そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

2 / 20
どうも! 秋 緋音です!

第2話いきまーす!




第2話

「文化祭ライブ成功を祝して……乾杯!」

「「「かんぱーぁい!!」」」

 

大学からすぐ近くにある居酒屋の一室に

大きな声が響きわたる。

みんな高々にグラスを掲げて

カチンという音があちこちで鳴り広がる。

 

わたしも営業スマイル全開で近くの人達と

グラスを鳴らし合う。

周りは先輩が多いため、相手よりグラスを

少し下げる。これ常識ねっ!

 

男の先輩たちに囲まれているわたし。

その先輩たちを囲む女たち。

遠巻きに嫉妬の視線を向けてくる

女たちはスルーして、サラダを取り分けたり

グラスの空いた先輩に追加の飲み物を聞いたりと

存分に女子力を発揮する。

 

「いろはちゃん!俺のライブ見てくれてた?」

「俺のギターソロどうだった?」

「ばっかお前、俺のマイクパフォーマンスの方が目立ってただろうが!」

 

周りの先輩たちが露骨なアピールをしてくるので

ひとつひとつ曖昧に暈した返事をする。

すると、左肩をポンッと叩かれた。

うわぁ、きた……。

 

「いろはちゃん、楽しかったかい?」

 

上座の端に座する相葉先輩から声をかけられる。

 

「はいっ!すっごい盛り上がってて楽しかったです!」

「それは良かった。いろはちゃんもこれからバンド組んでライブしなきゃね」

「はい……頑張ります!」

 

これ、こういう席の度に言ってくるんだよね…

 

「もし良かったら、僕と一緒に────」

「あ、いろはちゃん!俺も俺も!」

「いろはちゃん!うちのバンドで歌ってよ!」

「ばっかお前、いろはちゃんと俺でツインボーカルすんだよ!」

 

 

ああ、もうウザい!

やらねえっつうの……。

 

苛立ちを笑顔の仮面で隠して

心の中で誰かに助けを求める。

 

「いっろはー!飲んでるかああああ」

 

いいタイミングで離れた席でバンドメンバーと

ワイワイしてた乙葉が来てくれた。

助かったあ……

相変わらずお酒入るといつも以上に

テンションがうっとうしいな。

 

「飲んでるよ、乙葉」

「あんれ~、グラスがからだよ~?」

 

先輩にあれこれ応対してたので

ほんとはほとんど飲んでない。

 

乙葉の言葉に周りの男たちが

ギラっと目を光らせて「我こそが」と

いろはの飲みものを聞いてきたが

「いろは~あっちにチューハイあるよ~」

「あ、ちょっ乙葉!?」

 

絡み酒の酔っ払いと化した乙葉に

すごい力で引きずられていく。

上座にいた男たちはそんなわたしを

悲しそうな目で見送った。

 

「かんぱーいウェーイ♪♪」

「かんぱい」

 

勢いよくカチーンと音を立てて

改めて乙葉と乾杯する。

乙葉に連れ去られたおかげでようやく自分のお酒を飲めた……。

お酒は決して強い方ではないが、ふわふわとする

あの感覚は好きなので家でもよく飲む。

家では果実酒が多い。ビールも飲むけどね。

 

乙葉がくれたハイボールで喉を潤しつつ

大きなお皿に乗った刺身に舌鼓を打つ。

続いて串揚げに手を伸ばす。ハイボールの強い炭酸と

相性が良くすごく美味しい。

 

わたしがいなくなった上座には

遠巻きに見てた女たちがチャンスとばかりに

駆けつけて男の先輩たちと盛り上がっていた。

 

「……ぷはぁ」

「いろは、大丈夫?」

「え、なにが?」

「……ううん、なんでもない♪♪」

 

含みのある返事で濁した乙葉は

手に持ったハイボールをグイッ飲み干し

「ハイボールおかわりっ!」と

店員さんに注文をする。

 

気を遣って逃がしてくれたんだ……。

酔ってるくせによく見てるなあ。

いつもはぐいぐい寄ってくるくせに

こういう引き際の良いところ

わたしは乙葉を気に入っているんだよね。

 

「すみませーん!ハイボールもうひとつ!」

「おっ、いいね~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまましばらく乙葉と2人で飲んでいた。

 

「わたしはね~……ひっく……もーっといい曲作って~最っ高のライブがしたいのよ! ねえわかるっ!?……うっぷ」

「はいはい……ってちょっと! 大丈夫!?」

「らぁいじょうぶれぇ~す!」

「すいません、お冷いただけますか?」

 

こんな感じで乙葉の世話を焼いているうちに

宴会はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでしたー!」」」

 

お店の人たちにお礼を言って、お店の外へ出た。

まだ初夏とはいえじんわりと暑い。

外へ出てもみんな騒がしく、気分が悪くて

肩を担がれている人も数人いる。

ちなみに乙葉はテンションはハイだが

意識はしっかりしてるみたい。

ほんとお酒強いなぁ。

 

相葉先輩が一度まとめると

二次会へ行く話しをし始める。

 

「二次会はカラオケにしようか。参加する人は付いてきてね。」

「「「はーい!」」」

 

え、みんな行くの!?

帰るグループに紛れてフェードアウトしようと思ってたのに……。

ひとりだけ帰るとか言い出しにくいじゃん……。

どうしよう……。

 

「ほら、いろはちゃんも行こう」

「あ、いや……えっと……」

 

どうこの場を逃げ出そうかと悩んでいるわたしに

相葉先輩はそう言って手を差し伸べてきた。

いやなんで手を出してくるの?繋ぎませんよ?

 

「わたし……ちょっと……あのですね」

 

なんて断ろうと必死に脳を回転させて言葉を紡ぐ。

 

すると、細い路地の反対側の居酒屋から数人のスーツを着た

男女のグループが出てきた。

 

「ごちそうさまでしたー!」

「よっしゃ二次会行こうぜー!」

「まだまだ夜は長いぞー!」

「俺は帰る……」

 

お隣の団体さんもこれから二次会に行くみたい。

みんなそれなりに若く年もそう変わらないように見える。

 

「帰るなよー。ノリ悪ぃぞお」

「明日早朝から用事あるんだよ。じゃなあ」

「なんだよ……。じゃあな、比企谷っ!」

 

 

その名を聞いて身体に電流が走ったように

相葉先輩に顔をむけたまま硬直した。

 

…………ひき……がや……。

ひきがや…………比企谷ッ!?

 

頭に引っかかった単語を脳内で手繰り寄せると

ひとりの男の名前が浮かんできた。

死んだ魚のような目、だるそうに曲線を描く猫背

アホ毛を生やした頭をガシガシとかく仕草……

数年前の記憶が一気に鮮明になっていく。

 

そっと振り返り、あと頃と同じ呼び名が口から零れる。

 

「…………先輩……?」

 

「………あ?……お前……一色か?」

 

 

そこにあるはずないのに、紅茶の香りが鼻をくすぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけで第2話でした!

ついにあの男との再会を果たしたいろはす。

数年ぶりの再会にいろは、どうする?

感想、評価等いただけると嬉しいです◎


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。