ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト 作:hirotani
1
船から救助された後のことは、あまり覚えていない。鞠莉が気付いた頃になると事は過ぎたものとして処理され、鞠莉は果南、ダイヤと共に沼津の家に帰宅することができた。
果南とダイヤは船での出来事を忘れていた。あまりの恐怖に事故前後の記憶を失ってしまうことは珍しくはない、と薫が言っていた。忘れたままでいたほうがふたりのため。1度だけ乗客たちで集まったとき、薫から沈黙するよう言い聞かせられ、他の乗客たちからも同意された。
でもふたりの記憶喪失は、鞠莉からこれからのAqoursについての活力を奪うことになる。あの船で誓った再起。ふたりの記憶からはそれすらも抜け落ちてしまって、3人でのAqoursは終わってしまった。
鞠莉は声高に言いたかった。あの船で、もう1度ステージに立つことを決めた、と。でも同時にそれはあの日の恐怖も思い出してしまう。自分たちに未来がない、なんて恐怖に怯えさせてしまう。
わたし達はじきに人ならざる者になる。
植え付けられた力が目覚めるとき、あいつは天誅を下しにやって来る。
かつてのAqours解散劇には果南とダイヤの嘘が絡んでいたのだが、嘘を付いていたのは鞠莉も同じだ。互いに互いを想い合う故の嘘があった。
留学を決めた本当の理由は、逃げたかったからかもしれない。自分の抱える運命から。ふたりに沈黙しなければならない罪の意識から。それでもやはり恐怖はどこまでも着いてきたし、学校を統廃合から救いたい、という想いにも嘘はつけなかった。
いよいよ浦の星の統廃合が本格的に進みだした頃に、鞠莉の裡にある力も覚醒を始めた。
だから鞠莉は、運命に向き合うことを決めた。
わたしはどうなってもいい。でも、ふたりだけは救ってみせる。
悪い予感は的中してしまい、沼津への帰還とほぼ同時のタイミングで、アンノウンと呼ばれる者たちが現れ始めた。
同時に、奴らと戦う者も。
すっかり長話をしてしまったから、話し終えると口が乾いていた。カップに並々と注がれた紅茶を全て飲み干し、深い溜め息をつく。ふたりも紅茶にはひと口も手をつけていなかったと思う。
「………不思議なものですわね」
口を開いたダイヤが発したのは、そのひと言だった。「うん」と応じた果南が、続きを引き継ぐ。
「わたし達が、前に翔一さんに会ってたなんてね。それに、涼のお父さんとも」
ダイヤは苦笑し、
「翔一さんは、記憶をなくす前からああだったんですのね」
「それに――」と言葉を詰まらせた果南の顔を見ると、目尻に滴が浮かんでいる。堪えながら、彼女は震える声を絞り出す。
「わたし達、また始めようとしてたんだ」
愛おし気に告げられたその言葉に、鞠莉も涙を溢れさせる。
こんな想いは赦されない。ふたりからの罵倒を受ける義務があるし、本来ならAqoursに入る資格もなかった。ふたりのため、というお題目を盾に、ただ自分勝手にやりたいことばかりやってきたというのに。
でも、これが鞠莉の親友たちだ。鞠莉の罪を優しく受け止めてくれて、一緒になって抱えてくれる。
「ごめんなさい………」
鞠莉は深く懺悔した。もはや全ては過ぎてしまったこと。泣いて謝っても、帰ってくるものは何も無いと分かっていても。
「ふたりを巻き込んで……、学校も救えなくて………」
一体何のために帰ってきたんだろう。父に無理を言って理事長にまでしてもらって、乗客たちを集めて来るべき時に備えておいて、何もできなかった。いくらアギトに近付いても、所詮は無力な傍観者でしかなかったじゃないか。
皆に居てもらっても、奇跡なんて起こせやしない。
「ありがとう、鞠莉」
「鞠莉さんは、十分すぎるほど尽くしてくれましたわ」
左右から、ふたりに抱きしめられる。そういえば、あの日もこうしてふたりに抱きしめられた。きっと、そのお陰で鞠莉だけは記憶を失わなかったに違いない。
「鞠莉はさ、いつもひとりで抱え込み過ぎなんだよ」
「そうですわ。わたくし達がいるのに、全部ひとりで」
ふたりも泣いていた。それは絶望と恐怖の涙なんかじゃない。ふたりが覚えていてくれたら、こんな胸を掻きむしられる想いはしなかっただろうか。そんなことを考えずにいられない。
嫌だ、という想いが鞠莉の裡で芽生えた。これ以上、何かに怯えたまま生きていくのはたくさんだ。
提示された運命に抗う術は、確かにあるはず。その希望として、脳裏に翔一の顔が浮かんだ。
津上翔一として生きている彼と対面したとき、鞠莉の裡にあったのは恐怖だった。あの日のことを思い出さないか。そのせいでふたりに危険が及ばないか、と。
でも、今なら彼を信じることができる。
記憶を失っても鞠莉たちの元へ来てくれた彼なら、きっと未来を解き放ってくれる、と。
2
突き出した拳は容易くいなされ、そればかりか錫杖で鳩尾を叩かれ「うっ」と呻く。沈められた武器を持ち上げられて地面に伏したところで、眼前に先端に備えられた刃が迫った。咄嗟に柄を掴んで防ぐが、水のエルの力がじりじりと押してきている。
「まだ生きていたか。消え失せろ」
力が緩んだ。瞬時に錫杖を蹴り上げ立ち上がると、誠が背後から水のエルに組み付いている。水のエルはすぐに拘束を解き、誠の胸部装甲を刃で突いた。武装もなく身ひとつで立ち向かう誠に加勢しようと肉迫したが、それを赦さない水のエルは柄の尾で翔一の顔面を殴りつける。
二又に分かれた錫杖の刃が、誠の首元を挟み込む。G3-Xの強度で何とか守られてはいるが、大きく振り上げられた武器ごと誠の体が持ち上げられて投げ飛ばされる。3階の高さほど飛んだ誠は、衝突した足場の鉄パイプを破壊しながら落下していき、顔面から地面に衝突した。
「氷川さん!」
緩慢に起き上がった誠のマスクが割れている。忌々し気にその姿を一瞥する水のエルに、翔一は突進をかました。怒りのためか、全身が燃えるように熱い。その熱を右の拳一点に集中させ、敵の構える錫杖を手刀で叩き折る。
狼狽えた水のエルに、未だ燃え上がる渾身の拳を叩き込み突き飛ばす。
雲間から太陽が顔を出した。この世界を照らす大きな光。それを全身に浴びた翔一は、更に進化を遂げる。
体の熱が強くなっていく。内部からの熱にあてられてか赤い鎧が茶色く干からびて、陶器のような亀裂を走らせていく。固い音を立てて、割れた鎧が零れ落ちた。まるで蛹から羽化した成虫になったかのような陶酔と光が、翔一を包み込む。
これは、未来を切り開くための力。
進化した翔一の姿に目を見張る水のエルは、自身へと向けられた咆哮へと咄嗟に顔を向ける。エクシードギルスへ姿を変えた涼が、鋭く伸びたヒールクロウを肩に突き刺していた。
蹴り飛ばされた水のエルに間髪入れず、牙を剥いた木野のキックが胸を穿つ。
翔一の前に、銀色の炎が燃え上がる。炎は揺らめきながら形を変え、アギトの角を模した紋章を形作っていく。
跳躍し、翔一は右脚を突き出した。足先が触れた瞬間、収束した炎を纏ったキックを水のエルに叩き込む。
命中した敵の胸にはまだ銀色の炎がちらつき、体を湿らす水分を蒸発させていく。頭上に光輪を浮かべる水のエルが断末魔の叫びをあげた瞬間、その体は爆炎をあげて飛散していった。
3
千歌の同級生たちが訪ねてきたのは、夕飯の準備をしている夕方だった。今日はいっぱい食べてくれるかな、と思いながら煮物を炊いていた頃で、志満は出掛けて美渡もまだ帰ってきていなかったから翔一が対応した。
「いま千歌ちゃん呼んでくるからさ」
と千歌がいるだろう波辺へ行こうとしたのだが、「あ、いや」とむつに止められた。
「千歌には話しづらくて」
「翔一さん、聞いてもらえますか?」
いつきとよしみからもそう言われ、戸惑いながらも翔一は3人を居間に通してお茶とお茶請けにカブ――菜園で収穫したての自信作――の浅漬けを出した。
「わたし達、千歌たちに何をしてあげられたのかな、て思って………」
むつが切り出すと、いつきとよしみからも次々と懊悩が吐き出されていく。
「千歌たちに全部任せっきりだったのに………」
「落ち込んでる、て分かるんですけど、何て言ってあげられたらいいのか分からなくて………」
気持ちが理解できるこそ、翔一はすぐに応えてやることができなかった。しばし沈黙の後、むつが訊いてくる。
「千歌、家ではどうですか?」
「いつも通りだよ。ご飯はあんまり食べてくれないけど」
落ち込んでいることは、デリカシーがない、と言われる翔一でも分かる。いつも通り笑顔で接してくれるし、翔一の作った料理も美味しい、と言いながら食べてくれる。でもふとしたときに見せる、何の色も浮かべていない表情。前に東京のイベントから帰ってきた日以来の虚無の表情だった。
「でもさ、むっちゃん達だって頑張ってくれたじゃない。ライブの準備とか色々手伝ってくれたしさ」
「でも――」とよしみが言いかけたが、寸でのところで押し留めた。それでも奇跡は起こらなかった。その事実を自分たちの口から告げる資格はない。Aqoursに背負わせてばかりだった自分たちに。その想いを飲み込むように、3人は揃って唇を結んでいる。
いい友達を持ったんだな、千歌ちゃん。
3人の懊悩は理解できるが、翔一は温もりを感じている。
この子たちだから、あの子は頑張れたんだ。
それに俺も。あの子やこの子たちがいるこの街だから、この「居場所」だから、護りたいと思ったんだ。
堪えながらいつきが言う。
「あんなに頑張ったのに、学校も、何も残らないなんて寂しすぎる………」
「何も残らないなんてこと、ないんじゃない?」
言うと、3人は同じ糸で釣られたように翔一を見上げる。
「学校は残せなくても、千歌ちゃん達の頑張りは残るんじゃないかな?」
それが千歌たち自身や、学校や街の皆の中の記憶だなんて気休めじゃないことは分かっている。生憎ながら、それ以外の残し方は翔一には思いつかない。
翔一だって千歌たちに何かをしてやれた訳じゃない。ただ彼女の食事を作ってきただけ。アンノウンという脅威から護ってきただけだ。
その果てが統廃合だなんて結末は確かに寂しい。でも、何も形にできない、とはなるだろうか。翔一も過去を全て失ったけれど、翔一の中になった料理という、かつて培ったものはしっかりと残されていた。姉に食べてほしい。姉を喜ばせたい。その想いは忘れてしまったが、そんな翔一の過去の残滓で作った料理を、千歌は喜んで食べてくれた。
「俺には何もできないけど、3人や、学校の皆にしかできないことがきっとあるはずだよ。こんな所で終わらせたくないじゃない」
4
1週間のうちに、それぞれで答えを出す。集まったら、話し合って「みんな」の答えを出す。
約束の朝、訪れた屋上は随分と久しぶりに感じられる。秋に入ってから練習は殆どがプラザヴェルデでやっていたし、その練習もこの1週間は無かったのだから。夏場はとても熱かった屋上のコンクリートが、この時期はとても冷たい。
「おはよう」
階段を上り切ったところで、曜に声をかけられる。「おはよう」と千歌も返し、皮肉なほどに晴れた青空の下に集まった皆の顔を見渡す。
「やっぱり、皆ここに来たね」
梨子が得心したように言う。集まるとは決めていても、集合場所は決めていない。部室か、プラザヴェルデか。でも不思議と、屋上だな、と千歌は思っていた。Aqoursを始めたばかりの頃、どこの練習場も埋まっていて、辛うじて割り当てられたのがこの屋上。
「結局、皆同じ気持ち、てことでしょ」
そう言う鞠莉は、どこか軽くなった面持ちだった。理事長として尽力してくれた彼女も、ようやく業務が落ち着いて少しは休養できたのかもしれない。
「出た方がいい、ていうのは分かる」
梨子の言う通り、出るべきなのかもしれない。全スクールアイドルの悲願とも言える会場の切符を手にしたのだから。
「でも、学校は救えなかった」
ルビィの告げる事実が、手にした切符を受け取るかを惑わせた。
「なのに、決勝に出て歌って――」
花丸が言い淀んで、善子が引き継ぐ。
「たとえそれで優勝したって………」
「確かにそうですわね」とダイヤが頷いた。
「でも、千歌たちは学校を救うために、スクールアイドルを始めたわけじゃない」
果南が言った。そう、最初は統廃合阻止なんてお題目に過ぎなかった。むしろ千歌は、憧れのグループと同じ道を進んでいる、と歓喜したくらい。あの頃の自分に教えてやりたい。自分がどんな道を進もうとしているのか。どんな未来が待っているのか。
「輝きを探すため」
曜が、当初から貫き続けてきた想いを口にする。そこに込められたものを鞠莉が言う。
「皆それぞれ、自分たちだけの輝きを見つけるため。でも――」
「見つからない」
遮るように千歌は言い放つ。
「だってこれで優勝しても、学校はなくなっちゃうんだよ。奇跡を起こして、学校を救って。だから輝けたんだ。輝きを見つけられたんだ」
全てが
あれだけ足掻いても、現実を変えることができなかった。今更足掻いて何が残る。
「学校が救えなかったのに、輝きが見つかるなんて思えない」
もう何事も意味をなさない。優勝したところで、討ち捨てられる校舎を見れば救えなかった事実に胸を締め付けられていく。
「わたしね、今はラブライブなんてどうでもよくなってる。わたし達の輝きなんてどうでもいい」
輝いたところで、ただ1瞬で消える。それだけだ。全て無になって、その虚無すらも受け入れられず、あの頃に抱いていた夢の残骸のみが千歌の裡にぐるぐると不快に渦巻いている。
「学校を救いたい! 皆と一緒に頑張ってきたここを………」
感情を吐き出しても涙は出なかった。奇跡を起こすまでは泣かない。あの時の誓いを守ってきた間に枯れ果てたらしい。
奇跡なんて起きないんだ。
何も残らないんだ。
全部、全部――
「じゃあ救ってよ!」
その声が聞こえ、は、と千歌は顔を上げた。屋上の縁に立って中庭を見下ろすと、そこには全校生徒が集まっている。その中で、よしみが声を張り上げる。
「だったら救って! ラブライブに出て、優勝して!」
他の皆も千歌の周りに集まって、中庭の生徒たちを見下ろす。誰も知らなかったらしい。いつもそうだった。皆は頼まれなくても、Aqoursのために何かできないか、何かしたい、と声を上げてくれた。
「できるならそうしたい。皆ともっともっと足掻いて、そして――」
もう無意味なのに。もうどうにもできないのに、未だに願わずにいられない。決して叶わない願いを口にするとき、千歌の声はすっかり弱くなっていた。
「学校を存続させられたら………」
ごめん、という無意味な懺悔ばかりが募る。これだけの人たちの、ここにいない人たちの想いまで背負ってきたのに。皆の想いを何ひとつ成し遂げられなかった。
分不相応な夢を追いかけて、
そのために皆を巻き込んで、
期待させるだけさせておいて、
何も残せなかった。
「それだけが学校を救う、てこと?」
よしみの問いが、校舎の壁に反響する。何度もその問いを脳裏で繰り返していると、むつが言った。
「わたし達、皆に聞いたよ。千歌たちにどうしてほしいか。どうなったら嬉しいか」
いつきが続ける。
「皆一緒だった。ラブライブで優勝してほしい。千歌たちのためだけじゃない。わたし達のために。学校のために」
それがどうして学校を救うことになるのか。
その答えを、よしみが告げてくれる。
「学校の名前を、残してきてほしい」
「学校の………」とダイヤが呟いた。校舎が残らないのなら、せめて名前を。
「千歌たちしかいないの! 千歌たちにしかできないの!」
「浦の星女学院スクールアイドル、Aqours。その名前をラブライブの歴史に、あの舞台に永遠に残してほしい!」
「Aqoursと共に、浦の星女学院の名前を!」
ラブライブは、言い換えれば全国高校スクールアイドル選手権。出場グループの所属として、学校名は必ず付いてくる。
この土地に学校を残せないのなら、もっと大きな舞台の記録に名前を刻み付けてほしい。
わたし達がいたことを。
千歌たちが足掻いた証を。
ここにいる皆で紡いだ物語を、ラブライブ優勝グループ、Aqoursのいた学校として。
「だから、輝いて!」
皆の想いが、全員分の声になって千歌たちに向けられる。「優勝して、学校の名前を……」と鞠莉が呟いている。「ラブライブに……」と果南の声が、強さを帯びているように感じられる。
「千歌ちゃん」
と曜に呼ばれ、次いで梨子と揃えた声で問われる。
「や・め・る?」
「やめるわけないじゃん」と千歌は即答し、
「決まってんじゃん決まってんじゃん!」
裡から沸いた衝動を発散するために足をばたつかせ、千歌は宣言する。
「優勝する! ぶっちぎりで優勝する! 相手なんか関係ない。アキバドームも決勝も関係ない。優勝する。優勝して、この学校の名前を、一生消えない思い出を作ろう!」
これが、千歌たちにできる最後の足掻き。どうせなら学校の理事会に後悔させてやろう、とすら思った。こんな良い学校なら統廃合なんてしなければよかった、と。
見せつけてやるんだ、世界中に。
わたし達がいた証を、わたし達の輝きを。
「Oh!」といつもの賑やかさを戻した鞠莉が揚々と、
「allowでもshotgunでも持ってこい、て感じね」
「でも」と果南が彼女の肩を抱き、
「見てるだけで何か熱くなってくる」
「ですわね」とダイヤが皮肉っぽく笑った。本当は、皮肉なんて感じていない癖に。
「全リトルデーモンよ、決戦の時が来ました。ヨハネと一緒に堕天するわよ」
善子もいつもの調子を取り戻したらしい。やっぱり、湿っぽいのはAqoursに似合わない。いつだって熱く、前に進まないと。
1週間も立ち止まっていた遅れを取り戻すために、曜が意気揚々と声をあげた。
「ああ、じっとしてられない。皆走りに行こう!」
笑みを伝播させて、皆は階段へと向かって走り出す。いきなりの練習に怖気づいた花丸の手を果南が引いていく。
「ほら行くよ」
「マルもずらか⁉」
後に続く梨子の声は、既に新曲の歌詞を考え始めた千歌の耳には届いていなかった。
「遂に普通じゃない、本当の怪獣になっちゃうのかも、千歌ちゃんは」
さあ、こうしちゃいられない。ラブライブに向けて、もう1度走り出そう。
ひとり残された千歌は、皆に続くために足を踏み出す。その時、何かが顔の横を通り過ぎていく。目で追うと、それは1枚の羽だった。鳥なんて飛んでいただろうか。
羽は空へと飛んでいき、やがて太陽へ向かってその光に飛び込んでいく。あれは何だろう。そんな疑問が沸くも、それは保留にしておく。
きっと分かる日が来る。輝きを見つけることができた瞬間に、またあの羽が視られるような気がした。
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