ラブライブ!サンシャイン‼︎ feat.仮面ライダーアギト 作:hirotani
1
意識が水面下へと浮かび上がろうとするも、暗い底へと遠ざかっていく。かと思えばまた浮かぼうとしてきて、そんな浮き沈みを繰り返すうちに果たして自身の感じているものが夢なのか現実なのか境界が曖昧になってくる。
できることなら夢であってほしい、と涼は何度思ったことだろう。現実は苦痛しか与えてくれない。夢なら安らぎを得られる。それが偽りだとしても、夢の中なら死んだ父にも会えるし、果南も笑顔を向けてくれる。
その時の感覚を、涼は現実と早くに気付いていた。夢にしてはあまりにも鮮明すぎる。それに臭気。夢に匂いはない。しゅうう、という音が耳に響いた。気体が狭い出口から高圧で噴出する音だ。制汗剤や整髪料のスプレーで馴染みのある音だろう。そして鼻をつく臭い。涼だって独り暮らしで自炊しているのだから、この臭気の正体がプロパンガスだと分かる。ガス漏れを住人に知らせるため人工的に付加された臭い。それが高圧で噴出されているということは、いま涼のいる場所は可燃性のガスが充満し、火気がなくても長く吸い続ければ一酸化炭素中毒を起こす危険がある。
逃げなければならない状況だ。でも、意識は確かにあるにも関わらず、涼の体は金縛りのように目蓋も開けられないほど重い。従って視覚は遮断されていて、聴覚と嗅覚で状況の危険度を知れても動けなければ意味がない。
ただ恐怖しかない。赤ん坊が泣く理由が分かった。人間なら誰もが赤ん坊だった頃があってその頃には皆が泣き喚いていただろうが、そんな生まれて間もない頃にどうしてあんなに泣いていたのか、なんて理由を覚えていられる者はいない。赤ん坊は怖いから泣く。空腹でも自力で食べ物を調達できず、排泄しても股間に溜まった排泄物をどう処理すればいいか分からない。生きていく術を身に付けていなく、どうしようもない理不尽さの恐怖に泣くことしかできないからだ。
そういう意味では、今の涼は赤ん坊よりも弱い存在だった。喉に力が入らないから、泣き叫ぶことができない。赤ん坊が助けを求める泣くという唯一の術すらも奪われ、ただ死へと確実に迫っている。
せめてガスを吸いすぎないように、と浅い呼吸を繰り返すが、もはやそれも無意味だ。酸欠のせいか耳鳴りがしてくる。脳が溶けそうなほどに意識がまた朦朧としてきた。そのせいで酸欠状態の体が無意識に息を大きく吸って、そのせいでガスを肺いっぱいに取り込んでしまう。生理反応で咳き込むが、か細すぎて肺への異物を吐き出すには至らない。
死ぬのか、俺は。
思考がままならなくなった意識のなかで、それだけがはっきりと認識できる。生命として至極シンプルな2択。この状況で生き延びられるか否か。思考せず本能のみで生きる微生物でもその判断はできる。涼の本能は後者を悟っていた。抗おうにも術がない。赤ん坊よりも弱くなった存在には、ただこの苦痛が早く終わることを祈る他ない。
そして、苦痛がようやく終わる。
ただし前者のほうで。
ガスの噴出音が止まった。どたどた、という足音の後、しゃ、と何かが滑るような音と共に目蓋を透過した光を感じられる。続けて体を持ち上げられて、なすがままに涼の体は床を引き摺られていく。しばしの移動を経て無造作に床に横たえられると、風に頬を撫でられる。ガス臭さが幾分薄れて、新鮮な空気を取り入れようと大きく息を吸う。
「お前、どういうつもりだ!」
咳き込みながら、男の声が怒号を飛ばしている。この男が涼を助けたのか。
「おい真澄!」
「………私たち皆死ぬのよ」
真澄と呼ばれた女の声で、涼はふたりが怪物に襲われたあかつき号の関係者と気付いた。どうやら、あのとき意識を失った涼を彼らが介抱してくれたらしい。でも、関谷真澄にとっては不本意だったらしい。
「この男のせいで」
「この男はな、俺たちのこと助けてくれたんだぞ。忘れたのか!」
「信用できるもんですか! あの姿を見たでしょ? この男は化け物よ、生かしておくべきじゃない」
「それは俺たちが決めることじゃないだろ! 第一お前、こんな勝手なことして、木野さんが知ったらただで済むと思うのか?」
「木野さん何か言ってた?」
「いや、結局会えずじまいだ。また奴に襲われてな」
その言葉を受けた関谷の声に嗚咽が混じる。
「もう駄目よ私たち………」
「とにかくもう2度と勝手なことはするな、分かったな」
この場所は危険だと、本能と理性の両方が訴えてくる。介抱するふたりは涼を殺そうとする者と救おうとする者とで別れ、危うい境界のなかに涼は据えられている。
でも体は思うようにはいかない。ひとまずこの場の危機を乗り越えた安堵か、意識が急速に遠のいていく。目を閉じたまま、涼は再び深い眠りへと沈んでいく。
2
家が隣同士ということもあって、梨子と千歌はバルコニー越しに顔を合わせることが多い。夜は近所迷惑になってしまうから、ということでメールでのやり取りをするようにしているが、千歌がスマートフォンを充電し忘れて直接、ということが結構ある。毎回呆れながらも梨子が直接の対面に応じてしまうのは、互いに顔を見られることにひとつの充実感を覚えているに他ならない。
その夜、日が暮れても蒸し返すような湿気のなか、寝間着に着替えて部屋でくつろいでいた梨子は千歌からベランダに呼び出された。
「歌?」
告げられた案を反芻すると、千歌は「うん」と応じ、
「ダンスは無理かもだけど、一緒にステージで歌うとかなら間に合うんじゃないかな、て」
唐突だが、昼間の練習での話だ、とすぐに分かった。むつ達も抱えていた輝きたい、という願い。それを「みんな」で叶えるために、Aqours9人だけでなく学校の皆で歌いたい、と。とても素敵な演出だと思う。梨子だって、全力でその熱意に応えたい、と思う。
「できるの?」
梨子の向けた不安も、千歌は「うん」と一蹴してしまう。
「皆が歌って、上手くいって、それで有名になってたくさん入学希望者が来れば、学校も存続できるし」
「千歌ちゃん、でもね――」
告げるべきことを告げようとするが、「それと」と遮られる。
「今はゼロを1にしたい」
そのどこまでも真っ直ぐで迷いのない瞳に、梨子は声を詰まらせる。千歌は続ける。
「今日、むっちゃん達と話してて思ったの。何で入学希望者がゼロなんだろう、て。だってここにいる人は、皆ここが大好きなんだよ。街も学校も人も大好きなんだよ。それって、ここが素敵な場所、てことでしょ。なのにゼロってことは、それが伝わってない、てことだよね」
住めば都、というように、その場所の本当の魅力とは、そこに身を留めておかなければ分からないのかもしれない。梨子だって、内浦に越してきたときの第1印象は「田舎」だった。海があって富士山が見える。ただそれだけの場所。でも千歌と出会って、Aqoursとしてスクールアイドルを始めて、ようやくこの土地への思慕が裡に灯った。ただ旅の休息として、一時だけの滞在では全てを理解することは難しい。ましてやそれをスクールアイドルの出身地、という文言だけで宣伝するなんて。
でも、千歌は絶対にやめない、と梨子は確信できる。
自分たちがいる、自分たちを育んでくれたこの居場所を皆に知ってもらいたい、という願いのままに。
「ラブライブがどうでもいい、てわけじゃないけど、ここが素敵な場所だ、てきちんと伝えたい。そして、ゼロを1にしたい」
その意思は梨子も同じだ。梨子もこの土地が、ただの地方集落じゃない、と多くの人々に知ってもらいたい。それに、自身をピアノの呪いから解き放ってくれた千歌たちに、彼女に巡り合わせてくれた浦の星に恩返しがしたい。
しばし俯いていた視線をあげると、梨子は視界に映ったものに目を剥いた。
「ち、千歌ちゃん……。う、後ろ………」
首を傾げる千歌の背後を指さしながら、梨子は「お、お、お、お化け………」と声を絞り出す。十千万は創業100年を越える老舗らしい。アンノウンなんて不可思議なものがいるのだから、幽霊だって荒唐無稽な存在じゃない。背後を振り向いた千歌も目を剥いて、
「お母さん!」
「お母さん! その人が⁉」と上ずった声をあげてしまう。確かに千歌と顔立ちは似ているが、千歌よりも小柄で身内だとしても妹にしか見えない女性は幼さのある顔に不相応な穏やかな笑みを浮かべる。
「そうです、私が高海千歌の母です。あなたが梨子ちゃんね」
混乱のあまり口をまごつかせながら、梨子はなんとか声をひねり出す。
「はじめまして。こんばんは」
「はじめまして。こんばんは。美人だね」
唐突なお世辞に照れ隠しで顔を背けながら、未だ思考が落ち着いていない梨子はつい口から漏らしてしまう。
「それほどでも……、あるかな」
千歌からの冷たい視線を感じて失態を悟るが、千歌は気を遣ってか掘り返さなかった。それがかえって梨子にとっては惨めだったのだが。
「ていうかどうしてここにいるの? 東京だったんじゃないの?」
そういえば母親は東京で仕事をしている、と聞いたことがある。詳しいことは娘の千歌自身もあまり知らなかったようだけど。
見た目は完全に少女なのだが、千歌の不躾な声色に穏やかな表情を崩さない余裕な佇まいは、確かに母のような奇妙な貫禄がある。それにしても一体何歳なのだろう。十千万の温泉には美肌の効能があるらしいが、ここまでとは。
「そうだけど、何か千歌がスクールアイドルとかいうのやっているから1度見に来て、て志満から連絡があって」
「また余計なこと………」
「あと、翔一君が記憶を思い出した、て聞いたから」
千歌の母からしたら何気ないひと言だったのかもしれないが、それは千歌の表情に陰りを帯びさせる。
「どこかに出掛けたみたいだけど、連絡は来てないの?」
「うん………」
物憂げな娘の顔を千歌の母は覗き込むが、隠すように千歌は顔を背け、
「とにかく今、梨子ちゃんと大事な話してるんだからあっち行ってて」
「はいはい、分かった分かった」
と千歌の母は奥へと引っ込んでいくが、その足が止まる。
「あ、1個だけ良い?」
「何?」
「今度は、やめない?」
その問いに千歌はすぐ答えない。梨子のほうへと向けられているはずの瞳は梨子を越えて、遥か遠い先を捉えている。
「うん、やめないよ」
その親子にしか分からない答えに、千歌の母は微笑を零すと今度こそ奥へと消えていく。
「良いお母さんね」
梨子が言うと、千歌は照れ臭そうに「そうかな?」と顔を逸らす。
「とにかく、ラブライブ目指して!」
そう、今は何かと不安もあるけど、目の前のことに注力すべき。本番に備えて、よりパフォーマンスの研鑽に努めなくては。
伝えたい想いを伝えるために。
千歌に負けじと、梨子も力強く応じた。
「うん!」
3
梨子との談笑を楽しんだ後にベッドで横になった千歌は、微かに聞こえるバイクの音に気付いて跳ねるように起き上がった。廊下に出て窓を開ける。その時既にバイクの音は消えていたが、代わりにくうん、というしいたけの甘える鳴き声が。しいたけは本当に懐いた人間にしかあんな声は出さない。
千歌は急いで外に出た。玄関先の犬小屋で寝ているしいたけは千歌に気付いて頭を上げるが、そこにはしいたけと千歌の他には誰もいない。でも、誰かがいた、という証拠はあった。旅館の駐車場に停められている銀色のバイクが。
迷わず裏庭の菜園へと走る。菜園では力強く茎を伸ばしたキュウリとトマトの苗が逞しく実をつけている。夜の暗がりのなか、屋内から漏れた光に照らされた朧気な背中を、千歌は恐る恐る呼んだ。
「翔一くん……?」
千歌の声に、驚いたのか咄嗟に顔が向けられる。宵闇のなかで、その兄に等しい青年は千歌を見て太陽のような笑顔を浮かべた。
「千歌ちゃん」
その顔を見て裡に沸いたのは、喜びよりも安堵だった。その笑顔は記憶を失っていたときと変わりない、千歌にとっては紛れもなく津上翔一のものだった。
「ただいま」
「おかえり」
いつもは逆なのにな、と思いながらも、千歌はその言葉に慈しみを覚える。翔一はいつもこんな想いを裡に満たしながら、学校や練習帰りの千歌を待って食事の用意をしてくれていたのかもしれない。
「あ、そうだ。志満姉たち呼んでくる。今日ね、お母さんも帰ってきたんだ」
家に入ろうとする千歌を、「いや、いいよ」と翔一は制す。
「またすぐ行くからさ。ちょっと畑が気になって戻ってきただけだから」
畑が気になって。その翔一「らしさ」に千歌は思わず笑ってしまう。そういえば翔一がアギトと知ったとき、彼は家出したにも関わらず畑を気にしてすぐに戻ってきた。今回もしばらく帰れないかもしれない、と言っておきながら、家を空けていたのは今日1日だけ。
ふたりは縁側に並んで腰かける。翔一は摘み取ったトマトを食べると満足そうに頷いた。
「ねえ翔一くん。前に子供の頃トマトが嫌いだった、て話してたよね」
「うん。あの頃に食べたトマトの美味しさ思い出したら、千歌ちゃん達にも食べてほしくてさ」
また会えたら、どんなふうに喋ったら良いんだろう。そんな不安が、楽し気に過去を話す翔一を見て一気に消滅する。いや、そもそも最初から不安になる必要なんてなかった。あのトマトのフルコースを振る舞ってくれたとき、記憶を取り戻しても翔一は翔一のままだったのだから。
「じゃあやっぱり思い出したんだ。過去のこと」
「うん」
「それで、今日はどこに行ってたの?」
「姉さんの恋人だった人に会いに行ってたんだけど」
「お姉さん? 翔一くん、お姉さんいるんだ。どんな人?」
「明るい人だったよ。明るくて優しい人だった」
「だった?」と千歌は尋ねた。何故過去形になってしまうのだろう。
「ほら、よく同じ夢に出てくる人がいる、て言ってたじゃん。あれ姉さんだったんだよ。姉さんが死ぬ少し前、一緒に海にドライブに行ったことがあってさ。そのときのことを夢に視てたんだよ」
肉親の死を自ら打ち明けたにも関わらず、翔一はいつもと同じあっけらかんとした様子を崩さない。本人よりも千歌のほうが衝撃を受けていた。せっかく思い出した肉親が既にこの世にいないだなんて。翔一は既にそのショックを乗り越えたのだろうか。落ち込んでも立ち直りが早いな、とは思っていたけど、肉親との別れでもそんなにも簡単に折り合いをつけられるものだろうか。千歌はまだ、父の死を全て受け入れることができずにいるのに。
「仲、良かったんだ」
それしか言葉が見つからなかった。でも翔一は笑顔のまま亡き姉のことを語ってくれる。
「うん。小さい頃に親が死んでさ、ずっと姉さんと一緒に暮らしてたんだ。高校卒業して俺が調理師学校に入った時も、授業料は姉さんが払ってくれて。好きなことやれ、ていつも俺のこと応援してくれてさ」
会ったことはないけど、千歌は翔一の姉を容易に想像することができた。普段の翔一を見ていれば分かる。姉の海よりも大きな愛が、翔一の笑顔を育ててくれたのだろう。
翔一の声が影を帯びる。
「だからどうしても信じられないんだよ。あの姉さんが自殺したなんて」
「自殺………?」
「警察はそうじゃないか、て。でも俺は違うと思うんだ。姉さんのことは俺が1番よく知ってる。きっと何かあったんだよ」
「それを調べるために会いに行ったんだ。お姉さんの恋人だった人に」
笑顔が消えた翔一は、見慣れない険しい顔つきで「うん」と頷く。
「それで、どうだったの?」
「結局会えなくてさ。来週の日曜日あたり、またその人のところに行こうと思うんだけど」
来週の日曜日。ラブライブの地区予選と同じ日だ。
「俺が記憶をなくしたときも、その人に会いに行く途中だったんだ」
これから会うということは、その時は会えなかったのだろう。記憶を失うほどの出来事に見舞われて。
「でも何があったの? 何で記憶をなくしたの?」
「そこのところがまだ思い出せなくて。フェリーボートに乗ったまでは覚えてるんだけど」
「じゃあ、フェリーで何かあった、てこと?」
「うん、多分………」
そのフェリーでの出来事に、全ての核心がある気がする。でもその部分の記憶は、まだ翔一のなかに蘇っていない。
できれば、あまり過去にまつわる話をこれ以上はしたくなかった。思い出したのに家族はこの世にいない。千歌だったら絶望して、思い出さなければ良かった、と思うだろう。でも翔一は、絶望よりも疑問が大きい。姉を失ったことへの悲しみではなく、何故自ら死を選んだのか、と。
「ねえ翔一くん」
「ん?」
「どんな人なの? お姉さんの恋人だった人、て」
「分からない。俺初めて会うからさ」
「どうしても、その人に会わなくちゃいけないの?」
少しばかりの逡巡を挟み、翔一は「うん」と頷く。ダイヤの言ったことが現実味を帯びてくる。記憶を取り戻した翔一は、これからのことを決めなければならない。本来の名前と戸籍に戻り、その上でこれからの人生をどう生きていくのか。もはや記憶喪失だった頃のように、毎日高海家で家事をして野菜を育てればいい、だなんて楽観は通用しない。
姉の恋人だったその人物に会いに行くのは、その準備のようなものだ。真実を知り、思い出してしまった過去と折り合いをつけ、これからの事を決めるための。
「その人に会いに行くまで、ここにいてくれるよね?」
すがるように千歌は訊いた。贅沢をいえば、ずっと十千万にいてほしい。もう肉親はいないのだから、この家を実家として内浦に留まってほしい。千歌は喜んで翔一の家族になる。たった2年でも兄妹同然の関係を築けたのだから、これからだって家族でいられるはずだ。母も志満も美渡もきっと歓迎してくれる。
でも翔一は、険しそうに眼を背けて「ごめん」と呟く。
「それまで色々なとこに行こうと思うんだ。ちょっと探したい場所があるんだよね」
「探したい、場所?」
「うん、姉さんと初めて一緒に行った海。俺まだ子供だったから、どこの海か覚えてなくてさ。そこの女の子と一緒に紙飛行機飛ばしたのは覚えてるんだけど」
その海を見つけることができたら、そこが翔一の次の「居場所」になるのだろうか。それは嫌だな、と千歌は顔も知らない翔一と紙飛行機を飛ばした少女に嫉妬を覚える。
「ねえ、お願いがあるんだけど」
「何よ?」
「来週の日曜日、ラブライブの地区予選があるの。絶対通るからお祝いにご馳走作って。こないだのトマト料理に負けないくらい、すごいの」
努めて千歌は明るい声色で言った。いつも料理の献立をリクエストした時と同じように、翔一は満面の笑みで応えてくれる。
「うん、期待しててよ。すっごいご馳走作っちゃうからさ」