そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

11 / 20
どうもご無沙汰しております、秋 緋音です。

国試の勉強のため、休止していたのですが

息抜きついでに(現実逃避ではないッ!)

ちょくちょく書いていた第11話です〆(・ω・o)


第11話

 

「─────…。」

 

んんっ……あれ……?

 

「起きろ、一色…。」

 

「…………ふぇ?」

 

 

わたしを呼ぶ、その声によって心地よい微睡みから、意識を起こす。重たい瞼を力なく持ち上げると、太陽光が眩しく射し込む。背中を押し返すような、硬い感触。いつの間にか身体に掛けられた、淡い水色のブランケット。

そして、上からわたしの顔を、覗き込んでいる先輩…………せんぱいッ!?

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

ちょ、ちょっと待ったぁー!!

ね、ね、寝顔、寝顔を見られたッ///

 

ガバッとブランケットを頭まで被り、羞恥のあまり、顔が焼ける程に熱く赤くなっているだろう顔をおもむろに隠す。

 

昨夜、過去と向き合う決意を固めた私は、テンションがハイになってしまったようで、今日の先輩の朝ごはんとお弁当を作った後に、部屋の掃除、トイレの掃除、風呂の掃除と、ありとあらゆる場所を隅々まで綺麗にして回った。

 

やりたいことを全てやりきったわたしは、ソファーに寝っ転がり、終いにそのまま寝落ちしたみたいだ。

 

 

 

 

まだ熱く火照っている顔の、鼻から上のみをブランケットから、ひょっこりと出す。

 

「……お、おはようございます、せんぱい」

 

「おはよぅさん。なんか家中がめちゃくちゃ綺麗になってんだが……」

 

「すみません、勝手なことして」

 

「いや、すげー助かったわ。朝食に弁当まで、ありがとな」

 

「……はい」

 

 

未だに頭半分しか見せないわたしのもう半分、隠した口元は、それはもう、ゆるゆるに緩んでいた。

 

元気になった先輩は、仕事に行くために薄いストライプのスーツを着て、お弁当の入ったミニトートを、手に持っている。

そして、感謝の言葉と微笑みの爆弾……。

にやけない訳がなかった。

 

 

 

「おれはもう仕事行くから、帰る時は玄関の鍵を使ってくれ」

 

「え、あ、はいっ!」

 

「…………ありがとな、一色」

 

「……え?」

 

「いや、行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃいです……」

 

 

 

 

 

 

ガチャンッ……ガチャッ

 

 

 

 

 

 

 

家主である先輩が仕事に行ってしまい、ひとり取り残されたわたし。

 

とりあえず、掛けてもらったブランケットを丁寧に畳んで、目をくしくしと擦りながら、ソファーから立ち上がったその時

 

 

ブーッブーッ……

 

 

 

わたしの鞄から発するバイブ音に、ハッとする。

頭に浮かんだのは、昨夜に送信した一通のメッセージ。

 

鞄からわたわたと携帯を取り出すと、そこに映し出されるのは新着メッセージ。

 

 

 

 

 

 

[☆★ゆい★☆]

いろはちゃん、やっはろー!!

久しぶりだね(*´ω`*)

 

 

 

 

 

そう、過去と向き合う為に、数年ぶりに連絡を取った相手、結衣先輩からの返信だった。

 

 

 

 

[一色いろは]

やっはろーです!

卒業式以来ですね 

 

 

 

[☆★ゆい★☆]

うん、びっくりしちゃった!

どうしたの?

 

 

 

 

[一色いろは]

突然ですみません。

結衣先輩に会ってお話し

したいことがありまして…。

 

 

 

 

[☆★ゆい★☆]

わたしもいろはちゃんに

会いたい(*´ω`*)

いつにしよっか?

 

 

 

 

[一色いろは]

ありがとうございます 

いきなりですけど

今日は忙しいですか?

 

 

 

 

[☆★ゆい★☆]

今日は午前中で講義終わるから

午後からなら大丈夫!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり連絡をして今日会えるかとか、かなり無茶なお願いにも関わらず、会う約束を取り付けられたみたい。

 

結衣先輩は総武高を卒業後、千葉を離れて東京にある大学へ進学した。地元組のわたしとそう離れていないので、お昼すぎに東京へ足を運ぶ事になった。

 

 

 

 

 

よし!そうと決まれば、ひとまず自分の家に戻って準備をしなければ!!

荷物をまとめて玄関へ向かうと、壁に取り付けられたフックに、キーホルダーもなにも付いていない鍵が、寂しそうにぶら下がっていた。

 

うわ~、先輩らしいなぁ……。

でも、逆にストラップとか付いてても、それはそれでおかしいけど(笑)

 

ぷぷぷっと、ひとり笑いをしながら、鍵を手にしたところで、ふと気が付く。

 

 

 

ちょっと待って……。

 

こ、こ、これは……『合鍵』じゃないですか……///

 

 

ええええだってさっきせんぱいが出ていくとき鍵かける音してたよね……、閉まってる、閉まってるよ鍵かかってるよ!!

 

 

 

『おれはもう仕事行くから、帰る時は玄関の鍵を使ってくれ』

 

 

 

 

……ということは、

 

 

せんぱいは、自分の鍵をちゃんと持ってる。

 

玄関に置いてある鍵を使え、と。

 

返す方法は言明していない……!!

 

 

つまり、合鍵ッ!!!

 

 

いきなり先輩の部屋の合鍵を、手に入れてしまったわたしは、某キングダムなハート達のキー〇レードが如く、その『合鍵』を天高く突き上げた。

 

 

やったよー!!せんぱいの合鍵だよ!!

 

 

狭い玄関で、ぴょんぴょんと喜びに飛び跳ねる。

これから過去と向き合おうと、気負うわたしの背中を後押しするような、嬉しいサプライズに、心は前を向いた。

 

どうしようもなく、ルンルン気分なわたしは、せんぱいの部屋を出て、しっかりと鍵を掛けた。合鍵で、鍵を掛けた(とっても重要なことなので、2回言いました!)。

 

 

 

すぐ正面に位置するわたしのアパートまで、柄にも無くスキップで帰宅して、結衣先輩に会うために東京へ向かう準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワーを浴びてスッキリしたおかげで、さっきまでのルンルン気分はなりを潜め、冷静になったわたしは、濡れた髪に頭からタオルを被りソファーに腰掛けて、これから結衣先輩と会ってからの事を考える。

 

 

わたしと先輩が再会を果たしたことを、結衣先輩はたぶん知らない。まずはそこから話をしないとね。それから、あの卒業式から、あの奉仕部の3人はどうなってしまったのか……。

 

過去と向き合うと決意は固めたけど、いざとなると、やっぱり怖いな……。

 

でも、ちゃんと確かめるんだ。せんぱいだけじゃない。自分のためでもある。そして、わたしが大好きだった、あの紅茶の香る、暖かくて優しい、あの3人の為に……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結衣ちゃん、どうしたの?」

 

「うん、いろはちゃんがね、わたしと話したいことがあるってね。今から会いに行くんだ~」

 

「一色さんかぁ、懐かしいね!」

 

「うん……。わたしも、いろはちゃんと話したかったんだけど、先越されちゃったな……あはは」

 

「うん、そうだね」

 

「あのさ、良かったらなんだけど……

 

 

 

 

 

 




はい、というわけで第11話でした、
ガハマさん、こんな感じで大丈夫…?笑

勉強の片手間ですので、今回は少し短め。

でも書いてると楽しいね、やっぱり。
またしばらく次話投稿まで期間が
空いてしまうと思いますが、
休憩がてらにちょくちょく書いていきます。


※小説タイトルを「そして一色いろはは過去と向き合う」に
変更しました。


閲覧、お気に入りしてくださる読者様
ありがとうございます!

感想、評価お待ちしてます♪♪

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。