い……いや……体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
『自分は小説を更新しようと思ったら、最終更新日から、いつのまにか10日近く、月日が経っていた』
な……何を言っているのか、わからねーと思うが、自分も、何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか……そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ……
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
「簡潔に言うとなんだ?」
サボってすみませんでした。
はっじまっるよー!
石像から放たれた熱線が空中に放り出されたリゲルへと飛来する。前後を挟み撃ちの形と下から迫り来る熱線にリゲルは歯を食い縛る。
瞬間、リゲルの腰に巻かれたロープが引っ張られて急速に下に落ちる。標的を失った三つの熱線の内一つはリゲルの頬を掠りながら天井を貫き、残り二つは共倒れよろしくお互いに放った熱戦によって砕かれた。
「よっし……イッテェ!?」
落下する際に石像を壊す事に成功するも、受け身を半分失敗して着弾もとい着地する。
「いてて……受け身失敗したけど、作戦は成功だな」
痛む身体を起こしながら、自身を囮にしてシリウスが相手を場外にする作戦が成功した事に安堵するリゲル。
「シリウス! 戻って来いよー!」
腰に巻かれたロープをほどき、相棒のシリウスに戻って来るように指示するリゲルだが、シリウスは微動だにしない。
「……シリウス?」
自身の相棒であるシリウスが喋らない事に首をかしげるリゲル……ふと、実況の声が聞こえない事と砂煙の向こうに何かがいる気配を察知し、作戦が半分失敗した事に気付いて警戒する。
「……え……?」
砂煙が晴れ、目の前の光景に言葉をなくした。現れたのは突進したハズのシリウスをアルトが
しかし、それだけで終わらず、止めていた片手でシリウスを頭を掴み、自身の頭上にゆっくりと持ち上げ、リゲルの手前に向かって投げた。
「なっ!?」
「片手で持ち上げた!」
まさかの行動に驚く会場。それもそのはず、どんなに鍛えてもデミートには投げられない理由があるのだ。
デミートは星座術のコントロールを飛躍的に高めた結果、神経の反応速度や記憶力、思考力がヒューマンの数倍上がったが、その反面に身体能力がヒューマンの半分以下にまで下がっているのだ。
『……グ……グゥ……』
「シリウス!」
「なんだあれ……アイツって石像を召喚して操作するんじゃなかったのか?」
「あの女性はアニマジンとのハーフか?」
「それは、ない」
シリウスに駆け寄るリゲル。シリウスを片手で投げたアルトに戸惑うゼロール、クライドはアニマジンとのハーフだと予想するがレティシアに否定された。
「アニマジンとのハーフは……体力が上がるだけで筋力に影響はないの……それに石像の三体同時操作は、純粋なデミートじゃないと説明がつかない」
「じゃあ、なんで……」
「恐らくだけど……彼女の星座術には、まだ奥の手が残ってるとしか思えない」
ゼロールの言葉にレティシアが答えると、アルトはシリウスを気遣うリゲルを見ながら口を開いた。
「強化発動」
その言葉と同時に石像が自壊した。しかし、それだけでは終わらない。
『おおっと! 石像がアルト・ファフニールに吸収されるのかのようにボロボロと崩れ、エネルギーが彼女に集まっていくぅ!! 』
「ハッキリ言うぞ、リゲル・ベテルギウス」
実況の声に耳を貸さず、アルトはリゲルに声をかける。
「私はお前の事を格下だと思って甘く見ていた……その結果、自身の首を絞められていた事に気付かないでいた」
その時、リゲルはアルトが普通の状態じゃない事に気付いた。別に狂信者や精神異常者だった事じゃない……それなら問題を起こすリゲルの方がそれっぽい。
「だから、これは私なりの敬意だ……」
では、何に気付いたのか……簡単な事だった。アルトの瞳が、血のように赤く染まっていた。
「貴様を……――」
アルトの身体に変化が起こる。血のように赤い目がさらに赤くなり、頭に血結晶のような色の角が、肌に鱗のような模様が、尻尾が生えた。
「――圧倒的に叩き潰す」
その姿は、あまり学のないリゲルでも知っている。神話に登場する……俗に言う『龍人』の姿をしたアルトだった。
「……ド……」
「……ド……」
「……ド……」
「……ド……」
『……ド……』
「……ドラゴン!?」
余りにも予想外な姿にリゲルを始めとする会場が驚きの表情を見せる。
「あまり使わない力だが、貴様という不安分子を倒すには充分すぎる……私の安心を確実にする為に倒す」
油断も嘲りもない、純粋なまでの敵意に肌がヒリヒリと痛む感覚にリゲルは苦笑いで策を考える。
……シリウスがダウンしてる上にオレ自身の体力も残っていない……やっばい……勝てるイメージが思いつかない……
『……リゲル』
引きつった笑みを見せながら警戒するリゲルに倒れていたシリウスが一つ思い付いたのか、声をかける。
『……一つだけ策が――』
「断る」
一蹴。聞く耳持たないリゲルにシリウスは黙って見るが、自身の言いたい事を彼は理解している。
「いくらアレが逆転できる方法でもオレは使いたくない……変わった意味がないだろ……今度、その言葉を言ったらお前でも怒るからな」
振り向かずに言うリゲルだが、言葉の節々に怒りが込められている……リゲルは右手にナイフのようなモノを持ち直し、アルトとの距離をキープしたまま右に走り出した。
「……特攻あるのみ!!」
動きで翻弄して近付こうとするリゲルにアルトは口の辺りにエネルギーを瞬時に溜め、熱線を放った。
「カァ!!」
まるで息を吐くような感じで放たれた熱線は石像で放った時よりも速く、高熱を含んだ一撃は地面を溶かしていた。
「……」
呆気ない幕に警戒するアルト……彼女の勘が終わってない事を知らせるかのように警鐘を鳴らしていた。
そして、それは突然現れた。
「……!?」
現れたのは自身の真下……後ろや真上を警戒していた彼女の裏を読んだリゲルがナイフのようなモノを彼女の首に叩きつけた。
「オラァァァァ!!」
ドゴンッ!! 雄叫びとともに放たれた轟音に会場にいたキャストを除く人達は咄嗟に耳を手で塞いだ。彼の持っていたナイフのようなモノの正体――小型パイルバンカーが彼女の咽に食いついた。
「アグッ!?」
しかし、轟音が鳴り響いた後にきたのは自身の首が何かに掴まれた。その正体は目の前に映る一人しかいなかった。
「フシュゥゥゥゥゥゥ……」
アルトだ。彼女は口から息を吐きながら左手で掴んだ不安分子を睨んでいた。首に視線を向けると、そこには鱗に覆われるも光に反射して艶を見せる白い肌があった。
……ノーダメージかよ……
自身の捨て身が無傷に終わった事に苦笑いするリゲル。ふと、浮遊感を感じると同時に視界が逆さまに映る。そこには右手でこちらを殴ろうとするアルトの姿があった。
「アァァァァァァ!!」
「ガァッ!!」
咄嗟に腕を交差して防ぐも彼女の怪力にベキン、と何かが折れる鈍い音を感じたままリゲルはフィールド外に殴り飛ばされ、壁にぶつかって止まった。肺の空気が抜け、駆け寄るクラスメイトを最後に意識を手放した。
「リゲル! しっかりしろ!」
『リゲル・ベテルギウス場外! よって、第一試合はアルト・ファフニールの勝利!!』
スプラの実況に沸く会場。クラスメイトに運ばれるリゲルを一瞥したアルトは星座術を解きながら戻っていった。
「やったでござるな、ファフニール殿」
「……あぁ」
トシゾーの声に返事を返すアルト。とりあえず不安を取り除けて一安心する。
「大丈夫かリゲル?」
所変わって簡易医療室。ここで保険医のスピカが運ばれたリゲルの手当てをしていた。
「意識失ってるケド、大丈夫ヨー……とはいえ、肋骨が数本折れテル……」
その言葉に数名が暗い表情を見せ、スピカはその内の一人の背中を力強く叩いた。
「安心してサイ!! その為にワタシ達がいルの……だかラ、ヴァナタ達は試合に集中スルヨー!」
その言葉を最後に医療室から無理矢理退出され、出場するメンバーに無事を伝えた。
『第二試合、始めるぜ!』
「行ってくる」
スプラの言葉に何かの直感を感じたのか、ゼロールが立ち上がる。画面には彼の直感通り自分が映し出されていた。
『第二ラウンド! 鍛えぬかれた技こそ俺という名の竜の息吹! 発明した武器はあるけど今回は拳一つでぶっ倒す! 『発明狂カンフードラゴン』ゼロール・ドラゴニウス』
「……しっ!」
『戦争が終わって眠る古き
「いざ、参る!」
Cクラスの武闘家とBクラスの侍がお互いに気合いを入れてステージに立つ。その姿には『自身が勝つ!』と言わんばかりに溢れていた。
「両者構え……」
その言葉にゼロールは拳を、トシゾーは刀を構えた。
「Ready…………………GO!!」
今、武闘家と侍が激突する。
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伝説上の神獣である「竜(龍)」の81枚の鱗のうち、あごの下に1枚だけ逆さに生えるとされる鱗のことをいう。
また、触れてはならないものを表現する言葉。