Aクラスの教室。星座術についての授業中であるこの教室から男性と思われる声が聞こえる。その人物はかつて、お偉方の下で働く高位の学者だったギアヒト男性――アドミニスタ・ファレンガーだった。
「さて、君達も知っての通りだが星座術は千差万別の力を宿している」
アドミニスタの言葉にクラス全員が沈黙の肯定と言わんばかり静かにしており、アドミニスタはその様子を見て話を続けた。
「一説では、
「否定はしないんですね……てっきりバカバカしいと一蹴するのかと……」
意外な言葉に驚き、呟いたのはモスグリーンをメインに大きく屈強で武骨なボディとモノアイが特徴のギアヒト男性――シグルド・バレンツァー。シグルドの言葉にアドミニスタは答える。
「この論文についてはバカにできないからな……星座術が遺伝により、まるで星座のように親から子へと繋いでるように見えなくもない」
そう言って黒板に簡素な絵を描き、親から子へと星座術が遺伝する様子を星座のように線で繋いでいく。
「何より大観衆の前で高々に声をあげ、そういう考えを発表する者の精神も高く評価しよう」
「それって、星座術が強い感情に反応するからですか?」
今度は物静かでお嬢様のような雰囲気を持ち、デミート特有の白い肌に相反するような長い黒髪に前髪で左目を隠しているも右目の水色の瞳が覗き、制服の上から桜色の羽織を着たデミート女性――カグラ・コザクが質問する。
「それもある。だが大きな理由は公の場でも安心して任せられるからだ……私が知る話には、先程説明したロマンチストな論文を発表した若者が観衆に発表する前に意を決して人気だった美容院に出向き――」
――……『たのもー! 今時の朝ニュースの安心イケメンアナウンサー風で!』……
「……と、元気よく大声で言いながら入店した」
「「「いやぁぁぁぁ!」」」
アドミニスタの解答にAクラスの生徒達は話にあがった若者の行動に悲鳴をあげた。考えるだけでも黒歴史直行コースの行動に一部の人達が震える。
「そんな……そんな、美容院で最も恥ずかしい類の注文をわざわざより恥ずかしい形で……!」
「後で聞いてみると、『いっそ堂々と言えば恥ずかしくない』と若者は言っていた」
「すっげぇ! その人の勇気は俺たちの遥か上をいくぜー!」
男の行動に震えるカグラにアドミニスタはその行動をした理由を説明するとノリの良い、ヤンキーの様な印象を受けるデミート男性――ザイツェフ・ツヴァイストンがその男の勇気を讃えた。
「その上注文が具体的なようで分かりにくいから最早道場破りに近いよなー!」
「イケてる美容院自体結構ハードル高いのにー!」
「……こほん……」
クラスが話の青年へと変わって空気が緩み始めた事を危惧したアドミニスタはわざとらしく咳払いをして、切り替えた。
「さて、脱線してしまったが話を戻すとしよう。星座術には眠れる可能性というのが存在する……多くは先程言ってくれた通り、強い感情に反応して所有者の形に変化するという話もあるのだが、もう一つとしてある物質を接種すると起こるが……何かわかるかね?」
アドミニスタの質問に顔の左半分を覆う首元まで伸びる銀髪が特徴のヒューマン男性――ヴァイス・アルカードが手を挙げる。
「ダークマターだ」
「その通り。宇宙を構成している物質の一つだが、この銀河系特有だからなのか、時々それが結晶化して降ってくる場合がある」
「その結晶はブラックマターという名前になり、あらゆるエネルギーの代用として利用できる万能物になるんですよね」
「うむ。あらゆる物質に変化できるという特性を持ち、当時は高値で売買されていた……星統種族戦争では惑星カザリアに多く落ち、豊富な資源の一つとして狙われたようだ」
シグルドの補足するかのような説明に同意するとアドミニスタは授業を続けた。
「近年の研究にてこのブラックマターには、星座術の秘めたる可能性を引き出せる事が判明した……しかし、同時に危険性も発見された……秘密裏にとある研究所でブラックマターを接種することで星座術が強化される実験を試した所、強化はされた……だが、それと同時に接種した人物が暴走してしまって計画は凍結。その爪跡である研究所も残っているという噂だ」
そう言ってアドミニスタは黒板に件の研究所の写真を黒板に張り付けた。
「ブラックマターを接種することで星座術が強化されて暴走する……これを【ハザード現象】と呼ぶ」
アドミニスタは赤のチョークで重要なワードだと説明する為に強調して書く。
「人体への接種は身体に負担を与え、数多くの研究者がブラックマターの
「なんで諦めないんでしょうか?」
「ハザード現象が安全に発動できるようになれば技術の発展、星座術によるデメリットを代用してくれる可能性がある」
アドミニスタの説明に紺のブレザーと革の手袋の渋めなファッションの見た目がヒューマンに見えるギアヒト男性――シロー・レイズが質問するとアドミニスタは答えた。その時にデメリットの代用という言葉に一部の生徒が微かに反応した。
「それって根拠とかあるんですか?」
「あるとも。ハザード現象を起こして暴走した被験者の星座術のデメリットが解消されていた……まぁ、噂では別の能力を持ったと言われているが定かではない」
カグラの質問にアドミニスタは最初は確信した言葉を言い、真偽が定かじゃない噂を難しい顔で呟く。
「しかし、だからと言って否定する事はない……星座術は未知の可能性を秘めた能力だ。予想だにしない
そう言って時計を確認すると予定よりも早く終わった事に気付く、残りは自習と言いたいがそれでは他の生徒達の知的欲求が静まらないとアドミニスタは星座術の学者としての判断で言う。
「時間が余ってしまったな……他に質問はあるかね」
その言葉に一人の生徒が手を挙げた。見た目は俗に言う合法ロリと言うべき子供体系に腰まである長さの白いツインテールのヒューマン少女――クトゥー=シュリュズベリィがアドミニスタに質問を投げた。
「星座術が意識を持つ事ってありますか?」
クトゥーの質問にアドミニスタはニヤリ、と笑いながら答える。
「もちろんあるとも……事例は非常に少ないが0ではない。現に召喚して使役するタイプがそれだ……」
「……? だったら、星座術の謎とかわかるんじゃないのか?」
「残念だがそれは出来ない……何故なら――」
シローの疑問に答えようとした時にチャイムが鳴り響いた。自分としては最後まで言いたかったが、彼ら自らが調べる事に価値があると判断して号令する。
前の職場で上司とそりが合わずに退職したのは良い判断だったとアドミニスタは自己完結して職員室まで歩いていった。
星座学者「どう動くか楽しみだ……」
銀河系ザク「気になるので調べる必要がある」
合法ロリ「同じく」
狼青年「……どっちでもいい」
甘党スネーク「ドラ焼き食べていいのかな……やっぱり、後の方がいいかな?」
ぶっ飛びミサイル「ミサイルブッパしようぜ!」
ナンパ戦士「そんな事より女の子と遊ぼうぜ!」