ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト   作:hirotani

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第3話 悲劇開幕! 戦士は己が愛を貫く‼  

   1

 

 氷川さんの上司だという彼女がこのGトレーラーに乗せてくれたわけだけど、わたしはこの時点ではまだふたりを信用してはいなかった。これだって罠で、これから向かっているのはどこかの研究施設かもしれないのだから。でも、わたし達ではどうしようもない。これから何が起こったとしても、事実として受け入れ震えたり泣いたりするしかない。

 正直、この時のわたしは酷く疲れていた。目の前の事象に困惑し憤る気すら起こらないほどに。

「神経断裂弾が使われたようね」

 葦原さんのお腹の傷を看て、小沢さんはすぐにそう結論を出した。氷川さんは目を剥いて、

「神経断裂弾、て………。あれの使用は承認されなかったはずじゃ――」

「あのドアホの事だから、無断で投入したに決まってるわ」

 苛つきを隠さずに言いながら、小沢さんは医療キットで葦原さんの傷の手当てをしてくれた。弾、ていうから弾丸なのだろうけど、銃創とは思えないほど葦原さんの傷は範囲が広い。まるで傷口に埋め込まれた爆弾が炸裂したみたいに。皮膚の下に詰め込まれている人体組織は生々しさが零れだしていて、自分の身体にも同じものが詰まっていると理解していても目を背けたくなる光景だった。消毒液が染みるのか苦痛に呻き声をあげる葦原さんを見ると、尚更に直視なんてできるものじゃない。

「涼は、大丈夫なんですか?」

 果南ちゃんが訊いた。縋るような響きにわたしも希望がありますように、と祈ったけど、小沢さんは厳しい現実をそのまま言ってのけた。

「素人の私から見ても酷いわね。多分内臓まで達してるわ。ここにあるものじゃ、満足な治療はできないわね」

「じゃあ病院に――」

 ルビィちゃんが提案するけど、「それも無理ね」と小沢さんに撥ね退けられる。

「病院になんて運んだらすぐ警察にバレてそのまま研究所行きよ。下手すれば治療もせず見殺しにして解剖なんて事も有り得るわ。今の警察はもうそういう事もしかねないわよ」

 「じゃあ、どうすれば――」と訊いたのは善子ちゃんだった。この時ばかり小沢さんは逡巡し、力の抜けた声で答えた。

「彼の回復力に任せるしかないわ。普通の人間ならまず助からないけど、アギトと同じ力を持つ彼なら」

 酷く曖昧でいい加減な物言いだけど、誰も文句なんて言えなかった。前にやってみたように皆の力を結集させればまた彼を救えるかもしれないけど、それだって賭けに近いものだ。だって現にこの時、果南ちゃんが葦原さんのお腹にかざした手が朧げな光を放っていたけど、とりわけ変化は見られない。

 結局、治療らしい治療はできず、葦原さんの傷口は消毒して包帯を巻くことしかできなかった。後は本当に、葦原さん自身の力に期待するしかない。

「ごめんなさい。あのドアホを止める事ができなくて」

 小沢さんが弱い声で言った。怒るべきなのかな。わたしには分からなかった。

「どうして、あんな事を?」

 そう困惑しながら訊いたのは曜ちゃんだった。小沢さんは深く溜め息をついて、

「北條透は前からアギトの危険性を主張していたわ。アンノウンが滅びたら次はアギトが脅威になる、てね」

 「そんな………」と梨子ちゃんが声を詰まらせていたけど、小沢さんは続けた。

「勿論、私たちはそれを否定し続けたし、上も真に受けるほど間抜けとは思っていなかったのだけど………」

 そこで小沢さんは一旦言葉を止めて、躊躇するように顔を俯かせた。

「上はどうやら間抜けだったようね。わたし達も、さっきのオペレーションの直後に通達を受けたのよ。法案が可決されて国がアギトを敵とみなした、て」

 という事は、小沢さんや氷川さんの知らないところで、警察と政府は粛々と準備を進めていたんだ。この世界から、アギトという種を滅ぼすための準備を。

「あら、そういえば尾室君は?」

 思い出したように言う小沢さんに氷川さんは呆れながら、

「さっき小沢さんが轢いたじゃないですか」

「ああ、あれ尾室君だったの」

 と一蹴してしまう彼女にどう反応したら良いのか分からず、わたしはただこの不思議な女性の顔をただ眺めていた。

「これから、どこへ向かうのですか?」

 ダイヤちゃんの問いに小沢さんは「そうね」と溜め息をついた。

「どこへ行ったところで、Gトレーラーじゃ居場所が特定される。適当なところであなた達を降ろすわ」

「降ろす、てそれからはどうするんです?」

 そう訊いたのは氷川さんだった。既に結論は出ていたようで、小沢さんはわたし達をしっかり見据えて答えた。

「その先まで私たちが手助けできる事は無いわ。無責任だけど、何とか生きて」

 それはわたし達にはとても残酷な宣告だったけど、憤りを露にしたのはわたし達じゃなくて氷川さんだった。

「そんな、彼女たちを見捨てるんですか? これから全国にG3-Mildが展開されるのに、どうやって逃げ切るんですか?」

「彼女たちは只の人間じゃないわ。アギトよ」

「アギトだから、て――」

「事実として私たちにこれ以上してあげられる事は何もないわ。このまま一緒に居たところで、補給なしにG3-Xを運用することもできない」

 理路整然であり、至極真っ当な小沢さんの言葉に、青い鎧で全身を固めた氷川さんは何も言う事ができる拳を軋む音がするほど強く握り締めた。

「良いんです」

 不思議と自然にその言葉が、わたしの口からこぼれ出た。誰かから言わされたわけでも、妥協したわけでもない。本心だ。

「わたし達なら大丈夫です。9人いれば、何だってできます」

 「でしょ?」となるべく悲壮感を抑えながら皆のほうへ目を向けたけど、同意の表情を誰も浮かべてはいなかった。もう、気合とか精神論でどうにかできる境界がとうに過ぎたことを、皆は理解していた。

 トレーラーが走っている間、わたし達は中で休ませてもらった。ベッドなんてあるはずもない、金属の冷たく硬い床だったけど、泥のように眠ることができた。眠れたことは幸いだったかもしれない。一時でも、あの現実から逃れることができる時間が欲しかった。できる事なら夢を視ておきたかった。どんなに長く眠ったとしても、目が覚めてしまえばそれはほんの一瞬の出来事に置き換わってしまう。

 トレーラーは沼津を出て、静岡県を出て、初めて見る海の広がる場所で停まった。見た感じとしては、内浦と似た過疎化が進み人は殆ど見当たらない漁村といった場所。一瞬戻ってきたのかな、と思ったけど、外に出た瞬間に鼻腔に滑り込んだ潮の香りは内浦とは違うものだった。

「ごめんなさい、本当に。こういうのも無理な話だけど、どうか信じて。あなた達に生きて欲しい、て願う人間もいることを」

 降りたわたし達に、小沢さんは所在なさげにそう言っていた。最初は少し怖く感じたけど、この言葉を向けてくれたことで優しいところもあるんだな、と思えた。出来ることなら、こんな形で出会いたくはなかった。

「氷川君、あなたから言う事はない?」

 小沢さんに促されても、氷川さんは口を固く結んだままでいた。わたし達の方を向こうともせず、重い沈黙の中で葦原さんの粗い呼吸が鮮明さを浮かび上げた。

 小沢さんは言った。

「自分に何かを言う資格なんて無い、て思ってる?」

 図星だったみたい。氷川さんは僅かに目を見開き小沢さんへと口を開きかけるけど、すぐにまた黙ってしまった。

「資格が有るか無いか、なんて関係ないわ。こうして彼女たちと話せるのは多分これが最後よ。言いたい事があればはっきりと言っておきなさい」

 そう再度促す小沢さんは、まるでお母さんみたいだった。氷川さんはしばらく黙った後に、ようやくわたし達の方へ顔を向けてくれた。その双眸には、今にも零れそうな涙が溜まっていたをよく覚えている。

「生きてください。たとえどんなに辛くても、苦しくても」

 氷川さんにとっては、せめてもの誠意だったんだと思う。ずっとわたし達を護るために戦ってきたのが一転して、今度はわたし達を捕まえなければならない現実と理想の板挟みになってしまった葛藤の末に。素直にはい、て答えたら良いのか分からなかった。だって、次に会ったとき氷川さんはわたし達を今度こそ襲いに来るかもしれない。ここで別れてしまったら、本当に敵同士になってしまう恐怖がここにきて腹の奥からせり上がってきた。

「はい、頑張ります」

 吐き気に似た恐怖を飲み込んで、わたしはいつもの明るい高海千歌として、そう答えた。

 

 ふたりが乗ったトレーラーを見送ったわたし達がまず探し始めたのは、その日の寝床だった。降りた時にはもう夕刻で、まだ疲れが取れないからゆっくり休める場所が欲しかった。何より、葦原さんを休ませないといけない。

 適当に民宿でも探そうか考えたけど、重傷の葦原さんを見て怪しまれるのが目に見えた。着の身着のままの高校生9人が重症人を背負っているなんて、すぐ通報されてわたし達を血眼になって探しているG3-Mildたちが出動するだろう。

 幸いというべきか複雑だけど、贅沢を垂れなければ雨風を凌げる場所はすぐに見つかった。海岸のすぐ近くに建てられた、地元漁師たちの道具小屋。内浦にもこの手の小屋はあったから、見つけるのは容易だった。去年にAqoursで手伝った海の家みたいな、年季の入った小さな小屋だった。ドアには錆びついた南京錠が掛けられていたから、果南ちゃんの念力で壊して中に入った。

 他人のものを勝手に壊して無遠慮に上がり込むのは気が引けたけど、なりふり構ってはいられない。

 この時、わたしはもう決心――というよりも諦めがついていた。もう元には戻れないんだ。多分わたし達は内浦に、浦の星に戻ることは叶わないだろう。

 中は海水の匂いが染みついた網やロープが乱雑に置かれていて、それらを退かして何とか全員が座れるくらいのスペースを作った。漁師も休憩に使っていたのか敷布団が置いてあったから、それを敷いて葦原さんを寝かせた。

「ありがとう。大分楽になった………」

 擦れ声ではあったけど、仰向けになった葦原さんはそう言った。お腹に巻かれた包帯から血が滲み始めていた。果南ちゃんは必死に葦原さんのお腹を手で押さえた。力で何とか傷を癒そうとしたみたいだけど、それでも止めることはできず白い包帯には赤い染みが範囲を広げていった。

 アギトだから、もしかしたら。そんな期待はもうできなかった。アギトだって元は人間。本質としては多少強くなっただけで、不死身なわけじゃない。

「どうして、誰も殺さなかったの?」

 慰め程度の治療を続けながら、果南ちゃんは訊いた。そうだ、確かにあの時の葦原さんは北條さんやG3-Mildたちを誰も殺してはいなかった。変身した彼なら、あの場を血染めにすることなんて容易いはず。手心なんて加えなければ、こんな怪我をすることもなかったのに。

 わたし達の疑問に、葦原さんは息も絶え絶えだったけど答えてくれた。

「殺せば、奴らの思う壺だ………。アギトが化け物とみなされて、皆が殺されてしまうかもしれない………」

 わたし達を撃たせる口実を与えないため。その想いやりで殺意を抑え込んだ葦原さんを、警察は危険生物とみなした。その事実が悔しくて、わたしは思わず泣いてしまった。勿論、彼を想う果南ちゃんも。

 「泣くな」と葦原さんは言った。

「奴らを恨まなくていい。少なくとも俺は恨んでいない。君たちが生きていてさえくれれば、それで――」

「ふざけないで!」

 大声でそう遮ったのは、既に頬を濡らした鞠莉ちゃんだった。果南ちゃんの治療に加わり、手から朧げな光を傷口に当てながら口走った。

「あなたも薫も勝手すぎる。自分だけ犠牲にさせてたまるもんですか!」

 「そうずら」と花丸ちゃんも加わり、

「絶対に助けるずら! 死なせないずら!」

 「そうです」「諦めないで」とルビィちゃんに善子ちゃんも、葦原さんの傷を治そうと手から光を放つ。

「ありがとう」

 呟いた葦原さんの目から、大粒の滴が零れた。その表情はとても穏やかで、苦痛を感じているのか疑ってしまうほどだった。

 多分、本当に苦痛はなかったんだと思う。苦痛を感じられないくらい、葦原さんの身体から生命は流れていた。彼の裡にあったのは、ひとりぼっちじゃない事への安堵。力のせいで孤独に過ごしてきた彼は、この瞬間を最大の幸福として享受することができた。わたし達で良かったのかな、なんて思うのは無粋だろう。本人が望んだことなのなら、ただ何も思わず叶えてあげることが情けだ。

 次には曜ちゃんと梨子ちゃんとダイヤちゃんも加わり、皆で葦原さんの治療に努めた。わたしだけは、ただ葦原さんの額に浮いた汗をハンカチで拭ってあげることしかできなかった。

「波の音が同じだ」

 耳元でなければ聞き逃してしまいそうなほど小さく、葦原さんは囁いた。わたし達がいたのは海岸の漁師小屋だったことを思い出すと、耳を澄まさなくても波の音がよく聞こえた。砂浜に押し寄せ、また引いていく飛沫の音色が一定間隔で繰り返されていく。

 うん、確かに同じだった。朝目覚めたときと夜眠るとき、1日の始まりと終わりにいつも聞いていた内浦の音だ。葦原さんも海のある漁村で生まれ育ったらしい。

 葦原さんの目蓋が重そうに伏せられていく。「涼?」と果南ちゃんが呼びかけると、葦原さんは穏やかに微笑んで、

「少し、眠るよ――」

 目蓋が閉じられ、すう、と呼吸が寝息へと変わった。いつも険しい顔ばかりな印象だったけど、彼の寝顔はとても柔らかい。果南ちゃんがこの人を好きになった理由が分かった気がした。

 葦原さんはそのまま、再び目を覚ますことはなかった。

 わたし達はずっと傍にいて傷を癒し続けたけど、彼の鼓動と呼吸がいつ終わってしまったのか、その瞬間を誰も目撃してはいなかった。気がついたら呼吸が止まっていることに気付き、次いで鼓動も止まっていたことに気付いた。

 彼の最期が安らかで、果南ちゃんに看取ってもらえたのは幸いだっただろうか。苦しまずに逝けたことに安堵しつつも、わたし達は自分たちの無力さに打ちひしがれた。特に果南ちゃんは。最愛の人に去られた彼女の悲しみは、到底わたしに推し量ることなんてできない。

「涼を海に還してあげたい」

 亡骸に縋り付いて泣き明かした後、果南ちゃんは枯れた声でそう言った。何でも葦原さんの故郷で、昔は水葬の風習があったらしい。生命は海から生まれてくるから、生命を終えたら身体を海に還さなければならない、と。

 他の皆はそれに同意した。わたしも異議はなかった。火で焼いたり土に埋めたりするより、大好きだった海で朽ちていくのが葦原さんの望みである事が確信できた。海はきっと、人やアギト関係なく受け入れてくれる。アギトだって、この世界の海から生まれた生命のひとつのはずだ。

 その日の夜に、わたし達は海岸に並べられていたボートをひとつ拝借して海に出た。流石に全員は乗られないから、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、花丸ちゃん、そしてわたしの4人で葦原さんを弔うことにした。

 ボートで沖まで着くと、すっかり冷たくなった葦原さんの身体を4人がかりで持ち上げゆっくりと海面に沈めた。もう呼吸しない亡骸は抵抗もなく真っ暗な海底へと落ちて、わたし達はしばらくの間ずっと彼を沈めた1点を無言のまま見つめ続けた。海中で実は生きていた葦原さんが、息苦しくなって浮かんでくるんじゃないか、て期待もあったのだと思う。でも、そんなのは慰めにすらならないまやかしだ。もう彼の身体が息を吹き返すことはない。海の底で他の生き物たちの糧になり、そう時間を掛けず肉体は朽ちていくだろう。

 現実をようやく受け入れたわたし達が海岸へ戻る頃には、東の空が白み始めていた。

 

 葦原さんを喪った後のわたし達はすぐに小屋を後にした。元々長居するつもりもなかった。長くひとつの場所に留まっていたら、警察の捜査が及んでしまう。

 わたし達が降ろされたのは沼津から列島の反対側に位置する日本海の沿岸部で、土地勘もなかったからひたすらに海沿いに北上する事にした。海が近くにあると安心した。潜れば魚がいるから、食べ物には困らない。

 釣りや(もり)とかの道具は使わず、漁は超能力で行った。海中にいる魚の位置を探り当て、振動を与えることで魚を痙攣させると海面に浮きあがってくる。わたしにはよく分からないやり方だけど、皆もよく分からず感覚でやっているようだった。超能力は便利だけど、取り扱い説明書なんて無いからどんな能力が使えるのか、どこが限界なのかは各々が自身で見極めていくしかない。

 魚だけ食べるのもすぐに限界が来たから、やむなく立ち寄った畑の野菜を盗むなんて事もした。最初は抵抗があったけど、空腹に負けて何度も繰り返していくうちに罪悪感なんてものは消えてしまった。食べないと死んでしまう。そう正当化しながら往く先々で後ろめたい感情を常に抱えながら移動している間にも、わたし達は情報収集を欠かさなかった。

 スマホで見るネットニュース、コンビニで売っている新聞。食堂で流れているテレビのニュース番組。至る所で世間の情勢は垂れ流しも同然に溢れている。

 逃げ続けた3ヶ月の間に、世界は本格的にアギトの排除にあたっていた。各報道機関は世界中でアギトの力を持つ人々の起こした事件を流し、人々は自分達と同じ姿をした彼らを化け物と口々に囁き始めた。

 まだG3-Mildは日本にしか配備されていないみたいだけど、近いうちに量産体制が整備され世界各国の軍や警察に採用予定らしい。

 これはハルマゲドンだ。立ち寄った小さな商店のテレビで、何かの専門家の老人が言っていた。聖書にある、世界の終末に起こるとされる最終戦争。

「この程度で世紀末だなんて大袈裟な」

 商店のお婆さんはそう笑い飛ばしていた。

 そっか、世界はもうすぐ終わるんだ、とわたしはぼんやりとした頭で呑気な言葉しか沸かなかった。ひたすら逃げ隠れる日々に疲れてしまっていたのかもしれない。終わるのなら、どんな形でも構わなかった。たとえ世界が終わろうとも。

 でも世界は、そう簡単には終わってくれるものでもなかった。元から人間を超えたアギトは警察相手に奮闘し続けていて、警察もどんどん増えていくアギト相手に対処が追いついていなかった。まだ破滅には至っていなくても、あれから数ヶ月で世界は確実に混沌へまっしぐらと向かっていった。

 そんな世の中に対して無関心ではなかったのだけど、逃亡中のわたし達に外へ目を向ける余裕なんてなく、ただその日をどう生き抜くかで精いっぱいだった。我ながらよく生き延びたと思う。食べ物や必要なお金は盗んで手に入れ、寝床は空き家や公共施設に侵入して確保し、稀に暴漢に襲われれば超能力で撃退。多分、犯していない犯罪は殺人くらいだと思う。

 それでもわたしが諦めることなく逃げ続けたのは、皆が一緒に居てくれたこと、それと翔一くんの存在だった。アンノウンからこの世界を護り抜いた翔一くんなら、この混沌を治めることができるかもしれない。そんなまやかしでも信じなければ、到底あの日々は乗り越えられなかっただろう。

 

 





 次回予告

 涼が倒れ、悲しみを背負いながらもAqoursは歩き続ける!
 絶望などではない! 受け止めた愛に生きるためエエ‼

 次回 シャゼリア☆キッス 24.7
 戦え! 振るう拳は愛のために‼
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