王が聞けば『まるで生娘のような』っと、形容されそうな化細い声。自分の声とは思えない弱々しい声に意外と思いながら頭の中でアラームが鳴り響く。

 まるで絹のような指はまず、俺の指を一つ一つ丁寧に丁寧に、指の隙間から爪の間もブラシで洗い。終われば爪を立てて痛みのない気持ちいい力加減で手のひらと甲、そこから手首肘肩脇までて両手で洗い終えると今度は首から下の肩甲骨鎖骨から降りはじめて胸の辺り、特に正中線をやたら念入りに洗ってくれる。

 その際、アストルフォの指が乳首に引っかかる度、先ほどまでとは違ったおもばゆいものが背筋を駆け抜ける。

 

「♪〜〜〜」

 

 鼻唄混じりに上半身全体に伸びるアストルフォの手。

 それは酷くそわそわと、ゾクゾクする手腕だった。乱暴な力ではなく物足りないか細さでもない。何とも言えない力加減で引っ掻き擦り、揉んで、擦って、こちらが抵抗する気を失わせる蠱惑。

 

 これは、ただ汚れを落とす為の行為ではない。

 これは、ただ一心不乱に相手を想う行為だ。

 これは、ただひたすらに情愛を込めた行為だ。

 

 気持ちよくなってほしい。日頃の労に報いたい。今の一時を安らかでいてほしい。

 アストルフォの手から、胸から、声から、そういった気持ちが染み込んで来るように、心穏やかでいてとても気持ち良くなっていた。

 

「そうだ。首と耳の辺り洗うの忘れてた」

 

「いや! いいから! そこは自分でやるから」

 

「そんな遠慮しなくってもいいよマスター。僕に任せてよ」

 

「だから、ん――んぅんんん」

 

 首、特に延髄と耳の裏とシワを今までで一番弱く、ゆっくりと擦る。

 

「あ、ひゅ………………あす、と」

 

「ちょっと待っててねマスター」

 

 洗剤で擦り終えたら今度はお湯を湿らせた布で首全体と耳全体と穴の入り口まで拭かれている。

 その手腕まさに魅惑、その快楽に抵抗する気力も薄れていき、このまますべてを委ねてしまいそうになった。そう、それでも良かったもしれない。

 

 

 

 

その手は上半身、脇や腕にもまわされて次第に次第に、下へと向かいくまでは――

 

 

 

「! ちょっ、たんまアストルフォ!」

 

「? どうしたのマスター?」

 

 ――今、気づいてしまった。

 

「いや、前は自分で洗うから、もういいから」

 

「え〜〜なんでーーとっくに上の方は洗っちゃったんだから今更遠慮しなくっていんだよマスター」

 

「いやいいから!」

 

 そう。あのまま行けばアストルフォの(甘い毒)あそこ(・・・)に到達してしまう。今現在非常に厄介なことになっているアソコ(・・・)にあの柔らかな細腕と指が危険地帯(デルタゾーン)に触れてしまうと非常に厄介なことになる。

 ――それだけは阻止せねば。

 

 なんとかアストルフォから離れようと両腕に力を込めるが一向にほどけない。これでも多くの時代と地域を信頼する仲間たち(サーヴァント)と一緒に渡り歩いてきたのと同時に体を鍛え鍛えられ、ある程度は身体能力は上がったと自負はしていたのだがそれでもサーヴァント、更にはC-ランクの怪力を持つアストルフォにはびくともしなかった。

 そして、無理な体制で踏ん張っていたのが仇となった。もとより力負けしていたのにあまりに必死になっていたせいで変なところにちからが入り転倒しそうになり咄嗟にアストルフォにしがみついてしまった。

 アストルフォはそんな俺を優しく抱き止めてくれた。

 

 止めてはくれたが、

 

「もう。マスターたら大胆で照れ屋さんなんだから///」

 

 そのままアストルフォは俺の頭に手を回してギュ〜〜っとしてきた。ツルツルとしたさわり心地のいい女の子ような肌、腹筋はしっかりと割れているのに固さを感じさせない柔さに洗剤の形容しがたい匂いに絆れそうになるのに、本能的にアラームが鳴りっぱなしだ。

 ――まずい。冷静になれば今の状況は不味い。

 そう。今、俺は白い粘液と泡まみれでアストルフォを押し倒すようにしてお腹にしがみついている。

 こんなところを他の誰か、特に一部のサーヴァント(トラウマ)に見られたら………………

 

 混乱に陥っている時、脱衣場の扉が豪快に開かれた。現れたのは二人の偉丈夫だった。

 

「たのもーー!! ガハハハ。たしか湯に入る時の挨拶はこうであったな! っと、先客が何やら騒がしいと思えばマスターと………お邪魔だったか」

 

 一人は征服王イスカンダル。

 古代ギリシアの国家、マケドニア王国の王にして西はエジプト、東はペルシアまでを征服しギリシア圏一帯の国々の盟主でとなった。

 世界的な偉人として列挙され、宗教文化ともに後世に多大な影響を与えた人類史における偉大なる大王。

 

「ふむ。状況から察するに情事の最中であったか」

 

 もう一人はフェルグス・マック・ロイ。

 赤枝騎士団の勇士でありアルスターの王であった。クー・フーリンの養父にして剣術の師にでもある。剛毅かつ豪放磊落で、酒と女をこよなく愛しており、誓約《ゲッシュ》を重んじ義に篤い豪傑。

 

 英雄豪傑の呼び名にふさわしう便りになる二人、その二人がいま大浴場の入り口で小声(こちらに聞こえるほどの声量で)話し合っている。それはなぜか、恐れていた人たちとは違うがとても背筋が冷たくに感じるのは気のせいだろうか。

 

「さて、どうしたものか、ここは退散した方がいいか赤枝の?」

 

「いや、ここは我らも参加するべきだ征服王」

 

 予感が的中。

 

「ほほう。それはいかな理由で」

 

「まず二人の尖塔体勢から察するに情事の最中なのは間違いない。だが知っての通り我らがマスターは(うぶ)な上に未経験、相手はかつて盟友を慰めたことがあるとはいっても手馴れいるとも思えない。しかし、男である以上その手のことは切っても切り離せない。

 そして、初めてでしくじってしまえばそれはマスターの今後に差し支えてしまう。ならば先達たる我らがしっかりと二人に指導するのが最良ではないか征服王」

 

 尤もらしように聞こえるが、未だに背中の悪寒が収まらない。

 

「ふむ。して、本音は?」

 

「色々たまっているから抱かせろ」

 

 ――ですよね〜〜。

 

「ちょっと待って二人とも!」

 

「そうだよ二人とも、マスターの相手は僕がするんだから」

 

「アストルフォは黙ってて」

 

 この流れをどうにかしなければ大変なことになる。ことフェルグスの性強さは神話に語られるほどのものでどうなるかは想像もできない。

 いや、したくない。いろんな意味で!

 イスカンダルに対しても、当時のギリシャでは同性愛は上流階級の嗜みとして経験積んでるだろうし、色々ヤ・バ・い!

 

「心配するでないマスター。我らは生娘相手も経験済みだ。だからなにも心配せずと――」

 

 刹那。貞操の危険とは別ベクトルの危険を、全身を通り抜け魂のレベルで感じた。

 

「『転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)』っ!!」

「釈提垣因・金剛杵《しゃくだいかんいん・こんごうしょ》』っ!!」

「|道成寺鐘百八式火竜薙《どうじょうじかねひゃくはちしきかりゅうなぎ》っ!! 」

 

 危険を感じてから数舜もない。突如として脱衣場と浴室を遮る扉が雷を纏った金剛杵と焔によって粉砕して迫る。

 目の前まで迫った雷焔、人を一瞬にして死に至らしめる超高温の双牙――殺す気満々の二撃、俺単身なら諦めはせずとも必死の回避行動をとるだろう。それでも経験上躱すのは至難を極める。

 

 俺単身なら――

 

神威の車輪 ( ゴル ディアス・ホイール )っ! 」

虹霓剣(カラドボルグ))っ!」

この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)!!」

 

 そう。俺単身なら絶望的な状況だっただろう。

 だか、ここには頼もしきサーヴァント(仲間)たちがいる。二人が雷撃と焔を防いでアストルフォが大鐘から逃がしてくれた。

 しかし『勝って兜の緒を締めよ』という諺があるように事がすべて終える前に油断してはいけない。一瞬たりとも。

 

牛王招雷・天網恢々(ごおうしょうらい・てんもうかいかい)

 

 不意を突かれた。まさに不意だ。

 本のわずか隙を突いて最大の神威たる雷光が襲いかかる。三人は対処できなかった。出来るはずもなかった。

 誰もが必殺の宝具に対応していて手一杯だった。畢竟四撃目の雷光には誰もが無防備。

 

 

今度こそ覚悟を決めた。

 

 「先輩!」

 

 隣の男子浴場と女子浴場を遮る壁を粉砕して助けに来てくれたのは最愛の後輩(マシュ)

 

いまは遙か理想の城(ロード・ キャメロット)

 

 轟々と雷鳴轟かせた決死の一撃をマシュが防いでくれた。その際に弾かれ飛散する雷がただでさえ悲惨な浴場をもはや廃墟一歩寸前まで破壊する。

 

「頼光さんたち、清姫さんたち。なんでこのようなことをするのですか!?」

 

「………邪魔をするですか。全く、それはこちらの台詞ですよマシュ。どうしてそのようなことするのですかマシュ? いま私たちは愛しのマスター(息子)にどうしょうもないことをしようとする虫どもを母として助けるためにここにいるのです。

 それを邪魔するというなら貴女も虫の仲間なのですか?」

「そうですよマシュさん。これは愛しの安珍様(マスター)の貞操を守るためであり、そこな男娘(おとこ)に欲情した制裁であり、そしてマスター(安珍様)を襲おうとした者共を誅罰するための行動なのです。

 軽はずみな行動は慎んで下さい」

「ええそうです。そうですとも。

 マスター(愛しの我が子)が非行に走り、一時の迷いとはいえそんな愛息子(マスター)を唆して、尚且つ淫行に耽ろうとしたのですよ。

 生かしておく価値はありません」

「そうですね。

 まあ、それ以前に浮気は死刑です。マスター(旦那様)

 

 矢継ぎ早に語るバーサーカー(トラウマ製造機)たち。誤解と偏見と独断が株価の如く横行するは俺に頭痛を通り越して失神しそうだ。

 ここはマシュの弁護を期待したいところだか。

 

「皆さん落ち着いてください。確かに今日の先輩は不潔で」

 

 ――あ、また悪寒が――

 

「不衛生なのはここですか!」

 

 深紅の看護(監獄)衣を身に纏った我らが婦長様が来てしまった。

 もうその後は性指導と衛生指導とか言って助手にジャックが参戦、先ずは煮沸殺菌のために湯を沸かすと話を聞かない人(トラウマ生産機)たちとすったもんだしている間に殺生院まで乱入してきて、しまいにはマルタとジャンヌといったルーラー勢(天草は引っ掻きましただけ)まで、もう、手に終えない。

 

 そして、俺は悟った。

 もう二度と大浴場には行かない。絶対に逝かない。

 静かにシャワールームで、一人で、マイルームで済ませよう。

 

 

 

 因みにアストルフォの持ってきた洗剤は某P製だったようだ。サーヴァントをも興奮と多幸感を与える代物だったようで、それをアストルフォ(あのバカ)は脱衣場でぶちまけその結果成分か蔓延してあの二人は欲情、更には突入してきてその成分を吸って暴走………いや平常運転だった。とにかくP曰く一応(・・)は俺のために製作したらしいが………

 もう、よそう。疲れた。

 ホワイトデー――恐ろしい日だった。




お疲れ様です。
一つ、最後に言っておこう。
私はBL好きではない!

え?好きな男性鯖、一部でいうならアストルフォ、デオン、イスカンダル、ギル、フェルグス。
つまり、私は無罪だ!
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