ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト   作:hirotani

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 手を伸ばせるのに伸ばさなかったら、死ぬほど後悔する。
 それが嫌だから手を伸ばすんだ。

――仮面ライダーオーズ 火野(ひの)英司(えいじ)




第26章 私たちの輝き / AGITΩ
第1話


 

   1

 

 始まりは、見慣れた海だった。

 

 家のすぐ目の前にある三津海水浴場から広がる駿河湾の海。浜辺から見える、1年の大半は頭に雪を被った富士山。幼い頃から毎日見てきた風景は、彼が打ち上げられていたあの日から何も変わりない。

 この浜辺から、わたし達と彼らの物語は始まった。結ばれていた歪な縁も知らずにわたし達は一緒に家族として暮らして、わたしはスクールアイドルに出会い、彼はアギトになってアンノウンとの戦いへと駆り立てられた。

 始まりも途中も、わたしの傍には海があった。だとしたら、終わりの時も海があるのは必然なのかもしれない。

 とはいっても、終わったはずなのにわたしはその実感が湧かないまましばらくの間を、ぼう、と過ごしていた。決勝から1、2日くらいの浦の星はお祭り騒ぎだったけど、すぐにそれは収まっていつもの授業を受け、新しい学校への編入準備をしながら閉校を待つだけの日々を送った。変わった事といえば、練習がなくなったことかな。もうする必要もないから。

 わたし達のステージと同じ頃に彼らの最後の戦いがあった事を知るのは、もっと後になる。あの戦いで世界は変わったのかもしれないけど、読んでの通り1ヶ月が経とうとしてもわたしはその変化を感じ取れない、物語が動き出す前の味気ない日常を送っていた。

 何にも夢中になれず、

 何にも全力になれず、

 脇目も振らずに走れず、

 何をしたら良いのかも分からないまま、ただ燻っている。

 世の中でわたし達――Aqoursを取り巻く環境は変わったのかもしれない。ラブライブのホームページには優勝グループとしてAqoursの映像が流れていたし、視聴回数もうなぎ上りを続けていた。映像を見たわたしは、画面の中で歌っている自分がどこか他人のように思えていたけど。

 聖良さんの言う通りだったね。未だに自分が、あのステージにいたことが信じられない。視界の全てがきらきら光っていて、本当に雲の上を漂っているみたいだった。

 わたし達は全力で走ってきて、そして目指した場所へと辿り着いた。気持ちの整理はつかなくても、終わらせなきゃ。わたし達の物語を終わらせられるのは、わたし達だけだから。

 だからわたしはあの日、いつもの浜辺で浦の星での最後の日を思い出しながら、終幕の作業のようにひたすらに問い続けていた。

 あのドームで、あのステージで、わたし達は一体何を視たんだろう。何を手にしたんだろう。全てが終わっても、わたしにはまだ分からなかった。

 皆はもう、答えを見つけていたのかな。

 

 

   2

 

「今日の制服、なんか新品みたい」

 初めて浦の星の門を潜った日のことを思い出しながら、千歌は2年間着続けていた制服を手に取った。

 「糊ばっちり効かせたからね」と志満が広げてくれた上着に袖を通す。

「ありがとう」

 この日のためにクリーニングに出してくれたのだろう。

「首、ちゃんとボタン閉める」

 いつものように着ようとしていたところを、母が第1ボタンを無理矢理閉めにかかる。少しきつくなってきたから、思わず「うっ……苦しいよお」と呻き声をあげてしまった。

 何か七五三みたい。姉たちと母に着替えを手伝ってもらいながら、ふと思った。普段から着方が雑だから、というのが本人たちの弁だが、そんなにいつも着崩していただろうか。釈然としない。

「あら?」

 リボンを締めながら、母がふと声を漏らした。続いて美渡も、

「千歌、少し見ない間に――」

「え?」

 物珍しそうに千歌を足元から頭まで見回してから、美渡は悪戯っぽく笑う。

「太った?」

「もう、余計なこと言わなくていい!」

 確かにここしばらく運動してなかったから太ったかもしれないけどさ。不貞腐れながら部屋から出たところで「ワン」という、しいたけとは違う鳴き声が聞こえた。

 向けば、隣り合ったベランダに出ていた梨子が子犬を抱いている。

「梨子ちゃん、その子………」

 驚いていると、梨子は腕の中にいるパグ犬の頭を撫でながら「おはよう」と、

「新しい家族のプレリュードよ。よろしくね」

「ええ……」

「苦手だったんだけど、飼ってみたら可愛くて仕方ないの」

 そう言うと梨子は愛おしそうにプレリュードの顔に頬をすり寄せる。「ワン」と会話に加わるように、しいたけが鳴き声をあげた。

「あ、しいたけ」

 庭先に出たしいたけの傍には、親によく似た2匹の子犬が尻尾を振っている。

「しいたけちゃんも家族が増えて嬉しそうね」

「東京から帰ってきたらいきなり産まれてるし、びっくりしたよ」

 少し前にブリーダーが飼っている同じ種の雄犬と会わせたら相性が良かったらしく、気が付いたら懐妊していた。閉校祭の時に大暴れしたのも、身重で気性が少し荒くなっていたからかもしれない。晴れて母親となったしいたけを見て、梨子が呟く。

「ていうか、女の子だったのね」

 知らなかったんだ、と今更ながらに気付いた。

 

 学校に植えられた桜の樹は、この日に合わせたかのように満開の花を咲かせていた。風が吹けば桜色の花弁と、芽吹いた春の香りを運んでいる。

「おはヨーソロー!」

 校門の前で溌剌とした曜に、梨子と揃って「ヨーソロー!」と返す。

「気合入ってるね」

「そりゃ最後だもん。ルビィちゃん達も、もう来てるよ」

 1本の桜木の下に、ルビィと花丸はいた。でもふたりとも千歌たちには気付かず、集まった他の1年生たちと一緒に樹上を見上げている。

「いつまでそこにいるずら?」

「式が始まっちゃうよ」

 ふたりが呼びかけている樹上から声が降りてくる。

「良いから先行って――」

 最後まで言い切る前に、その制服を着た人影は花弁を散らしながら落ちてきた。結構な高さから落ちたにも関わらず、着地してすぐに「見るなああああ!」と喚きながら校舎へと走っていく。

 ああ、善子ちゃんだな、と気付いた。1年前に同じ光景を見た気がする。

「どうしたんだろう?」

 去って行く善子の背を見送りながら、ルビィが呟いた。

 

 記念すべき日なのに騒がしい後輩たちを見ながら、ダイヤは笑みを零す。はしたないけれど、あの騒がしさが自分たちらしい。

「どう、緊張してる?」

 果南の茶化しに「まさか」と鞠莉は応じる。言うなれば今日は、鞠莉の理事長としての最後の日でもある。最後なのは鞠莉だけじゃない。ダイヤと果南は卒業生として、後輩たちも浦の星の生徒最後の日として今日を迎えた。

 記念すべき、と言うべきかは悩ましいが、ひとつの節目に浦の星最後の卒業生として、この3人で名を連ねられることがとても嬉しい。

「むしろ誇らしいですわ、この場に立ち会えることが」

 

 トイレの鏡で髪形の出来栄えを見る善子は涙を浮かべていた。個室ですすり泣いているところをルビィと花丸が説得してどうにか引っ張り出すことができたのだが、この調子では式に出る気を起こしてくれそうにない。

「随分思い切った失敗したずらねえ」

 流石の花丸もからかう気になれないらしい。それほどに善子の髪型が酷いという事ではあるのだけれど。

 いつもは片方だけのシニヨンが今日は両側に。それなら良い。問題なのは、何を思ったのかヘアワックスを使ったらしく髪に不規則な癖が付いてあらゆる方向へはね上がっている。

「最後だから気合入れてセットしたら、いつの間にかこんなになっちゃって………」

 無謀な冒険しなくて良かった、とルビィは内心で安堵していた。姉の晴れ舞台だから、とルビィも髪形を普段とは変えようとしたのだが、ダイヤのいつもと同じにした方が良い、という助言に従って普段通りにセットした。

 だからといって、自分の避けられた失敗を犯した善子を見捨てるほど、ルビィ達も鬼じゃない。せっかく最後の日なんだから、皆で過ごしたい。

「大丈夫」

「マルたちに任せるずら」

 すると花丸は手動式のバリカンを手に取った。電動式が主流の現代では、もっぱら動物の毛玉を刈るのに使う道具だ。

「マルがマルっと整えてあげるずら」

 「がしがし」とバリカンを構える花丸を鏡越しに見た善子は顔を青ざめ、

「そう、それなら心配ない――て、言うわけないでしょうが!」

 

 部室には、空になった棚に真っ白なホワイトボード、申し訳程度のパイプ椅子1脚しか残っていない。初めて入ったときは埃塗れだったのに、今は塵ひとつ落ちていない。スクールアイドル部のみならず、どこの部室も似たような景色だ。年度の大会が終わった部から順々に部室の片付けを言い渡されて、皆で散らかった備品や私物の片付けに四苦八苦しながら、時に談笑しながら、時に寂しさを飲み込みながら撤去作業を進めていった。

「ここ、こんなに広かったんだ」

 部屋の真ん中でパイプ椅子に腰かけながら、千歌は慣れ親しんだ部屋の空気を吸い込む。

「色んなもの持ち込んでたから」

 と梨子が言った。作詞とかダンスとかの教本に、今までの練習ノート。ライブで使う小道具や過去のスクールアイドルのDVD――主に黒澤姉妹の私物――が、所狭しと押し込んでいた。

「ちゃんと整理整頓してれば、ここでもっと練習できてたかもね」

 曜の言う通り、面倒臭がらず日頃から片付けていれば、練習場を探すのに苦心することもなかっただろうに。

「そうかも」

 がら、と体育館側の戸が開いた。入ってきた果南は空っぽになった部室を物憂げな目で見回し、最後に何も書かれていないホワイトボードに向き合う。少し前までメンバーそれぞれの意気込みで埋め尽くされていた白板は、新品同様に全て消されている。

「全部、なくなっちゃったね」

 曜が寂しげに言った。果南にとっては、千歌たちよりも前にこの部室を使っていた。千歌たちが使い始めた頃には僅かだけど果南たちの残した詞という痕跡があったけど、今はもうない。これからは、誰も使うことがないから。残してもしょうがない、と。

「そんなことないよ」

 果南は言った。

「ずっと残っていく。これからも」

 ホワイトボードに向き合う彼女の顔は千歌からは見えなかったけど、その声は何の悲壮も帯びてはいなかった。

 全部なくなったわけじゃない。ここにはもう何も残らないけど、自分たちは残すことができた。あのステージに。ラブライブの歴史に。

 Aqoursというグループを。

 Aqoursがいた浦の星女学院の名前を。

 果南は千歌へと振り向き、

「ほら、しんみりした顔しないの。翔一さんが見たらがっかりしちゃうよ」

 そう言って頬を両手で包まれて、無理矢理に笑顔を作らされる。

 翔一がステージに現れたことは、あの後すぐ皆に伝えた。最初は眉を潜められたけど、そう時間を要すことなく信じてもらえた。皆も感じていたらしい。光になった彼の身体から放たれた、心地良い温かさを。

「不思議よね」

 梨子が呟く。

「何ていうか、温かい場所に居るとひょっこり翔一さんがいそうな気がするの」

 そう、翔一はそこに居るだけで、自宅のような居心地の良さを出してくれていた。その心地良さが、彼が去ってからより頻繁に感じるようになった気がする。彼はもう、この世界のどこにもいないはずなのに。

「新作メニューの料理持って来てね」

 曜が付け足すと、皆で一斉に吹き出した。彼なら本当にやりかねない。でも、もう彼が食べる必要のない所へ往ったことを、曜も理解しているはず。

「もしかしたら、翔一さんも見てくれてるかもよ」

 ようやく頬から手を離してくれた果南に、半ば皮肉を交えながら千歌は言った。

「翔一くんはきっと、わたし達のことなんてちっちゃすぎて見えないよ」

 

 すっかり片付けられた理事長室で、鞠莉はスピーチの原稿に目を通している。鞠莉に文面を考えさせたら絶対にとんでもない内容になってしまうだろうから、ダイヤ監修の下で式典に相応しい文面に仕上げておいた。後は彼女が壇上で文面通りに述べてくれるのを祈るばかりだ。

「鞠莉さん」

「どうしたの、ダイヤ?」

「言っておきますけど、おふざけはNGですわよ。最後くらいは真面目に」

「勿論、そのつもりデース」

 悲しいことに、この理事長の口調は説得力というものがない。閉校祭で好きなだけ楽しませたのだから、この日くらいはしっかりしてもらわなければ。卒業式だけでなく閉校式も兼ねているのだから、来賓や父兄たちを失望させないように。ああ、こんな学校なら統廃合も納得、なんて思われては自分たちの果たした実績も台無しだ。

「1番真面目に、1番わたし達らしく」

 後半が気になる言い回しだ。

「本当です……の――?」

 ダイヤは声を詰まらせた。鞠莉の背にある窓ガラス。そこにピンク色のペンキを「頑張ルビィ」と声に出しながら走らせているのは、他でもない妹のルビィなのだから。

「てへぺろ」

 舌を出すあたり、鞠莉は企んでいたに違いない。盛大に落書きされた窓を開けると、中庭はどこから調達してきたのか色とりどりのペンキによる落書きの場になっていた。曜は壁に大きな制服を描いてご満悦そうに笑っている。

「究極奥義。堕天使として全ての魔力で真の姿になりました!」

 そう両手を掲げる善子の背にある壁には大きな魔法陣。

「いつもの髪形に戻っただけずら」

 花丸のお陰でどうやらその問題は解決できたらしい。他の生徒たちも、中庭で壁だろうがガラスだろうがお構いなく文字やイラストを描き連ねていく。

「これは、何ですの………?」

 その疑問に答えたのは、ペンキを滴らせた刷毛を持つ千歌だった。

「ダイヤちゃん、寄せ書きなんだって。最後に皆で、て」

「寄せ書き?」

 「Yes!」と鞠莉が応じ、

「中庭を開放して、皆で寄せ書きデース」

 教室の黒板で満足はできなかったのだろうか。そう思っていたところで、ルビィから刷毛を差し出される。

「さ、お姉ちゃんも」

 深い溜め息が出た。最後だというのに、どうにも締まりがない。でも、不思議と笑みが零れてしまう。場の雰囲気に口を出す気にもなれず、ダイヤも全校生徒による落書き大会に加わった。

 Aqoursの9人で壁に大きく描いたのは、それぞれ思い思いの色を1筋ずつ並べていった、9色の虹だった。それぞれ個性が違って、取り纏めのない。それでもひとつに束ねてみると、思いのほか美しいと思える。

 描いているうちに飛び散ったペンキを顔や制服に付けた面々を見て、ダイヤは呆れを零す。

「これから式だというのに、こんなに汚れてしまってどうするんですの?」

 同じように呆れながらも、果南が言った。

「でも、昔からこんな感じじゃん、わたし達もこの学校も」

 確かに、何かにつけて大騒ぎしてばかりいた気がする。決勝前夜に宿で枕投げをするグループを輩出した学校だ。こんな風に心の赴くまま楽しんで汚れてしまうのが、自分たちのあるべき姿なのかもしれない。

「何かこうやって見ると、色んなことがあったな、て思い出すよね」

 感慨を抱きしめる曜に続いて梨子も、

「練習したり、皆でふざけたり。ちょっぴり怖い目にも遭ったけど」

 本当に、この1年は色々とありすぎて目が回りそうだった。鞠莉が海外から戻ってきたと思ったらスクールアイドルに復帰して、統廃合阻止のためラブライブ優勝を目指し、更にはアンノウンにアギトにあかつき号。濃い、なんて言葉では足りないくらい。

 でも、いざ過ぎてみたらあ、という間だった。アンノウンの恐怖も「ちょっぴり」で済ませられるくらいに。

 かさ、と芝生に何かが落ちる音がした。見れば、ルビィの足元に刷毛が落ちている。それを手にしていたルビィはというと両手で顔を覆い、肩を震わせていた。そんなダイヤの妹を、花丸が肩を抱いて「駄目だよ」と囁く。

「ルビィちゃん。最後まで泣かない、て皆で約束したんだから」

 「うん……」とルビィは鼻声で応える。最後まで笑顔で。それがこの日に向けた、メンバー達の間で交わした約束だった。門出なのだから、明るい思い出にしよう、と。

「だね、明るく1番の笑顔で」

 千歌は言った。彼女は本当に心から笑えているのか、ダイヤはそのことが心配だった。自分たちの暮らすこの世界で何が起こっていたのか理解できないまま、翔一と別れることになってしまって。

 本当に、アギトというのは不条理だ。望まなくても勝手に裡に芽生えて、人から離れた存在に変えて、そして別の次元へと引き込んでしまう。

 力を持った自分たちもまた、彼と同じ場へ往くことになるのだろうか。問いたところで、ダイヤの裡にあるアギトは答えてはくれない。

 

 

   3

 

 全校生徒、教員、来賓、父兄が揃った体育館で開会した卒業式は、厳かなのかそうでないのか微妙な有様だった。生徒たちは行儀よく椅子に腰かけているのだが、その姿がペンキ塗れだ。それは壇上に立つ、理事長である鞠莉も同じ。

「続きまして、卒業証書授与。代表、松浦果南」

 そんなペンキ塗れのひとりである果南は「はい」と声を張り、壇上へ登る。

「何か変だね。鞠莉から貰うなんて」

 すっかり慣れてしまったが、改めて考えると生徒が理事長だなんて非常識な話だ。

「一生の宝物だよ。大切にね」

 マイクに拾われないよう囁いた後、体育館に響き渡るよう鞠莉は短い祝辞を述べる。

「卒業、おめでとう」

 それは鞠莉もでしょ、という皮肉を喉元に留め、果南は会場の拍手に迎えられながら自席へと戻る。次は、生徒会長からの挨拶。普通ならば2学期のうちに次期生徒会へ引き継がれ任期を終えるはずなのだが、もう来期のない浦の星ではこの式まで、ダイヤが生徒会長のままだった。

「今日この日、浦の星女学院はその長い歴史に幕を閉じることになりました。でもわたくし達の心に、この学校の景色はずっと残っていきます。それを胸に新たな道へ歩めることを、浦の星女学院の生徒であったことを、誇りに思います。皆さんもどうか、そのことを忘れないで下さい」

 一生忘れられないよ、ここでの事は。この学校で過ごした3年間よりも濃い時間は、この先の人生でもう訪れないんじゃないかな、とさえ思える。色んな感情に振り回されて、この場に居ることさえ奇跡じゃないか。

 ダイヤは深く一礼し、宣言する。

「只今をもって、浦の星女学院を閉校します」

 傍に控えていた鞠莉が、奥に置かれていた旗を広げて声を張り上げる。

「わたし達はやったんだ!」

 赤い生地に施された、『Love Live! VICTORY』の刺繍。これが、Aqoursの走ってきた道の果てで掴んだもの。ゼロから1へ。1からその先へ、と声をあげ続けて、手にした輝きの勲章。

 ラブライブの優勝旗だった。

 

 

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