千雨が引きこもり生活を取り戻す物語   作:MRE

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特異点F 2

「そもそもカルデアスを灰色にする異変って何なのよ……。

 未来が見えなくなるって事は人類が消えるという事……」

 

 アニムスフィア所長の独り言の『異変』という言葉につい反応してしまう。

 幻想郷の異変のように、解決した後は昨日の敵は今日の友とばかりにわいわいやれる敵だと良いのだが、初手で人類滅亡させるような奴だし、無理だろうな。

 

 というか、この私と綾瀬に抱き着いて泣きわめいてるネギ先生をどうするべきか……。

 

「うわああああん、夕映さんごめんなさい―――!!」

 

「ネギ先生ただ謝られても、何の事だか分からないですよ」

 綾瀬は困った顔をしながらも、笑みを湛えてネギ先生の頭を撫でる。

 

 ごめんなさいを延々と繰り返すその様は、見ていてイライラする。

 

「いつまでも抱き着いてるんじゃねー!」

 綾瀬の手をどけて、ネギ先生にゲンコツを落とす。

 

「召喚早々、取り乱して泣き喚いてんじゃねー!

 なんで謝ってるのかちゃんと説明しろ!」

 

「英霊の座は平行世界の記録も見れるんです」

 涙を拭い、目を真っ赤にしてる顔が懐かしい。最近のネギ先生は男らしく成長してドキッとさせられるから、昔の子供先生時代も可愛い。今なら雪広の気持ちが少しは分かる。なんて馬鹿な事を考えてしまう。

 

「だから、始まりの魔法使いとの戦いに敗北して体を乗っ取られた世界で、死なせてしまった夕映さんを紐付けして生かして何十年も利用してしまったのが申し訳なくて……」

 

「え、死んだ後も一緒に?」

 綾瀬、顔を赤らめるな!

 

「千雨さんの方は、魔物化のせいで僕は若いままなのに、千雨さんがしわくちゃのおばあちゃんになって死別したのを思い出して悲しくなっちゃいました」

 

 自分で紅潮しているのが分かるくらい、顔が熱い。

 

「あー、中学時代の恩師と年の差婚した大統領もいるし、私とネギ先生なら中学生の頃ならアレだったけど、今なら普通か……」

 

 綾瀬、私を睨むな!

 

「その言い方だと、いろいろな可能性の世界の記録を見たんですよね?」

 

「はい、3-Aの生徒とはほとんど結婚してます!

 もちろん、夕映さんもですよ」

 

「そんな事を誇らしげに叫んでんじゃねー!」

 さらにゲンコツを落とす。

 

 まさか、孫の超にまで手を出してたりしねーだろうな。

 

 頭を押さえて涙目で見てくるネギ先生。綾瀬を除く面々からはジト目で見られてる。

 

「そんな事よりも、ネギ先生!

 今起きている事件の犯人や犯行動機はご存知ですか?」

 自分とも結婚していた事が分かると、何とも言えない表情で話題を変える綾瀬。

 佐々木小次郎がニヤニヤとマスターを見ているのに気づき、さらに恥ずかしがっている。

 肩をつかんで揺さぶる綾瀬の髪がネギ先生の鼻先に触れている。

 

「ふぇ、は、は」

 

 あ、ヤバイ。これは懐かしのアレだ。

 

「令呪をもって命ずる。ネギ先生、くしゃみをする時は私の方を向くな!」

 

「はっくしょん!」

 

 ネギ先生の武装解除の魔法が暴走し、藤丸とキリエライトが燃える街で強制的にエクストリームストリップする。

 

「くだらない事に令呪使うんじゃないわよ!」

 

 アニムスフィア所長の怒鳴り声を聞き流して裸にされた二人に謝る。

 Dr.ロマンに指示して、すぐに藤丸の替えの服を転送してもらった。

 キリエライトはデミ・サーヴァントだけあって、自分の意思で甲冑という名のハレンチ衣装を再度着れるようだった。

 

 今後の不安を解消するために、再度令呪を使いネギ先生がカルデアの仲間に向かってくしゃみをしないよう縛った。

 

「1日に1画補充されるとはいえ、2画も無駄遣いするなんて信じられません」

 

「でもさ、マシュ。これでもう裸にされる心配はないよ」

 

 最初からこの調子だと、この先が思いやられる。私自身も半信半疑だった時の態度のせいで、カルデアでの人間関係がマイナススタートだから、本当にどうしよう。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 結局、ネギ先生はこの先の展開を知らなかった。

 別の世界の私と綾瀬は守秘義務を守って話さなかったのか、巻き込まれなかったのか、はたまた人類滅亡が起きなかったのかは分からない。

 

 医療班トップのDr.ロマンによる休憩の指示で食事の時間となった。

 転送してもらったレーションだけでは味気ないので、仙桃を配る。

 

「なによ、この神秘の塊。後で入手先教えなさいよね」

 アニムスフィア所長は無理してる感じが伝わるせいか、ついつい優しい目で見てしまう。無事に世界を救った後の事を考えると彼女が生きている方が良いだろう。

 所長が亡くなった後の責任追及に槍玉にあがるのは、どう考えてもスポンサーでありながら当時現場にいて犯行を阻止できなかった私だろう。

 

「伝説みたいに食べるだけで不老長寿になるわけでもないけれど。

 体は丈夫になるから、困難に立ち向かうマスターとデミ・サーヴァントのキリエライトは食べてくれ」

 と言いながら、アニムスフィア所長にも手渡す。

 

「仙桃といえば、麻帆良の世界樹の正式名が『神木・蟠桃』でしたね。実がなるという話は聞いた事がありませんでしたが、何か関係あるのでしょうか」

 

「麻帆良とは別口で手に入れた物だが、仙桃の木は生えてる場所が天界ってだけで、現実の桃の木と高さは変わらないぞ」

 

「学園長の風貌を思い出すと、仙人そのままのイメージです」

 青褪める綾瀬。

 

「まさか、世界樹の実を食べ続けて仙人になったとか……。ははは」

 

 ネギ先生が乾いた笑いを浮かべると、綾瀬は食べかけの桃を見ながら声を荒げる。

「千雨さん、いくら体が丈夫になるからって頭が伸びるのはイヤですよ!」

 

「大丈夫だって、私が会った事のある天人と仙人の中に学園長みたいな頭の人はいないから安心して食べてくれ」

 

「天界に天人、仙人、仙桃……。

 長谷川や精霊魔法の使い手と話をすると、魔術師としての常識とかけ離れていて頭が痛くなるわね」

 

「千雨さんと精霊魔法を一緒にしないで欲しいです」

 

 おかしい、人類滅亡を防ぐために一致団結しないといけないのに、私をだしに他の連中が仲良くなっていく……。

 

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