そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

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ご無沙汰しております。
秋 緋音です。

俺ガイル 13巻が発売されましたね!
ラノベは電子書籍派の自分は、今日購入しましたが
この第12話を書き終えるまでは読まない!
そう決めて、なんとか書き終えました……。

では、どうぞ~


第12話

 

 

 

 

 

「そっかぁ……。あーあ、振られちゃったなぁ、あはは……。うん、ありがとね、ひっきー。ちゃんと答えを出してくれて。本当にありがとう……。ばいばい、ひっきー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優雅なジャズクラシックが、店内を漂うその喫茶店は、都会の喧騒と隔離されたような、森閑とした静けさを保つ。カウンターからは、フラスコのような抽出器具から、コポコポと心地よい音が聞こえてくる。実に耳心地よさそうだが、しかし、今のわたしには、そんな音を耳にする余裕がなかった。

 

4人掛けのテーブル席に座するは、3人の男女。わたしと結衣先輩、そして戸塚先輩。

 

 

 

「え、えーっと……どうして、戸塚先輩がここに……?」

 

 

 

戸塚先輩。同じ総武高の先輩で、小柄で線が細く、私が羨むほどの天然な小動物的な可愛さを誇る、だがその実、正真正銘の男性なのだ。先輩の最も仲の良いといえる男友達。そんな中性的な戸塚先輩は、薄いベージュのセーターにジーパン、そしてニット帽と、男性と女性とも捉えられる服装で、傍から見れば、女性にしか見えないとすら言える。

 

しかしこの会合は、過去と向き合うために、結衣先輩と2人で直接話しをするためのもの。まさか、無関係とは言えずとも、当事者以外の人物が同席するとは、予想だにしていなかった。

 

「ご、ごめんね、いろはちゃん!これは、その……」

 

「ごめんね、一色さん。僕から結衣ちゃんに、お願いしたんだ。僕も一緒に連れていって欲しい、てね」

 

相変わらずのお団子結びで、淡いピンクのワンピースのニットに、ムートンブーツで、昔より大人っぽく、落ち着いた雰囲気の結衣先輩が、申し訳なさそうな困り顔で謝るのを制して、戸塚先輩が話を切り出す。

 

「今日は……、八幡のことを話すために、結衣ちゃんに会いに来たんだよね?」

 

「えっ!?なんで……」

 

「結衣ちゃんがね、たぶんそうじゃないかって……。違ったかな?」

 

「……いえ、そういうことです」

 

やっぱり、妙に鋭い結衣先輩は、わたしの意図に気付いていた。

 

「実はね、僕は高校を卒業してからも、八幡とは何度も会ってるんだ」

 

「えぇっ!?」

大学に出てからも相変わらずぼっちなこと、突然玩具メーカーの社長にヘッドハンティングされたこと、大学を中退して就職をしたこと、戸塚先輩が聞いていた内容は、高校卒業後、せんぱいが今に至る進路だった。しかし、そこに奉仕部の話題は、含まれてはいなかった。

 

「八幡は相変わらずだったけど……、あの頃とは、なにか違うなって。それで、結衣ちゃんに聞いたんだ」

 

「そう、なんですね……」

 

「僕はやっぱり、あの頃の、奉仕部のみんなと一緒だった八幡が、好きだな……。だから、僕にも協力させて欲しいんだ」

 

初めて正面から向き合った、戸塚先輩の目は、昔を憂うように、しかし確固たる決意の意志が、映っていた。

 

「わ、わたしも……ッ! やっぱり、このままじゃ、嫌だな。いままで、どうしたらいいんだろうって、ずっと考えて、悩んで、でも何もできなくて……。もし、ひっきーが嫌がったとしても、もう一度ちゃんと、話がしたい!」

 

ゆい先輩も、弱々しく潤わせた瞳には、戸塚先輩と同じ意志が、込められているように見えた。

 

 

 

ほんっとに、せんぱいは……。なにが孤高のぼっちですか。こんなにも素敵な人達に、こんなにも愛されているのに。世のぼっち達が聞いたら、ヒンシュクもんですよ。確かにせんぱいは、友達少ないし、捻くれてるし、卑屈だし、捻くれてるし、女心とか欠片もわかっていなくて、すぐあざといって言って、捻くれてて、鈍感で……、本当に優しい。知らない誰かには、理解されない優しさ。他人の為に自分を傷つける、そんなひねくれた優しさだけど、それを知っているから、その優しさに触れたから、みんな先輩が好きで………………

 

 

わたしはやっぱり、先輩が好きなんだ!

 

 

「わたしも……ちゃんと向き合いたいんですっ! もう一度、あの奉仕部の、優しい空間を、大好きだったみんなと会いたいです! 取り戻しましょう、きっと大丈夫です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」

 

 

 

お互いが意思表示をしたところで、注文していたケーキと飲み物を、店員さんが運んでくる。お店の雰囲気に合う、シンプルなチーズケーキと、芳醇な香り漂う、ダージリンティー。これはあれですね、"映え"です!うる若き乙女には、重要なことですからね!?まぁ、さすがに今は、そんなことしている場合じゃ……「わぁー! なんかいい感じ! 写真撮ろうっ♪♪」…………ゆい先輩はブレないなぁ。

 

美味しいケーキと紅茶を、少々味わいつつ、話を進めていく。

 

「やっぱり、まずは直接会って、話をするのが一番なんだけど……、会ってくれるのかな」

 

「んんー、せんぱいの事ですからねぇ……」

 

「いきなりはやっぱり、会いにくいんじゃないかな」

 

「じゃあじゃあ! 偶然を装って、サプライズ! みたいなのは?」

 

「それが一番、手っ取り早いですけどね」

 

「八幡は、嫌がりそうだね」

 

「だよねぇ、はぁ……」

 

 

ゆい先輩のため息が、わたしと戸塚先輩にも、伝播する。初手で躓いてる……、ほんとどうしよう。もし、わたしがいきなりせんぱいに、「ゆい先輩と雪ノ下先輩に会いましょう!」なんて言ったら、どんな反応をするだろう…………、ぜーったい嫌がるよね……。むしろ、裏でそんなことを、企んでいると知られれば……、最悪嫌われちゃったりして……。それは嫌だああああああ!

 

 

「じゃあさ、いきなり3人で、じゃなくて、僕や一色さんと一緒に、多数で集まるってのはどうかな? プチ同窓会って感じで」

 

「確かにっ!それなら少しは気が楽かも!」

 

「いいですねそれっ!」

 

ナイスアイディア戸塚先輩! それならせんぱいも、渋々だろうけど少しは気が向くかも!ふっふっふ……、戸塚先輩に加えて、小町ちゃんなんかも誘ってしまえば、せんぱいに拒否という選択肢は、もはや無いも同然!

 

 

…………あれ?

 

 

「そういえば、ゆい先輩。雪ノ下先輩は、いま何してるんですか?」

 

「あ、あぁ……、ゆきのんはね……」

 

なにやら言いよどみながら、視線を右へ左へと、泳がせるゆい先輩。

 

「ゆきのんはいま、海外にいるんだよね……」

 

「…………まじですか」

 

「と言っても、海外留学なんだけどね……」

 

 

どんだけ意識高いんですか、雪ノ下先輩!! 将来なにになるつもりなんですか、あのお方は……。しかし困ったなぁ、留学ともなると、そう簡単には帰国できなさそう……。

 

 

「雪ノ下さんは、やっぱりすごいね。でも、都合よく帰ってこれたりするのかな?」

 

「んーとねぇ、前に帰ってきたのが夏に入る前だったから……次はいつだろ。お盆か年明けくらいかなー?」

 

「となると、今が7月だから……早くて1ヶ月後、遅いと半年先ですか……」

 

 

帰国するのにもお金とかかかりそうだし、すぐには帰れないかなぁ……。あ、でも雪ノ下先輩なら……くぅ、お金持ちはずるい。

 

 

「よしっ善は急げだ!ゆきのんに連絡してみる!」

 

あのゆい先輩が慣用句を……ッ!?

 

手馴れた手つきで、スマートフォンの画面に指を走らせ、そのまま耳元へと持っていく。

 

 

「…………あっゆきのん!久しぶり~!……あはは、そうだよね! ──────」

 

 

店内で迷惑にならない程度に、今日1番の明るい笑顔で、なんかすごい手をブンブン振りながら、電波で繋がった遥か海の向こうの、雪ノ下先輩と話し始めた。

 

今更だけど、ゆい先輩と雪ノ下先輩は、今も変わらず仲良しなんだ……、良かったぁ。

 

 

ゆい先輩の話し方や、数ヶ月前にも会っていることを聞いて、密かに安心感を得ていた。3人ともがバラバラだった場合には、これからの事の運びは、相当に難しかったと思う。そんな心の安堵と同時に、あと日の納得が確信に変わった。せんぱいは、あの日、正直に心の内を開け放って、答えを出した。2人どちらかを選ぶことは出来ないと。それは真実で、もうひとつ、2人のために自分を独りにするという、相変わらずの自己犠牲が、そこにはあったのだと。だからわたしも、先輩から離れるようになってしまったんだ。遠ざけた2人の代わりを自分が担うのは、計算高く打算的なわたしでも、ひどく罪悪感を覚えたから。

 

 

 

そんなのは、"本物"じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

ひとり物思いにふけている内に、ゆい先輩が雪ノ下先輩へ、本題に入ろうとしていた。

 

 

「うん。あぁー、それでね、ゆきのん……。今日電話したのは、大事な話があるんだ。…………うん、いまさいちゃんといろはちゃんといるんだけど…………そうそう。それでね、みんなで同窓会をしようって話なんだ……。…………もちろん、ヒッキーも…………」

 

 

せんぱいの名前を口にした途端、空気が濁った。ゆい先輩はそこから先なにも言わず、恐らく雪ノ下先輩も口を口を噤んでいるのだろう。

 

数秒の静寂の後、ゆい先輩はぎゅっと固く結んだ口を開き──────

 

「ヒッキーの優しさに……甘えたままで…………、それでいいの?」

 

思わず息を呑んだ。対面の戸塚先輩も、険しい顔色を見せる。わずかに熱の篭った低い声で、そう言ったゆい先輩の表情は、悲しそうな、でもどこか怒りの色を見せる。その理由は、さっきまでわたしが考えてたことと、全く同じことだろう。せんぱいの考えを、この2人が理解出来ないはずがない。でも、わかっているからこそ、そこに甘んじたんだ。せんぱいの優しさを無下にしないために。

 

 

「…………うん、わたしはもう決めたよ。いろはちゃんがね、あの奉仕部が好きだって、言ってくれたんだ……。それはわたしもおんなじで、ゆきのんだってそうでしょ?ヒッキーだって、おんなじはずだよ、きっと。だからッ! ね、ゆきのん…………」

 

 

再び流れる静寂に、緊張感が走る……。もし雪ノ下先輩が拒否すれば、この計画は破綻する。雪ノ下先輩、お願いします……!

 

「…………えっ!? うん……うん、わかった!またね、ゆきのん」

 

 

ゆい先輩がスマートフォンを、顔の横から離す。

 

 

「ゆ、ゆい先輩!どうでしたか!?」

 

身を乗り出して、ゆい先輩に迫ってしまった。

 

「う、うん……。少し時間をちょうだいって。」

 

「……ッ! そうですか…………」

 

「大丈夫だよ、いろはちゃん。ゆきのんは、絶対に来てくれるから!」

 

 

恐らくなんの根拠の無いそこ言葉は、しかしなぜか安心を得られた。

 

 

 

「よしっ!じゃあさ、いつどこで集まろっか?」

 

「あはは、結衣ちゃん気が早いね。それに、雪ノ下さんが次に、いつ帰ってくるか聞いてないでしょ?」

 

「…………あ、忘れてたぁあああ!!」

 

相変わらず抜けてるなぁ、ゆい先輩。

 

「まぁまぁ、ゆい先輩!日程はまず置いておいて、場所に関してはやっぱり、あそこしかないでしょう!」

 

そう、これはこの計画を考えた時から、既に決めていたんだ。

 

「で、でも私たちもう卒業生だし、難しいんじゃない?」

 

「だぁいじょうぶですっ!これでもわたし、陽さん先輩の再来とまで言われた、元生徒会長ですから!もう大船に乗った気でいてくださいっ♪♪ なので──────

 

 

 

もう一度戻りましょう! あの奉仕部へ!」

 

 

 

 






はい、というわけで第12話でした。

戸塚、ほとんど喋ってない!
ゆきのんに関してはセリフすらない!
こんなんでいいのかよ!

急展開になってしまいました……。
もうほんと忙しくて……すみません(・ω・`)

更新速度遅めで、頑張っていきます!


ゆっくりしてる間にも、評価や感想を下さって
ありがとうございます◎
誤字報告も助かります!

それではまた第13話で~ 
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