機装女戦記ガンプラビルドマスターズEVOL   作:ダルクス

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胸を刺されたにも関わらず、何事も無かったかのように目を覚ましたソウシ。
とっくに陽は落ち、ソウシは再びハゼガーの小屋に招かれる。
そこで彼は思いもよらぬ提案を聞くことになる。


第4話「サンダーボルトバトルロイヤル(前編)」

「少し、落ち着いたかい?」

「…………」

 

 林の中で眠っていたソウシをハゼガーが発見してから小一時間後、ソウシは再びハゼガーの小屋に招待されていた。現在の時刻は夜20時過ぎ、どうやらゆうに3時間は意識を失って林の中で寝ていたらしい。天井から吊るされた裸電球が照らすこの小屋の中には、昼にソウシが壊してしまったあのちゃぶ台はもう無くなっており、代わりにどこからか拾ってきたのか、古びたテレビ台をテーブルの代わりとして小屋の中央に置いてある。ソウシはそこに片肘と頬杖をついて座り、手元には凹んだアルミ製のマグカップが置かれている。ハゼガーがソウシのために淹れた味の薄いインスタントコーヒーが、湯気を立ててその中に入っていた。

 インスタントとはいえ、ハゼガーにとってはこのコーヒーも貴重品であり、なにより(食器の洗浄は公園の水道で毎日しているとはいえ)不衛生感のあることを重々承知だったため昼間は出さなかったのだが、明らかに何者かに襲われた形跡のあるソウシを気遣い、希少なインスタントコーヒーを切り詰めて与えていた。

 カップ内の量は減っており、ソウシがそれを飲んで気持ちを落ち着かせたことを表している。ハゼガーはそれを確認すると安心したように、自分もまたコーヒーを淹れるとソウシの向かいに腰を下ろした。

 

「それで、殴られた後のことは何も覚えていないのかい?」

「……ああ」

 

 ソウシは嘘をついていた。本当は殴られたわけではなく、胸をナイフで刺され、しかも刺された直後にはまだしばらく意識があったので、刺した人物の姿をしっかりと記憶していた。しかし、それをハゼガーに話したところで、なぜ何事も無いのかと不審がられるだけだと判断し、代わりに「何者かに頭を後ろから棒のようなもので強く殴られた」と話していた。

 

「私が思うに、それはやはり上級ランカーの誰かの仕業だろうね。手下を使って君を襲うように仕向けたんだろう」

「ガンプラバトル以外で俺を潰そうとするとは……つくづく浅はかな連中だ」

「君は、まだ昇格試験のバトルをするつもりでいるのかい?」

 

 コーヒーを啜りながら、ハゼガーはソウシに尋ねた。また昼間の続きかと、ソウシはうんざりした様子で鋭い視線をハゼガーに向ける。

 

「ゴホッゴホッ……い、いや誤解しないでくれ。もう君を無暗にバトルから引き離すようなことは言わないし、何があったのかも詮索しないよ」

 

 またもあらぬ誤解を受けていると思ったハゼガーは、飲んだコーヒーにむせながら弁解すると、「ただ」と付け加えて話し始める。

 

「私が言うのもなんだが……上級ランカーたちは強いよ。生半可な機体や戦術では勝てない。今でこそ優遇された立場にいるけれど、彼らも元は君と同じポーンランクで、それこそ何度命を落としかけたやもしれない幾多の激戦を勝ち抜いてきた本当の(つわもの)さ。挑むなら、それ相応の準備と覚悟を持って臨んだ方がいい」

「……アンタそれ、自画自賛してないか?」

 

 この男、リングネーム“ハゼガー”は東側陣営の事実上のナンバー3の実力を持っている。なのに、あたかもそれには自分は含まれていないような話し方をするので、ソウシは本気でそう思って言っているのかと指摘した。その問いに対し、ハゼガーは首を横に振って話し始めた。

 

「いやいや、私なんかはまぐれでなれたようなものさ……それこそ本当に運が良かっただけ。私のように浮浪者から拾われてファイターになった者たちは何十人といたけど、大抵は数回のバトルを繰り返すうちに再起不能になっていった……」

「アンタはその中から選び抜かれた存在ってわけか」

「フフッ、まるで厳選されたコーヒー豆みたいだね」

 

 と、今自分が飲んでいるコーヒーの水面を見つめながらハゼガーは呟いた。

 

「まぁ……まさに命を賭けた博打のようなものさ。気が付いたら上位ナイトランク、東側のナンバー3になっていたよ。もしかしたら、娑婆では最底辺の人間こそがあそこでは頂点に君臨できるのかもしれないね……」

 

 その意味は、単に皮肉としてハゼガーのような低い生活基準の人間のことだけを言っているわけではないのだろう。いつだって、人が人足り得るのは、当たり前だが人間らしい感情があるからだ。しかし、あのミッドナイトコロシアムで行われるガンプラバトルは通称“リアルバトル”と呼ばれ、機体の受けたダメージが直接ファイターにも反映されるという、狂気のバトルだ。そこに人間らしい感情が入り込む余地などは無い。

 やられる前にやる……。頭ではわかっていても、大抵の人間は相手を傷つけることを躊躇うものだ。上位にいるランカーは、感情を押し殺し、それを平然と行うことのできる連中だ。そういう意味を含めての“最底辺”なのだろう。

 

「……ということは、アンタもまた俺にとっての超えるべき壁というわけか」

 

 ソウシは自分が最強への頂に上り詰める為に、まずはミッドナイトコロシアムでの最強のファイターになることを目標としている。次の対戦相手はビショップランクのザンバという男になってはいるが、行く行くはこのハゼガーとも戦わなければならないということだ。施しを受けていても、ソウシはこの男に心を緩めることはなかった。

 だが、そんなソウシの硬い決意とは裏腹に。

 

「あぁ、それはないんじゃないかな。私は次の試合で引退するつもりだし」

「なに?」

 

 ハゼガーの口から出たのは、固めた決意を脆くさせるような一言だった。

 

 

 

 

 

第5話「サンダーボルトバトルロイヤル(前編)」

 

 

 

 

 

「昼間も言ったと思うんだけど、次の試合のファイトマネーで娘の手術費が稼げるんだ。私は娘の命を救いたいからここでのバトルを始めたわけだから、それを成し得たのならばもうここにいる必要も無いのさ」

「そうか……だが、それは“勝てれば”の話だろう?」

「勝つさ。私にたった一人残された家族のためだもの。たとえ同じ陣営のファイター相手でも、私は必ず勝ってみせる」

 

 ミッドナイトコロシアムにおけるランクアップは、自分の一つ上のランクのファイターと対戦することで、勝てばそのファイターとランクが入れ替わり、さらに通常よりも多くのファイトマネーが貰える仕組みだ。ハゼガーの次にランクが上なのは、ルークランクのブットバスという大男だ。ファイターの見た目だけだったら、このハゼガーには到底勝ち目は無いように見えるが、ガンプラバトルとなれば話は別だ。そして、ハゼガーの目には確かな闘志が宿っていることを、ソウシは感じ取った。

 

「さて、私のことはともかくとして……君はこれからどうする?」

 

 それを聞かれてソウシは口ごもる。このままホテルに戻れば、自分がまだ生きていると知り、試合の日までにまた襲われるかもしれない。連中が本気で命を狙って来ていると分かった以上、手段は問わない筈だ。

 しかし、未だ蘇生した理由は分からないが、自分はあの時に一度確かに死んだ。そしてそれは自分を襲うように命令した誰かにも伝わっていることだろう。となれば、このまま自分が死んだと思わせたままにしておくのが一番の得策だとも思えた。

 そうなると問題は、どこに自分の身を隠すかになる。

 

「君さえよければ、なんだが」

 

 どう返答すべきか考えていたソウシに、見かねたハゼガーが提案をする。

 

「しばらくここで暮らすのはどうだろうか? この小屋は狭いが、資材はあるから君一人分のスペースならすぐに作れるよ。万が一ここに居ることがバレても、私も一応上級ランカーだから、一緒に居れば連中はおいそれと手を出せないと思う。それに私はもうすぐいなくなるから、その後どうするかは君の自由にすればいいし……」

「…………」

「ご、ごめん。嫌だよね、こんな薄汚いおじさんと2人でこんなところに……すまない、忘れてくれ」

 

 と、薄ら笑いと共に目線を逸らすハゼガー。だがソウシは、その提案は思ったよりも悪くない提案ではないかと思っていた。

 

「……俺のガンプラが、まだホテルの地下作業部屋に置いたままになっている」

「うん?」

「明日、なんとか回収してくる。その間に増築を頼んでもいいか?」

「あっ……ああ! もちろんだとも、任せてくれ!」

 

 ソウシの返答を聞き、溢れんばかりの笑顔を見せたハゼガーの声色は、とても嬉しそうに、そして見た目以上に頼もしく聞こえた。

 

………………

…………

……

 

 その翌日、ハゼガーの小屋で一夜を明かしたソウシは、人があまりいない早朝の時間を見計らってホテルに戻った。これといって誰かに自分の姿を見られたという実感もなく、無事に作業部屋まで戻りガンプラをジュラルミンケースの中に回収する。さらに調整用のパーツと工具を必要な分見繕い、ケースの空いたスペースにしまい込む。ついでにその場で目立たない普段着に着替え、生活必需品もいくつか携え。人通りが多くなる前にホテルを出た。

 ハゼガーの小屋まで戻ると、既にハゼガーは起床しており、小屋の増築作業に入っていた。錆びた金槌と不揃いなサイズの釘で小屋に板を打ち付けていると、背後に気配を感じたのかハゼガーは振り返り、ソウシの姿を見つけた。

 

「おや、思ったより早かったね。すまないね、作業はまだ始まったばかりなんだ。少し待って……―」

 

 ハゼガーがそこまで言いかけると、不意に自分が支えている板の重さが軽くなったのを感じた。視線を下に向けると、ソウシが板を支えていた。言葉を発さず、目線も合わせず、無言のままだったが、ハゼガーは嬉しそうに笑みを浮かべると、作業を再開する。

 そうして2人で作業をすることおよそ2時間、小屋の増築作業は終わった。その間、2人は必要以上に会話は交わさず、作業に没頭していたか自然と息が合い、増築作業はスムーズに捗った。

 元々造りとしては至極シンプルだった小屋の一部壁を取っ払い、そこに新たな小さな小屋を建てる程度の改築だった。増築された小屋は2畳ほどのスペースで、天井も低く立ち上がることもできない。しかしそこには勉強机サイズの机があり、母屋とはカーテンの布一枚で仕切られている。部屋というよりかは、ガンプラの改修作業を行う最低限のスペースを確保した作業机といった印象だった。

しかし、ソウシはこれで十分だった。

 

「よし、とりあえずはこんなものかな」

「思ったより悪くはなさそうだな」

「そうかい? いやぁ、そう言ってくれて嬉しいよ。こう見えても製造業をやっていたものだからこういうのは結構得意……って、ヴィシャス君、それ何?」

 

 作業中は静かだった2人だが、ひと仕事終えて気が解れたのか、気軽に会話を交わす。一息ついたハゼガーは、ふと小屋の前にスーパーのビニール袋が置かれていることに気が付いた。

 

「どうせロクなもの食ってないんだろ。申し訳程度だが、礼の証だ。コンロを借りるぞ」

 

 そう言うとソウシは、有無を言わさずに小屋の中に入り、カセットコンロといくつかの調理器具を手に取った。

 

………………

…………

……

 

 数十分後、芝生に敷かれたブルーシートの上に置かれたテレビ台。その上には火が灯るカセットコンロが置かれている。さらにその上には、所々に凹みのある中サイズの鍋に、不釣り合いなほどに煌びやかな盛り付けの施された野菜や肉がグツグツと音を立てて煮込まれている。すき焼きのわりした特有の甘じょっぱいの匂いが湯気と共に流れていく中、台の前で正座をし、じっと鍋を見つめるハゼガー。食い気味に姿勢は前のめりになり、口元から涎が溢れそうになるのをぐっと堪えて飲み込む。

 

「煮えたのか?」

 

 両手に卵の入った茶碗と箸を持ったソウシが小屋の中から出てきて、完成が今か今かと待ちわびるハゼガーにそう問いかけた。その声に思わずハゼガーは背筋を伸ばし、「あ、あぁ」と短い返事で平静を装う。それに対しソウシは「そうか」と答えると、持ってきた箸と茶碗を手渡しながら、ハゼガーの向かいに座る。

 

「じゃあ、いただきます」

「い、いただきます」

 

 ソウシにつられる形でハゼガーは手を合わせる。ソウシは手慣れた手つきで卵を片手で割り、茶碗の中に卵を落として箸で溶く。そして十分に煮え、たれの味が染みた牛肉をとると卵に漬け、一口で口の中に収める。値段の張った牛肉と卵を購入してきただけあって、その味は自分の予想を遥かに超える美味さだった。口に入れた瞬間、決してしつこくない卵のうまみの後、肉は噛む間もない触感の後、ジューシーな肉汁が口中に広がる。

 昨日はほぼ何も食べていないため、無性に腹が減っている。食材はそれなりの量を用意してきたから、2人で食べたとしてもそうそう無くなる心配はない。

 ソウシは鉄面皮の表情の奥で、内心自分の作ったすき焼きの美味さを実感していると、ふとハゼガーの方に目を向けた。卵は茶碗に溶かしてあるが、肉に箸をつけようとしない。

 

「どうした?」

「い、いや……なんか、いいのかなって思って……。こんな豪華な食事、君が買ってきて君が用意したものだし……」

「あんたには世話になった、これはほんのささやかな礼だ。それに、昨日の詫びも兼ねてある。遠慮しないで食ってくれ」

「じ、じゃあ……お言葉に甘えて」

 

 言いつつ、ハゼガーは鍋の中の比較的小さめの肉を箸で掴むと、卵に漬けて一口。文字通り噛み締めるかのように長い時間かけてよく噛み、そして飲み込む。

 それを皮切りにして、先程の控えめな姿勢はどこへやら、次々にハゼガーは鍋の中の食材を食していく。

 

「おい、急にそんなに食べて大丈夫か?」

 

 食材はまだまだあるから鍋の中のものを全て食べられても心配は無いのだが、急に食の進んだハゼガーを思わず気に掛ける。すると、先程まで一心不乱に食べていたハゼガーの肩が震えだし、食材を食している口からは嗚咽が漏れだす。

 

「うっ……ううっ……」

「お、おい……?」

「久しぶりだ……こんなの……」

「そりゃまぁ、こんな生活していたらすき焼きなんて……―」

「いや、違うんだ。誰かと一緒に食卓を囲むなんて、本当に久々だったから……すまないね」

 

 声色を嗚咽に震わせながら、ハゼガーは眼鏡をあげて袖で涙を拭く。その言葉を聞き、不意にソウシの脳裏に蘇る記憶。

 自分が作り上げた改造ガンプラが、人の姿になった時……。そう、初めてファントムと出会った時だ。その時に共にとった昼食。ファントムは初めてとる食事という行為に少しの戸惑いを見せていた。

 そして、MS(マシンソウル)であるレギーラとのデート。それを終えた後、彼女の創主(マスター)であるキサラギ・レイナの家で自分、ファントム、レギーラ、レイナ、そしてカルナと共に食べた夕食……。

 唐突に在りし日の記憶が蘇り、ソウシもまた食事の手が止まる。だが冷静を装いながら、ソウシはハゼガーに言葉をかける。

 

「別に……これから先何度だって食卓を囲む機会はあるだろう。娘さんと一緒に」

「うん……うん! そうだね! 試合の日までに力をつけておかないと」

 

 その言葉に励まされたのか、ハゼガーは再び食欲のままに食材を頬張っていく。

対するソウシは、まだ胸中で在りし日の記憶のことを想っていた。

 

(なんだこの気持ちは……! まさか、俺は帰りたがっているのか……? あの日々に……)

 

 戦い続けることを決意したソウシと、戦い続けた果てに安息を求めるハゼガー。

もしもそれが、ハゼガーが昨日言った、「戦いの先に成し遂げるもの」の正体ならば、果たして自分に安息の場所などはあるのだろうか……?

 

(俺はなにを考えている……! 戦い抜くと決めたじゃないか! それなのに心の奥では安息を望んでいるとでもいうのか……? 違う! そんなものはもう俺には無い……!)

 

 頭を振り払い、余計な考えを消し去るソウシ。

 いつしか頭の中からは、昨日自分が死に際から蘇ったことなど毛頭失われることとなっていた。

 

………………

…………

……

 

 それからソウシとハゼガーとの奇妙な共同生活は続いた。ソウシの昇格試験が行われる日は明後日の夜。それまではひたすらにガンプラの調整が進められた。

 もちろん、基本は一人で行う作業なのだが、時折ハゼガーがアドバイスをすることもあった。

 

「なにか行き詰っているのかい?」

 

 レヴィーヤの腕関節をバラして調整を行っていたソウシに、ハゼガーが仕切り布をめくって顔を出す。

 

「あぁ、装甲が重いせいで腕の関節がヘタれてしまってな。なにかいい強度を上げる方法はないかと思って。瞬間接着剤だと太らせすぎて破損する可能性がある」

「ふむ、なるほど……あれ? この装甲の下って……―」

 

 ハゼガーは机の上に並べられたパーツを手に取ろうと手を伸ばした。

 

「……っ! 触るな!」

 

 その手が触れる前に、ソウシが睨みを利かせて声を張り上げた。ハゼガーはビクッと体を震わせて慌てて手を引っ込める。一瞬の間の後、ソウシは「しまった」という表情で謝罪の言葉を口にする。

 

「すまない……けど、俺のガンプラは他の誰にも触ってほしくないんだ」

「あぁ、気持ちはわかるよ。すまなかったね、勝手に触ろうとして」

「いや……こっちこそ悪かった」

「よほど大切にしているんだね、そのガンプラ」

「…………まぁな」

 

 目線を合わせることなく、ソウシの手は再び作業に戻る。

 

「あっそうそう、関節が緩いならテッシュを小さく切って可動部分に挟み込めばいいと思うよ」

 

 ハゼガーはソウシの後ろから助言を送ると、自分の上着のポケットをまさぐり始めた。

 

「テュシュを?」

「うん。ほら、これ使って」

 

 まさかそんな物を、といった怪訝の表情でソウシは背後を振り向く。そんなソウシを余所に、ハゼガーはポケットの中からポケットティッシュを一つ取り出し、ソウシに手渡した。

 

「街で配っているのを頻繁に貰っているんだ。それで試してみなよ」

「わかった」

 

 言われるがまま、ソウシはテッシュを一枚取り出すと、デザインナイフを走らせて適度なサイズに切り出し、関節パーツの可動部にそれを挟み込み、パーツを閉じる。

 

「なるほど、確かに動きが渋くなった。よくこんな使い方思いついたな」

 

 自分が全く予想していなかった日用品の使い方を自ら体感し、思わず感嘆の言葉が口から出る。

 

「ここだと使えるパーツは限られているからね。なんでも活用していかないと」

「そういえばアンタのガンプラはどんなのなんだ?」

「私のかい? 私のはね……」

 

 なにかを探すようにハゼガーは小屋の中に戻って行く。ソウシもまた、その後ろにつくとハゼガーが古びたポーチの中から青いガンプラを取り出す。

 

「これが私の愛機、“ダハーロ”だ」

 

 そう言ってテレビ台の上に置かれたガンプラ。青と白を基調とし、肩に取り付けられた大きなバインダーが特徴的な機体。全体的なシルエットはGのレコンギスタに登場するモビルスーツ、“ダハック”をベースにした強化型に見える。

 

【挿絵表示】

 

「上半身がダハックで、下半身はモンテーロか」

「そう。私はね、昔からトミノ・ヨシユキ作品が大好きでねぇ。特に“Gのレコンギスタ”が好きなんだ。君、見たことあるかい?」

 

 と、Gのレコンギスタ……通称“Gレコ”の話題になった途端柄にもなく食い気味で話を進めるハゼガーに若干戸惑いつつも、腕組みをしながらもソウシは答える。

 

「一応見たことはあるんだが、正直話の流れがよく理解できなかったな」

「ははっ、まぁ非常に入り組んだストーリーだからね。所謂トミノ節も色濃いし」

「アンタ、自分の好きな作品を良く言われてないのになんか嬉しそうだな」

「このコロシアムに来てからというもの、まともにガンダム作品のことを話題にする機会がなかったんだ。誰も彼も報酬とガンプラの強さばかり気にしていて、元になった作品のことなんて眼中に無かったからね。だから、つい嬉しくなってしまったよ」

 

 ハゼガーの言葉で、やはりあのコロシアムに集う者たちの大多数は、ガンプラもガンダム作品も愛する者ではないということがよくわかった。

 

「それを聞いて安心した」

「えっ?」

「ガンプラビルダーとしての誇りも無いくせに、上位ランカーにのさばっているあの連中を叩き潰すのに躊躇いは必要なさそうだからな」

 

 ソウシの目元に影がかかり、口元を歪めて笑みを浮かべると、ハゼガーは若干慄いた様子で話題を逸らす。

 

「そ、そうだ。もし良ければなんだが、全てが終わって落ち着いたら、私の解説入りでGレコの鑑賞会をやらないか?」

「なんだそれ?」

「もしこのまま君が勝ち進んで、私も生活を落ち着かせたらそういう場を設けたいと思っているんだ。も、もちろん、それがいつになるのかはわからないし、君さえよければなんだが……」

 

 正直な話、面倒臭いともソウシは思った。だが、こんな生活を強いられ、満足にガンダム作品のことも語れず、一番好きな映像作品すら見ることのできない環境に長年置かれたこのハゼガーという男の境遇を考えると、それぐらいは付き合ってあげてもいいんじゃないかという、一種の同情のような感情が湧き上がってきた。

 なにしろ自分は、この男にとってようやく現れた、ガンダム作品が語れる本物のガンプラビルダーなのだから。

 

「……まぁ、考えといてやるよ」

「そ、そうかい? 楽しみにしているよ」

 

 歯切れの悪い返事しかできなかったが、ハゼガーはその答えで十分と言わんばかりに満足みな笑みを浮かべた。

 

「そろそろ食材の買い出しに行ってくる」

 

 陽が傾き始めた頃合いを見計らい、ソウシは現在の作業を一旦中断し、席を立つ。ここのところ、食材の買い出しと調理は専らソウシが専門になっている。

 

「あ、うん。なんだか悪いね……いつもいつも君のお金で」

「勘違いするな、俺が食う分のついでで買ってくるだけだ、あんたが気にかけるようなことじゃない。それに、一人分よりも複数人分の食事を作る方が慣れているものでな……」

 

 そう言い残し、ソウシはパーカーを羽織るとハゼガーの小屋を後にした。後に残されたハゼガーは、そんな言葉でも自分のことを気にかけているソウシのことが嬉しく思い、笑みを浮かべてソウシを見送る。付かず離れずの2人の距離感は、久しく人との生活を共にしなかったハゼガーにとっては新鮮で、どこか心地よくもあった

 ソウシは公園から出たのを確認すると、小屋の中に戻ろうとした、その時だった。

 唐突に公園内にけたたましい呼び鈴の音が響き渡った。音の元は、公衆トイレの横に設置された公衆電話からだった。

 通常、こういった公園の公衆電話には悪用防止のため電話番号が一般的には公開されていないため、着信があることはめったにない。

 そう、“一般的”には。

 つまり、今この公衆電話にかけている人物は、明らかにこの公園に住んでいるハゼガーを対象として電話をかけてきた特定の人物ということになる。

 ハゼガーは嫌な予感を感じつつ、一歩ずつ電話に近付く。

 そして、受話器を手に取った。

 

「もしもし……?」

 

………………

…………

……

 

「ただいま。……どうかしたのか?」

 

 ソウシが戻ると、ハゼガーは台に肘をついて呆けた表情で頬杖をついたまま虚空を見つめている。まるでなにか大きなショックを受けているようにも見受けられた。が、ソウシが言葉をかけるとビクッと体を震わせ、「なんでもないよ」と首を振って取り繕う。そしてぶっきらぼうに質問を投げかけた。

 

「ねぇ……ヴィシャスくん。君の試合の日って明後日の夜……だったよね?」

「そうだけど、それがどうかしたのか?」

「い、いや……別になんでもないんだ。なんでも……」

「おっさん、やっぱり何かあったんじゃ……―」

「ヴィシャス君」

 

 明らかに様子がおかしいので、何かあったのかと問いただそうとしたその時、自分の言葉を遮るハゼガーの鋭い声色。いつもはのらりくらりとした口調なのに対し、その鋭い言霊に自分の名を呼ばれ、思わずソウシは口を噤んでしまう。

 

「武運を、祈るよ」

「あ、あぁ……」

 

 それっきり、ハゼガーの鋭い声を聞くことはなかった……。

 

………………

…………

……

 

 それから2日後、昇格試合の日がやってきた。午前中から準備を進めていたソウシは、いよいよその時を間近に控え、試合開始まであと数十分。ガンプラの最終調整を終え、後は瞳を閉じて小屋の中央に座り込み、瞑想を行う。雑念を取り払い、意識をこの後行われるバトルのことだけを考えている。

 自らを“ヴィシャス”と呼称する以上、どのようにその名に相応しく相手を威圧するのかもこのガンプラバトルリングでは重要な戦法の一つだ。そういったアウトローな戦い方も、ソウシがリアルバトルを通じて学んだことの一つだ。

 更に、一ガンプラファイターとして、相手がどのようなガンプラで来るのか、どのような戦法でくるのか、起こり得るありとあらゆる戦術を頭の中で繰り返しイメージし、それに対抗する手段を画策する。そうして正攻法・邪道双方の戦い方に考えを巡らせている間だけ、自分はあの悪夢を見ずに済んでいるとさえ感じていた。

 ちなみに、今日は朝からハゼガーは出かけていてこの小屋には今自分しかいない。ホームレスにどのような用事があるのかと疑問に思ったが、どうせ雑誌や空き缶を拾ってお金に換えているのだろうと思い、深くは考えず、バトルのことだけを考えていた。

 

「…………時間か」

 

 瞳を開くと、時刻は18時30分を過ぎたところ。無人の公園に傾いた陽の夕焼けが差し込み、カラスたちが鳴き声をあげて彼方へと飛び去って行く。その頃合いを見計らい、ソウシはゆっくりと立ち上がる。

 私服を脱ぎ、黒づくめの服装に身を包む。指ぬきグローブを手に嵌め、締め付けるほどの強さで固定すると、数回拳を握りしめる。固く握る度に、グローブはギチギチと音を立てて手を締め付ける。次に、壁にかけた黒いロングコートを手に取る。翼を広げた蝙蝠が覆いかぶさるかのように、ロングコートを羽織ると、作業テーブルの上に立つガンプラをケースの中に入れる。更に、チタン製マスクを懐に入れ、ウェスタンブーツを履く。

 今この瞬間、キモト・ソウシはその名を闇に隠し、黒きガンプラビルダー、“ヴィシャス”へとその身を変貌させた。

 

………………

…………

……

 

「遅せぇなぁ、あのガキ。もうすぐ試合開始の時刻だってのに」

 

 ミッドナイトコロシアム闘技場、いつものように多くの観客達で満たされたこの会場には、それらに加えて上位ルークランクのゼイブの姿があった。だが彼は試合開始時間が刻一刻と迫っているにも関わらず、一向に姿を現さないヴィシャスに対し苛ついている様子だった。

 

「ヘヘッ、きっと怖気づいて逃げたんですよ。奴も所詮はその程度だったってことですぜ」

 

 その傍らには、薄ら笑いを浮かべたナイトランクのザンバがいた。

 

(クククッ……来るわけねぇだろ。あのガキはもうとっくにくたばっているからな)

 

 笑みを浮かべたまま、ザンバは先日自分が仕掛けた方法でソウシを始末したことを思い出し、内心でほくそ笑みながら余裕の表情を浮かべていた。試合開始の時刻までにソウシがこの場に現れなければ、必然ザンバの不戦勝が確定する。そうなればザンバは戦わずして己の地位を守り抜くことができる。

 ザンバは更に、自分より目上のランカーであるゼイブに確かな言質をとるための拍車をかける。

 

「で、どうします? もしもこのままあのガキがこの来なかったら、この勝負は俺の不戦勝ってことで」

「あぁ、その時は……―」

 

 ゼイブが質問に返答しようとした、その時だった。

 唐突に天井の照明が消え、会場内が暗闇で満たされる。ゼイブ達はもちろんのこと、会場内に集まった観客達も突然のことにざわつき始める。

 暗闇が支配する最中、突如一つのスポットライトが明かりを灯す。その光の道の先には選手が入場する通用口の扉を照らしている。一拍置き、扉が開かれる。

 

~♪ ~~♪

 

 開け放たれた扉の奥より奏でられるのは口笛の音色。どこか物悲しさを感じるそのメロディに、先ほどまでざわついていた客たち水を打ったようにしんと静まり返る。

 徐々にその音色は会場内に近付いていき、それと共に足音が……ガチャガチャと金属が擦れ合う音も聞こえてくる。それはウェスタンブーツの踵に取り付けられている歯車(スパー)が奏でる音だった。

 そして姿を見せる黒づくめのマスク男。左手でジュラルミンケースを握り、尚も口笛を奏でながら一歩ずつ歩みながら会場に入る。

 ゼイブ達の目の前で歩みを止めると、同時に口笛の音色もピリオドを打ち、ヴィシャスはしかと眼前の相手を見据える。

 

「今宵の獲物は月に映える」

「てめェ、何を……―!」

 

 ザンバが凄みを利かせるが、それを意に介さずヴィシャスは右手を高く掲げ、そしてスッと息を吸い込むと声高らかに宣言する。

 

「闇を呼び、影を集いし、黒鋼(くろがね)(ころも)纏いて、猛きこと竜の如し。強きこと覇者の如し。敵意を抱いて我が名を刻め! 俺は黒きガンプラビルダー、ヴィシャス!」

 

 掲げた右手を名乗りと共に目の前に広げ、掌を固く握る。全てを掌握することを象徴するかのようなその仕草に、対戦相手であるザンバは慄く様子を見せる。

 

「こっ、コケ脅しを! そもそもてめェ、なんでここに……!」

「俺は先日取り付けた約束通りに、昇格試合をしにここに来た。それだけだが、それがどうかしたのか?」

「それだけって、だっててめェは……―!」

 

 ザンバがそこまで言いかけて、バツが悪そうに口を噤む。その様子をマスクの奥からヴィシャスは鋭いまなざしで観察する。固く食いしばった歯、額に滲む汗、下に向いた視線。間違いない、このザンバという男が自分を始末するように配下の者に命令したランカーだと確信した。

 

(まぁそんなところだろうと思った。甘い汁啜っていたいのに、そこに割って入ろうとする俺のことはたいそう目障りだろうからな)

 

 ヴィシャスがマスクの奥でほくそ笑む。と同時に、確信した。この男は確実に自分のことを恐れている。それもバトル外でプレイヤーキルを行う人間だとするならば、この男自身がそれを一番わかっている筈だ。

 自分では、ヴィシャスには勝てないと。

 

(今夜の勝負は貰ったな)

 

 ヴィシャスが勝利を確信した時、会場内に聞き慣れたアナウンスが響き渡った。

 

「ハァ……ハァ……み、皆さんお待ちかねぇ! わたくし、ミッドナイトコロシアム専属実況者! 愛と解説の伝道師、マイクマン・モリクボでっっっっっす!!」

 

 なぜかいつもよりも会場入りが遅く、そして息切れをしているマイクマン・モリクボ。その様子を会場内の客が気付き、「なんか疲れてねぇかー?」と言葉を投げかける。

 

「あっはい、実はわたくしヴィシャス選手のために登場のお手伝いをさせていただいていたのです。会場内の電源を落とした後、向かいのバルコニーまで駆け上がってスポットライトを当てていたもので……少々出遅れましたが今夜も欠かさず実況させてもらいますよーっ!」

 

 笑い交じりに「なんだそりゃー!」と、客の誰かがツッコミを入れ、モリクボが一息ついたところでゼイブが動いた。

 

「ハッハッハッ、試合の前に粋な登場演出で場を沸かせるとは、小僧ここの盛り上げ方がわかってきたみてぇじゃねぇか。よし、驚かせてもらった礼だ。ならば、俺様からもお前さんにサプライズを用意してやったぜ」

 

 その言葉の後、ゼイブはパチンと指を鳴らす。ヴィシャスが入ってきた通用口とは対となる、向かい合った対戦相手用の通用口が開け放たれる。入ってきたのは、いかにも人相の悪そうな男たちが10人。それぞれ会場内に入ると、ゼイブとザンバの前にまるで壁を作るかのように横一直線に整列する。男たちはそれぞれ対格差、年齢、面持ちはまちまちだが、共通していることをヴィシャスは感じ取った。全員が全員、敵意をむき出しにしている。もちろん、ヴィシャスに向けて。

 

「なんの真似だ?」

「ここに集まったのは我が東側の若手ポーンランクファイター達だ。小僧、上位ランカーに挑戦する前にお前さんにはこいつらの相手をしてもらうぜ」

「……おかしいな、俺の記憶違いか? 事前にかわした約束と違うようなんだが」

「おい勘違いするなよ小僧。なんで東側最上位ファイターであるこの俺様が、新参者のポーンランクファイターと律儀に約束なんか交わさなくちゃいけないんだ?」

 

 それを聞き、マスクの奥で顔をしかめるヴィシャス。対照的に、10人のポーンランクファイター達は薄ら笑いを浮かべる。

 

「重々承知だろうが、お前さんが勝ちすぎているせいでこいつらまで番が回ってこない。戦わなければファイトマネーは得られない。だからな、お前さんは目障りなんだよ」

 

 このミッドナイトコロシアムにおけるバトルは、同ランクの団体戦方式が基本。現在連勝が続いているヴィシャスが負けなければ、次のポーンランクにまでその順番は回ってこない。その間、当然他のポーンランクファイター達にはファイトマネーは入ってこない。飯の食い上げといったところだ。となれば、その面子がヴィシャスのことを目の仇にするのは当然のことだろう。

 

「ちなみに、これはオーナーも了承してのことだぜ。まぁ今日は用事があるとかで試合に顔は出せないそうだが、戻ってきた頃にはお前さんは使い捨てられた雑巾みてーにボロボロになっているだろうよ!」

 

 その言葉に集まったポーンランクファイター達とザンバは大笑いする。そのただ中、ヴィシャス自身も肩を震わせて哂いだす。

 

「このガキ、なに笑ってやがる?」

「ヘヘッ、こいつこの大人数を前にしてついにおかしくなりやがったか?」

 

 ポーンランクの2人が嘲笑交じりで言葉を投げかける。だがヴィシャスは、次の瞬間には笑みを消し去り、マスクの奥から鋭い視線を目の前の10人に送る。そして一つの提案を掲げる。

 

「なぁ、お前たちに一つ聞きたい。俺は今連戦連勝中だ。当然、ファイトマネーもそれなりに稼いでいる」

 

「あぁ、俺達が得るはずだった金をな!」

「それが一体どうした」

 

 別のポーンランクの2人の後に、ヴィシャスは更に言葉を紡ぐ。

 

「じゃあもし、俺が今この場で、試合で得られるファイトマネー以上の額をお前たちに提供すれば、素直に俺に勝ちを譲ってくれるか?」

 

「なっ……!?」

 

 その提案に思わず慄いたのはザンバだった。確かに、ここに集まった10人のポーンランクファイターは元をただせばただの金目当て。もしここで今、ヴィシャスからの提案を受け入れればこの10人はあっさりと退き、自分の戦う番がまわってくるだろう。

 

「プッ……ハハハハハァ!! このガキ日和りやがったぜ!」

「だがまぁ確かに、その提案は悪くないかもしれないぜ」

「だなぁ、よし小僧。考えてやっても……―」

 

「バカ! 騙されるなテメェら! どう考えたって10連勝しただけでてめぇら全員に払える額なんか持ち合わせているわけねぇじゃねぇか!」

 

 必死な声色でザンバが言葉を投げかける。それを聞き、確かにといった表情になる10人。その様子を見てヴィシャスはまた哂いだす。

 

「小僧! てめぇ俺達を騙しやがっ……―」

「クククッ……確信したよ」

 

 言葉を遮るように、ヴィシャスの笑みと言葉が被さる。そして真一文字に結んだ口元を緩ませ、白い歯を覗かせて笑みをつくり、喉の奥より地の底から響くような低い声色で目の前の10人に告げる。

 

「貴様らにガンプラファイターとしての誇りは無い! これで安心してぶっ潰せるってわけだ……クククッ」

 

 その不気味な笑みと言葉に、10人のポーンランクファイター達は思わず言葉を失い、慄く。だがその静寂を破くかのように、ゼイブが一歩前へ出て声を張り上げる。

 

「よし、お喋りはもうそのくらいでいいだろう。今夜は長い夜になるぞ。さて小僧、お前の最初の相手は……―」

「一人二人は面倒だ」

 

 その言葉に被せるように、またもヴィシャスは口を開く。

 

「全員纏めてかかってこい」

 

 その一言を聞き、一気に沸き立つ会場内とマイクマン・モリクボ。憤る10人のポーンランクファイター達を余所に、ゼイブはヴィシャスの顔をじっと見つめると、フッと笑みを零して踵を返す。ヴィシャスもまたコートを翻すと、十数機のGポッドが設置されているリングに上がり、そのうちの一つに入っていった。

 

『さぁ~~~大変なことになりました! こんなことはまさに前代未聞! 戦力差は実に10対1の超ハンデ戦! もしも仮にヴィシャス選手がこれを勝ち抜くことができたら上位ランカーに挑戦する権利を得ます!』

 

 Gポッド内でもビリビリと響くマイクマン・モリクボの実況。構わず、ヴィシャスは冷静にスキャナーにガンプラをセットし、Gポッド内で出撃の操作を進めていく。

 同陣営ファイターとはいえ、所詮は今まで自分が潰して来たポーンランクと同じ……つまりは雑魚。束になってかかってきたとしても、今の自分ならば容易に蹴散らすことができる。ましてや相手がガンプラには興味を示さず、ガンプラバトルをただの効率よい金儲けにしか思っていないような連中ならば猶更だ。

 

「……おっさんの言っていたことがわかる気がするな」

 

 ガンプラバトルという共通項があるにも関わらず、選手たちの興味の元は金と権力……。確かにここでは自分やハゼガーのような存在は希少だというのが痛感できた。

 だからこそ負けるわけにはいかない。あのような金と権力の亡者共がそれら欲しさにガンプラバトルを行うのが我慢できなかった。自分のように力を求める者こそが、その頂点に君臨するのが相応しい。ヴィシャスはそう信じて疑わなかった。

 

『さて、というわけで今宵も始まりました! 夢と希望の祭典、ミッドナイトコロシアム! 今夜の勝負内容はズバリ……“サンダーボルトバトルロイヤル”だああああああああっ!!』

 

 サンダーボルトの名に負けず劣らず、マイクマン・モリクボの実況がGポッドと会場内に稲妻の如くビリビリと響き渡る。それを聞き、一瞬間をおいて湧き上がる歓声。

 

「サンダーボルト? ってことはサンダーボルト宙域がステージか!?」

「あのステージって確か超難易度高いんだろ?」

「バトルロイヤルなんて見るの初めてだぜ!」

 

 そんな声が客席の至る所から湧いて出た。

 

『皆さんお気づきの通り、今回のバトルステージは“機動戦士ガンダムサンダーボルト”の舞台となったサンダーボルト宙域の再現ステージとなっております! そのあまりの高難易度故、普段の試合では滅多にセレクトされないステージのため、少し私の方から説明させていただきます!』

 

 そう言うや否や、会場スタッフである黒服からステージ内の特徴を記したカンニングペーパーがマイクマン・モリクボに手渡された。モリクボはそれを明確に、且ついつものテンションを崩さぬまま自身のアレンジも加え、解説を行う。

 

『えーっと……サンダーボルト宙域は多数の帯電したデブリが浮遊したステージです! 宙域ではそれによって発生した稲妻がその名の如く轟いており、油断すれば即ビリビリ! 雷が落ちてダメージを受けることになります!』

 

 天井から吊り下げられている中央のモニターには、件のサンダーボルト宙域を模したステージのデモ映像が流される。かつてサイド4コロニー『ムーア』があったこの暗礁宙域には、今や小さなものでは自動車、大きなものでは小島ほどの大きさもある都市ごと分離したコロニーの一部等、その残骸がデブリとなって宇宙空間を漂っており、それらが多数の障害物となって混在している。

 

『また、帯電した雷だけでなく、もちろんこれらのデブリも進行を妨げる大きな障害となっております!』

 

 次にモニターには赤と青で色分けされた点が、ステージの端とほぼ中央の廃コロニー周辺に点在する。赤い印は10個記され、それらはほぼ全て中央のコロニー周辺にいる。一方、青い印は一つだけ。ステージの端にいる。

 この赤い印が10人のポーンランクファイター達、青い印がヴィシャスだった。

 

『今回は1vs10の変則バトルロイヤルルール! ヴィシャス選手はこのサンダーボルト宙域に身を隠す10人のポーンランクファイター達と戦い、全滅かもしくはザンバ選手の待つ廃コロニー内に進入できれば勝利! 改めてランクアップの資格を得て、ナイトランクのザンバ選手に挑むことができます! ちなみに、ヴィシャス選手には多額の懸賞金が掛けられているため10人のポーンランクファイター達も必死で食らいついてくることでしょう!』

 

 それを聞き観客達には動揺が広がる。ざわざわとした会話の中には、「全滅させてもナイトランクになれるわけじゃないのか」「10機相手にして消耗した後にナイトランク戦とか、ザンバの奴汚くね?」と、このバトル自体に不満を示す客たちも少なくはなかった。

 しかし、圧倒的不利な条件から勝ち上がる様を見たいというヴィシャスのファン層、単にヴィシャスが気に入らないから徹底的に叩き潰してしまえというアンチ勢、滅多にないサンダーボルト宙域のステージにバトルロイヤルルールのバトルを早く見たいというバトルジャンキー気質な客といった、比較的このルールのバトルに肯定的な姿勢を示している客たちの方が圧倒的に多いため、そういった不満の声はあっという間に掻き消されることとなった。

 どちらにしても、始まってしまった以上この試合ももちろん客たちにとってはギャンブルの対象となっている。10人のポーンランクファイターが勝つか、単身のヴィシャスが勝つか、賭けの比率は若干10人ポーンランクに傾いている。

 

『さて、ファイター全員の発進スタンバイオーケーとの告知を受けました! それでは皆さん、いってみましょう! ガンプラバトルぅぅぅぅぅ!! レディィィィィィ……ゴオオオオオオォォォォォ!!!!』

 

 長々と続いたマイクマン・モリクボのアナウンスの後、「カーンッ!」と轟く金属の打撃音。最早聞き飽きた小うるさいアナウンスとゴングの後に、ヴィシャスもまた最早馴染みとなった出撃時のセリフを唱える。

 

「俺は、俺の力を示す! ヴィシャス……レヴィーヤ、出撃()るぞ!」

 

 発艦シグナルが瞬いた後、カタパルトに固定された黒き機体は、スパークを散らせながら稲光轟く深緑の宇宙(そら)に舞い上がっていった。

 

………………

…………

……

 

 宙域中央に近付くにつれ、デブリの量が増えてくる。レヴィーヤは防御策としてABC(アンチビームコーティング)マントを羽織っているため、それが保護カバーの役割を果たし、機体の弱点となる関節部に細かいデブリが入り込まないように保護してくれている。とはいえ、ここから先は衝突すれば致命傷を負いかねないサイズのデブリが猛スピードで迫って来る。真空の宇宙空間では、一度加速した物体は決して減速することは無い。小型のデブリであっても油断すればABCマントに穴が空くか、最悪機体にダメージを負うことになる。

 それを危惧し、ヴィシャスはレヴィーヤの両肩に備わっているシールドを、フレキシブルアームを介して前方に展開する。これで機体の前面を防御できる。ちょうど、原作のサンダーボルトにおいても2枚のシールドを備えた連邦軍機が同じようにしてこの宙域を猛進していた。

 

「そろそろ戦闘エリアか」

 

 デブリに当たらぬよう、不規則な軌道を取りつつ、シールドの表面に響く障害物を弾く金属の衝突音を聞きながら、ヴィシャスは周囲を警戒する。

 突如、暗い宇宙の彼方で光が瞬く。一瞬、敵からの攻撃かと思い視線を向けるが、瞬き方がビーム等のそれではなかった。「ゴロゴロ」という雷鳴が、Gポッド内に電子変換された音響となって響き渡る。帯電した電気が稲妻となって宇宙空間を迸ったのだ。

 このステージはミノフスキー粒子が散布されているという設定なので、レーダーの類は意味を成さない。既に周囲にはモビルスーツの身の丈以上もあるデブリが散乱しているため、いつどこから攻撃を仕掛けられてもおかしくない状況だ。

 

(……静かすぎる)

 

 とっくに戦闘エリアに入っているのに、多くいるはずの敵は1機も姿を現さない。デブリの数ばかりが増えていき、徐々に視界を狭めていく。すっかりサンダーボルト宙域特有の暗礁宙域に入り、デブリに接触しないようスピードを落とすことを余儀なくされた。

 スピードを緩めた瞬間、突如として静寂が突き破られた。

 前方で光が瞬いた。また雷かと思ったが、明らかに違う。その証拠に、Gポッド内部ではけたたましいアラート音が響き渡る。熱源感知のアラートだ。光はあっという間に渦巻く濁流の如くレヴィーヤに押し寄せる。

 

「……っ!」

 

 歯を食いしばり、レバーを引き上げて回避行動をとる。直後、先ほどまで自分がいた場所が赤い光の奔流に飲み込まれ、軌道上にあったデブリは全て消滅する。光は徐々に収束していき、完全に途切れるとレヴィーヤは最大望遠でこのビームを撃った方向を見据える。

 

「いきなりご挨拶だな……この威力はメガソニック砲か」

 

 コロニーから分離し、小島ほどのサイズとなった大型デブリ。そこには、赤い機体色が特徴の異様な形状のガンダム……“機動新世紀ガンダムX”に登場するガンダムヴァサーゴが佇んでいた。身の丈以上に伸びた両手を崩落した建物の壁に固定させ、悪魔が大口を開けるが如くに開いた胸部の砲門からは、大出力のビーム兵器……“メガソニック砲”の砲門を覗かせている。その砲門が赤色化し、冷却用の蒸気が噴き出ていることから、ヴィシャスの推測通り大出力のビームを発射した直後のようだ。

 さらに、デブリの陰から姿を現したのは巨大な鋏が特徴のヴァサーゴの兄弟機、ガンダムアシュタロン。そして“鉄血のオルフェンズ 月鋼”に登場する赤い機体色のガンダムフレーム、ガンダムアスタロトオリジン。その2機がヴァサーゴの両隣につく。3機のガンダムは緑色の双眸を光らせ、彼方にいるレヴィーヤを睨みつけている。

 伏兵はそれだけではない。レヴィーヤの進行方向右側のデブリ帯からはGN-XⅣ、空間戦仕様のペイルライダー、イフリート改が。

 左側からはドラド、ジムキャノンⅡ、サーペントが姿を現す。

 

【挿絵表示】

 

「随分賑やかになってきたな」

 

 レヴィーヤのモノアイが左右に振り、それぞれの機体を把握すると、ヴィシャスは笑みを浮かべて呟く。ついに戦闘の口火が切られた。直後、レヴィーヤに向けて放たれる数多の弾丸、ビーム、ミサイルの雨あられ。

 だが、それらが放たれた時には既にレヴィーヤは回避行動をとっていた。機体の全身に備えられたバーニアを活かし、攻撃を往なしながら青白い光の尾を引いてデブリ帯の宇宙(そら)を縦横無尽に、稲妻の軌道のような回避で、攻撃を(ことごと)く避けながら確実に敵機に接近してくる。一歩間違えればデブリと正面衝突する、だがそんなスリルが彼の闘争心をより強く掻き立てていた。

 

「なんだあのスピードは!? ウスノロだったんじゃなかったのか!?」

 

 ドラドのファイターがその機動性に思わず声を荒げる。レヴィーヤが鈍重なのは、あくまで地上戦に限ってのこと。空間戦闘ならば、機体の重さは問題ではない。むしろ、質量がある分一度加速すれば速度は際限なく上がって行く。

 

「いいから攻め続けろ! あの腹のビーム砲を撃たせるな!」

 

 サーペントがダブルマシンガンとビームキャノンを撃ち続けながら、それを操るファイターが他のポーンランクに注意喚起を促す。レヴィーヤの胸部ドラゴンヘッド内に格納された大出力のビーム砲、“ヴァンダリオン・ブレイザー”は強大な破壊力を有する。このファイターはその威力を事前に目の当たりにしていたため、それが脅威となることを知らせたのだ。

 

「バカか、貴様ら程度に使うわけがないだろう」

 

 それに返答するような形で、ヴィシャスががさついた声でボソリと呟く。誰かに通達する形ではなく、あくまで使うことなく殲滅してみせるという、一種の自己への戒めとしての言葉だった。それを実行してみせるが如く、レヴィーヤは速度を落とさぬまま右手のビームマシンガンで応戦する。周囲にバラ撒かれたれた光弾は正確に敵ガンプラ達を捉える。だが、身の丈以上あるサイズのデブリをそれぞれ隠れ蓑にしているため、敵機は咄嗟にそこに身を隠し、攻撃が届かない。

 

「ハッ! このデブリ帯で攻撃が当たるかよ!」

「10対1で勝てると思ってんのかぁ!? 大口叩いたこと後悔させてやらぁ!」

 

 イフリート改が両腕のグレネードランチャーを放ち、ペイルライダーがハイパービームライフルから閃光を放つ。

 

「そのまま追い立てろ! 俺が仕留めてやる!」

「てめぇ抜け駆けするつもりか!? 賞金は俺のモンだぁ!」

 

 他の機体が尚も攻撃を続ける最中、ドラドが先陣を切ってレヴィーヤに迫る。更にヴィシャスにかけられた懸賞金欲しさ故に、本来ならば後方支援が主な役割の機体である筈のジムキャノンⅡもその後に続いて前線に出る。

 

「もらったぁ!」

 

 右掌のビームバルカンを斉射しながら接近し、掌から発振したビームサーベルを大きく振りかぶるドラド。だがABCマントを纏っているレヴィーヤにはビームは通用しない。しかしレヴィーヤは、迫るビームサーベルの軌道上にマシンガンの側面が向くようにして、前方に突き出す。

 ABCマントはビームサーベルの攻撃まで無力化することはできない。ということは、マシンガンを盾にしてビームサーベルを防ぐ……という咄嗟の行動なのだろうと、ドラドのファイターは悟った。

 

「そんなモンで防げるかよッ!」

 

 ドラドのファイターの言葉を聞いた瞬間、ヴィシャスの口角が緩んだ。

 そう、その実は異なっていた。敵の視点をビームマシンガンに注目させることで、ABCマントの下に隠している左腕の行動を悟られないようにするための、ヴィシャスの演出だった。

 レヴィーヤはマントの下で、左手のビームマシンガンをリアスカートにマウントすると、ガントレットを可動させる。

 

「括った高がそうさせるッ! アームガード展開、スタンショットナックルモード!」

 

 言葉と共に左の拳に電撃が溜められる。直後、漆黒のマントの隙間から炎が漏れ、肘に備えたバーニアが起動し、その勢いによってマントの下から飛び出た拳が眼前に迫ったドラドの腹部を思いっきり殴り抜ける。更に殴りつけたその瞬間、ガントレット先端部に溜められた電撃が一気に開放され、ドラドの全身に稲妻が迸り、殴り飛ばされた。ファイターは悲鳴を上げる間もなく意識を飛ばされ、機体のコントロールを失ったドラドは頭部のスリットバイザーからセンサーの光が消え、そのまま後方から迫るジムキャノンⅡに激突する。

 

「邪魔だっ! このっ……ひっ!?」

 

 ジムキャノンⅡのファイターが声を上げる。眼前のドラドに一瞬視界を遮られたが、その直後に姿を見せたのは黒い悪鬼……レヴィーヤの怪しく輝く胸部のモノアイだった。

 

「雑魚が! ウロチョロとぉ!」

 

 直後、レヴィーヤは爪先のハイパービームソードが起動。爪先蹴りをする形で折り重なったドラドとジムキャノンⅡの足元から、その長く伸びた光刃を突き立てる。

 

「「ぎゃひゃアガアアアアアアアアアアアアっ!?」」

 

 2人分の悲鳴が重なり、耳障りな不協和音を奏でる。ヴィシャスは聞くに堪えないその騒音を終わらせるために、更に踵部のブースターを起動させる。

 

「金に目が眩んだ小バエ共が……相手をしてやるだけありがたいと思えッ!!」

 

 加速したハイパービームソードは2機を股下から瞬時に頭頂部まで切り裂き、ドラドとジムキャノンⅡは左右に真っ二つにされる。

 

【挿絵表示】

 

 一瞬の間の後、2機とも爆発を起こし、2体のガンプラの残骸はこのサンダーボルト宙域のデブリの一部となった。

 

『なぁんと! たった一撃で2機を葬ったー!? ワンショットツーキル! ヴィシャス選手、今宵も絶好調だーっ!』

 

 マイクマン・モリクボの実況を聞き流しつつ、ヴィシャスは敵の行動を読み取る。

 

(思った通りだ、こいつらはチームワークで戦っているわけじゃない。個人が成り上りたいがために、他者を利用しているに過ぎない)

 

 キャノンタイプのジムキャノンⅡが、功を焦って前線に出てきたのがなによりの証拠だ。そうして思考を巡らせながら、次の獲物を選定する。ブレイズウィザードを流用した背部のバーニアを活かし、一気にデブリ帯を駆け抜ける。攻撃目標は、僚機を失い孤立しているサーペントだ。

 

「く……来んじゃねええええええっ!!」

 

 近付かせまいとサーペントがダブルガトリングガンとビームキャノンを連射する。しかし出鱈目な目測で飛び交う弾など、ヴィシャスにとって揺らめく白刃を交わすよりも容易いことだった。その慌てぶりは、まるでガンプラから相手の顔が透かして見えるようだった。ヴィシャスはその滑稽さを、口角を上げて嗤いつつ、レヴィーヤの両肩に備えられているシールドを正面に向け、その銃撃の雨から自機を守りつつ、バーニア全開でサーペントに急速接近する。

 直後、Gポッド内に響き渡る衝撃と音。大型デブリに衝突したのだろうか? いいや、前方に向けたシールドがサーペントを弾き飛ばしたのだ。シールドバッシュ、真空の宇宙で加速した重量級のレヴィーヤの体当たりは、さながら大砲から撃ち出された鉄球だ。衝突され、弾かれたサーペントは大型デブリに突っ込み、瓦礫を崩落させながら背中から激しく倒れ込む。

 

「バラバラで動いているなら、個々を相手にしているのと同義! 何匹束になろうと……―」

 

 土埃が舞う中、サーペントが緑色のカメラアイを光らせながら上体を軋ませ、立ち上がろうとする。しかし、それを許すほどヴィシャスは甘くはない。体制を立て直される前に、レヴィーヤが足底を倒れ込むサーペントに向けて踏みつけようと落下してくる。更に追い打ちをかけるように爪先のクローが可動し、先端部が真下に向くと閃光が伸び、ハイパービームソードが真下に伸びた。

 

「俺の敵ではないッ!!」

 

 サーペントが危険を察知し、起き上がろうとした瞬間、轟くヴィシャスの怒声。と同時に煌く赤い光が瞬いたのをサーペントのファイターは感じた。気付いた時にはもう遅い。目を見開いた刹那、叫び声をあげる間もなく彼の意識は途切れた。

 

「闇は飢えているぞ……次の相手はどいつだ?」

 

 サーペントを踏みつけながらその胸部にハイパービームソードを深々と突き刺し、レヴィーヤの胸部モノアイが妖しく光る。ペロッ……と、ヴィシャスは口元を歪ませて舌なめずりし、次の獲物を選定する。




闇堕ちソウシは書いてて楽しいものがあります。
やめて!厨二とかイキりとか言わないで!

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