そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

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本当にご無沙汰してます……秋緋音です。

めちゃくちゃ期間が空いてしまいました。

実はですね、最近はpixivの方でバンドリの
りんさよSSを書くのに夢中になるあまり
なかなか手をつけられませんでした。
(並行して書けよ!!)

奉仕部を取り戻すために、ついに真っ向から
八幡といろはが向き合う、そんな第14話です!






第14話

 

 

 

 

「せんぱい、ひとつ依頼がしたいです」

 

 

 

せんぱいの息を呑む音がして、そこからは夏の暑さを忘れるような寒々しい静寂と、重力を伴うような空気が、せんぱいの部屋を埋め尽くす。そりゃそんな反応になるよね……。でも、これで正解なんだ、私達は。

 

 

「…………なんでだ?」

 

 

少し俯き気味になって見えないせんぱいの口から、僅かな怒気を孕んだ言葉が漏れ、今度は私が息を呑む。せんぱいからすれば、過去のトラウマとも呼べる思い出を、掘り返すような台詞を投げ掛けられたんだから、当たり前の反応だし、予想通りの反応だけど、さすがにキツいな……、ちょっと目が潤みそう。しかし、なにを? ではなく、なんで? と問われたなら、率直に答えるしかな。

 

 

「わたしは、あの頃を、奉仕部を、取り返したいんです」

 

 

震えそうな口を無理矢理捩じ伏せて、ゆっくりとしっかりと、言葉を紡ぐ。それを聞いても、せんぱいからの反応はなく、再び静寂が流れる。もしかしたら、あの頃の思い出が、フラッシュバックしているのかな……。若干の罪悪感を抱きつつも、わたしは話を進める。ゆい先輩や戸塚先輩、小町ちゃんと会って、同窓会をしようと計画したこと。雪ノ下先輩の返事はまだ貰ってないけど、ゆい先輩が信じてと言ったからには、参加してくれるのをこちらも信じるしかない。

 

 

「わたしは、あの頃の、奉仕部が大好きでした。せんぱいと、ゆい先輩と、雪ノ下先輩がいて……優しくて、温かくて、大好きでした。わたしは部外者で……3人の特別には入り込む余地なんてありませんでした。けど、それで良かったんです。皆さんの傍らで、その優しさに寄り添えるだけで、それだけで良かったんです」

 

 

変わらずせんぱいは、顔を起こさない。

 

 

「でも……、せんぱい達はバラバラになってしまった。仕方の無い事だったかもしれません。世の中変わらない事の方が、少ないですし、難しいです」

 

 

自分で口にしながら、昔のせんぱいのような事を言ってると思い、ちょっと毒されてるな~、なんて心の中で少し可笑しく思う。

 

 

「変わってしまったのなら、もう一度、もう一度変わればいいじゃないですか。元通りにはならないかも知れません。けど、姿形は変わってしまっても、変わらないものだって……きっと、ありますよね?」

 

 

問い掛けるような言葉に、せんぱいは初めて、目を合わせてくれた。その表情は、酷く歪で。せんぱいが今、心の中がどんな感情で渦巻いているのか、推量ることはできない。けれど、せんぱいは自分の意思で、面を上げたんだ。

 

 

「お前は……なんでそこまで」

 

 

固く閉ざしていた口が開き、せんぱいはわたしに問い掛ける。

 

 

「お前が、あの場所を好きだったのは、わかる。雪ノ下や由比ヶ浜のことだって、好きだった。由比ヶ浜はもちろん、雪ノ下だって何だかんだ言って、お前の事は気に入ってたし、居心地のいい場所だったろうな。それでもお前の言う通り、あの教室では一色はあくまでゲスト……部外者だ。ましてや、もう奉仕部でもなんでもない俺たちが、今更交わることに、どんな意味がある? 俺が壊して、作り替えたあの関係を、元に戻してなんになる? どうして、お前が俺たちのために、そこまでするんだ」

 

 

せんぱいには珍しく、捲し立てるように早口で紡ぐ言葉を、一字一句聞き逃さないよう傾聴していた。自分から言い出した「部外者」というワードを、せんぱいから直接言われると、かなり心を抉られた気分だけど、いまは落ち込んでいる場合じゃない。わたしの答えは変わらない。私自身が今日この日を迎えるために─────

 

 

「過去と、向き合うと決意したからです。前に進むと、決めたんです。せんぱい達のため? 違います。これは、せんぱいや奉仕部の皆さんの為なんかじゃない……わたしの為です」

 

 

さっきまで、色んな感情が私の中で喧嘩してたのに、最後まで言い切ったことで、身体が弛緩して、不意に目尻から頬へと雫が伝う。

 

 

「……ッ! ほ、ほらよ……」

 

「あ、すみません……」

 

 

机の端にあったティッシュを手渡され、涙を拭う。

 

 

「…………自分の為、か」

 

 

不意にせんぱいは独り言のように、そう呟いた。

 

 

「一色、お前の気持ちは……まぁ、理解した」

 

「……はい」

 

「今度は、俺の話を……聞いてくれるか? 」

 

「!! はい……お願いします」

 

 

せんぱいは一度大きな息を吐いて、語り始める。

 

 

「俺は総武高時代、あの奉仕部にほぼ強制的に放り込まれ、雪ノ下と出会い、由比ヶ浜と出会い、一色も含めて依頼を通じて色んな人間と関わってきた。ずっと独りだった俺の周りには、気付けば色んな人間がいた」

 

「はい、せんぱいはずっと、ぼっちを自称していましたけどね」

 

「おい、割と真剣な話してんだから、茶々入れんじゃねえよ……」

 

「えへへ、すみません」

 

「ったく。 まぁ、それらの人間の中でも、やっぱり雪ノ下と由比ヶ浜……あの二人は、俺にとって特別なものだと、俺はそう思っていた。」

 

 

一度長い間を置いて、手元のMAXコーヒーを口に含み潤す。

 

 

「けど、その先もずっと変わらずには……いられなかった。あの、卒業式の日……俺は、あの二人から同時に告白を受けた。それ以前より、俺は二人の好意に、何となく気付いていたのに、それを気付かない振りをして、見て見ぬ振りをして……先送りにしていた。あの関係か歪んでしまうのが怖かったから」

 

 

全部わかっている事だったけど、わたしは黙ってせんぱいの言葉をしっかりと聞く。

 

 

「でも、あの日二人は、自分の答えを示した。それなのに……俺には、二人の気持ちを選ぶことは出来なかった……。俺がどちらかを選ぶことで、雪ノ下と由比ヶ浜がバラバラになるくらいなら、どちらかが独りになるくらいなら……俺が一人になればいい。最後の最後まで、あいつらの最も嫌った、自己犠牲を選ばざるを得なかった。それでも、あいつらは笑顔で応えた……必死に取り繕った顔をして……ッ。結局、あの奉仕部を壊したのは……俺だ、俺なんだよ……ッ!」

 

 

感情を押し殺し、声を振り絞るせんぱいの言葉は、徐々に内から溢れ出すように、荒くなっていく。

 

 

「そんな俺が……今更あいつらの前に、どの面下げて立てばいい。俺がまた、あの空間を取り戻したいと望むことを、誰が許す……俺が、俺が壊したあのつながりを、特別を……ッ!」

 

 

始めにわたしに向けていた視線は、徐々に下がっていき、机の上で組んだ手を、一点に見つめるせんぱいの表情すら伺えない。それ以降、口を重く閉ざしたせんぱいに、わたしは優しく語りかける。

 

 

「せんぱいも、奉仕部を取り戻したい。それが聞けて、少し安心しました。せんぱいが出した答えも……話してくれて、ありがとうございます」

 

 

せんぱいの淹れてくれはコーヒー、とうに冷めてしまったそれを口に含む。

 

 

「でもね、せんぱい。ゆい先輩は、たぶん雪ノ下先輩も……せんぱいの考えなんて、全部お見通しなんですよ。せんぱいが選ぶ答えを、全部分かった上で、せんぱいに思いを打ち明けたんだと思います。確かにあの二人の絆が解けなかったのは、せんぱいのお陰かもしれません……。でも、あの奉仕部を取り戻したいと願うのも、せんぱいだけじゃないんですよ……。ねぇ、せんぱい……」

 

 

問いかけるようなわたしの言葉に、ようやく目を合わせてくれたせんぱいを、真っ直ぐに見つめる。

 

 

「なにかを願うことに、誰の許しも必要ありませんよ。許されないと思うのもせんぱい自身で……それを許すのも、せんぱい自身なんです……。せんぱいは、どうしたいですか? 」

 

「……俺は…………」

 

 

自分の心の葛藤に苦しむように、顔を歪めるせんぱいの手を、わたしは優しく包み込むように握る。

 

 

「どうしてもと言うのなら、わたしが……せんぱいを許します」

 

 

必死に笑顔を浮かべて、せんぱいの顔を覗くように見つめる。

 

 

「……いいのか? もう一度、あいつらと会って、やり直したいを望んでも……」

 

「もちろんですよ……。わたしも、そしてあの二人も、きっとそれを望んでいます……」

 

「……そうか……」

 

 

そう呟いたせんぱいの目尻にも、涙が光る。それを素早く袖でゴシゴシと拭う。握った手を離されたわたしも、バレないように自分の目尻を拭ってから、少し茶化すようにせんぱいの顔を覗き込む。

 

 

「あれ~せんぱい、泣いちゃいましたかぁ? いろはちゃんの優しさに、感動しちゃいました~? 」

 

「ばっか違ぇよ……! これはあれだ、眠気からくるあれだよ……!お、お前だってちょっと涙目じゃねえか」

 

「こ、これは違いますよ……!? これはあれです、ちょっと埃が目に……」

 

 

そう冗談めかして、わたしとせんぱいはようやく、笑顔を取り戻した。せんぱいも過去と向き合う覚悟が、出来たんですね……嬉しい、良かった……。重苦しい空気は霧散し、ようやくいつもの感じになってきたっ!

 

 

「ふふっ……良かったですね、せんぱい! 」

 

「な、なにがだよ……」

 

「もしこの話蹴ってたら、小町ちゃんに成敗されてましたよ? 」

 

「なにぃ!? それを早く言えよ! 小町のためなら秒で肯定したのに……! 」

 

「うわシスコン……それ、本気で言ってます……? 」ジトー

 

「……冗談だよ、悪かった」

 

「い、いえっ! わかってますよ」

 

「そ、それで……確か雪ノ下は、海外だったか? 」

 

「はい……ゆい先輩が説得して、絶対に連れてくるって言ってましたし、雪ノ下先輩も参加したいと思っているはずです……」

 

「……そうか……。って、もうこんな時間じゃねぇか! 」

 

「あっ、ほんとですね! 」

 

 

壁に掛けられた時計は、短長2本の針が頂点を指していた。

 

 

「では、そろそろお暇しますね。詳細はまた連絡しますね~」

 

「おう……気をつけて、ってすぐそこだけど……まぁ気をつけろよ。あ、あと……」

 

「なんですかぁ?」

 

「その……あ、ありがとな、一色」

 

「ッ! 当日、わたしも楽しみにしてますね♪♪」

 

 

いつもの頭をガシガシ搔く癖をしながら、赤面してぶっきらぼうに、ボソッと呟くせんぱいを見ると、改めて前を向ける気がして、自然な笑顔で部屋を後にした。

 

 

 

 

 

自室に戻りひとりになった途端、今日一日の疲労がどっと襲ってきて、わたしはそのままベッドへ倒れ込む。

 

はぁぁぁぁああああああああ……!!

怖かったあああああああああ……!!

ほんとに嫌われると思ったよぉぉ……。

最初めちゃくちゃ怒ってたし……。

もう、ほんと、寿命縮んだ……。

 

良かったぁぁあああ(´;ω;`)

 

ていうか、疲れた……ほんと……。

今日の午後からゆい先輩・戸塚先輩とお話しして、晩に小町ちゃんとお話しして、さっきまでせんぱいとお話しして……今日一日で始まりからほぼクライマックスって感じ……。

 

でも……なんとか、せんぱいの参加は取り付けられた……。あとは雪ノ下先輩だけどゆい先輩、上手くやってくれたかな。とりあえず、せんぱいが参加してくれる……こと、ゆい……先輩に…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

prrrrrrr……prrrrrrr……

 

 

んぅ……っ眩しい……。あれ、わたし……寝ちゃって……じゃなくて、電話……?

 

疲労で屍のように横たわって眠るわたしは、スマホの着信音によって、強制的に目を覚まされる。気怠い身体をんーっと伸ばし、ベッドの横に雑に置かれたカバンから、スマホを取り出し応答する。

 

 

 

「ふぁ~い……もしもしぃ」

 

「あ、いろはちゃん? ごめん、起こしちゃった?」

 

「あ、ゆい先輩! 大丈夫ですよー!」

 

「ごめんねー! 昨日小町ちゃんに、いろはちゃんがヒッキーと話をしに行くって聞いたから……その、どうだったかなぁって」

 

「あ、そうだったんですね。えっと……なんとか来てもらえるように言ってもらいました!」

 

「ほ、ほんとッ!? そっかぁ……良かった……。ありがとね、いろはちゃん」

 

「いえいえっ! わたしも安心しました……。それで……雪ノ下先輩は、どうなりました……? 」

 

「うん! わたしもあの後、ゆきのんにもう1回電話して、ちゃんと来てくれるって約束したよ! 」

 

「ほんとですか!? 良かったぁ」

 

「これで……みんな揃ったね!」

 

「はい! あとは、あの教室の使用許可さえ取り付けられれば……」

 

「うん。そうだね! そっちの方も任せることになっちゃうけど……ごめんね」

 

「気にしないで下さい! 元生徒会長のわたしに掛かれば、朝飯前ですよ! 」

 

「あはは、頼りにしてるねっ! 」

 

「はいっ! また連絡しますね」

 

「うん! じゃあまたね♪」

 

 

 

通話を終え、もう一度ベッドにぺたっと寝転ぶと、まだ眠り足りないと睡魔に強襲される。今日は土曜日か……よし、二度寝しよう……。わたしはそのまま再度、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ましたときには、もうお昼をすぎていて、十分な睡眠を摂ったおかげで身体は楽になったけど、目が覚めると同時に空腹感が押し寄せてきた。ベッドを出てそのまま手早くシャワーを浴び、簡単に昼食をしながら今後の予定を考える。

 

主役は揃った。あとは旧奉仕部の部室の使用許可を得ることと、日程などの詳細か……。まさか立案してたった一日で、ここまで事が運ぶとは思いもしなかったなぁ。これもあの日、せんぱいと偶然の再会を果たさなければ、実現してなかったのかもしれない。というか、せんぱいと再会してからも、そんなに経ってないけど、色々あったよね。もしかしたら、あの総武高時代よりも距離は縮まってるかも……。

 

でも……この同窓会を終えて、あの3人がもう一度繋がったとしたら……わたしは、どうなるのかな……。もちろん、わたしが望んだことではあるし、喜ばしいことではあるんだけど……。わたしはまた─────

 

ダメだダメだ! 終わった時のことは終わってから! そもそも、まだ全員参加がた決まっだけで、成功することが確約されたわけじゃない……これからだ。そのためにもまずは総武高で、あの教室の使用許可だっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年と数ヶ月ぶりに足を踏み入れた総武高は、なにも変わらないあの頃のままの姿だった。まぁそう簡単に変わるものでもないけど。ていうか、アポなしでいきなり訪れてみたものの、もし知ってる先生がいなくなってたらどうしよ……。まぁ、なんとかなるでしょ!

 

 

入館証が必要だから、事務所の前にて要件を伝えているところに、教員らしき2人組がすぐ傍を通りかかった。

 

男の人は……知らない先生だな、あれから異動してきた人かな。女の人は……長い黒髪にスラッとしたスタイルの良い身体を包む白衣、ほのかに香る煙草の匂い……。え、なんで……うそ、これって…………

 

 

 

 

 

「……平塚、せんせい……?」

 

「んんー? ……おや、一色じゃないか」

 

 

 

 

 

 

やはりこの先生は、相変わらずいつも、いい所にやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、第14話……静ちゃん登場~!笑

いやね、ちょっと私生活が色々あって
シリアス書くのしんどかったから
静ちゃんに助けて欲しかったのかも……!

いろはすに癒され、静ちゃんに励まされ
そんな生活を過ごしたい人生だった……。


平塚先生の帰還、数年ぶりの旧奉仕部
全てが揃う時、終わりが始まる。


頑張って並行して書くようにするので
次話もよろしくお願いします( ˙꒳˙ )

良かったら評価、感想下さい♪♪
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