そして一色いろはは過去と向き合う。   作:秋 緋音

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第7話です。

人物設定の誤差の件、本当に申し訳ありません。

本編と別に大まかな人物設定をまとめたページを
作っていますので、既読の方はぜひ目を通してくださいますよう
よろしくお願いします。

話しがこんがらがるかも知れませんが
これからも何卒よろしくお願いします。


第7話です!


第7話

 

「……えぇー、それでは今日の講義はここまで。えー、教室を出る際に、えー、出席票を提出して下さい」

 

ラフな格好をした初老の講師が告げると

静まり返った教室がガヤガヤと騒ぎ出し

教卓横の出席票に群がる。

 

「はぁ~終わった……」

 

大学の講義は90分間。

専攻科目にもよるが、「これ、関係あるの?」という講義が

たまにあるのだが、単位稼ぎのために取ることもある。

この講師の授業はゆるいから取ってるとか。

入学当初に便r……優しい先輩が教えてくれた。

 

いま終わった講義は中国語。

わたしの通うこの福祉大学ではあまり必要と思えないのだが

テストもなく授業に出席するだけで単位がもらえる

お手軽な単位稼ぎである。

 

「……むにゃぁ……」

 

隣で気持ち良さそうに居眠りしてる乙葉。

 

「乙葉ぁ、終わったよ」

「……んんっ……おはよ~」

「おはよ、よくあれだけ寝れるよね」

 

授業開始とほぼ同時に机に突っ伏した乙葉は

3秒で夢の中へと落ちていった。

きみはの〇太くんかな?

 

「昨日徹夜で新曲作ってたからさぁ……ふぁぁ」

「へぇ……また聴かせてね」

「出来上がったらね♪♪」

 

突っ伏したままこちらを向き

自慢気な笑顔を向けていた。

 

 

 

 

 

「ああー……みなさん、えー、今週末の午前に企業説明会がありますので、えー、参加する者は、えー、9時に302教室に、えー、集まってください。えー、資料は前に置いておきます。」

 

教卓の前にいた講師は、マイクを手に取り

残っている生徒たちに告げる。

ていうか、えー、多くない?

あの年のおじさんってみんなそうだよね。

 

「乙葉、出席票出しにいくよー」

「ふぁあ~い」

 

のそのそと立ち上がる乙葉とともに

教卓横の出席票入れに用紙を入れる。

 

その横には先程説明のあった企業説明会の

資料が置いてあり、その1枚を手に取る。

 

「さて、バイト行きますかぁ。いろはは帰宅?」

「うん、特に予定もないしね」

「そっか!じゃあね~♪♪」

「またね~」

 

 

乙葉と別れてひとりになったわたしは

特に用事もないので家路に着く。

 

夕日が落ちていく茜色の空をぼんやりと見つめながら

いつもの電車を待っている。

電車に乗ったところで鞄の中から1枚の紙を取り出す。

今日もらった企業説明会の資料だ。

日時や時間と場所、各企業の小さなPRなどが書かれてある。

 

その中の企業のひとつに目が止まる。

「……品川トイメーカー………」

 

この大学には福祉の他に保育系の学部もあることから

保育士以外にも、子供向け玩具の企業などに就く人もいるらしい。

 

子供向け玩具……。つい連想してしまう、先輩のこと……。

もしかして先輩の会社だったりして。

会社は家の近くって行ってたし、有り得なくはない。

 

これは、本人に確認をとる必要がある!

 

携帯を取り出し先輩に連絡を取ろうとしたが

丁度駅に到着したので電車からホームへ降りる。

そこで、ふと思いつく。

 

家に帰るついでだし、先輩のおうちに突撃訪問してみようか……。

いやでも仕事だったとしたら終わるにはまだ早いし。

いやでももしかしたら、たまたま休みってことも……。

てか、平日にお休みとかあるのかな。

そもそも、急に訪れてお邪魔じゃないかな……。

もしかしたら、家に誰か連れ込んで……って、それは先輩に限ってありえないか。

 

あれこれ考えていると、気が付いたら先輩のアパートの目の前まで来ていた。

ここまで来るの初めてなのに迷いなく、しかも無意識に足を運べるってどうなの……。

 

 

 

 

 

アパートの前まで来てこの期に及んで、ちょこちょこと足踏みしながら

どうしようかと考え込むが、もしいなかったら携帯で連絡取ればいいか。

そう結論を出して表札を見て比企谷という名前を見つける。

先輩の部屋は203号室か……。

 

203号室の前まで行き、鞄から小さな鏡を取り出し

髪型やメイクをチェックする。

いざインターホンを鳴らそうと手を伸ばすが

一気に緊張が襲ってきて、つい固まってしまう。

 

 

 

 

ええぃっ女は度胸ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに押した!鳴った!

ドキドキと胸を打つ鼓動が聞こえてくる……。

 

 

 

 

 

 

 

……………で、出ない。

やっぱりまだお仕事から帰ってないのかな。

ホッとしたような少し残念なような。

 

も、もしかしたら聞こえなかったのかも……。

もう一度だけインターホンに手を伸ばす。

 

ピンp「はぁい……」ーン

「ひゃあっ!!」「うぉっ!?」

 

「……なんだ、一色か……ビックリした」

 

ビックリした……!!

思わず変な声出ちゃった……恥ずかしい……//

てか、やっぱりいたんじゃん!

 

「一回目のピンポンで出てくださいよビックリしたじゃないですかー!」

「お、おう悪かったな。NH〇か新聞の勧誘かと思ってな」

 

開口一番に文句を言われ、たじろぐ先輩。

寝癖がついたままのボサボサの髪にスウェットの部屋着で

今日お休みだったのがひと目でわかる。

 

「……で、なんの用だ?」

「えっ!?……ああ、なんだっけ。えっと、そう!企業説明会ですよ!」

 

危うく本来の目的を見失うところだった……。

 

「ああ、今週末にあるやつ……ってお前あそこの大学だったのかよ」

「やっぱり品川トイメーカーって先輩の職場だったんですね!」

「そうだよ……。しかも、下っ端の俺が説明会に出ろって……ちっ、絶対ぇ社長の差し金だろ……」

 

頭をガシガシ掻きながらなにやらブツブツとボヤいている。

確かに先輩が企業説明会で人の前に立って話す姿は想像できない。

キョドって口ごもってそう……(笑)

 

「……お前いまなにを想像した……?」

「い、いえいえ!先輩が教卓であたふたキョドってるところなんて全然全く想像してないですよ♪♪」

「……さいですか……はぁ。行くの嫌になったまじで……」

 

心の底から嫌そうな顔(主に目の辺り)で項垂れてしまった。

 

「わたしは楽しみにしてますよっ、先輩!!」

「……俺の無様な姿を見るのがかよ」

「ち、違いますよ!さっきのは冗談ですからっ!素晴らしい演説、期待してますから!」

 

相変わらず卑屈だなぁ。

でもこういうところが女の母性みたいなのを唆られるのかな?

 

「そうだっ先輩!説明会終わったら飲みに行きましょう!」

「いや行かねぇよ……」

「なんでですかー!? こんな可愛い後輩が誘ってあげてるんですよ~?」

「えらく上からだな……。終わってから会社戻らないといけないんだよ」

「ええー……。じゃあ、その後でもいいです」

「……何時になるかわかんねぇぞ」

 

お、先輩が頭を掻いたということは……

 

「それくらい待ちますから!」

「……はぁ、わぁったよ。終わったら連絡する」

「やったー! 約束ですよ!」

「あいよ……。ゲホッゴホッ……もういいか?」

 

よっし!先輩と飲みに行ける!

頑張って突撃訪問した甲斐があった!

 

「はいっ! 楽しみにしてますね、先輩♪♪」

「はいはい……。じゃあな」

 

濁った瞳を流し目に挨拶を済ませると、先輩は部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

はぁ……急に緊張が解けたのと、飲みの約束が出来たことで

すっごいドキドキしてきた。

 

なんか先輩お疲れみたいだったな。

や、やっぱり迷惑だったかな……。

 

でも、企業説明会、楽しみだなあ♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイクよしっ!髪型よしっ!スマイルよしっ!!

 

今日も玄関の姿鏡でチェックする。

 

今日は待ちに待った企業説明会。

まあ、どちらかと言うとその後の先輩の飲みが、だけどね!

 

ルンルンで家を出て、いつもの電車と徒歩で大学へ向かいう。

 

大学に到着すると、既に同じように説明会へ参加する生徒が

いっぱい集まっていた。

 

教室へ入る手前で背後から良からぬ気配を感じる…………

 

「おっはよーいろは!!!」

「きゃあっ!お、乙葉ッ!?」

 

突如背後から音もなく忍び寄り、飛びかかってきたのは

もはやお馴染みの、乙葉でした。

 

「なんで乙葉がいるの?あんた就活しないじゃん」

「朝まで曲作ってたから、息抜きにいろはに会おうと思ってね~」

 

振り返ると乙葉の目元に薄らクマが出来てた。

 

「およ? いろは……今日なんか、気合い入ってない?」

 

うっ……鋭い。

 

「そ、そんな事ないよ~」

「まあここで気に入られれば有利かもしれないしね」

「あははは……」

 

とりあえず乙葉を引き剥がし、教室の前の方へと座る。

なぜか乙葉も隣に当然のように座る。

 

「いや、乙葉も参加するの……?」

「まぁまぁ、息抜きだって」

 

ケタケタと笑う、薄いクマのできた目を細めて。

先輩と会えると思い、浮かれてるのがバレそうで

あまり居てほしくないのに……。

 

 

 

 

 

 

「……えー、それでは、えー、企業説明会の方を、えー、始めていきます。今回は5社の企業の方々に、えー、来ていただいてます。えー、有意義なものにするため、えー、しっかりと、聞いていってください」

 

始まった……。えー、が多い!!

 

先輩の品川トイメーカーは……最後か。

それまでは、まぁ聞き流そう。

 

「えー、皆さん初めまして。今日はお集まり頂きありがとうございます。私は福祉器具の販売をしております、株式会社 筑井の────」

 

うーん、暇だ。これ先輩の出番までどれくらいかかるのかな。

 

隣では開始数分で夢の世界へ飛び立った乙葉が、スースーと寝息を立てている。

徹夜明けみたいだし、仕方ないか。

 

気持ちよさそうに眠る乙葉を見てると……

わたしも……なんか……眠た……く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────というように、我が社では利用者様のために、不自由のない楽しい空間を作るために日々励んでおります。是非、共に素敵な施設になるように、一緒に働ける人を歓迎いたします。ご清聴ありがとうございました」

 

パチパチパチパチパチパチ…………

 

 

…………んんっ、ぁれ……。

 

 

ハッ……!!寝ちゃってた!!

 

目を覚まし顔をガバッと起こすと

前の教卓には企業の方が深々とお辞儀をしていた。

 

ちょ、いまどこの企業!?

でも先輩じゃないってことは、まだかな。

 

 

「えー、ありがとうございました。続いては、子供向け玩具を取扱われます、えー、品川トイメーカー様です。えー、よろしくお願いします」

 

 

……っ!!

 

先輩の出番だっ!!

 

教室前方のドアから入ってくる人影に視線が向くが…………

 

 

 

 

 

 

…………あれ…………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには先輩の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけで第7話でした!


あれ、八幡はどこいったんだよ……。

たぶんドアから現れたのは青木くん(第3話参照)だとおもいます。

ちょっと八幡の出番少ない気がしてきました……。

これからバンバン登場してもらいますね!


感想、評価など頂けると嬉しいです◎


それでは、第8話でお会いしましょう♪♪
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