そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

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えー、、大変ご無沙汰してます
秋 紅音です_:(´ `」 ∠):_

色々と言いたいことは後書きに……。

\祝*俺ガイル 3期/



第15話

 

 

 

 

平塚 静───元総武高の国語教諭、生活指導にして、奉仕部の元顧問。

教師という割にやや粗野な口調で、生徒をよく見ている面倒見のいいお姉さんといった人物。保健教諭と見間違うように、いつも白衣を身にまとい、仄かに苦い煙草の香りがしていた。

 

わたしが当時、周りのクソおんn……女の子たちに嵌められ、生徒会長に推薦された時も、親身に相談に乗ってくれて、後にあの奉仕部へと連れられた。

 

しかし、そのご総武高から他校へ異動となったはずの平塚先生がなぜここに。

 

 

「一色か……久しぶりだな。相変わらず元気そうじゃないか」

「お、お久しぶりです……! どうして平塚先生がここへ?」

「ん? あぁ、実はまたこの総武高に戻ってくることになってな……今日はその手続きやらなんやらだ。中途半端な時期ではあるが、なんでも教員が一人足りなくなったらしい。結婚してすぐご懐妊で産休だとかでな…………」クソッ

 

相変わらずだなぁこの人……。

 

「そんなことより、君こそどうした?」

「ちょっと学校の先生に用事があったんですけど……ちょうど良かったです!」

 

なんという偶然、いや、奇跡だろう。

奉仕部をもう一度取り戻すのに、この人はやっぱり必要だ。あの奉仕部を創ったのは他でもない、この人なんだから。

 

 

 

 

 

 

「すまない。待たせたなぁ、一色」

「いえいえ、お疲れ様です。もういいんですか?」

 

校舎の隅にある教員用の喫煙所で、冷えたMAXコーヒーを飲みながら、思い出に浸っていること数十分。煙草を口に咥えながら、校舎の方が平塚先生がカツカツと、低いヒールを鳴らしながら歩いてきた。

 

「それで、私に用があると言ったな」

「はい……とても、大事なお話です」

 

胸ポケットから窮屈そうなzippoライターを取り出し、火をつけた煙草の煙を大きく吐き出し、先生は「ふむ、聞こう」と話を促せた。

 

奉仕部を取り戻すために計画していた話、そのためにどうしても、あの教室の使用許可が必要ということ。煙草を一本吸い終わる間に、まととめた要件を伝えると「そうか……」と、慈しむような表情で、携帯灰皿に煙草の火を押し付けた。

 

「なるほどな……取り戻す、か。その計画は君が考えたものかい?」

「は、はい……」

「奉仕部の部員でもない君が、どうしてそこまでする」

「それは……それは、わたしのためです。わたしが、そうしたいから」

 

いつかと同じように向けらられた眼を、まっすぐ見据えて答える。

 

先生は短く「ふっ……そうか」と、独り言のような辛うじて聞こえる声で呟き、もう一本新たに煙草を取り出し、火を付けた。

くゆらせた紫煙が空へ消えていくのを、見つめている。そんな姿が、せんぱいと被って見えた。

 

「その事を、比企谷はもう知っているのか?」

「はい、昨日の夜に伝えて……参加すると言ってもらえました」

「昨日の夜? 昨夜比企谷と飲みに行った時はそんなこと……」

「あっ、そういえばそんなこと言ってましたね。 その後家に帰ったせんぱいとお話して」

「い、家に帰ったせんぱいと……!? き、君たちいつの間にそんな関係に───」

「ご、ごごご誤解ですよッ!! たまたま、たまたまっ偶然、せんぱいと隣り合わせたマンションに住んでいて、それで直接話をしようと待ち伏せていただけで……!」

「あ、あぁ……そうか、いやぁビックリした……」

 

狼狽した先生は胸を撫で下ろし、焦って口元からこぼれ落ちた煙草を拾う。

ほんとにビックリしたのはこっちもっていうか……でも、確かによく考えてみれば、いい歳した男女が日付が変わることに、自宅で二人きりって……まぁ今更って感じだけど。

 

「よぅしわかった! ここは元恩師であるこの私が、人肌脱いでやろうじゃないか。なに、空き教室の一つ使用許可を取るくらい、私に任せたまえ」

 

くっくっく……とわざとらしく、悪戯を思い付いた少年のような、とてもいい笑顔を浮かべる先生。

ほんと、なんでこの人結婚出来ないんだろ。

 

「いやぁしかし、あいつは幸せもんだ。頑張れよ!」

「な、何がですか……」

「いぃや、なんでもないさ……。さて、それじゃあ職員室へ戻るか。一応代表者として一色も来てくれ」

「はい!」

 

先生の後ろを着いていくと、皺ひとつない真っ白な白衣から、嗅ぎなれた苦い香りがした。

 

わたしの、せんぱいの、先生がこの人で良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、職員室に戻ったわたし達は教室の許可を取るために、校長の元へ訪れた。平塚先生の人望と、元生徒会長のわたしの面子も多少効いたのか、思いの外あっさりと許可は下った。やはり今も空き教室のままだということも、大きかっただろう。

 

学校側の都合に合わせて細かい日時を組み、こうしてようやく、全ての準備は整った。

 

深々と頭を下げて廊下に出ると、さっきまで平然としていた心臓が、尻上がりに鼓動を早く激しく打ち始めた。

 

ここまで色々あったけど……あとはもう、この日を待つだけなんだ。やばい、やばいやばいやばい。ほんとやばい。どうしよう。大丈夫かな。大丈夫だよね。

 

ふいに頭に重みを感じた。じんわりとした温もりが、ガチガチに固まった心まで溶かすように。

 

「そう心配するな」

「平塚、先生……」

「比企谷の気持ちは知っているつもりだ。恐らく、彼女たちもな。でなければ、参加しようとさえしないだろう。一度決定的に距離を置いたからこそ、気付いたこと、見えたことがあるだろう。君もそうだろう?」

「……気付いた、こと……さあ、どうでしょうねぇ♪ あっ、わたしこの事を皆さんに連絡しなきゃなんで、じゃあ先生、当日よろしくお願いしまーす!」

 

動き出した足は急くように軽く、平塚先生に最大級の感謝と敬意を込めて、大きく手を振って総武高を後にした。

 

 

 

 

[一色いろは]

 

教室の使用許可おりました( *˙ω˙*)b

 

 

 

 

家に戻る電車の中で、一人を除いた参加者各位に同じメッセージを送信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「お昼買ってきまぁす」

 

仕事の昼休みにいつも通り、近くのコンビニで適当に飯を見繕おうとデスクを出た先で、ある人物に引き留められた。

 

「比企谷ぁー! ちょっと待ったぁぁ!」

 

背後から聞こえた大きな声に振り返れば、明るく染めたウェーブのかかった茶髪を揺らして、同期の赤木 彩香(あかぎ あやか)が小走りで追いかけてきた。

 

「でっけぇ声で呼ぶなよ……なんか用か? 今から昼飯買いに行くとこなんだが」

「だからだよ! はい、食堂行くよ!」

 

そう言いながら赤木は、手に持った二つの包のひとつを押し付けてきた。

 

「あ? なんだこれ……」

「お弁当に決まってんでしょ! ほら行くよ〜!」

「は? あっ、おい!」

 

なんだかよく分からないが、とりあえず後を追って社内の食堂へを移動した。

 

 

 

「おい、なんだよこれ」

「何って、お弁当だよ? ほんとに目が腐っちゃったの?」

「いや見たらわかるし、腐ってねぇから……。俺が聞きたいのは理由だよ」

「いやぁ、ちょっと作りすぎちゃってさぁ。比企谷いつもコンビニ飯じゃん? 丁度いいやと思ってさ〜! ほら食べよ!」

 

こいつはあっけからんと言うか、サバサバしてるいというか、初めからこういう奴だった。そのせいか、距離感を無視してやたらと絡んでくる。なんか誰かに似てんな。

 

まあ据え膳食わぬはって言うしな。この場合は、そのままの意味の据え膳だが。

 

「いただきます」

「いただきまーす!」

 

雑な性格の割に彩りや栄養をよく考えた弁当は、全て手作りのようで、パクパクと胃に放り込んだ。食べながら「どうどう? 美味しい? 美味しいでしょ!」と話しかけられ、テキトーに相槌だけで返した。

 

 

「ごちそーさん、普通に美味かったわ。明日洗って返すから」

「いいって、そんな! なんなら、これから毎日作ってあげでもいいよ?」

「いや、いいから……。気持ちだけ受け取っておくよ。んじゃ、おれ煙草吸ってくっから」

「あ、待ってよ! あたしも行く!」

 

 

少し早く昼休憩に入ったせいか、喫煙所のあるオフィスビルの屋上には、俺と赤木の二人きりだった。心地よく吹き付ける風に揺れる、煙草の先から立ちのぼる紫煙。

 

手すりに掴まり肺から吐き出した煙を、ぼんやりと見上げていると、時の流れが緩やかになるように感じる、この時間が好きだ。

 

「んんん〜涼しい! 屋上めっちゃいいじゃん、比企谷!」

 

……ひとりだったなら。

 

「お前煙草吸わねえだろ、なんで付いてくんだよ」

「えぇー、じゃあ吸うから一本ちょーだい」

「はぁ……ったく、ほれ。結構強いから気分悪くなっても知らねえぞ」

「そんな一本丸々は無理だって〜。だから、比企谷の吸いかけのでいいよ」

「……じゃあやらねぇ」

「なによ、ケチ」

「うっせ」

 

赤木のどこか小馬鹿にするような態度は、今日に始まったことじゃない。しかし、今日はやけにしつこい。お互い横並びに手すりにもたれかかり、ぼぅっとビルの下を眺める。

 

「お前……なんか俺に用があったんないのか?」

「……さすが、よく見てるね」

「こんだけしつこく付きまとわれたらわかるわ」

「しつこくって酷くない?」

 

ケラケラと笑いながら、手すりに視線を落として、呟くように言った。

 

「前に寝込んだ時に看病に来た子って……比企谷の特別な人、なのかな……」

 

急になんの話かと思ったが、すぐにあの亜麻色の髪をしたあいつの姿が浮かんだ。

 

「……なんだよ藪から棒に」

「ん〜、その間は怪しいなぁ」

「なんでもいいだろ」

「否定はしないんだ」

 

なぜいきなり、こんな事を話題にあげたのか。それ以上に、ただの高校の後輩だとか、別に適当にはぐらかすことも出来たのに、咄嗟に否定が出てこなかった。

 

「そっかぁ……。これは勝ち目なし、かな……」

「あ? なんつった?」

「なんでもな〜い♪ 煙草臭いから先に戻るね!」

 

 

最後の一吸いまで灰にした煙草を、ひしゃげ潰れるまで、灰皿に押し付けた。

 

俺は都合のいい耳をした、難聴系主人公じゃない。

 

もっといえば、俺は鈍感系主人公じゃない。むしろ人の機微には、敏感な方だと自負している。

 

ポケットから煙草もう一本取り出し、もう一方のポケットからスマホを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be Continued......

 






えー、、大変ご無沙汰してました……。

ある時を境にこのお話が全く手を付けられなくなって
設定やオリキャラの名前すらも忘れてしまうほど
ここ数日まで避けてきました……。
まあ特定の界隈にかまけすぎていたというのも
理由のひとつなんですけどね 

けど、いつか書かなきゃ。処女作でエタるのはダメだ。
そう思っていたところに、ふらっとハーメルンを開くと
ありがたい感想やコメントを頂いていたことを知り
大変励みになり、今度こそ書き上げる覚悟を決めました。

ここからがいよいよクライマックスになります。
ぶっちゃけどんな幕引きを遂げるのか
作者にもわかりません(プロット?なにそれ?)
なので、自分自身も楽しみであります!

残り2~3話となる予定ですが、もうしばらくの間
お付き合い頂けると大変嬉しいです(`・ω・´)

今度はそう遠くない第16話でお会いしましょう 

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