ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト   作:hirotani

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 ライダーは、いつも君たちのそばにいる。
 何があっても君たちと一緒だ。
 生きて、生きて、生きぬけ。
 ライダーは、君たちとともにいる。

――仮面ライダー1号 本郷猛




親愛なる皆へ

 

 あの頃皆に起きていたこと、感じていたこと、思い出せる全てのことを教えてほしい。

 

 わたしが皆にそう連絡したとき、とても驚かせちゃったし困らせちゃったと思う。わたしはあの頃のことは今でも思い出せるけど、皆はどうなのか気になったんだ。あの日々を皆が何を思って過ごしてきたのか。まだあの日々が、皆の中で輝いているのか。

 皆から返事を貰ってとても嬉しかったけど、正直言うとちょっぴり腰が引けたんだよね。これだけたくさんの人が集まると、同じ時間を過ごしても見方や感じ方はこんなに違ってくるんだね。しかもわたしが知らないこといっぱいあったんだもん。びっくりしちゃった。

 皆から貰ったあの1年間の記憶を纏めるのは、とても大変な作業だった。わたしに文才は無いし、花丸ちゃんに書いてもらったらもっと良くなったかもしれない。でもね、これはわたしがやらなきゃ、て思ったんだ。わたしの物語に皆を巻き込んじゃったんだし、翔一くん達の戦いを傍で見ていたのもわたしだから、これくらいの事はしなきゃ、てね。

 あの頃に感じていた期待とか、願いとか、絶望とか、皆が教えてくれた想いの全部を拾い集めて綴ったのが、この本だよ。わたし達と、わたし達のために戦ってくれた人たちの想いはこの物語としてたっぷり詰め込んでおいたから。結構長くなっちゃったけど、それは勘弁してね。

 あれから時間が経って、ふと思っちゃうことがあるんだ。わたし達のしてきた事は何だったんだろう、て。浦の星は無くなっちゃったし、輝きを視たからといってわたしの人生でこれといった劇的なことは今に至るまでは何も起こっていない。

 でも、意味は確かにあったんだよ。Saint_Snowとラブライブの延長戦をして、理亜ちゃんは新しい仲間と新しいグループを作ることができた。新しいAqoursを父兄の人たちが観てくれたから、分校がなくなって静真高校と正式統合になった。

 わたし達が居なくなった後も、Aqoursは続いている。新しいスクールアイドルグループもどんどんできて、皆一生懸命にわたし達のように輝きを探し続けている。

 その子たちを見かけることがあって気付いたんだ。わたし達もあの頃は、こんな風にきらきらしてたんだ、て。わたしが見つけた輝きは、幻なんかじゃなかったんだ。誰もが皆、心の中に光を宿している。その事に気付けて初めて、自分の輝きにも気付けるんだよ。

 そう思ったら何かじ、としていられなくなった。わたし達の起こした奇跡をラブライブ優勝、ていう形で残すだけじゃ物足りなくなったんだ。あの頃の全てを何らかの形にしたくなったのが、この本を書くきっかけ。当然、全部が楽しかったわけじゃなかったよね。辛かったことや怖かったことが毎日のように起こっていたし、それを思い出すだけで今でも手が震える。

 皆も胸の奥にしまっておきたいこともあったはずなのに、全部教えてくれてありがとう。それと辛いことをさせちゃって、本当にごめん。

 全部を打ち明けてくれたからこそ、この本にした意味は確かにあると思う。最後に全員で浦の星に行ったとき、わたし言ったよね。なくならない、て。全部わたし達の一部だ、て。わたし達や他の生徒の皆の胸の奥にしまっておくだけじゃ、いずれはわたし達と一緒に消えてしまうかもしれない。

 だからこうして残しておきたかったんだ。もう校舎もなくなった今だからこそ。わたし達があの学校で過ごした時間を物語として綴ることで、確かな形でずっと残すことができる。どんなに時間が経っても、ここにある言葉を読めばあの頃の事がそのまま残ってる。

 せっかく書いたけど、わたし達からすれば過去の思い出話だし、他人に読んでもらっても何か感じてくれる自信はあまりない。ラブライブ優勝グループの自伝、て宣伝すれば手に取ってくれる人はいるかもしれないし、わたし達の後輩が教科書みたいに読んでくれるかも。でもきっと、わたし達の視た輝きを本当の意味で理解できる人はいないんじゃないかな。

 わたし達の輝きは、わたし達でなければ決して辿り着けないものだった。誰が欠けても、逆に誰かが加わっても同じ光は視えないよ。それはSaint_Snowも同じだよね。理亜ちゃんのグループで視た輝きは、聖良さんと一緒の時とは違ったものだったんだから。後輩には申し訳ないけど、教科書にはなれそうにないかな。その子たちも、その子たちじゃないと駄目な輝きがあるはずだから。

 でも、伝えたいことはあるんだ。アギトとかただの人間とか関係なく、皆の心の奥底には力があるんだ、て。何でそう断言できるのか、答えはひと言じゃ纏められないから物語の中に書いておいたよ。ただ正解を出すだけじゃ詰まらないじゃん。時間があったら、皆にも答えを探してほしいな。見つかったとしても、これからの人生の指標になるような、そんな大それたものでもないけどね。

 この本を読んでくれた人に、わたし達のようになってほしい、なんて願わない。ただ知ってほしいだけなんだ。わたし達のやってきた事の結果に至るまで、たくさんの物語が折り重なってきたことを。

 そうだ、この物語を書きながらふと思ったことがあるんだよね。

 もしわたし達が翔一くん達と出会ってなかったら、どうなっていたのかな、て。彼が流れ着いたのが内浦じゃなくて別の海岸だったら、わたし達と彼らの物語に何かしらの変化はあったのかな。考えてもしょうがないことだけど、つい止まらなくなっちゃった。

 結構長く考えたんだけど、多分あまり変わらなかったんじゃないかな。きっと翔一くんはどこの家に居ても翔一くんだっただろうし、氷川さんはどんな事件でも真面目に捜査するだろうし、葦原さんはどんな事があっても絶対に挫けないよ。それにわたし達も、9人一緒ならどんな事でも乗り越えられる。そうだよね。

 翔一くんとの物語が交わらなければ、わたしはお父さんを喪わなかったかもしれない。果南ちゃんも、葦原さんを好きになっていなかったらもっと穏やかに過ごせたかも。鞠莉ちゃんも、木野さんの過去を背負わずにいたかもね。

 アギトと無関係なら。書きながらそう考えたことは何度もあった。

 でもやっぱり、わたしは翔一くんと出会って良かった、て言える。翔一くんと一緒に過ごしていく日々のなかで、わたしは何が人の居場所を決めるのか分かった気がする。食べ物が美味しいとか、景色が綺麗とか、人が素敵とか、それだけで良いんだよ。その人が居るべき場所で、食べて生きていくことの意味を翔一くんは教えてくれた。

 生きる、ていうのは命を育むこと。戦うのは、育む命に宿る光を護ること。命はいつか必ず終わってしまうけど、全部がゼロには絶対ならないよ。次の世代とか、やってきた事とか、その全部が生きた証としてずっと残っていく。誰かに想いを伝えることができれば、人伝いにどこまでもその人の物語は広がっていく。

 だからわたしは、この不思議な縁で紡がれた思い出を何ひとつ忘れないよ。彼らと交わった日々があるから、「いま」のわたし達がある。護ってくれた人達との記憶も、わたしにとっては輝きに間違いない。

 そういえば、物語を半分くらい語った辺りでわたしは訊いたよね。君の心は輝いているかい、て。答えは――訊くまでもないかな。少なくとも返事をくれた皆は、あの頃に確かな輝きを感じたはずだよね。

 わたし達は輝ける。今日も、明日も、明後日も。物語はその先もずっと続いていく。わたし達の中にはいつだって、あの頃と同じ輝きが灯っている。

 あのライブの日からわたしがどう過ごしてきたかは、敢えてここには書かないでおくね。これはわたしだけの物語じゃなくてAqoursと、翔一くんと氷川さんと葦原さん皆の物語だから。

 お互いどうしているか気になったら、また皆で会おう。それぞれの歩んできた事とか、聞いたら驚くような事、たくさんあると思うんだ。わたしはね、驚かせる自信あるよ。何かは会ってからのお楽しみ。

 内浦に新しいレストランができたから、そこに集まろう。わたし、そのお店には結構顔が効くから。どんなお店かはね、見ればすぐに分かるよ。きっと気に入ると思うんだ。そこのシェフが作った料理を食べながら皆で語り明かそうよ。

 これまでと、今と、これからの物語を。

 

 

   浦の星女学院スクールアイドル Aqours

   リーダー 高海千歌

 






『ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト』 ―完―
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