メリークリスマス~!!
クリスマスなんてただの平日で
特になにも変わらない、クリぼっちを嘆いていた時
『そうだ、クリスマス編書けばいいじゃないか』
そう思い立って、急いで書きました。笑
この番外編を書くことで今年のクリスマスは
なんとか充実できました。
とある喫茶店にて
「ほーら、せんぱいっ!ピースですよ、ピース!」
「はぁ、なんか前にもこんなことあったな……」
「はい、撮りますよー!はい、チーズ!」
カシャーッ!
「ありがとうございまーす!」
「はぁ、なんで俺がこんなこと…………はぁ」
やはりまた、アイスは少し溶けていた。
遡ること、15時間前、昨夜のこと。
\ピンポーン/
「あ? 誰だこんな時間に……」
ガチャリ
「こんばんわー! 可愛い後輩のいろはちゃんですよー!」
「…………ガチャリ(無言で締める)」
(バンバンッちょ、せんぱーい! なんで締めるんですかぁ!? 開けてくださいよお!!)
「ガチャリ…………なんだよ」
「こんばんわ~ってことで、失礼しまーす♪♪」
「ちょ、おい! ……ったく」
唐突な来訪者は、すぐ向かいに住んでいる、総武高時代の後輩、最近数年ぶりに再会を果たした、一色いろはだった。
「何してんだよ、お前」
「せんぱいの部屋って、相変わらず寂しそうですね」
「るせー、不要な物は持たない主義なんだよ」
「へぇー」
「…………んで、何しにきたんだよ」
「せんぱい、明日はクリスマスですよね!?」
「は?何言ってんの? 本編だと……いままだ7月のはz────」
「てへッ♡ 死ねェッ!!!!!」ドゴッ
「ゔッ…………にゃん……ぱ……s」バタッ
「ふふふ、せんぱい……ここはね、わたしがクリスマスといえば、クリスマスになるんですよ、そういう世界なんですよ?」
「ぅぅ…………ここは?」
「せんぱい!しっかりしてください!大丈夫ですか?」
「お、おう……なんだか、いい一撃をもらった気分だ……」
「は、何言ってるんですか? わたしが誰だか分かりますか?」
「一色いろは」
「そうです。 で、今日は何月何日ですか?」
何だその質問、タイムスリップかよ。ええっと……今日はひt、いや、なんだっけ。えーっと確か…………
「今日、は…………12月24日」
「はいっ!よくできました!」ナデナデ
「ええーい鬱陶しい恥ずかしい離れろやめろ!」
「あッ!もぅ……」
風呂に入ってから来たであろう一色からは、甘い香りがした。それどこのジャンプー?〇ックス?パン〇ーン?
「そんで、こんな時間に何の用だ?」
「はい、デートをしましょう」
「……はぁ?でぇと?」
「はい、デートです」
「嫌だよなんでだよ。明日は仕事も休みだし、外はリア充(笑)で溢れてるし、家にこもるんだよ」
「ええーいいじゃないですかぁ! 街中がこう、キラキラしてて~ドキドキするでしょ!」
「偏差値低そうな言葉並べんな」
「だから……せんぱい、ダメですか」
「…………まぁ、いつぞやの看病の御礼ってことなら」
「ッ!ホントですか!? じゃあ明日、15時に!」ピシッ
一色は顔の前で、あざとく敬礼をすると、そのまま家を出ていった。
相変わらず動作があざといのだが、さっきのあの顔は、素だったようにも見えた。はぁ、めんどくさい事になったが、借りは返さないとな。
そんなこんなで、俺と一色のX'masデートが、決行されたのであった。
「んん~美味しいですねッ! このクリスマス限定アイス!」
「いやちょっと溶けたんですけど。あと、カップル限定ってなんだよ」
「いいじゃないですか~! 美味しいしお得ですし限定ですし!」
「はいはい、おすしおすし」
「そういえば、以前にもこんな事ありましたよねー?」
「葉山とのデートの下見ってやつだったな」
一色と行ったカフェやその他施設の写真は、後にフリーペーパーの作成の為に、取材に行ったんだったな…………、3人で。
「そうそう、それです!」
「はぁ、そんで、次はどこ行くんだ?」
「うわ、ため息つきましたね?減点です」
「また点数付けんのかよ……」
「次はですね~、まだ夜まで時間もありますし、映画見に行きましょう! ちょうどいま見たいやつがあるんですよー」
「ほーん、今回は卓球じゃないんだな……、今回も踵は相変わらず高いけど」
「………………」
(え、いろはすなに?急にキョトン('ω')って顔して)
「……よく、覚えてますね」
「あ? ま、まぁな……。なんだ、それなりに楽しかったし、知らんけど……」
「……せんぱいの方があざといんですよ….///」
「うるせー。映画はなに観るんだ?」
「それは着いてからのお楽しみで~す! あ、言っておきますけど、プリキュアとかじゃありませんからね……」
(ちっ、わかってたけどな。しかし、今回のオールスターは、初代たちがメインらしいから、絶対に見なければいけない。)
案の定、映画館に着いた一色が、タイムスケジュール欄に指さしたのは、今時のラブコメ映画だった。心底嫌だったが、この間の御礼という名目があるため、2時間ただひたすら、スクリーンをぼーっと眺めていた。
感動シーンに差し掛かった時、こういうのを見て、一般的な女子は感極まって、つい涙するんだろうと思い、ふと横に座る一色を見た。
これは、どういう感情なのだろう、一色は得もいえぬ表情をしていた。涙は流していない。だがつまらなさそうにしてもいない。強いて言語化するなら、否定、そんな漠然とした言葉を、一色の表情に見た。
「はぁ~、まあまあでしたね」
「まぁな、俺はほとんどストーリー見てなかったけど。劇中のお前の表情見るになんとなく、期待外れって感じなんだろうな」
「はぁっ!?なんですか口説いてるんですか映画なんかよりお前に夢中とかちょっとトキメキますけどくさすぎるのでもう少しマイルドに言ってくださいごめんなさい」
「違うしそうは言ってねえ」
「ま、期待外れっちゃ期待外れですね」
「やっぱプリキュアの方が良かったんじゃねえの」
「………………」
(ええ、いろはす無視? おこなの?)
「……外、だいぶ暗くなってきたな。どうする帰る?」
「そんなわけないじゃないですか!じゃ、気を取り直して、今日のメインに行きましょうか!」
「へいへい」
相変わらず表情がコロコロ変わるやつだと感心しながら、次なる場所へ移動するため、電車に乗る。
クリスマスだからだろうか、電車は満員で四方八方から押し込まれる。壁際へと避難し、一色を壁へ追いやり、壁となる。背後から急に押された反動で、反射的に片手を壁へ手を着く。その手は一色の頭の少し上にあり、一色はこっちを向いている。なんかほんのり頬を赤らめているが、あれだな。暑いよな、満員電車。俯き目を逸らした一色から「あざとすぎますよ……///」と言われた気がする。気がするだけだ。
「……わ、悪ぃ」
「い、いえ……その……、も、もうすぐ着きますから///」
「そ、そうか……」
あっついなぁぁこの車両!車掌さん暖房効かせすぎなんじゃないですかね!
「せ、せんぱい……次で降りますからね」
次の駅に停車すると、一斉に乗客が外へとなだれ込んでいき、俺と一色もひとつの波となり電車から降りる。
決して狭くないホームいっぱいに、ぞろぞろと改札へ移動している中、不意に右腕に重みを感じた。
「せんぱい……はぐれないように、握っててもいいですか?」
人混みに埋もれそうな一色が、俺のコートの裾を握りしめていた。いや、もう握ってますよね、それ。
「まぁ、この人混みじゃしょうがねえな。はぐれるなよ」
右腕に感じる重みを確かめながら、前へ進んでいく。駅を出ると、そこには色とりどりの電灯が道いっぱいに並び、薄暗い冬の夜を明るく照らしていた。イルミネーションってやつか。なるほど、みんなこれが目当てだったわけか。道の周りには露店や屋台も並んでいる。
とりあえず光に照らされた一筋の道へと歩いていると、今日何度目になるだろうか、前にもこんな事があったと思い出す。それは数年ぶりに一色と再会を果たした日。あの日も一色は俺のコートの裾を掴み、駅の前を歩いた。喫茶店や映画、そして今の現状は、まるで過去をなぞっている様な気がするが、そこになにか一色の思惑があるか否か、俺の知る由もないことだ。
「せんぱいせんぱいッ!ほら、行きますよー!」
大通りに出たこともあり、人集りに隙間が出来てきており、俺の後ろに付いてた一色は、こっちこっちと、今度は俺の袖を引っ張り先導していく。
光に彩られたお城や、幾何学模様のイルミネーションは、テレビでしか見たことがなかったが、実際に見てみるとなかなかに圧倒された。
「ほら、せんぱい! 写真撮りますよ!」
「は?いいよ別に」
「もぅ!もっと寄ってください!はい、取りますよー!」カシャーッ!
「……ッ! 危ねぇな、落ち着けよ」
無理矢理に袖を引っ張られ、身体の触れそうな距離に迫ったところで、カメラの枠に収まった2人は、煌びやかな背景と共に、画面に映し出された。
それからは、あっちへこったへと、いくつもの露店に連れ回された。人混みのすき間を縫うようにすり抜ける俺の108の特技『ステルスヒッキー』も、一色がいては置いていきかねず、一色は終始コートの裾を握りしめていた。
「ほらよ、甘酒」
「ありがとうございます!」
「……ふぅ、冷えた身体に染みる」
「せんぱい、オヤジ臭いです」
「うるせー、社会に出りゃ男はみんなおっさんみてぇなもんだろ」
「なんですかそれ」
小さなベンチに並んで腰掛け、ずずずっと甘酒を啜る2つの音が、この喧騒の中でも、やけにハッキリと聞こえる。
「せんぱい……、今日はありがとうございました」
「なんだよ、改まって。言ったろ、これはこの間の御礼だって」
「ふふ、そうでしたね。それでも、クリスマスにわたしと過ごしてくれたこと、ありがとうございますって言いたいんです」
「おう……。まぁ、なんだ、こちらこそ」
「なんですかそれ、あはは」
「前もそうだが、こういう機会でもないと、こういうイルミネーションなんて絶対来なかっただろうし、あんな映画やカフェもな。一色のお陰で、未知を体験するってのは、結構楽しいもんだったわ、ありがとな」
そういって、両の手で甘酒の入ったコップを、暖かそうに持った一色の頭を、ごく自然にそっと撫でた。
「そ、そうですか……//」
(おっといかん!またついお兄ちゃんスキルがオート発動してしまった……。)
「うぅ…………あッ!せんぱい!雪ですよ、雪!!」
急に立ち上がり、イルミネーションの隙間から覗く夜空へと指さした。そこからは、小さく儚げ白い粉雪が、無数に舞い降りてきていた。2人してポカンと口を開けたまま、ただおもむろに空を仰ぐ。顔に落ちてきた雪が冷たい。
ここ数年、雪が降るとどうしても、思い出してしまう、苦い過去。ずっと空から降り注ぐ冷たい雪を、恨めしそうに睨んでいた。だが、今はどうしてか、そんな雪さえも暖かく感じている。なにかが変わったのだろうか。もしくは、これからなにかが変わっていくのだろうか。自分を変えないことを、信条としてきたこの俺が。もし、仮にそうだとしたならばそれは─────────
「せんぱい……ホワイトクリスマスですね」
「ああ、そうだな」
「あっ!そういえば、せんぱいにまだ言ってませんでしたね」
「あ? なにをだ?」
まさか本当にせんぱいとX'masデートが出来るなんて、思わなかったな……。一応せんぱいのために、妥協案も用意しておいたんだけど、今日は本当に楽しかった。一緒に撮った写真、帰ったらこっそり待ち受けにしちゃお♪♪ 一緒に見た映画は、イマイチだったけど。昔の私なら素直に感動できたかもしれない。けど、やはりどこか造られたストーリーの上で、演じている様は、こんなものは"本物"じゃないなって思った。一度は諦めてしまった、でもせんぱいともう一度出会って、やっぱりわたしも"本物"が欲しい。だから、今日は満足かな!最高のクリスマスだった!せんぱいも……そう思っていたら、いいなぁ。
「メリークリスマス、せんぱい!」
はい、メリークリスマス
本編とはタイムパラドックスが
発生しましたが、クリスマス編でした!
年内最後の投稿になりますので
皆さん、良いお年を\( ´ω` )/
来年もよろしくお願いします!