――都市伝説。
まことしやかに語られる、噂のようなもの。
実在するか否か、それを証明する手立ては無きに等しく。
しかしこの街……『古枝市』には実在するのだ。人々を襲う、邪悪な怪異が。
――そして同時に、この世界にも存在するのだ。人々を影から守る、我らがヒーローが。
その正体を異形の仮面の下に隠し、常識外れのモンスターマシンに跨り、日々、人間の自由を奪おうとする者達と戦うその存在を、人はこう呼んだ。『仮面ライダー』と。
――都市伝説が今も息づく怪異と噂の街、古枝市。
中心地にある広大な森の存在から、「一本の枝から始まった一大都市」という噂から生まれたともされるこの街では、噂が尽きる事はない。
そこには、かつて実在していたとされる『都市伝説』の怪物達も例外ではない。
口裂け女。メリーさん。人面犬。テケテケ。赤マント。隙間女。etc...
20世紀末に流行し、そして何処へともなく消えていった怪異達は、今もなお、この街で人々を影ながら恐怖させている。
……その姿と形、そして根源を変えて。
「ワタシ……キレイ……きれい……綺麗ヨねぇェェ!!!」
美しさに狂い、自分以外の『美しいもの』を切り刻み、醜く変えんとする嫉妬の怪人、口裂け女。
『私、メリー……ねぇ……今、何処……? 寂しい、寂しいさみしいサミシイサミシイ、会いたいアイタイ貴方にあいたいィィいいい!!!』
孤独を恐れ、孤独に震え、電話を伝って何処までも相手を追い、そして連れ去る事で自らの孤独を満たす姿なき者、メリーさん。
「Gruuuuu……GaaaaAAA嗚呼アア!!!!」
ただ憎しみのままに暴れ、人の面をしながら人も犬も喰らう野性の怪物、人面犬。
時を経るにつれ歪められた噂は、都市伝説を変えた。そして都市伝説は、自らを生み出した者達に、復讐の牙を剥く。
恐怖が渦巻く街だと誰もが知る。だが、この街を知った誰もが、如何なる因果かそれを知りながらこの街にやってくる。
「教えてください! この街の事! この街の都市伝説! そして……『パッチワークの少女』について!」
――『パッチワークの少女』と呼ばれる最新の都市伝説を追い、街の外からやって来た女、
「噂の出どころが掴めたなら、後は正体を拝むだけさ。……さて、行こうか。三守クン」
――普段は呑気でのほほんとした緩い男ながら、事件とあらばその優れた才能の片鱗を見せる青年探偵、
「嬢ちゃん、悪いこた言わねぇ。『いる理由』もねぇのに、この街に居座んのはオススメしねぇぜ。なんせ、人死にが当たり前なんだからな」
――外から来た者に街の恐怖を伝えながらも、決して街から離れようとはしない中年刑事、堂本。
「面白い街だろう? この街じゃ、市長も、政治家も、権力者も、警察も、マスコミも、はては世間の目という数の暴力ですらも、外のような力は持っていない。――此処ではね、『噂』が一番の力を持ってるんだよ」
――街の持つ妖しげな魅力に取り憑かれ、30年に渡って街を調べ続けている新聞記者、細田。
「俺ぁ、スピードでケリつけにゃならねぇんだ……それが、『約束』だからな」
――『約束』を果たす為に、老いてなお『ターボばあちゃん』と毎晩デッドヒートを繰り広げるバイク屋の主、
――そして。
「何……バイク……?」
怪異あるところ、常に『彼』がいる。彼の跨るバイクが唸りを上げる。
人々を脅かす者を滅ぼす為に。……あるいは、復讐の為に。
「そうだ、嬢ちゃん。あれが、このクソッタレな街でただ一人、人間を襲わない怪異。同じ都市伝説の化物共を滅ぼす、都市伝説の怪人――正体不明にして神出鬼没の、仮面を被ったライダー」
「――『仮面ライダー』」
漆黒の装甲服に身を包み、赤いマフラーをたなびかせる都市伝説は、常人離れした身体能力をもって、同じ都市伝説を狩る。
仮面の下に隠した感情を晒す事無く。言葉を紡ぐ事も無く。ただひたすらに、怪異を狩る。
「仮面ライダーって、誰、なんでしょうか……」
「正体が、って事?」
「はい。……だって、他の都市伝説の怪物と比べて……人間らしさがあるというか」
「……怪異だって、十分人間らしいよ」
「えぇ? ライダーのみならず怪異も、ですか?」
「そりゃそうだよ。怪異だって、元は人から生まれたものだからね。……ただ、その感情が暴走しているだけで」
「感情が、暴走……」
「人間だって、一度怒れば中々怒りが収まらないでしょ?」
『神樂さんッ! さっさと家賃払ってくんないかねェ!?』
「……丁度、今の家主さんみたいに、ね」
「堂本のとっつぁん、いつもご苦労だねぇ」
「……んだぁ、タカ坊か」
「タカ坊? あの、神樂さんの下の名前って……」
「アハハ……とっつぁん、
「慣れちまってんだ。しょうがねぇだろ」
――謎は、怪異だけではない。身の回りにだってある。
「神樂ってぇのはね。元々はこの街を牛耳ってたヤクザ……みてぇな大企業だったんよ。昔は神樂財団って名で、その筋じゃ有名だったんだが」
「じゃあ、神樂さんも?」
「そこが妙なんだよねぇ。何せ、あっしが調べた限りじゃ隆盛なんて男いなかった筈だが」
「……ほれ、チューン出来たぞ」
「悪いね、立華のおやっさん」
「……なぁ、本当に行くのか? こいつは、俺がやらにゃならん事だってのに」
「おやっさんも年なんだしさ。無茶はさせられないでしょ」
「……だが、アイツは納得するのか?」
「……さあて、ね」
「さぁて!? さてさてさてェ! 貴方のLikeはRed or Blue!? どっちをChoose!?」
「…………」
「おっほォ! 無言ですかァ!? なら、質問を変えましょう……テメェの血はどっち色ですカァァァ!?」
「アタシの早さはオンリィィィ、ぅワンッッッ!! アタシを越えられるのは、アタシのみさねェ!」
「……!」
「なんつぅスピードだ……ライダーのマシンも化け物だが……ジェット噴射も何もしてねぇってのに、二本の足だけであんなスピード出すなんざ……」
「ポ、ポ、ポポポポポポ」
「……憐れな女だ」
「ライダーが……喋った……!?」
――次々と襲い来る、都市伝説の怪物達。街の全てが、戦場となる。
「あれは……ライダー!?」
「いや待て! アイツ……首がねぇ! 首無しライダーだ!」
「馬鹿な……ありゃあタダの首無しライダーじゃねぇ。 馬に乗ってるってこたぁ、スリーピーホロウかデュラハンってトコだが……
――そして、都市伝説は外からも流れ込んでくる。
「伝説再現計画は順調のようですね」
「えぇ。再現体は多少原典とは差異が見られますが、さしたる問題ではありますまい」
「ふふ。神話の再現も、時間の問題でしょうね」
「……ところで、あの『仮面ライダー』とやらは、いいのか」
「ああ。計画に反し、都市伝説を葬っているという都市伝説の事ですか」
「……捨ておいても構わぬだろう。所詮は都市伝説クラスの力しか持たぬ者。神話クラスの再現体には到底及ばぬ」
――そして、世界そのものに根付く、深い闇。
「教えてください。貴方の事を」
「……俺は、許されざる者」
「許されざる、者?」
「誰にも許される事のない、俺ですら許さない罪がある。……だが、許される為に戦うのではない」
「じゃあ……何の為に?」
『――ねぇ、タッちゃん。こんな話、知ってる? この世にはね、人には知られない、悪の秘密結社っていうのがいて、世界征服を企んでるんだって』
『その秘密結社はね、世界征服を成し遂げる為に、人間をさらって、人体改造を施して、怪人にしてしまうんだって』
『でもね。ある時、一人の怪人がその組織から脱走したんだって。でも、怪人になった身体は、もう元には戻らない。だから、その怪人は復讐の為に、仮面を被って、バイクに乗って、誰も知らないところで組織と戦ってるんだって』
『……うん。孤独で、救いのない話だよ。私も、友達から聞いた時、同じ事思った』
『でもさ。本当にそうだとも言い切れないじゃない? 噂なんだし』
『……ああ、違う違う。いるかいないかじゃなくて、戦う理由。確かに、復讐しても当たり前の境遇だけど……』
『……もしかしたらって思うんだ。もしかしたらね、彼が戦うのは自分と同じような人を、これ以上増やさない為だって』
『そうだよ。彼が戦う理由は――』
「――人間の自由の為」
――仮面ライダーは改造人間である。
彼は今日も、輝くマシンに乗り、無辜の人々に迫る黒い影を追う。
この世に悪がある限り、人間から自由を奪う理不尽がある限り、仮面ライダーは何時だって、何度だって、何処へだって現れるのだ。
――都市伝説『仮面ライダー』。20XX年、連載スタート。
はい。例の如く嘘です。エイプリルフールだからお兄さん許して。
ジード×FGOのクロスオーバーがあと一話で完結の筈なのに、どういうわけか2万字越えても終わりが見えず、本来の構成通りに行かないのがいけないんじゃ……つまりワシのせいじゃ……というわけで、息抜きがてらにいつも通りの嘘予告です。
……書かないよ? 設定も中途半端だし。
あ、ちなみに今作は仮面ライダーのオマージュネタですが、ぶっちゃけイメージ的にはスカルマン寄りです。すっごいどうでもいいね、この情報。