ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト 作:hirotani
h:hirotani 友:友人(μ’sでは凛ちゃん、Aqoursでは梨子ちゃん推しのラブライバー)
友「ふたつの原作を並行させるってさ、これ何を目指す作品なわけ?」
h「hirotaniという作者の個性を出さない作品にする」
友「………ん?」
h「つまりだ、脚色なく原作準拠のままストーリーを進めることで俺の描く物語ではなく、原作キャラ自身が描く本当の意味でのアギトとAqoursの物語にする、ということだ」
友「なるほど、分からん」
要は原作の魅力を最大限に引き出す物語にする、と説明したら納得してくれました。
1
『千歌、早く帰ってきて!』
曜の家での朝を迎えてすぐ、美渡からその電話はかかってきた。曜の母は千歌の分の朝食も用意してくれていたのだが、それを断り千歌は曜と始発のバスに乗って十千万へ向かった。
電話口での美渡はひどく慌てた様子だった。何が起こったのか。翔一と結び付けてしまうのは、彼のあの姿を見てしまったからだろうか。満足に眠っていないせいか思考がぼんやりとしている。曜も同じようで、千歌の隣の座席に腰掛ける曜はとても疲れているように、頭をシートに沈めている。いつもは朝から元気だというのに。他愛もない親友とのおしゃべりも今日ばかりはなく、千歌は窓の外へと目を向ける。東雲の切れ間から降り注ぐ日光に照らされた内浦湾に何隻かの漁船が見える。漁師たちも早朝の漁から戻ってきたらしい。
千歌の予想は、翔一がらみという点では的中していた。十千万に着くと玄関先で待ちくたびれた、と喚く美渡の横で、志満が神妙そうに1枚の紙を持っている。
「いつまでも起きてこないから様子見に行ったら、部屋にこれがあって………」
志満から受け取った紙には短く1文だけ書かれている。
お世話になりました 翔一
「あんた、何か知らない?」
美渡がそう訊いてくる。ううん、と千歌は答えた。昨日のことを話したところで、姉ふたりに信じてもらえる気がしなかった。曜が説得してくれるとしてもだ。千歌だって、直に目撃しなければ信じない。この世界には怪物がいて、同じく怪物のような力を持った人間がいる。それが翔一だ、なんて。
「翔一君、何か過去のことを思い出したのかしら?」
「だからって翔一が何も言わずに出てく?」
志満と美渡が口々に言う。その後も何か憶測のようなことを続けていたが、千歌には内容が全く耳に入ってこなかった。何気なく視線を向けた壁掛けのカレンダーを見て、今日が土曜日であることに気付く。あまりにも目の前の状況を咀嚼できない故の逃避なのか、千歌はふと思い出した。
そうだ、明日は海の音を聴きに行くんだった。
2
PCの画面上で、警備部長と補佐官が渋い顔つきで報告書に目を通している。先日遭遇したアンノウンについての報告。今回は誠だけでなく、共に遭遇した北條も同席している。ふう、と警備部長が溜め息をついた。君もか、と言いたげに北條を一瞥し、報告書を机に置く。
『では君も、アンノウンに遭遇したと言うのかね?』
液晶越しに補佐官が確認するように訊いてくる。PCを前に、誠の隣に座る北條は明確に「はい」と答えた。すると老眼鏡を外した警備部長が諭すような穏やかな声で、
「ふたりとも、発言は慎重にしたまえよ。君たちの言葉には君たちの将来だけではなく、警視庁全体の在り方が懸かっている」
G3は警視庁においてフラッグシップ的な存在だ。ただでさえ莫大な資金をかけて開発されたというのに、初陣でいきなり大破。修理のせいで第2の遭遇には出動できず犠牲者を出してしまった。しかも敵はカメラに映らない
君たちの首ひとつで片が付く問題ではないのだよ。警備部長はそう牽制しているようだった。
「ですから――」と身を乗り出した誠を北條が手で制し、画面に向き直る。
「我々が未知との敵に直面しているのは疑いありません。この事実を踏まえ、早急なる対応策が必要だと思われます。まずG3システムの重要性を認識し、ユニット全体の強化、充実を図るべきです。このままだと被害者の数は増え続ける一方です。そして今、我々がアンノウンに対抗しようとするならG3システムに頼るしかありません」
とても饒舌な北條は、警備部長も補佐官も反論を許さないという毅然とした態度だ。上層部であり、人事の采配を下す権限を持つふたりは何か言いあぐね、口を微かに開き再び閉じる。ここで頭ごなしに否定しては自らの器の矮小さを露呈させてしまうだけだ。被害者が出ている。アンノウンは否定できても、この事実だけは認めざるを得ない。不可思議な死の状況を解明できずにいる現状も。
北條は言った。
「同システムの量産、組織化がすぐにでも必要になるでしょう」
単なる聴聞会のつもりだったが、まさか収穫があるとは思ってもみなかった。完膚なきまでに否定されG3ユニットの解散まで言い渡されることを覚悟していたのだが、自分の話をまともに聞いてくれるようになるとは。嫌味な人間と思っていたが、流石は北條というべきか。本庁きっての若手エリートと期待されているだけある。
「ありがとうございました」
署内の無機質な廊下を歩きながら、誠は隣の北條に言う。
「これで上層部のユニットに対する見方も少しは変わってくれると思います。今まで何かと、色眼鏡で見られてきましたから」
「アンノウンが現れた以上、これからはG3が警視庁を引っ張っていくことになるでしょう。装着員であるあなたは、警視庁の責任を一身に背負うことになると言っても過言ではありません」
表情を一変もさせない北條は脚を止め、
「氷川さん、未だ起動不可能なほどG3システムを傷つけたあなたの責任は大きい」
彼にならい脚を止めた誠に、先日の無力感が再び押し寄せてくる。地中から出てきた死体。もしG3が出動できていたら、自分が初陣でG3を激しく損傷させなければ。そんな後に立たない後悔ばかりを延々と繰り返している。
「G3が正常に機能していれば、被害者を救うことができたかもしれない。違いますか?」
「それは………」
反論ができない。北條の言うことは悔しいが的を射ている。結局のところ、G3の戦力は装着員に頼るところが大きい。いくら装甲が頑丈で、武装がシミュレーション上で軍隊の1個小隊を制圧できるほどでも。
「G3がいかに優れていても、装着員が無能ではどうしようもない」
そう吐き捨て、北條は廊下を歩いていく。その背中を、誠は何も告げることなく見送ることしかできなかった。
3
今日は4月の何日だっただろう。窓の外に広がる街を眺めながら、涼はそう思った。何日も部屋に閉じこもっているうちに、焼けるような熱は引いた。謎の発作は何度か起こっているが、それを除けば日常生活に支障はない。いや、支障はあるか。それを怖れて涼はこうしてアパートの自室に籠っているのだから。
アウトドア派の涼にとって、こうして外に出ない日は今まで1度としてなかった。子供の頃は何をして遊ぶか考える前に外に飛び出していったものだ。友達の家に突然押しかけて遊びに連れ出すことなんてよくあった。家よりも外のほうが楽しい。家の中にいてばかりのインドア派の気持ちは理解しがたい。
でも、今ならインドア派の気持ちはよく分かる。家の中なら安心できる。自分がどうなろうと、誰の目にも晒されることは無いのだから。もっとも、それは涼だけが得る安心だろう。「普通の」インドア派が家に籠るのは、読書や映画鑑賞やゲームといった趣味に没頭するためだ。何もしないわけじゃない。
薄い壁からぎしぎし、と音が聞こえた。隣人が起床したらしい。ベッド脇に置いてあるデジタル時計を見ると9時を過ぎている。遅い目覚めだな、と思ったが、このアパートは学生向けの格安物件だ。大学生は講義の割り振りを自分でしているから、午後だけに講義を入れて午前中は睡眠なんて生活を送るのも珍しくない。練習で朝早くから通学していた涼にとって、そんな生活習慣は堕落したものでしかなかったが。
ピンポーン、とインターホンが聞こえた。昨日は新聞の勧誘で、一昨日は生協だったか。律儀に対応するのも面倒だ。居留守を使おうとベッドに横になったところで、今度はごんごん、と強くドアを叩く音が響く。続けてドア越しにくぐもった声が。
「涼! 開けるんだ涼! いるのは分かってるんだ!」
両野の声だ。涼は咄嗟にベッドから身を起こした。「涼!」とドアを叩きながら両野が呼んでいる。理由は何となく悟ることができる。先日部の仲間に渡した退部届の件についてだろう。両野には何も言わなかったから、わけを聞こうとするのは当然だ。
涼は鍵を開錠し、ゆっくりとドアを開けた。
「ようやく会えたな涼」
僅かに開いたドアを挟んで、ほっとしたように両野は告げた。顔を合わせるのは何日振りだろうか。日付を数えていないから分からない。
「どういうつもりだ? 勝手に病院抜け出して退部までしやがって。水臭いぞ、俺とお前の仲じゃないか。俺はお前のことを、身内同然だと思っているんだ」
涼には頼れる身内がいない。母親は幼い頃に他界し、父親も訳あって今はどこにいるか分からない。そんな涼の水泳選手としての才能を高校時代の全国大会で見出してくれた両野は、大学へのスポーツ推薦や学費免除の特待生認定まで世話を焼いてくれた。実質的に両野は後見人と言っていい。涼にとって父親代わりの存在で、一番頼れる人。
俺は俺を受け入れられない。
でも、この人なら受け入れてくれるかもしれない――
「分かりました。コーチだけには全てをお見せします」
そう言って涼はドアを全開にする。両野は部屋に足を踏み入れ、ドアがばたん、と金属音を鳴らして閉じられる。
4
カーゴベイの中で、ガードチェイサーは無言のまま役目が来ることを待ち続けている。大破したG3のなかで、唯一無事に済んだ装備。警視庁と提携しているメーカーの車両をベースにしているとしても、これだってG3のスペックに合わせて製造されたワンメイド品だ。このマシンだけでもどれだけの血税が費やされるのか。
「明日にはG3の修理も終わるだろうから」
誠にコーヒーを手渡しながら小沢が言う。
「済みません。僕のせいで、G3を傷つけてしまって」
もう何度目になるかも分からない謝罪を誠は述べる。G3の話になると決まって「済みません」という言葉が出てしまう。慰めなんて生温い言葉を向けない小沢の代わりに、努めて明るい口調で尾室が、
「それもただの修理じゃないんですよ。GM-01の弾丸もパワーアップしたし、G3システム自体その反動に耐えられるように姿勢制御ユニットを強化しているんです。まあ、見た目は変わらないけど早くもG3は生まれ変わるってことです」
初陣でのG3はまだ試作段階の域を出なかった。これから実戦を重ねていくにつれて、更に改修を重ねていくことだろう。敵に合わせて。そして、装着員である誠に合わせて。
「装着員は、僕で良いんでしょうか?」
カップの中で揺れるコーヒーを眺めながら、誠は呟く。「何だって?」と聞き逃さなかった小沢は声に険を込める。G3を誠の体格や戦闘時の癖に合わせて調整してくれたのは小沢だ。今までの苦労を足蹴にするような発言が気に食わなかったのだろう。誠は彼女に視線を向け、
「いや、ただG3が生まれ変わるなら、装着員も変わったほうが良いのかな、って………」
「何言ってんの? もしかして北條君に何か言われた?」
北條のことを知っているのか。そんな疑問が沸くが、それを訊く気力もない。そもそも北條は面識がなかった頃の誠にも噂が届くほど、警視庁の中では期待を背負う人材だ。小沢や尾室が知っていても不思議なことじゃない。
小沢は苛立たし気に言った。
「いいのよあんな奴の言うことなんか気にしなくて」
「でも北條さんは間違ったことは言っていません」
「馬鹿ね。正しいか間違ってるかなんてどうでもいいの。男はね、気に食うか食わないかで判断すればそれで良いの」
「そんな無茶苦茶な」と尾室が呆れ声で言う。こんな豪快なことを言ってのけるが、小沢はこの若さでG3の開発と設計を一手で成し遂げている。天才肌とはこういう人間のことを言うのかもしれない。
「小沢さん、北條さんに厳しいですね」
尾室がそう言うと小沢は溜め息をついて、
「実を言うとね、G3プロジェクトが発足したとき、装着員に真っ先に志願したのが北條君だったの。でも選ばれたのは氷川君だった。快く思ってるはずがないわ」
だからといって、選ばれなかった
「ああ、それと」と小沢は思い出したように、
「知り合いのほうには都合つけるよう頼んでおいたから、来週明けにでも行ってきなさい」
「はい………」
気のない返事をしたところで、内線通信のコール音が響く。機器の並ぶデスクについた小沢がヘッドセットを付け、「はいG3-OP」と応答する。「はい」と何度か相槌を打ち、ヘッドセットを外すと誠へと向いた。
「オーパーツ研の三雲さんから」
この日のオーパーツ研究所のラボは、非番なのか三雲以外は誰もいない。機器の駆動音も聞こえず、冷たい静寂のなかでモノリスは佇んでいる。パズルの解読に成功した。その知らせを受けて脚を運んだ誠は十字架のようなモノリスを見上げる。
モノリスの、十字架を囲むような柱の上2本。そこから1本ずつ突き出した螺旋形のオブジェを。
「何ですかあれ?」
「何に見える?」
悪戯っぽく三雲が訊いてくる。三雲によると、コンピュータで進めていた演算処理が突然進展しはじめたという。ダイヤルの組み合わせは瞬く間に紐解かれ、やがてひとつの正解へと至ったところで、上2本の柱が蓋を開け、螺旋のオブジェが現れた。
まるで、オーパーツ自身が何かに反応したかのような速さでの解読だったらしい。
誠はじっ、と螺旋のオブジェを凝視する。ただの螺旋ではなく、2本の螺旋が互いに絡み合っている。この複雑な形状が何を表すのか、現代に生きる誠にはその意味が理解できる。ただ問題なのは、これを古代人が既に知っていたということ。
「遺伝子のモデルのように見えますが」
「そうね」と三雲は少年のような笑みで応える。「まさか……」と誠は漏らした。遺伝子が2重の螺旋構造を持つと発見されたのは、20世紀の半ばになってからだ。西暦に入って2千年以上経ってようやく辿り着いた生命の構造を、古代という表現で足りない時代には発見されていたというのか。
「非常に特異なパターンなんだけどね」
「でも、このオーパーツは3万年以上前のものなんじゃないんですか?」
3万年前。ネアンデルタール人が絶滅し、ヒト属が現生人類であるホモ・サピエンスのみになった時代。まだ石を打ち砕いて刃物を作っていた石器時代のはずだ。
「そんな昔に遺伝子モデルなんて………」
「常識的に考えればね」
そう言って三雲は両腕を広げてラボ全体を示し、
「でもここはオーパーツ研究局よ。有り得べからざるものを研究する場所なの。常識の枠をまず取り払わなければ、研究はできないわ。どんなに荒唐無稽だと思われていることでも、それを信じること。信じてみること。それが第1歩ね」
オーパーツを見上げる三雲の眼差しは、これからへの期待に満ちているように輝いている。昨日までの非常識は明日になれば常識になるかもしれない。かつて、ヨーロッパでは地球こそ世界の中心であり、太陽が地球の周囲を回っていると信じられる時代があった。ガリレオ・ガリレイが主張した、太陽と地球の立場が逆転した地動説が認められたのは、彼の死から3世紀以上経ってのことだ。
もしこのオーパーツが本当に3万年前に造られたものと証明できたとしても、学会で受け入れられるのは難しいだろう。これは今までの人類史を根本からひっくり返しかねない代物だ。3万年前の時点で、人類は既に現代と同等かそれ以上に優れた文明を築き上げた。しかし何らかの要因で滅び、現代はかつての栄華を追いかけている、と。
三雲が期待を馳せる未来は、果たしてどれほど先なのだろう。もしかしたら、自分が存在していない数百年後を見据えているのか。誠にはそんな先の未来なんて全くイメージが沸かない。小沢といい三雲といい、天才というのはどうにも理解しがたいところがある。
三雲は楽しげに早口で言う。
「事実、このオーパーツから得られた遺伝子情報をもとに、特別に編成された研究班が実験を始めているの」
「実験?」
誠が反芻すると三雲は頷き、
「これが遺伝子モデルだとしても、塩基配列はまだ未知のものだわ。それが何なんなのか解明するために、メッセンジャーRNAを合成してタンパク質を作らせようとしているの」
次々と三雲の口から発せられる学術的専門用語は、あくまで一般人程度の知識しか持ちえない誠には何かの呪文のように聞こえる。高校時代までに習った生物学の知識で考えてみると、即ちこの遺伝子モデルを再現した新しい生命体を創り出すということ。2重螺旋という設計図があるにしても、そんなことが可能なのだろうか。人工細菌の作成がアメリカで成功したという話は聞いているが、このモデルが細菌という微小なものではなく、もっと高等な生命体のものだとしたら。
未知の遺伝子モデル。その正体はこの地球上に存在していた生命なのか。それとも現代より優れた古代人の技術で創り出そうとして、成し遂げられなかった人工生命体なのか。これもまた
「ひとつ、訊いていいですか?」
「何かしら?」
「三雲さんは、超能力の存在を信じていますか?」
やぶからぼうにどうしたの。そんな三雲の思考が表情から読み取れる。信じてみることが第1歩、と述べても、あくまで科学者である三雲は無条件に信じることはないらしい。肩をすくめて、三雲は曖昧な笑みと共に答えた。
「どうかしら」