そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

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どうも、ご無沙汰しています。
秋 緋音です(毎回言ってんなぁ) 

第16話を見て頂いた方はタイトルを見て
お気付きでしょうか……。

最終話になりませんでした!!!!

いやだってアレがアレもんでさぁ、、
しかし、今度こそ終わらせないと。

すみません、第17話です!


第17話

 

 

 

 

 

ピンポーンッ

 

「せんぱーいっ! 迎えに来てあげましたよー! 寝てるんですかー? もしかして日和ってるんでかー?」

 

 

ついに訪れた同窓会の当日。少し早めに家を出たわたしは、せんぱいのお家までお迎えにあがった。

 

中からドタバタと駆け寄る気配に、一歩後ろへ下がりスカートの裾をポンポンと叩いて、ちょっと緊張に鼓動を鳴らす。

 

「はぁいはい……まだそんな時間じゃ、な……はッ!?」

 

ガシガシと頭を掻きながら扉を開き、目が合った瞬間ギギギ……という油分の足りないロボットのように視線が下へ向き、まるでUMAを見たような驚愕に腰を抜かした。

 

「なッ……おま、は……!?」

「ぷっ、なんですか先輩その顔」

「いや、ちょっと待て。お前……なんで制服着てんの?」

 

そう、いまわたしは数年ぶりに、総武高の制服を身を纏っていた。

 

「ふっふっふー、どうですかせんぱい! 懐かしいでしょう? わたし、まだ高校生でも通用しますね!」

 

部屋で着用時、ホックが少し留めにくかったことは、即座に記憶から消し去った。いやぁ、人の脳は便利にできているなー。

 

「……その歳で恥ずかしくないの?」

「は? もっぺん言ってみろ」

「に、にあってるねー(棒)」

「ですよねー!」

 

スカートの端を摘んで持ち上げると、未だ尻もちを着いたままでいるせんぱいからは、際どいアングルだったのか。目を逸らしつつ、頬を微かに赤らめた。

 

「お、お前……まじでそんな格好で行くつもりか……」

「やだなぁ、そんなわけあるわけないじゃないですか! ちょっとからかってあげようという、いろはちゃんのささやかなサプライズです」

「なんだそりゃ」

 

ようやく腰を持ち上げたせんぱいは、立ち上がると部屋の中へ促した。

 

「まだ時間もあるし、コーヒーでも飲んでくか?」

「そうですね。それじゃあお邪魔しまーす」

 

もはや見慣れた空間で、座り心地も知ったソファーに腰掛けていると、リビングからマグカップを二つ持ったせんぱいがやってきた。

 

「ほらよ、淹れたてで熱いからな」

「ありがとうございまーす。せんぱいはいつものあの、身体に悪そうなやつじゃないんですか?」

「おい、マッ缶の悪口はやめろ。千葉県民全てを敵に回すぞ」

「いやわたしもその千葉県民なんですけど……珍しいですね」

「まぁ、こういう時くらい、たまにな」

 

そう言ってマグカップを口元へ近づけ、ふーっふーっと息を吹きかける。

 

こういう時、とはどう意味か。それほど深くは考えず、冷めないうちにとコーヒーをいただく。

 

「せんぱい、緊張していますか?」

「ん? あぁ……そうでもない、かな。誰かさんのふざけたサプライズで、色々と吹き飛んだわ」

「それは良かったです♪」

 

飲み終えたマグカップを二人分、キッチンを借りて洗い終えた所で、時刻を確認する。

 

「それじゃあせんぱい、わたしは着替えてくるので、時間になったら下で待っててくださいね」

「……一緒に行くのか?」

「行先は同じですし、別々に行く理由もなくないですか?」

「まぁ、そうだな。了解」

「それじゃあまた後でー!」

 

数十分後にはまた会うのに、惜しみながら別れ、自室に戻ったわたしは、真っ直ぐベッドへ向かい、お布団ダイブからの枕蹲り足バタムーブを決めた。

 

「〜〜〜〜〜ッッ!!!」

 

わあぁぁ! わあぁぁ! わあぁぁぁああ!

だだだ大丈夫だよね!? スベってないよね!? ウケてたよね!?

20歳過ぎたいい大人が白昼堂々と、学生服なんか着て会いに来たら、そりゃそうなるけど……ッ!

 

いや、ちょっと待って! みんな誤解しないでね!? いくらわたしでも、あざと可愛いアピールのために、制服着て見せたわけじゃないからッ!

 

 

事の発端は昨日の夜────

 

言うまでもなく、わたしの部屋のベランダから見ると、せんぱいの部屋のベランダは丸見えだ。

 

何気なくチラッと目が移ったとき、偶然せんぱいが煙草を吸いに、ベランダへ出てきたのが見えた。

 

ここで電話のひとつでも掛けて、からかってやろうとも思ったけど、見慣れた光景と違いせんぱいの様子がおかしかった。

狭いベランダを右往左往したり、隠れるようにしゃがんで消え、また頭を出す。

吸い終わったようで部屋に戻っていくと、また数十分後にベランダに出てきて、煙草を消して部屋に戻っていく。これを延々と繰り返していた。

 

いやせんぱい、めっちゃ緊張してんじゃん!

 

その光景がなにかのアーケードゲームみたいで、クスクスとひとりでに笑いが溢れる。そんな近くに見えるせんぱいの姿を眺めて、せんぱいの緊張を紛らわせるためにも、ひた肌脱いでさっきのサプライズを思い付いた。

 

 

 

無事に作戦は成功したので、私は着替えを済ませ、全身姿見で最終チェックをする。

 

メイク良し、髪型良し、ファッション良し! うん、今日もわたし可愛い!

 

ポージングが左右逆さまに映る自分を見て、そっと問い掛けた。

 

「───大丈夫、だよね……?」

 

返ってくるはずのない独り言。今日まできて今更引き返すつもりもない。あの三人を信じていても、最悪のパターンを考えないわけがなかった。

 

『大丈夫じゃないでしょ』

 

答えを期待していなかった問いに、鏡の中のわたしが、嘲笑を浮かべながら返してきた。

 

『せんぱいが好きなんでしょー? あのままにしておけば、邪魔な二人がいなくなったせんぱいを、独り占めできたのに……』

 

クスクスと零しながら、三日月のように口を歪める。

 

『ねぇ──何イイ子ぶってんの?』

 

我ながら嫌味がキレッキレだなぁ。そんな事を考えながら、小さく息を吹き出す。そして、もう一度深く溜息をついて、ニヤけた自分の目を見据えた。

 

「もういい加減、聞き飽きたんだよ、そんなこと」

 

せんぱいと再開してから、いやそのもっと前から、ずっと自問自答してきた自分の声も、囁く後悔も、聞き飽きた。

 

「苦悩も、後悔も、罪悪感も、全て呑み込んで、わたしは今日ここにいるだ。それに───」

 

これは幻覚か幻聴か、何にせよ正面に立つ夢幻に向かって、わたしは嘘偽りなく

 

「あの二人に打ち勝ってこそ、手に入れる価値があるんだから。真っ向勝負でせんぱいを、私のモノにしてやるんだから!」

 

わたしはキメ顔をそう言った。

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 

「変わんねえな、ここも……」

「そうそう変わるわけないじゃないですか、もうボケ始めたんですか?」

「感傷に浸ってるところにBR〇UNばりの切れ味毒舌どうもありがとう。こういう時、人は詩人になるもんだろ?」

「まぁ、わかりますけどねー」

 

あの頃とは違って、タクシーによる登校で降り立ったのは、わたし達の母校──総武高校。

わたしはつい先日、教室の使用許可を得るため橋を運んで間もない。せんぱいからすれば久しぶりで、思い馳せるものも多いだろう。

 

「うし……行くか」

「はい、主役が遅れちゃカッコ悪いですよ。もちろん、立場的な問題で」

「うん、俺の容姿を揶揄するのやめてね」

 

しばらく校舎を眺めているせんぱいを、隣で見上げて少し待ってから、一緒に歩き出した。

 

 

来客者用の札を下げて、物静けさが漂う校舎を歩いていく。今日は部活も完全休止日らしく、ペタペタと二人分のスリッパが床を叩く音だけが鳴り響く。その間一言も話すことなく、溶け込むように静かに、ゆっくり、歩いていく。

あの教室がある棟に入ったところで、せんぱいが何か言いかけて「やっぱ何でもねえ」と、頭を搔く。

 

言いたいことがあるなら今すぐ吐けと、せんぱいの袖を引っ張り回しているうちに、気付けばもう教室が見えてきた。

 

中からは既に人の気配がしている。ガヤガヤした声が部屋に篭っていて、一体誰のものなのかは、扉ひとつ隔てていては、判別はできない。

 

もうここまで来たら、今更緊張はない。しかし、せんぱいは扉の前に立ち尽くし、なかなか手が扉に掛からない。あの頃、扉の上には名前の書かれていない札に、恐らく結衣先輩の仕業であろう、デコデコしたシールが貼りまくってあった。しかし今はもう、綺麗に剥がされて真っ白に戻って、妙な寂しさと喪失感を抱いてしまう。

 

「せんぱい……覚えてますか?」

「あ? なにのことだ?」

 

広い廊下に反響しないボリュームで、わたしはひとつ問い掛けた。

 

 

「───わたしの、依頼をです」

「…………おう」

 

一度逸らした目を、ちゃんと真っ直ぐ見据えて、相変わらず覇気はないけど、そう答えてくれた。

 

「……なら、なにもま心配ありません」

「あぁ、行くぞ」

 

ようやく動かした手を扉に掛けて、ゆっくりと横へ引く。

 

開けたその中には、数人の人影があって、一斉にこちらを向いた。

 

「あ、お兄ちゃん! おっそいよ、ほんとこのゴミイいちゃん」

 

小町ちゃんがにっと微笑んで。

 

「八幡! 久しぶりだね」

 

戸塚さんがホッとした笑みを浮かべて。

 

「こんな日に遅刻とは、君は相変わらず不出来な教え子だな」

 

平塚先生が意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、遅刻って……まだ集合時間前なんですが」

「こんな時は、君が一番に来て準備を済ませておくべきじゃないのか?」

「え、俺って招待客だよな? なにその自分の歓迎会の店取りさせられる新入社員みたいなブラック」

 

変わらないせんぱいの返答に、くくっと笑って平塚先生はせんぱいの頭を、くしゃくしゃと撫でた。手を払い除けられた所で、先生はこちらを振り返った。

 

「君が比企谷を引っ張ってきてくれたのか。ご苦労だったな」

「ほんとですよ、さっきも教室の前でブルっちゃって、ほんとにどうしようもないヘタレですねー」

「ねぇ小町ちゃん、俺帰っていい? ちょっと枕を湿らせなきゃだから」

「良いわけないでしょ。今更帰ったらホントに絶縁だから」

「惨すぎる……」

 

項垂れるせんぱいに、もう一人の来客からの声で息を吹き返す。

 

「八幡、久しぶりだね」

「おぉ……と、戸塚……お前だけが、お前だけが俺の味方だ」

「あはは、皆本当は嬉しいんだよ。もちろん、僕もね」

「戸塚、今すぐ結婚し──「「〇ね」」──ぐぉぁッ!」

高速の右脚が先輩のお尻に、二発炸裂した。もちろん、わたしと小町ちゃんの。まじでキモい。でも───

 

「懐かしいな……」

 

それは誰の零した声か、もしかしたらわたしだったかもしれない。全員の共通意識だったからか、その宙に浮いた言葉に、みんな続く言葉を躊躇った。

 

そんな中、一番に声を発したのは、せんぱいだった。

 

「あの……あ、あいつらは……?」

 

この教室に入ってから、ずっと気にはなっていた。わたしも、恐らくせんぱいも。まさかせんぱいから、切り出すとは思ってもいなかった。

 

「雪ノ下と由比ヶ浜か。あの子たちも、主役が遅刻とは」

「えっと、結衣ちゃんと雪ノ下さんなら、今朝の便で帰ってきた雪ノ下さんを迎えにいって、二人で来るって言ってたよ。もうそろそろ着く頃じゃないかな?」

「そっか……」

 

全員がそれぞれの事情を把握しているため、微妙な空気が流れ始めたが、それを振り払うのはやはり、平塚先生だった。

 

「まぁ、そのうち来るなら、我々も準備をして待とうじゃないか。ほら、男手が増えたんだ。キリキリ働け、比企谷」

「……はぁ、んで準備ってなにすりゃいいんですか?」

 

せんぱいは面倒くさそうに頭を搔いて、机を動かし始める。それが照れ隠しだと気付くかない人は、この中にはいなかった。わたしは小町ちゃんと一緒に、小さい物から準備を手伝い始めた。

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

「ほら、着いたよ、ゆきのん」

「……んぅ、あ……」

小さく感じる揺れに、重い瞼を持ち上げると、由比ヶ浜さんが目の前にいた。

「ごめんなさい、寝てしまっていたのね……」

「ううん、大丈夫。きっとあれだよ……時差バカ? ってやつだよ!」

「それを言うなら時差ボケよ……。全く、あなたは本当に変わらないわね」

「うぅ……素直に喜べないんだけど」

 

懐かしいやり取りをして、タクシー代を払うと、数年ぶりの母校の前に降り立った。

 

「───本当に、変わらないわね」

 

校門から眺めるその景色も、数年前と何一つとして。姉さんの影を追うように入学し、ただ己を高めるための学び舎と思っていた。けれど、思いもよらない大切を、たくさんの思い出を積み重ね、そして、その一つを失った場所。

 

しばらくそうして思いにふけていると、彼女のお団子が視界に割り込んできて、

 

「変わらないものも、あるよね……?」

 

彼女の優しさが込められた笑顔で、そう問い掛けてきた。

 

「えぇ……それを今から、確かめに行くのよ」

 

重いキャリーバッグを転がして、もう一度二人で、前へ歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

『もうすぐ着くよ!』という連絡があってから、否が応でも緊張してしまうわたし達を、平塚先生、戸塚さん、小町ちゃんたちが、紛らわすために、絶えず他愛も無い会話を繰り広げてくれる。表情は取り繕えても、心臓はものすごい速さで打ち鳴らしている。

 

そして、その時は来た。

 

コンッコンッ。丁寧に二度鳴らされた扉に、皆の意識は引き寄せられる。すぐに入ってこないその奥にいるだろう二人に、「ふっ、相変わらずだな」と零した平塚先生。

 

「ここは、今日は、君たちの場所だ───ノックは必要ないよ」

 

その声にはどうしようもない優しさに満ちていて、ゆっくりと扉が開かれた瞬間、込み上げてくるものを必死で抑えた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは……久しぶりね」

「や、やっはろー……みんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、本当に、この日をどれだけ待ち焦がれただろう。どれだけ後悔しただろう。忘れたくて、でも忘れられなくて。

不安定に固められたパズルから、ピースを零してしまったような、もう二度と元には戻らないと思った。でも、そんなことは無いんだ。

だってそうでしょ。失くしたのなら、また作ればいいんだ。

 

ゆっくりと息を吸い込んで、

 

「おかえりなさい───雪ノ下先輩、結衣先輩」

 

吐き出した時、確かに感じた、紅茶の薫り。

 

連なるように、「おかえり」という言葉が掛けられ、二人は照れ臭そうに「ただいま」と答えた。

 

 

「よぅし、これで役者は揃ったな」

「はいっ! ささ、結衣さんも雪乃さんもこちらへどうぞーっ!」

 

並んだ二つの長テーブルを囲って、各々決められた席へ着く。わたしの隣にはせんぱいがいて、その隣へ結衣先輩、雪ノ下先輩と並ぶ。

 

「ヒッキー……久しぶり、だね」

「おう……元気そうで何よりだ、雪ノ下も」

「……えぇ、お陰様で」

 

よそよそしさ全開の三人は、互いの顔を上手く見れない様子だが、今はまだこれでいい。

 

「はーいっ、皆さん飲み物は行き渡りましたかー?」

 

簡易のコップに様々なジュースを入れ、バケツリレーよろしく回していく。もちろん、せんぱいの前だけ、危険色をした缶を回す。

 

「それでは、不肖元生徒会長である、いろはちゃんが乾杯の音頭を取らせていただきまーす!」

 

オレンジジュースの入ったコップを手に、立ち上がり宣言する。

 

「こほんっ。えー、この度は皆さんお集まり頂き、誠にありがとうございまーす! 募る話もあるとは思いますけどー、今日は思い思いに、飲んで食べて、楽しんじゃいましょー!」

 

おーっ! と明るい合いの手を置いて、コップを高く掲げる。

 

「それでは〜、わたし達の再会を祝して……かんぱーいッ!」

 

「「かんぱーいッ!」」

 

机の中央に身を乗り出し、各々のコップを鳴らし合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあ、始めますか。終わった物語の続きを。

 

 

 

 





はい、というわけで第17話でしたー!

ついに対峙しましたね……。
え……八色成分少ないって、、、?

仰る通りですほんとすみません_:(´ `」 ∠):_

しかし、ここは避けては通れない……
過去と対峙し、今を乗り越えた先に
輝く二人の未来があらんことを……

そして、次が!ほんとに!最終話!です!(たぶん)!

次はもう少し早く書きます……
まだ読んでくれているのだろうか……
よろしくお願いします( ;꒳; )
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